スマホゲームアプリでのコミュニティ活用のススメ

AppLovin日本法人代表の林 宣多氏が,スマホゲームのゲームコミュニティについて,デベロッパやマーケターが活用できるツールやヒントと,ゲームコミュニティが収益化にもたらす影響について解説する。


 スマホゲームコミュニティは,チャットや掲示板上でプレイヤーがゲームで体験したことや感想をプレイヤー同士で共有したり,ゲーム攻略のヒントを交換したりすることができるオンライン上またはスマホゲーム内のコミュニケーションプラットフォームです。ゲームコミュニティを活用すると,プレイヤー同士が関係を深めることが可能になります。
 一方で,デベロッパやマーケターは,プレイヤーがゲームに対してどういう印象を持っているかということを知ることができます。ゲームコミュニティにプレイヤーが書き込んだ内容を参考にして,ゲーム開発やマーケティングに反映させることで,プレイヤー体験を向上させ,ゲームのリテンション率の向上や収益の最大化などにつなげることができます。
 したがって,デベロッパやマーケターはゲームコミュニティの活性化につながるような取り組みをすることにより,自社ゲームの成功の確率を高めることが可能です。


ゲームコミュニティはプレイヤー体験の向上と収益化が実現できる絶好の場


 デベロッパやマーケターにとってコミュニティは,ゲームが今後どのように展開していくかなどの情報をプレイヤーにアピールし,ゲームに対するエンゲージメントやリテンションを高めることでLTV(Lifetime Value: 顧客生涯価値)の向上につなげられます。

 また,デベロッパやマーケターがゲームコミュニティを通じてプレイヤーからゲームの感想や改善点などについてのフィードバックを集めることで,ルールやゲームのシステムを改善したり,ゲーム内で新たなレベルやキャラクターを設定したり,マーケティングや動画リワード広告などをよりカスタマイズした形で打ち出すことが可能になります。
 加えて,一部のスマホゲームコミュニティでは,プレイヤー同士がゲームの攻略ヒントやサポート情報などを互いに提供しており,カスタマーサービスのような役割を担っています。
 自社ゲームの公式WebサイトにFAQページを設置したり,専用の問い合わせフォームを通してプレイヤーとやりとりをしたりするのにはコストがかかりますが,こういったプレイヤーへの情報提供は,ゲームコミュニティの中のプレイヤー同士で解決してもらえることで,コスト削減にもなります。

 また,デベロッパは,ゲームコミュニティを自社ゲームのブランディングに利用することもできます。例えばe-Sportsの分野では,インフルエンサーを活用したゲームのブランディング活動を通して,プレイヤー体験の向上や収益化を図る取り組みが行われています。各ゲームコミュニティに所属しているインフルエンサーが,自社のゲームの大会で優勝などの成功を収めると,ゲームコミュニティ内のほかのプレイヤーの注目を集めると共に,「影響力の高い人物がプレイした」というゲームのイメージをプレイヤーに訴求できるからです。こうした活動で生まれたゲームに対するプラスのイメージは,新規プレイヤーの獲得や既存のプレイヤーとの深いエンゲージメント,さらには強固なブランドイメージの醸成につながり,結果としてプレイヤーが課金を増やすなどゲームの収益化をもたらします。


ゲームアプリ内にコミュニティ機能を簡単に実装できるSDK


Discordでのチャットの様子
スマホゲームアプリでのコミュニティ活用のススメ
 日本ではまだあまり馴染みがないですが,欧米ではあらゆるスマホゲームで簡単にゲームアプリ内にコミュニティを実装できるSDK (Software Development Kit: ソフトウェア開発キット) が存在します。中国のゲームパブリッシャYodo1や アメリカのゲームパブリッシャPixelberry Studiosなど,海外ではこのようなSDKを活用して自社のゲーム内の掲示板でプレイヤー同士が情報交換や交流ができるゲームコミュニティを実装しています。SDKを使ってゲームコミュニティを作った場合,ゲームデベロッパが自社で一からコミュニティ機能を開発して実装したときと比べて,自由な権限はなく,かつゲームデベロッパ自身がカスタマイズできる範囲は少ないかもしれません。しかしながら,SDKをうまく活用すれば,自社でゲームコミュニティを構築・維持するために必要な時間やリソースを抑えることができるというメリットがあります。次に紹介するのは,近年人気のあるSDKの一例です。

代表的なSDK

●Discord
 ゲームコミュニティ向けに設計されたオールインワン型のSDK。無料で簡単に実装できるだけでなく,パソコンとスマホアプリの両方で,音声とテキストでチャット可能なゲームコミュニティを実装できます。

●KTplay
 プレイヤーがゲームから離れずに画面のスクリーンショットや動画などを投稿できるスペースが簡単に実装できるSDKです。

●Plexchat
 スマホゲームに特化したSDK。プレイヤー同士のコミュニケーションの場をつくる一方で,デベロッパにはゲームの改善につながる情報やマーケティングのヒントを提供します。

オンライン上のゲームコミュニティを活用したマーケティング


 ゲームマーケターにとっては,SDKなどを実装しないでも,手始めにオンライン上にすでにある既存のゲームコミュニティの活用から取り組むこともできます。既存のゲームコミュニティの掲示板やSNSグループは,多くのプレイヤーの目に触れる機会があり,強い影響力を持っているため,うまく活用することで自社のゲームのプロモーションに役立てることができます。例えば日本だとスマホゲームに特化したゲームコミュニティの「Lobi」やスマホゲーム攻略コミュニティサイトの「GameWith」,多くのゲーム好きが集まる「Twitter」などがゲームコミュニティとして人気です。

 マーケターはこのようにゲームアプリの外にあるコミュニティを参考にすることで,プレイヤーがどのように集まって情報交換をしているのかを学ぶことができます。したがって,マーケターは新しいゲームを発売する前にゲームコミュニティを調査したほうがよいでしょう。プレイヤーは自分と似たような趣味・嗜好を持つゲームコミュニティに属する人がプレイするゲームを好む傾向があるためです。


自社でゲームコミュニティを構築するメリット


 自社でFacebookなどのSNSの活用や,自社ゲームの公式ウェブサイトでプレイヤーが交流できるページを設けるなどの方法で,ゲームコミュニティを運営することも有効です。例えばSNSを利用している事例として,日本では誰もが知っている人気スマホゲーム「モンスト」は,公式のLINE,Twitter,Facebook アカウントを運営しており,イベント情報やキャンペーンの告知など,積極的な情報発信を行っています。
 自社でのゲームコミュニティの運営は,プレイヤーの囲い込みによるエンゲージメントの増大や,ゲームコミュニティ内のプレイヤーによる口コミの拡大を通して新規プレイヤーの獲得が期待できます。

スマホゲームアプリでのコミュニティ活用のススメ
LINEでは情報発信のほか,LINEスタンプも配信
スマホゲームアプリでのコミュニティ活用のススメ
モンストのTwitter 公式アカウントは,270万人以上のフォロワーを誇る


最後に


 ここまで述べたようにゲームコミュニティは,自社のゲームへのエンゲージメントを高め,マーケティングの手助けになるだけでなく,ゲームファンからの価値あるフィードバックが直接聞ける大切な場所です。したがって,すべてのデベロッパやマーケターにとってゲームコミュニティは積極的に活用すべきものなのです。

※この記事はAppLovin日本法人から提供された文章をベースにしています。