【ACADEMY】初めてゲーム開発職に応募する際に知っておくべきこと

XR GamesのAndy Driver氏が,キャリアを始める際の注意点を語る

【ACADEMY】初めてゲーム開発職に応募する際に知っておくべきこと

※この記事は,ゲーム業界での生活についての見識や,ゲーム業界に入るためのアドバイスを学生に提供する企画「Get into Games」の一環です。

 ゲーム開発を仕事にすることは,世界中の多くの人々にとっての夢だ。それは大人気のエンターテイメントであり,開発者たちは芸術と科学の最先端で働いている。

 EGX 2023で,XR Gamesの人材獲得マネージャーであるAndy Driver氏は,ゲーム開発分野で初めての仕事に就くためのヒントを語った。

 だが最初に彼は,この分野でポジションを獲得するのは本当に難しいという過酷な現実を示し,強力なスキルセットを持つことは戦いの半分にすぎないと説明した。すぐに夢の仕事に就けるとは限らず,キャリアは一歩ずつ進んでいく旅なのだ。

 また,ゲーム開発以外のことに興味を持つことも大切である。おそらく,それは最初の仕事を得るために不可欠なものだ。




就職は単純ではない


 ゲームの仕事に応募することは,履歴書を誰かに送り,うまくいくように祈るだけの小さな問題ではない。ポジションを獲得するためには,いくつかの段階を踏む必要があり,まず応募したい役職を見つけなければならない。それは,求人サイト,Webサイト,ソーシャルメディア,LinkedInなどで見つけられる。

 「そして,それらの仕事に応募して,各スタジオの選考プロセスを経ることになります」とDriver氏は語る。

 「ほとんどの相手から返事をもらえない可能性があります。期待値を管理するために言いますが,その段階ではほぼ間違いなくフィードバックを受けられないでしょう。求人に応募し,面接やディスカッションをすることなく不採用になった場合,おそらくフィードバックは得られません」

 各ポジションには数百人が応募するため,企業が応募者全員にフィードバックを提供するのは不可能だ。しかし最初の段階を突破すれば,ポジションによって,面接やテストに招待されることがある。プロセスには複数の段階があるかもしれない。

 「それはスタジオによります」とDriver氏は語る。「それからオファーがきます。ただステップに沿っていくだけの簡単なことです」

 「求人に応募しても何も得られなかったり,どこからも返事がなかったりするので,最後までやり遂げることは困難です。そのため,応募する仕事をもっと探さなければなりません」

 彼は続けた。「面接まで進んだのに,『この理由で不採用だ』とフィードバックを受けることもあります。あなたは『スキル面で何かに取り組まなければならない。スキルを成長させなければならない。もっとスキルを見せなければならない』と初心に返って言う必要があるかもしれません」

 Driver氏の論点は,求人への応募は一筋縄ではいかないということだ。

 「現実は大きく異なるでしょう」と彼は説明した。「面倒なことになるので,自分がどの段階にいるのかを理解するために,整理整頓を心がけ,すべてのことを把握しましょう。フィードバックを受け,学んだことを常に取り入れられるかどうかは自分次第です」


何が必要か


 履歴書やポートフォリオなど,応募にはいくつかの重要な要素があり,専門分野(アーティスト,デザイナー,プログラマーなど)によっても考慮すべき点が異なる。

履歴書


 言うまでもないことだが,求人に応募するには履歴書が必要だ。

 これは,あなたの経験や学歴を示すだけでなく,あなたの人間性や,企業があなたを雇いたいと思うかどうかの判断材料になる。

「(履歴書では)あなたが開発ロボットではないことを示すべきです。私たちは人間を雇います」

 「履歴書は,面接における会話の大部分を提供します」とDriver氏は説明する。

 「たいていの場合は,プロジェクトにおいて何をしたか,どんな困難に直面し,それをどう乗り越えたかを聞かれます。履歴書には,趣味や興味など,あなたの個人的な詳細がたくさん書かれているかもしれません。そのほかには,仕事として何をしたいか,どのようなキャリアパスを考えているかといった内容もあります」

 「これはあなたを実在の人物にし,個性を与えるものです。あなたがゲーム開発ロボットではないことを示してくれます。私たちは人間を雇います」


ポートフォリオ


 エントリーやジュニアの役職に応募する際には,ポートフォリオが求められる。

 「それは面接の機会を勝ち取るためのものです」とDriver氏は語る。「しかし,素晴らしいポートフォリオを持っていても,仕事が得られるわけではありません。面接は受けられるかもしれませんが,仕事は得られません」

 優れたポートフォリオを作るため,以下の基本的な点に気をつけよう。

  • ポートフォリオの有効なURLがある
  • 履歴書や応募書類から容易に確認できる
  • シンプルなレイアウト。ユーザーの体験を考えよう
  • 広告や気が散るものを減らす
  • 要点をつかむ
  • パスワードで保護しない


アーティストへのアドバイス


 ゲーム業界のアート職を目指す人は,ArtStationをポートフォリオに使用するだけで,プロセスを大幅に効率化できる。この職種では,応募者が実際のゲームアートを展示することが不可欠だ。これはゲームエンジン内の画像やゲームプレイのスクリーンショットでも構わない。

 また,あなたのプロセスを示し,リサーチを強調し,どのように,そしてなぜそのような決断を下したのかを説明するのにも役立つだろう。

 量よりも質を重視することが大事だ。すべてを紹介するのではなく,現時点でのアーティストとしての自分を際立たせよう。

 とはいえバラエティ豊かなら仕事の獲得に役立つ可能性は高いので,あなたの実力を見せつけよう。オリジナルかつ創造的だといいだろう。また,どのように仕事をしたのかを説明する必要もある。使用したツールやゲームエンジン,所要時間,プロジェクトの仕様について述べよう。

 最後に,アーティストは自分のポートフォリオをクラスメイトと比べるべきではないが,クラスメイトの作品を展示の参考にすることはできる。

デザイナーへのアドバイス


 アーティストと同様に,デザイナーもポートフォリオ用のWebサイトをゼロから作る必要はない。Wix,WordPress,Squarespaceなどのテンプレート化されたプラットフォームを使えば,時間を節約できる。

 デザイナーのポートフォリオは,ほかの開発者の作品やゲームを分析するのではなく,自分自身が作ったゲームに焦点を当てるべきだ。また,採用担当者がプレイできるものを見せることも重要で,それによりあなたのスキルセットを示せるだろう。

 ゲームプレイ動画,スクリーンショット,制作中の写真など,視覚に訴えるポートフォリオにしよう。また,文書化能力のアピールも欠かせない。このスキルセットにおける理想は,詳しさと簡潔さのバランスだ。

 最後に,各プロジェクトにおけるチームの規模を読者に知らせ,その中での自分の役割を明記する必要がある。

 「あなたの担当部分にしか興味がありません」とDriver氏は語った。

プログラマーへのアドバイス


 プログラマーにとって,ポートフォリオは絶対に欠かせないものだ。Githubにサンプルコードを送るだけでは不十分で,ゲーム開発に関連する事例を視覚的に強調したものを用意する必要がある。

 プログラマーの理想は,完成したゲームをダウンロードしてプレイできることだ。

 「それがポートフォリオにおいて,本当に最も望ましいことなんです」とDriver氏は説明する。「私が遊んだり,操作したりできるものを見せてください」

 また通しプレイの動画や,画像・GIFなどもポートフォリオに埋め込んでおくと,あなたのスキルセットをイメージしやすくなる。採用担当者は,使用した言語,エンジン,ツール,完成までにかかった時間など,プロジェクトの詳細をすべて把握する必要がある。

 サンプルコードの提出が重要なスタジオもあれば,そうではないスタジオもある。あなたの能力を知るために,すぐコーディングの課題を出す開発者もいれば,コーディングテストは行わず,代わりに提供されたサンプルコードを重視する開発者もいる。安全策をとってコードを提出し,採用担当者があなたの実力を確かめたいと思ったときには,それを実現できるようにするのがベストだ。Driver氏は,これらのサンプルをGitHubにホストすることを勧める。

 「最高の見せ方はこうです。『こちらが私の作ったゲームです。スクリーンショットがいくつかあり,言語とゲームエンジンはこれで,コードを見たければハイパーリンクで確認できます』」と彼は説明した。

 「これがプログラミングのポートフォリオを紹介する最良の方法です。常にポートフォリオのビジュアル面を意識しましょう」


優れたコミュニケーションと面接のスキルを持つ


 あなたのスキル,経験,ノウハウは採用担当者や企業を魅了し,面接に招かれる可能性が高くなった。

 この時点では,あなたが他人とコミュニケーションをとり,うまくやっていけると示すことが重要だ。

 「これはチームに溶け込めることを示すものです」とDriver氏は語った。

 「それは,あなたが人と話すことができ,人と一緒に働けることを示しています。ゲーム開発はチームスポーツです。スタジオでの仕事は,完全に1人でやるわけではありません。ほかの人と一緒に仕事をするんです」


パッケージ全体を揃える


 ポジションを手に入れるためには,前述したすべてのことを備えている必要がある。Driver氏は,このプロセスにおける個々の要素や側面だけで,就職が保証されることはないと強調した。

 素晴らしいポートフォリオを持っていても,履歴書や面接のスキルが足りなければ採用されることはない。コミュニケーション能力が高くても,ポートフォリオや履歴書がイマイチなら,面接の段階に進めない。

 「すべての要素の組み合わせなんです」とDriver氏は語った。「ある要素がほかの要素よりも重要だとは思わないでください。人々は自分自身の説明という大きなものを省きます。それを重要だと感じていなくても,それは非常に重要なんです。面接をうまく進めるのに役立ちますし,何かを話すきっかけになります」

 「あなたが面接を受けるたびに,面接官はあなたの履歴書を見るでしょう。そして世間話のきっかけになります。また,あなたが実在の人物であり,チーム内に溶け込めることも示します。それが重要なんです」

【ACADEMY】初めてゲーム開発職に応募する際に知っておくべきこと


仕事の漏斗


 雇用プロセスがどのようなものなのかを強調するために,Driver氏は彼が「jobs funnel(仕事の漏斗)」と呼ぶものを紹介した。

 「最初は応募者がいます」と彼は言う。「昨年,私たちはジュニアゲームデザイナーを何人か採用しました。4人採用する必要がありましたが,求人広告には1万8000人もの応募がありました。それは珍しいことではなく,私たちはただの小さなスタジオです」

 そのため採用担当者は,応募者の長いリストを管理しやすくなるまで減らす方法を見つける必要がある。

「本当の人間になり,分かりやすいコミュニケーションをとることが,面接を採用に結びつける方法です」

 「私が尋ねているのは,このリストの中で誰が重要かということです」とDriver氏は語った。「ポートフォリオを持っていない人や,ゲーム開発とは関係のないポートフォリオを持っている人は除外されます。この段階で,そのような人たちはすべて除外されます。この仕事にふさわしいと示すものを何も見せられていません」

 「それを乗り越えたあと,私が探しているのは技術的にその仕事をこなせる人材です。面接に至るまでに,技術的な観点で,適切なツールの近い方,適切なソフトウェアの使い方,そして仕事の内容を知っていることを示すのです。技術的には,今すぐあなたに仕事を与えても,あなたはそれをこなせると」

 採用プロセスの最終段階は,その仕事を技術的にこなせる人材のうち,誰を採用するのが適切かを見極めることだ。

 「最終的な質問は,誰が最も適しているかということです」とDriver氏は言う。「面接の段階で5〜7人いて,1人しか枠がない場合……全員が技術的にその仕事をこなせますし,ジュニアロールで似たような経験をしています。そこで私たちが注目するのは,チームに最もフィットするのは誰かということです。そのため本当の人間になり,コミュニケーションをとれるようになることが重要なんです」

 「それは,面接をいかにして採用に結びつけるかということです」

※この記事は,特集企画「Get into Games」の一部です。そのほかの講演やパネルディスカッションはこちら,求職者に最適なACADEMYガイドの選りすぐりはこちら(いずれも英文)。

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