ミニスーファミはワンダフルでまさにマーケットが求めているモノである

1990年代風な郷愁感はさておき,1万円ほどの家庭用ゲーム機は理想的なファミリー向け製品だ

 昨日,私は「スーパーマリオワールド」をもう一度プレイした。

 この25年で1000回はクリアしているが,今回初めて本物のスーファミコントローラを使ってみた。

 私の妻はじれったげに私がクッパを倒すのを待っている。彼女は私を押しのけて早く「ゼルダの伝説:神々のトライフォース」をやりたくて仕方がないのだ。彼女はもう何十年もこのゲームをプレイしていないが,マップを見なくてもどこに進むべきかを正確に覚えているようだ。ハイラルは90年代の若かりし頃の彼女の心に刻まれ今日まで残っている。

 ミニスーファミ(ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン)は無論,レトロゲーマーの夢だ。クラシックなタイトルがたっぷり収録されており,中でもメインは今回初リリースとなる「スターフォックス2」だ。1995年,任天堂が新しく発売するPlayStationに比べて貧弱なことを理由に発売に至らなかったアレだ。

ゲーム史に輝く最高傑作(たぶん)
ミニスーファミはワンダフルでまさにマーケットが求めているモノである
 ハードのデザインから収録されたゲームまで,これは郷愁にひたる大人を真っ向からターゲットにしたマシンだ。そのうえ,クリスマス商戦にタイミングを合わせていることを踏まえれば,昨年発売されたミニファミコンよりもはるかに重要な可能性を秘めている。

 昨年発売された,家庭用ゲーム機のリメイクは小さくて素敵な製品だったが,収録されているゲームのほとんどは当時より改善されている。タイトルの多くはまったく古くなっていない。

 しかし,ミニスーファミはそうではない。「スーパーマリオワールド」「ヨッシーアイランド」「スーパーメトロイド」「ゼルダ」は,今も象徴的であり,20年以上前と変わらないプレイが楽しめる。「ドンキーコングカントリー」や「スーパーマリオRPG」のようなゲーム(その時代における古典的なものではない)ですら,80点台のクオリティを維持している。

 つまり,もしあなたが親で自分の子供にビデオゲームをやらせようと思ったら,300ドルするSwitchや500ドルのXbox One Xではなく,きわめてまっとうな新製品を手に入れることができる。さらにそれは完璧なパッケージだ。二つのコントローラ,70ポンド/80ドル(※約1万円)で買える21個のゲーム。月額の支払いも必要ない。同じようなオールインワン的アピールをしていたWiiですら,Wii Sports用には二つめのコントローラを買う必要あった。

ミニスーファミはほかのファミコンシリーズよりも幅広い層にアピールしている
ミニスーファミはワンダフルでまさにマーケットが求めているモノである
 無論,セガのタイトルなど,過去には多くのプラグアンドプレイの家庭用ゲーム機があったが,主にサードパーティのアクセサリー会社や玩具メーカーが提供していた。まれに任天堂のような大きなゲーム会社がこういったプロダクトを出していたくらいだ。

 今や,パートナーがいる人や親御さんは,その相手にクリスマスの定番である新しい靴下(クリスマスソックス)や商品券以外のものを買うことができる。そして中でも,お母さんやお父さんは,間違いなく二つのうちの一つのコントローラを子供達に渡すだろう。スーパーマリオカートの喜びを初めて体験できるように。

 つまり,これは潜在的に任天堂にとって重要なプロダクトなのだ。任天堂のマシンは歴史的に多くの人々にとっての「初めての家庭用ゲーム機」であり,一部のプレイヤーは年を重ねるにつれてほかのプロダクトに移行し,プレイし続ける人たちは次世代機の賛同者になってきた。しかし,任天堂はWii Uの失敗により現在の家庭用ゲーム機・サイクルの最初の段階で戦線離脱してしまった。そのため,今や非常に多くの子供たちにとって「初めての家庭用ゲーム機」はiPhoneだ。ついでながら言えば,古いファンでさえも,テレビの下に置かれた家庭用ゲーム機ではなくスマートフォンでプレイしていると思われる。

「ミニスーファミのようなプロダクトであれば一度は失ったファンをテレビの家庭用ゲーム機に呼び戻すだけでなく,新たなファン層も得られるだろう」

 任天堂のスマートフォンへの移行はその状況にだいぶ対応できるだろうが,ミニスーファミのようなプロダクトであれば一度は失ったファンをテレビの家庭用ゲーム機に呼び戻すだけでなく,新たなファン層も得られるだろう。これはまた,より若く,カジュアルな観客を引き付けるために苦労している家庭用ゲーム機市場全体にも朗報だと言える。

 だからとりあえずミニスーファミは成功していると言っておこう。今度こそは任天堂が潤沢に在庫を用意し,何百万もの家庭用ゲーム機プレイヤー,そしてその子供たちが12月25日にもらえるミニスーファミで遊んでいるとしよう。さあ,次はどうすればいいのか?

 答えを出すのは簡単ではないが,時代を超越するようなゲームができるミニスーファミでできることはたくさんあるはずだ。

スーパーマリオ オデッセイ:この第4四半期における多くのファミリー向け家庭用ゲーム機タイトルの一つ

 子供やファミリーにテレビゲームに向かってもらえるようにする一つの方法は,我々の兄弟的存在であるエンタメ業界のプレイブックを見習い,一緒にやっていくことだ。

 現在は数多くの子供やファミリー向けのゲームが市場に出ており,今後数週間でさらに多くのゲームが登場する予定だ。「KNACK 2」,Switch本体,「スーパーマリオ オデッセイ」「PlayLink」「Kinect: ディズニーランド・アドベンチャーズ」「Minecraft」「ARMS」「クラッシュ・バンディクー」「ラビッツ」「レゴ Ninjago」「マリオカート」「Super Lucky's Tale」などズラリと並んだ豪華なコンテンツを見れば,家庭用ゲーム機のゲームは4KやVR,大規模なオンラインシューティングゲームよりも勝るのは自明だ。

 映画や音楽の世界で,特定の視聴者をターゲットとして業界を横断してプロモーションを行うことは珍しいことではない。ゲームでも似たようなことをやってみるのは名案ではないだろうか?
 AmazonやGAME(※イギリスの小売業者),GameStopだけでなく,Xbox Live,PSNやeShopも含めた小売サイドで子供やファミリーといった特定のオーディエンスを対象として,選ばれたタイトルをプロモーションするという,うまく練り上げたマーケティング活動はどうだろうか。広報チームでしっかりサポート,もしくはマスメディアを利用した若干の広告などもいいかもしれない。

 業界団体の支援を必要とするかもしれないが,こういうプロモーションこそまさに家庭用ゲーム機業界が必要とするもの ― テレビでゲームをするということは人の顔を銃で撃つだけでなくそれ以上のものがあると人々の心に刻むもの ― かもしれない。

※文中の製品の略称について。Googleで検索すると「スーファミミニ」が「ミニスーファミ」をやや上回っていますが,正式名称の並びからするとミニスーファミとなること,前機種では「ファミコンミニ」が別商品として存在していたため「ミニファミコン」の呼称が多かったことなどを考え合わせて「ミニスーファミ」を採用しています


※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら