VRはコミュニケーションツールになるのか? カラオケでのVRルーム体験レポート
サービスが開始されるのはJOYSOUND品川港南口店で,1階と3階にそれぞれ1室ずつVRルームが新設されている。今回試したのは3階の部屋で,1階のほうがちょっと広いとのことであった。ルームスケール設定はだいたい2m四方くらいとのこと。
まずVRルームの部屋の構成を簡単に説明しておくと,四角い部屋の4面のうち両脇の2面には壁沿いにソファが並べられている。残りの1面はカラオケ機器や大型ディスプレイが集中して配置され,VR用PCも脇に置かれている。そして残りの1面には,緑の布が掛けられている。つまり中央部には空間が空けられており,そこでルームスケールのVR体験ができるわけだ。テーブルがないので,食べ物を頼むと微妙に困ることもあるかもしれない。
テレビ側にはカメラもついており,グリーンバックの手前側にあるものとVR空間をクロマキー合成して大型ディスプレイに映し出すことができる。VRヘッドセットを付けた人がどんなVR空間にいるのかをギャラリーが確認できるようになっている。緑色の服は着ていかないほうがいいだろう。
この部屋は「VRも」できる部屋なので,もちろんセレクターの切り替えで普通のカラオケも楽しめる(セレクター2つの切り替えが必要なので注意)。
提供されるVRサービスは現在のところ5種類だ。
●VR SPORTS
VR SPORTSには4種のスポーツゲームが含まれている。
で,右手のグローブを相手のグローブにチョンと当てるとラウンド開始となる。
操作はボクシングなので殴ればいいわけだが,グローブはもちろん攻撃と防御を兼ね備えている。狙うのは主に頭と腹になるが,相手も防御を固めているので,カウンター狙いが有効な感じだった。スウェイやダッキングで物理的に避けることも可能だ。
結構体力を使うゲームでもあり,本気で腕を振るとなにかと危険なので,必ずストラップを手に通して楽しもう。
で,適当に投げてみるとガーター,ではとスパットを見て投げてもガーター。実際のボウリングだとナチュラルにフックがかかる人のほうが多いとは思うのだが,このゲームではあまりかからない。というかかかってる気配がなかった。リリース時の手首の返し次第だとは思うのだが,少なくとも私の場合はまったく曲がらなかったので,素直に直線で狙う感じのほうがうまくいった。
両手を回すという操作自体は直感的なのだが,手をどれくらい動かすとハンドルがどれくらい回るといったあたりがいま一つ直感的ではない感じだ。まあ,それも慣れではあろう。最初は壁に突っ込んでばかりいたが,3周めになるとスムースに周回できるようになった。難度にもよるかもしれないが,EASYでは基本的にフルアクセル&ノーブレーキでドリフトだけで周回できるようだった。
トリガーを押すと指を曲げることもできるのだが,キャッチは本当に難しい。パンチングで跳ね返すだけでもセーブには違いないので,まずは確実に弾けるようになるのが目標だろうか。
スポーツゲームのすべてについて言えるのは,体感ゲームであり操作感覚は実際の体の感覚に近いものではあるが,ゲームならではのクセというかコツはあるので,早めにそれを掴むのが肝要だ。
また,カートはともかく,スポーツゲームだけあってそれなりに体力を使う。とくにボクシングはガチでやると一汗かくくらいの運動量になる。わいわい楽しむなら緊張感のあるサッカーが楽しめそうだ。
●SEIYA
難度は曲ごとに決まっており,星4つくらいが楽しめるとのことだったのでHARDと書かれた曲を試してみたのだが,確かにさほど難しくはない。細かい操作が必要になる一般的な音ゲーと比べて,手を伸ばして触れるという直感的な操作なので,初見でも結構いけるはずだ。
そこそこ運動量も多いので,一人できて1時間やりまくるとちょっとしたエクセサイズになるかもしれない。見た目にも多人数向きといえるだろうか。
●Tilt Brush
なにぶん,空間に絵を描いていくツールだけに絵心のある人が扱えばかなり盛り上がりそうだが,そうでないと見栄えのするものは難しいだろう。これは少しメンバーを選ぶコンテンツかもしれない。
●Project LUX
感想というか余談を少し。
2次元のムービーではあまり気にならないと思うのだが,キャラクターが立体化して出てくると腕の細さが目に付いた。立体視では,目と肘だと目のほうが横幅があることが如実に分かってしまうのだ。極度に細い手足というのは常識的に考えると不自然なのだが,イラストなどの表現ではそういった誇張はさほど目立たない。目立たないとはいえ,指みたいに細くすれば不自然には見えるだろう。動画で動かすと肉付きを考えてデザインし直されることもありそうだ。3Dだともっと注意が必要で,VR(立体視)だとパースが付くので,大きさというのは場合によってはクリティカルになる。どこまでが自然に見えるかの閾値というのは表現方法によって異なるのだろう。今回の場合,意図的かどうかは知らないが,視差が大きめで遠近感が過剰気味だったので,距離によるプロポーションの変化も大きめになっていた。
ということで,この作品に登場する女の子はイラストに忠実なモデリングがされているのだが,VRではそれまで目立たなかった不自然さが浮かび上がる。キャラクター自体は可愛いのだが,そのままではVRには向いていないように思われた。
バンダイナムコがサマーレッスンでアニメキャラクターを却下したというのは,いろんな意味で正しい判断だったんだなあと思い起こした次第だ。
●四の連鎖
ホラーというと,怖いというより予測不可能なところから「ばぁ〜」と驚かせるようなものが多いのだが,今回体験した限りでは,この作品に関してはそういう要素はまったくなかった(説明書きを見る限り,いくつか見落としていたものもあったようだが)。実際に提供されるのは今回体験したものよりも怖いバージョンになるとのことなので,いろいろ要素は追加されるのかもしれない。
内容的に多人数向きか,一人で行ってひっそりやるのがいいかは判断が難しいところだが,ネタバレ防止でディスプレイを消して順番にやるとかはアリかもしれない。
VRの大衆化はカラオケから進むのか
体験して少し残念だったのが音響システムだ。今回のVRルームはギャラリーと一緒に楽しむものということもあってか,ヘッドフォンなしで部屋のスピーカーを使って音声を聞く形式だったのだが,当然というべきか,音の定位が画面方向の左右に固定されてしまうのだ。カラオケなので7.1chシステムなどが用意されているわけではないのは分かるのだが,ここはぜひコンテンツと整合性の取れた方向での立体音響にしてほしいところである。
あと,グリーンバックを前に動くプレイヤーと合成された画面の配置は,部屋の両脇からではちょっと見づらいのではないかという気もする。画面の大型化や他画面化が行えればベターといった感じだ。
さて,なんにせよカラオケ店舗でVRというのは面白い試みだ。機材などを考えると遊び放題で30分あたり+200円というのは破格といっていいと思う。今後どんどんコンテンツが増えていくとのことなので,一度試して終わりではなく,継続的な利用も見込めるようになるだろう。
低料金でできる理由の一つが,人件費がかからないことであろう。VR体験施設では,係員が付き添うことがほぼ必須となっているが,今回は通常のカラオケ機器と同様にアテンドなしでの運用を行う方針だという。
ゲームはメニューだけで起動できるようにランチャーが作られており,プレイ方法はインストラクションカードにまとめられている。それだけで大丈夫かというと多少不安はあるのだが,ある程度慣れた人が増えてくればうまく回っていくのだろう。
そうした中で,VR用のテーマパークであったり,専門施設であったりといったものが登場してきており,さらにはゲームセンターでVRを体験できる筐体などが登場しつつあるが,一部を除いてはルームスケールの体験は提供されていない。VRを楽しむための空間の確保は難しいのだ。
空間ないし個室の提供という意味では漫画喫茶やカラオケという既存のサービスがあり,VRとの親和性は高い。スペース的に,漫画喫茶に向いているのはVirtual Gateも進めている着座型VR体験であり,カラオケに向いているのが今回のようなルームスケールだというのは間違いないだろう。
カラオケ店舗でも広い部屋でないと設置できない,テーブルが置けないなどのデメリットが発生するなど,一長一短があり,すべての部屋へ導入というのは難しいだろうが,これが普及していけば飲み会のあとの新たなコミュニケーションツールとして面白い位置を占めることになりそうだ。