「24Frameの邪道経営哲学」第19回:DLCを配信する時の哲学


DLCは出たものの


正式リリースから1年後のDLC実装
「24Frameの邪道経営哲学」第19回:DLCを配信する時の哲学

 さて,去る2024年4月24日に「METAL DOGS」の有料DLC第1弾,「HERE COMES THE METAL ENEMIES」が発売となりました。

 なんというか世間的には急にひっそり発売された形に見えなくもないと思いますが,今回はわりと走り出しからのスパンが短かったこともあり,いろいろと広報など,追いついていなかった部分があるのは否めません。

 何しろこのリリースは4月です。4月と言えば会社的には年度の初め,ということでさまざまな行事,やるべきことが積みあがっている月のはず。決算問題で3月にリリースがラッシュされても,4月にはそこまで,というのが最近のゲーム業界のはずです(最近は4月のリリースも多くなってきましたけど)。

 弊社は4月決算ではありませんが,まあ他社さんとの兼ね合いとか,一般的な社会通念に照らし合わせると,いろいろなことがある訳です。例えば給料の査定とか,そのための全社員との面談とか。1年に1回なんだから頑張れよ,とは我ながら思いますが,同時に「なぜ今?」と運命を逆恨みすることもしばしば。「なぜ今?」の部分はアクシデントも含まれていますので,悪いのは運命ではなく自分なのは明白ですが。忙しさは人を狂わせます。そしてこの現代社会において,大体の人は忙しいものです。つまりは大体の人は……?

有料DLCの全貌

今までにないドンパチ感を目指しています
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 まあ,それはいいとして,そんな4月の合間を縫ってリリースされたMETAL DOGSの有料DLC第1弾,「HERE COMES THE METAL ENEMIES」(長い,略称を考えたいので「HCME」とか?)ですが,今回はちょっと変わった試みをしております。

 そもそものMETAL DOGSとは「メタルマックス」の世界観をよりカジュアルに広げていくという使命を持っており,その本編ゲームバランスは平易さをモットーに設計されておりました。

 しかし今回は有料DLCです。これを買ってくれる皆様は「METAL DOGS」はもちろんのこと,おそらくは「メタルマックス」シリーズも好きである確率が高い。ということはそもそものシリーズの持っていた野放図さに若干のカムバックの目があるのではないか? そんなことを考えていました。

寄り道という贅沢

ゲームに慣れたら,寄り道したくなりますよね
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 かくして今回のDLCの「開始位置」が決まります。
 それはまあチュートリアル的な一連の後,すぐにプレイできるタイミング。
 「迷わない」という意味でシーケンシャルな一本道の構成であった「METAL DOGS」のシナリオですが,このDLCを購入された暁には,早々に分岐ルートが訪れます。

 この分岐ルート自体は再びすぐ本編に合流する「稼ぎ場としての寄り道」ですから,分岐というと大げさかもしれません。エンディングが変わったりするわけではないですからね。しかしこの「稼ぎ場としての寄り道」というのはメタルマックスシリーズにとって,いやそもそものRPGの要素として非常に重要なものだと我々は考えました(DOGSはRPGではないので,これはゲームとしての本質,という話かもしれませんね)。

「荒野の戦場」というものの描写

今回のDLCでは,敵はプレイヤーを「待ち」ません
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 さあ,藪を切り開いて素敵な寄り道が見えてきたら,後はそこをどう飾り付けていくかです。または汚していくか,と言ってもいいかもしれません。
 今回もシリーズファンとして考えてみることに徹してみました。するとどうでしょう。奇妙ないたずら心がよみがえってきます。

 そもそものメタルマックスシリーズには,RPGでありながら各キャラの行動終了を待たずに次のキャラが行動を始めるというモードが存在しました。
 軸となっているターンベースRPGから派生していったこれも寄り道的な仕様ですが,テンポこそ至上と考える僕のようなゲームデザイナーにはこれは深くヒットしました。それを初めて見たときはまだ子供でしたが。

 この「待たない」というのがすごくカオスな状況の描写に適しているというか,テンポもいいし最高だ,と思っていたところで「カジュアル向け」が必ずしも金科玉条とならない今回のDLCにおいてはにわかに有効性を発揮してきます。

 つまり今回のDLCでは「犬がカオスを駆け巡る」という,メタルマックスシリーズになんともふさわしいシーンの創出が可能になった訳です。

楽しさいっぱいの寄り道

レアアイテムも多数出現!
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 ゲームに「寄り道」を作ることの効能は,もちろんこれだけに留まりません。本編ではレア寄りの出現だった「ドッグタグ」の出現頻度アップも本DLCには実装されています。

 それだけではなく「わんわんグルメ」などの消費アイテムもざっくざく! これをガンガン使ってカオスな戦場を駆け巡り,迫りくる敵を撃破せよ! これが本DLCのバランス指針です。

 本編ではどこぞのエリ●サーのごとく,「いつ使うんだ?」といった雰囲気を備えていた「わんわんグルメ」を食べまくり,犬のおもちゃを踏みまくり,高速で戦場を駆け抜けてください。これが今回のDLCのおすすめ攻略法です。


戦場を彩るカオスなエネミー

 ここからは駆け抜けるべき戦場の愛すべき敵キャラをご紹介しましょう。

理性なきアグレッシブ「メカニコプター」
ガンガンこっちに突っ込んでくる,特攻野郎がコイツです
「24Frameの邪道経営哲学」第19回:DLCを配信する時の哲学

 まずはメカニコプター。コイツはかなりの視野を持ち,画面外から怒涛のように押し寄せてきます。一匹当たりは大した脅威ではありませんが,数が多いとなかなかのもの。しかも押し寄せるのはコイツだけではないと来ています。

謎の円盤「ていさつUFO」
コイツは逆に逃げ足半端ないです
「24Frameの邪道経営哲学」第19回:DLCを配信する時の哲学

 メカニコプターのラッシュに対応しているとき,あなたはきっと画面外からの謎の攻撃に悩まされることでしょう。その犯人がコイツ「ていさつUFO」です。

UFO機銃のマズル
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 やるだけやって高速で逃げていくイヤなヤツ。しかししっかり追いかけて倒した暁には,なかなかにいいものをドロップします。ボーナスキャラだ! みんな,かかれ! 
 なかでもコイツがドロップする「UFO機銃」はおすすめの逸品。ただの機銃と思うなかれ。よく見ると機銃のマズルフラッシュは,「火薬」ではなくなにやら電撃的です。

 おそらく謎のテクノロジーによる時空転移弾丸なのでしょう。こいつがどこからきたのかは知りませんが,宇宙のテクノロジーは無限です。
 とはいえ実際コイツは初代メタルマックスのラスボスである「ノア」の産物ですから,地球外のものではない可能性のほうが高いのですが!

恐怖の生物「殺人アメーバ」
アメーバなんかに●されたくない!
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アメーバヘルメット
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 逃げたり追いかけたりしているところに「足止め」という厄介なサポートを繰り出してくるのが,このモンスター「殺人アメーバ」です。
 このゲームだと「●犬アメーバ」が正しそうですが,本作は犬が真の意味で死ぬことはない健全(?)なゲームですから,ここはやはり「殺人アメーバ」でしょう。

 コイツの攻撃は威力自体はそこまで,なのですが問題はその後です。
 攻撃が着弾したそのあとに「移動スピードダウン」のトラップフィールドが発生します。コイツに足をとられているところに,ほかの敵が押し寄せ,それが原因でゲームオーバー,なんてこともままあります。

 しかし,皆さんがいるのはこのゲームの,アイテムザクザクの寄り道の途中。わんわんグルメと,触れることでスピードもアップする「犬のおもちゃ」などを駆使して,やつらに捕食されないようにしてください! 捕食を逃れたその先に,あなたは「アメーバヘルメット」という,謎の帽子を手に入れることでしょう。


これまた軟体「なんたいキャノン」
軟体でも,ホネのある敵!
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「なんたいボディ」
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 さて,DLCのクエストを進んでいくと,もっと厄介な軟体生物に出会います。その名も「なんたいキャノン」! こいつは正攻法の捕食者で,多方向に広がる散弾と,その主砲たるキャノンからはなんとタコスミの砲弾をかましてきます。

 駆逐には苦労する相手ですが,駆逐した暁のご褒美もなかなかのもの。ヤツらがドロップする「オクトパス・キャノン」を装備すれば,あら不思議,あなたの愛犬もタコスミを使って砲撃が可能です!

 それだけではありません。時には「なんたいボディ」という,タコそのものな装備品もゲットできます。これは一見,愛犬が捕食されているように見えなくもないのですが,このイカれ具合も「メタルマックス」としては正しいようにさえ思えてきます。

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そして誰も操縦しなくなった「無人戦車」
これは比較的,最近の作品からのピックアップ!
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 寄り道も佳境を過ぎると,洒落でもなんでもなく単純に強力な敵が出現。しかしご心配なく。こいつらは誰に操縦されている訳でもない無人戦車。思うさま,お犬様の蹂躙を与えてやってください。

 これもまあ設定に準拠しますと「メタルマックス」の敵キャラはすべからく無人でありノアによる「人類抹殺プログラム」によって制御されていますから,ハナから遠慮は無用,な訳ですが。

寄り道の果てに仏滅あり

見た目はおめでたい気もしますが,ヤツの名は「仏滅戦車」
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 さて,楽しい寄り道も終盤に差し掛かってきました。そこで登場するは「仏滅戦車」。コイツの攻撃は「音波型」です。

 恐らく呪わしい声でポストアポカリプスの荒野に「読経」を繰り広げているのでしょう。そして言わずもがな,コイツらを撃破したらば,その「読経」ベースの音波兵器を手に入れることが可能です。
千手砲,千手弾道
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まるで意味の分かっていなさそうな,犬の表情が最高です
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 しかし仏滅とはいえ仏は仏。攻撃ばかりでは涅槃への道は程遠い。悟りを開きたくなったら「仏滅ヘッド」を頭にかぶって,深く瞑想してみましょう。

 とまあ,ここまでざっと,DLCの全貌を明らかにしてきたわけですが,ここでの情報はDLCを遊んでもらうための「道路標識」のようなものです。

 これらの要素をまたにかけ,何よりも新たな「METAL DOGS」のゲームバランスをお楽しみください。本作初の有料DLC『METAL DOGS EX QUEST01:HERE COMES THE METAL ENEMIES』はSteamにて絶賛販売中です。HERE COMES THE 伝説のご新規様! 今後の展開にも,乞うご期待!