Xbox,Starfieldの「彗星のようなローンチ」について語る

Game Passを超えたエコシステムの魅力としてのStarfield,インディーズがサブスクリプション サービスをどのように維持しているか,そしてABK(Activision Blizzard King)が Microsoftに何を教えられるかについて,CMOのJerret West氏が語る。

Xbox,Starfieldの「彗星のようなローンチ」について語る

 Xbox は先週,Gamescomに全力で参加していた。その意図は最初から明らかだった。Microsoftは声明を出したかったのだ。

 Gamecomのオープニングナイトライブでの公表を受け,このプラットフォームホルダーはイベントでこれまでで最大のブースを構え,500人がかりで2週間かけて建てた5万平方フィートのブースには30種類ものプレイアブルなゲームが展示されていた。そして,その初日には,Xboxの責任者であるPhil Spencer氏とBethesdaのディレクターであるTodd Howard氏という予期せぬコンビが現れて,300人収容の劇場で待望のStarfieldが上映されたのだ。

元ソニーの重役Mena Sato Kato(加藤芽奈)氏,Xboxに入社
 StarfieldはXbox独占として提供されるという独特の立場 (そして大きなプレッシャーのもと) にあり,これは Microsoftにとって極めて重要な瞬間のように感じられる。ゲームの発売から数日が経過して,業界全体に不安が広がっているように感じられたのだ。

 「私が見ている限り,Starfieldのゲームローンチは彗星のようなのものです」と Xboxの最高マーケティング責任者のJerret West氏GamesIndustry.biz に語ってくれた。 「つまり,Starfieldのようなゲームは数年に一度しか登場せず,ゲーム業界だけでなく,より幅広い消費者や消費者との会話にまで広がり始めているという意味です」

 「我々は今回に向けての盛り上げについて念入りに計画を立ててきましたので,(6月のXbox)ショーケースが大きな瞬間であることは分かっていました。9200万人の視聴者をStarfield Directやそれらすべての作品に誘導したことは我々にとって非常に大きなことだったのです。 そして今から,我々がそれをさらに広範囲に実際に爆発させていく様子が見られることになるでしょう」

 West氏は,これはXboxにとって重要な瞬間であるだけでなく,「ゲーマーを感情的に捕えて,コミュニティに引き込む」瞬間でもあると語る。

 Xboxがより多くの人々をコミュニティに引き込むために考えている方策の1つは,Bethesdaによる待望のスペースオペラをGame Passで発売と同時公開することだ。West氏は,Game Passと従来どおりの購入との両方でプレイヤーが「適切に組み合わせられる」ことを期待するという「二重の目的」について話している。しかし,少なくとも目標の一部は Game Passの数を増やすことであることは明らかだと感じられる。

Phil Spencer氏:Xboxの成功にはモバイルが必要だ ― Starfieldのストリーミングも含まれる
 「(Starfieldは)確かに Game Passのサブスクリプションを促進してくれるでしょうし,(そして)基盤となるゲーム売り上げも確実に促進してくれることでしょう。なぜなら,それは実際には買い方の好みの問題でしかないからです」と West氏は語る。 「しかし,Game Passで発売と同時にゲームを提供するのが素晴らしいことであるのは疑いの余地がありません。人々にサブスクリプションモデルがどのようなものであるかを実際に体験してもらえれば,カタログ内に並んでいるたくさんの素晴らしいゲームも発見してもらえることでしょう」

 このような待望のプロジェクトをサブスクリプション サービスで開始することは,一世代前には誰も予想できなかったことだが,これはXboxの最近の戦略に忠実なものだ。しかし,StarfieldのようなゲームをGame Pass製品としてどのように販売するのだろうか。また,それが目的である場合,それを家庭用ゲーム機Xboxとどのように結び付けるのだろうか? 

 「私の考えでは,Starfieldは……多くのチャンスを伴っており,エコシステムを牽引するものです」とWest氏は答える。「我々は,StarfieldラップやStarfieldコントローラなど,この2つを結び付けるGame Passの創造的な手法を用意しています。これはすべて,ゲーマーのいる場所と融合させるためであり,ゲーマーを私たちが有益だと考えるモデルに強制するためではありません。PCの話もありますが,実際には,もう一度ズームアウトしてみると,これはStarfieldのようなものを牽引するエコシステムに関するものであり,そのゲームに参加したい場所をユーザーが選択できるようにするためのものなのです」

 同様の戦略は,Xboxの最後の主要なファーストパーティ タイトルであるRedfallでも試みられていた。しかし,Arkaneのゲームでは期待どおりにはいかなかった。 それがStarfieldにどれほどのプレッシャーを与えるのか,West氏に尋ねてみた。

 「ファーストパーティとして,我々がどこに到達したいのかというと,1つのゲームがそれほど大きなウェイトと期待を持っているとは感じられないような流れにしたいのです。Starfieldを見ると,Redfallがそれに過剰なプレッシャーをかけたとは必ずしも思えません。Starfieldはエコシステムの牽引役であるという事実から,Starfield自体にプレッシャーをかけたのだと思います。Bethesdaが新しいIPのRPGを作るのは20年に一度です。したがって,そのあたりで自然に注目が集まりました」

 「マーケティング面で何ができたかというと,Starfieldとは何か,Starfieldではないものは何かについて,非常に計画的かつ正確に,コミュニティに対して非常に正直でオープンにならなければならないということについて,我々の考え方を研ぎ澄ましました。そのようにしましたが,それがRedfallと結びついたかどうかはよく分かりません」

XboxのGamescomブースはケルンメッセの巨大なホール8の半分を占めていた
Xbox,Starfieldの「彗星のようなローンチ」について語る

 氏は続けて,「Starfield のようなものをローンチして,それがXboxに関連付けられている場合,人々は実際にそのレンズを通してそれを見ています」と述べ,それには「大きな利点」もあると付け加え,Bethesdaに提供される技術サポートについて語った。「しかし,この種のタイトルに対する期待と監視は確実に高まっています。したがって,我々はこれらの作品については注意深く計画を立てていました」

 しかし,RedfallはXboxのファーストパーティビジネスが抱えていた問題の1つにすぎなかった。 他のプラットフォームホルダーと比較して,近年のリリース予定はとくに薄くなっており,実現へのプレッシャーが生じている。

私の考えでは,これは,今後数年にわたるファーストパーティのタイトルのリレーレースでの,スタートの号砲代わりのようなものになります

 同氏は,10月に発売予定のForza,2024年のHellblade,最近発表されたStoicのTowerbone,そして将来的に発売されるObsidianのAvowedについても言及している。

 「そして,我々にはまだ語られていないストーリーがあり,それが24年と25年にも展開されることになるでしょう。これはまさに,次の数年にわたって行われるこのリレーレースでのスタートの号砲のように感じられます」

 Xboxが持つ「Game Passとサードパーティの関係をさらに強化する」場合,この瞬間はとくに重要に感じられると氏は語る。 同氏は,2024年3月発売予定のGSC Game WorldのSTALKER 2だけでなく,Oxide GamesのAra: History Untold,Curve DigitalからパブリッシングされたMicrobirdのDungeons of Hinterberg,そしてDon't NodのJusantについても言及している。

Starfieldを見ると,RedfallがStarfieldに過度のプレッシャーをかけたとは必ずしも思えません。Starfieldは自分自身にプレッシャーをかけのだと思います

 「我々のサードパーティによるサポートは,Game Pass に組み込まれることが多いのですが,我々のプラットフォーム上でのみ提供されるものでもあり,非常に重要です。したがって,これは,今後数年間は本当に特別なものにする何かが始まる時期に入りつつあると思っています」

 Xboxは近年,Tango GameworksのHi-Fi RushやObsidianの Pentimentなど,より短く,より実験的なタイトルを自社の主要スタジオで制作している。 West氏は,プラットフォームホルダーはこれらのタイトルについて2つの見方をしていると語る。1つは,クリエイターが「作りたかったゲームのビジョンを実現する」ことができるようにしたいという願望だ。

 「もう1つの部分は,プラットフォームが何を表すべきかにおいて非常に重要な役割を果たすということです」と氏は続ける。「我々は,本当に確立された大規模IPのバージョン15,16,17と構築していくだけのようなビジネスには携わりたくないのです。それらも非常に重要ではあるのですが,同時に多様性を注入したいと考えています。新しいIPをどのように導入するか,新しいコミュニティをどのように表現するか……(それは)常に同じ正確なパターンやイメージとは限らないものを開発および構築することによってなしうるのだと話しました。その領域に拡張し,多様性と実験と発見を提供する機会を与えてくれます。 我々はプラットフォームとして,それらのものを表現できることを望んでいます」

 そこでもID@Xboxが活躍するのだとWest氏は付け加え,現在 EMEA 地域ではこのプログラムを通じて1500本のゲームが開発されていると語る。

 「さて,Game Passの話になりますが,StarfieldがGame Passのようなものにとって非常に重要であることは疑いの余地がありません。新しい消費者を惹きつけるからです」と,Xboxに入社する前はテレビサブスクリプション大手の Netflixで7年間勤務していたWest氏は語る。「しかし,実際にサブスクリプションビジネスを維持できるのは,消費者を惹きつけ,さらにエンゲージメントを高めることによってです。そして,この種のゲーム,Vampire Survivors,Dungeons of Hinterberg,Jusant,Pentiment,これらは人々がプレイし,喜びを見つけ,そして発見するゲームなのです」 「彼らは,60ドルや70ドルといったお金を支払いたくなくてサブスクリプションモデルに参加しているのです。したがって,これは,新しいタイプのIPの発見において重要な役割を果たしますが,サブスクリプションのエンゲージメントを促進するうえでも重要な役割を果たします」

(※8月31日時点で)明日のゲームの早期アクセスと9月6日のリリースに先立って,Starfieldのレビューが本日公開される
Xbox,Starfieldの「彗星のようなローンチ」について語る

 ただし現時点では,市場は大規模なAAAタイトルを支持しているようで,小規模なタイトルが成功する余地が少ないという印象がある。

 「大手のAAAは開発に時間がかかっており,(これらのタイトルの)開発に(必要な)人数の点ではるかに多くの時間がかかっています。そのため,ある意味,賭け金は高くなりますが,期待や興奮のレベルはより高くなります」 インディーズゲーム,そのインディーズスペースから生まれ,構築されているゲームには,世界中のSTALKERが超特別なものに成長するための大きな余地がまだあるのです」

 「これは,サブスクリプションとストアでの購入が収束することについて私が非常に強気である理由となっています。なぜなら,あなたが見ているのは,Game Passのようなもののためにゲームを作るインディーズデベロッパを中心とした経済であり,彼らが真の牽引力を獲得すれば,彼ら自身を維持することもでき,次の大きなゲームを構築して段階的に成長することもできるからです」

 「経済は相互に連携して成長していると私は見ていますが,先ほども言ったように,それにはいくつかの緊張もあります。AAAゲームのプレイには時間がかかり,より多くの人々が参加するため,ある意味,AAAのプレイの賭け金はより高くなります。しかし,注目度は実際にはさらに増幅されています。そして,独立したデベロッパは,発見されるための創造的な方法を見つけなければなりません。個人的には,サブスクリプションはそれを提供する非常に優れた方法だと思っています。ですから,誰もが自分の道を見つけようとしています。それは非常に活気のある経済であり,たとえば,音楽や映画,テレビよりもはるかに活気に満ちたエコシステムだと思っています。ゲームを開発するのには素晴らしい場所だが,どのようにして認知度を高めるかについての戦略を立てる必要があります」

 我々の時間が終わりに近づいている今,あえて避けていたこと,つまりMicrosoftによるActivision Blizzardの買収提案について触れないのはもったいないと感じる。 この保留中の買収において,モバイルは明らかに大きな側面を持っているが,ビジネスを強化するためにABKがXboxに教えられることが他にあるかどうかをWest氏に尋ねてみた。

Xbox CMO Jerret West氏
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 「2つの部分に分けて答えましょう。つまり,ビジネスの大まかな流れについては,あなたのおっしゃるとおりだと思います。彼らは,我々にとって非常に魅力的だったモバイル分野でのニーズのギャップを埋めてくれて,その分野で真の能力を持っています。また,地理的なオーバーレイについて考えると,世界のさまざまな地域にさまざまなスキルや経験がもたらされますので,これも非常に魅力的です」

 「コインを引っ繰り返せば,私はマーケティングの帽子をかぶることになりますが,彼らは自分たちのIPに命を吹き込むという点で創造的に素晴らしいことをやっており,Call of Dutyのようなさまざまな場所で物事をリフレッシュしていると思います。Diabloの仕事は共同制作でした。我々はXboxでマーケティング関係を築いているので,Diabloでもブリザードと非常に緊密に連携する機会を得ており,Overwatchでも同様に共同マーケティング関係にあります。 こういったクリエイティブなことを通して,特定のタイトルのマーケティングについて彼らがどのように考えているのかを知るのは素晴らしいことでした。ですから,その部分がとても楽しみなのです」

 「そして最後の部分は,モバイルでのパフォーマンスに関するマーケティング面で非常に優れているということです。これらがどのように機能するかについては,マーケターにとっては異なる動きになります。つまり,マーケティングの観点から見ると,これらは それについては,Activision Blizzard Kingから学ぶのが楽しみなのです」

 展示会場に視線を戻すと,West氏はXboxがGamescomで大々的に出展した理由を振り返り,それが「昔のGamescomや昔のE3の時代への逆戻り」であると語った。

 「我々はここで大きな存在感を示したかったのです。なぜなら,この2週間の間に2つのことが起こっていたからです。Gamescomには「復帰」の感情と興奮があります。そして,Starfieldを巡る感情とその高まりがあります。今週後半にはレビューが到着し始めるのを目にすることになるでしょう。9月1日には人々がプレイできるようになるでshう。つまり,これら2つのことは,2つの海の波が収束して1つの大きな波を形成するようなもので,その両方について同時に鼓動が高まることを期待していたのです」と氏は締めくくった。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら