[TGS 2018]立体ディスプレイの映像はどう映るのか? VR180で見る実機映像

 すでにお伝えしているように,東京ゲームショウでは2種類の立体ディスプレイが登場していた。その映像をできるだけそのままにお伝えしようと,記事にはVR180形式の動画を貼り付けてあるのだが,残念ながら撮影時に対物距離の推定を失敗しており,立体で見ると焦点を合わせるのがかなり難しいものになってしまっていた。そこでここでは撮り直したVR180映像をお届けしてみたい。

[TGS 2018]ガラスの中に浮かぶ映像? 完成度の高い立体ディスプレイLookng Glass

[TGS 2018]空間に本物の立体映像を描くVoxon Photonicsのテクノロジー


●Looking Glass

●Voxon Photonics

2D画像では浮き上がった映像は表現できない……
[TGS 2018]立体ディスプレイの映像はどう映るのか? VR180で見る実機映像
 さて,これまで立体ディスプレイの「立体感」というものをWebで的確に伝える方法はない。過去には裸眼立体視で左右に並べたりといったことは試しているが,それがせいぜいのところだった。それでもある程度は伝わるので雰囲気は味わえるものの,ちゃんと伝えることは非常に難しいことに変わりはない。

 今回の映像はLenovoのMirage Cameraで撮影したものだ。3Dカメラを使用することで,立体ディスプレイも見たまんまで撮影できる(可能性がある)。Mirage Cameraは,レンズの位置が人間の瞳孔間距離に近く,自然な見え方が期待できる……はずなのだが,実際にこのカメラの対となるMirage Soloで見ると立体感が過剰に強調されているように見える。
 以前から3Dカメラはいくつか使っているのだが,配布用フォーマットとしてVR180は,今後立体映像での主流となる可能性が高いと見ている。

 残念ながら再生環境は多くない。Mirage Solo(ないしGear VR)を持っている人ならYouTube VRで手軽に体験できる。Mirage Solo上のChromeからこのページを見て再生したり,YouTubeに行っても3D動画は再生できない。YouTube VRを別途起動して”GamesIndustry VR180”で検索してほしい。

 Oculus Goの場合は,まずブラウザでこの記事を見ている場合なら,動画の右下にあるYouTubeロゴを押してYouTubeに移動したうえで全画面再生モードに移行し,一番下の段の中ほどに並んだアイコンの一番右側にあるであろう「ステレオ180(右/左)」を選択しよう。

 Oculus GoだとFacebookに上げてFacebook360で見てもらうのもよいのだろうが,Facebookでは動画ファイルサイズ制限があって,いまいち使いにくい。視野範囲が広いため情報量が多く,ファイルも結構デカくなるのだ(変換時の画質を下げればいいだけかもしれないが)。

左上のコントローラか画面自体をつかんで見える位置を調整する
[TGS 2018]立体ディスプレイの映像はどう映るのか? VR180で見る実機映像
 一応,対応機器がない環境でもYouTubeでそのまま2D映像が見られるのだが,アングルの関係でそのままでは肝心の機器がまったく見えない映像になってしまう場合もある。そういうときは画面に表示されているコントローラのボタンを使うか,再生画面を直接「つかんで」適切な角度に調整していただきたい。アナグリフ表示を選べば赤青メガネを使って立体で見ることも(一応は)できるはずだ。

 アップロードした動画はMirage Cameraで撮影したデータをGoogleが公開しているVR360 Creator Toolを用いて処理したものだ。
 このツールはLinuxとMacOS用にリリースされているのだが,Windows用はない。Virtual BoxやWSLなどで少し頑張ってみたのだが,動いてくれなかった。ということで,Ubuntuの起動用USBメモリを作ってツールの起動を行っているが,まあ使い勝手はあまりよくないものの,変換はできるようになった。
 しかしH.264で出力してWindows上のツールで編集すると,Iフレームがどこかに飛んでしまうのか,とてもひどい映像になってしまった。まだまだいろいろと検証が必要そうである。ということで,今回は動作が確実なAvidのコーデックを使って未編集でYouTubeにアップロードするというところに留めておいた。仕上がりはOculus Goでも再生できる形態であったので一安心だ。

 なお,画質はあまりよろしくない。Mirage Cameraは暗いところに非常に弱い。今回は暗いところでの撮影が多かったので不具合も出ている。Voxonのディスプレイの表示は半透明なのだが,つぶれて真っ白になってしまっている部分も多い。もっとディテールも出ていたのだが,再現できなかった。そのほか,ツールを使ってもなんとなく向きを間違えられている気がするデータもある。
 また,Voxonで数秒ごとに画面がブレるのはカメラのフレームレートとの違いによるモアレ的なものと思われる。実機上ではそういった動作は見られない。

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追加情報と情報修正


 初出時にLooking Glassの記事で書いていた「お金があれば大きいのも作れる」といっていたのはVoxonのほうだった。Looking Glassのブースで聞いた話だったので混同してしまったようだ。しかし,Voxonの方式だとスクリーンの上下運動で限界はありそうな気はするのだが,どうなのだろうか? ちなみに,空気抵抗についてはほとんど問題にならないとのことだったが,大きくするとさすがに無視はできない気もする。

表面に取り付けられた厚めのアクリル板
 ついでにLooking Glassで大きいサイズのものは作れないのかという質問に対して,ネックとなっているのは意外なことにアクリル部分のようだった。7.8インチは499ドルなのに15.6インチはどうしてあんなに高額(3000ドル)になっているのかを聞いたのだが,どうもアクリル板の関係らしいのだ。
 中空にして水などを入れてみればと提案もしたのだが,それだと壊れやすくなり,水では屈折率が足らず立体感が出ないとのことだった。手前のアクリル板の部分が表示の上でもキーになっているということのようだ。分厚いアクリルは結構な重量にもなるので,送料にも反映されている。なんらかのブレイクスルーに期待したいところだ。

側面に取り付けられた操作部。VX1という型番だったことが判明
[TGS 2018]立体ディスプレイの映像はどう映るのか? VR180で見る実機映像
 Voxonの秒間30フレームの200層表示で,秒間4000枚の謎はいまだに解けていない。いろいろ聞いてもらったのだが,まだ分からない。
 プロジェクタの性能は秒間4000枚の絵を出せるモノなので,4000枚というのはスペック上間違いないようだ。一方で,200レイヤーと30fpsも間違いないようで結局よく分からないのだ。
 ちなみにプロジェクタ部分から自分たちで設計しているとのことだった。また,DLPは「時分割で色を出す」という仕組みのものが多いのでさらにややこしい話にもなるのだが,とりあえず色をつけても高さ解像度が落ちたりはしない。3板DLPなのだろうか。