NFTをもらえるガチャに注目。「第4回 ブロックチェーン EXPO【春】」の気になる展示を紹介
2023年5月10日から12日にかけて,「ブロックチェーン」「AI・人工知能」「量子コンピューティング」「デジタル人材育成支援」をそれぞれテーマとする,4つの展示会で構成されたイベント「NexTech Week2023【春】」が東京ビッグサイトで開催されている。
本稿では,5月10日の取材内容をもとにして,「第4回 ブロックチェーン EXPO【春】」と「第7回 AI・人工知能 EXPO【春】」の出展ブースの中から,ゲームと関連が深いものを紹介する。
NexTech Weekはさまざまな業界に向けた最新テクノロジーのイベントなので,ゲーム業界に関連するものはごく一部となるのだが,最もゲーム色が強かったのはブロックチェーン EXPOのHashPaletteブースだ。
2023年内にリリースが予定されているブロックチェーンゲーム「THE LAND 〜エルフの森〜」のビジュアルが存在感を放っていた。
これは新作ではなく,前澤友作氏が設立したゲームギルド「MZ CLUB」が公式ギルドを務めることで話題となった「エルフマスターズ」が,大型アップデートを機に名称を変更する予定なのだという。
パネルに貼り付けられているのは,ゲーム内で「コラボランド」を作成可能な「LAND Partner」に認定されているクリエイターの情報だ。
HashPaletteは,ゲームだけではなく,自社のブロックチェーン「パレットチェーン」やウォレット「PLTウォレット」も開発していて,今回はパレットチェーン上で展開される「NFTガチャ」を引くことができた。
カプセルの中にはQRコードが入っていて,それをスマートフォンのカメラで読み取ると,LAND Partnerが描かれたNFTアートをその場でもらえる仕組みだ。
事前にウォレットを準備していない人でも,「ブラウザウォレット」という技術のおかげでNFTを受け取れるのだが,キャッシュを削除するとNFTが消えてしまうため,結局はどこかのタイミングでウォレットを作成することになりそうだ。
ウォレットの作成は,セキュリティの観点からシードフレーズという12〜24個の英単語を記録する面倒な作業が求められ,NFT関連のコンテンツに手を出す際の高いハードルとなっている。
この技術は,その困難を完全に解決するものではないが,新規ユーザーにイベント会場でNFTをプレゼントして,家に帰ってから落ち着いてウォレットを作成してもらうという形で,参入障壁を低減しそうだ。
また,ここまでウォレットというワードを使ってきてしまったが,HashPaletteの担当者は“ウォレット”と“ウォレットアドレス”を厳密に区別して説明してくれた。
ウォレットは,ウォレットアドレスにあるNFTを閲覧するためのアプリケーションを指すとのことなので,おそらく筆者がこれまでウォレットだと思って作成していたものはウォレットアドレスなのだろう。
しかし,ウォレットアドレスでは長すぎるし,アドレスと略した場合もコントラクトアドレスと混同してしまう。(特に対面で)ブロックチェーンの話をする際は,言葉の問題が避けられないかもしれない。
同じくブロックチェーン EXPOに出展していたのが,SUSHI TOP MARKETINGだ。ユニークな社名は,寿司屋「銀座渡利」のNFT「SUSHI TOP SHOT」を作ったメンバーを中心に創業したからだという。
こちらのブースでも,「NFTスマートガシャポン」が押し出されていたため,ブロックチェーン業界は空前のガチャブームなのかと思ったが,HashPaletteのブースで引いたNFTガチャの技術を提供しているのがSUSHI TOP MARKETINGとのことだ。
NFTガチャには,「NFT Shot」というブラウザウォレットを使用して簡単にNFTを受け取れるサービスと,「One Shot」というNFT配布用のリンクを1度しか使用できないようにするサービスが併用されている。これらは,パレットチェーン以外にも,Ethereum,Polygon,Oasys,Astar,Shidenに対応している。
SUSHI TOP MARKETINGはこのほかにも,NFTの保有者限定でコンテンツを提供するサービスや,「Audio Shot」という音でNFTを配布するサービスを展開中だ。
江戸の街並みを忠実に再現する「Edoverse(江戸バース)」も,「第3回 ブロックチェーンEXPO【秋】」(関連記事)に引き続き出展していた。徳川宗家第19代当主の徳川家広氏が最高顧問を務めるメタバースプロジェクトだ。
まだ,ゲーム内の土地を段階的に販売しているところで,土地の所有者のみがアクセスできるα版とのことだが,2023年末に一般ユーザーへの公開が予定されている。
1つの土地は15坪なので,大きな家を建てたい人はまとめて購入することになり,建設に必要な区画の土地をどうしても売ってくれない人とのトラブルが発生するかもしれないというのは,現実のようで面白かった。
Edoverseは,美術品オークション事業で知られるSHINWA WISE HOLDINGSの完全子会社であるEdoverse株式会社のコンサルティングによって,Edoverse Foundationが開発中のプロジェクトなので,もともとはNFTアートの文脈からスタートしている。
しかし,美術館のような鑑賞型のゲームになるのかと思いきや,意外にもPlay to Earnを重視する路線で,ガバナンストークンの「Koban(小判)」,ユーティリティトークンの「Zeni(銭)」を採用したGameFiタイトルとなるようだ。
ゲーム部分の詳細は明かされなかったが,対戦のような要素も積極的に検討しているという話だったので,ブロックチェーンゲーマーにとっても注目すべきタイトルといえる。
AI・人工知能 EXPOは,ChatGPTを業務に導入するサポートをしてくれるサービスや,AIを搭載したセンサー類の展示が多く,ゲームに関連するものは少なかったが,その中から2つのブースを紹介しよう。
1つ目は,中国・深センを拠点とするテック企業のCubyFunが展開する「JOYO」というボードゲームブランドだ。
UFO型の装置をマップに置いてプレイするゲームとなっており,UFOの底面にあるカメラが特殊印刷されたマップを読み取って,そのマスで遭遇する敵や,獲得できるアイテムを判定してくれる。
マインスイーパのように,UFOを置いたマスの周囲にあるマスの情報も開示されるので,プレイヤーはそれを頼りに行動していくとのこと。
プレイするたびにマップが変わるローグライク要素が特徴だが,ゲーマーにとっては目新しいものではなく,子供向けのプロダクトという印象を受けた。“ボードゲームなのにローグライク”という点と,スマートフォンなどの外部機器を必要としない点を,どう評価するかだろう。
2つ目は,会場で唯一“ゲームAI”という表記を確認できたHEROZのブースだ。バンダイが2019年2月から2021年2月までサービスしていた,“パートナーAI”と共に戦うデジタルカードゲーム「ゼノンザード」のAI部分を担当した会社だ。
ほとんどのケースが,大手企業のプロダクトのAI部分を担当する形なので,表に出せる情報は以下のパネル写真で確認できるものがすべてとのことだったが,水面下ではいろいろとプロジェクトが進行しているようなので,今後のゲームAIの発展に期待したいところだ。
本稿では,5月10日の取材内容をもとにして,「第4回 ブロックチェーン EXPO【春】」と「第7回 AI・人工知能 EXPO【春】」の出展ブースの中から,ゲームと関連が深いものを紹介する。
HashPalette
NexTech Weekはさまざまな業界に向けた最新テクノロジーのイベントなので,ゲーム業界に関連するものはごく一部となるのだが,最もゲーム色が強かったのはブロックチェーン EXPOのHashPaletteブースだ。
2023年内にリリースが予定されているブロックチェーンゲーム「THE LAND 〜エルフの森〜」のビジュアルが存在感を放っていた。
これは新作ではなく,前澤友作氏が設立したゲームギルド「MZ CLUB」が公式ギルドを務めることで話題となった「エルフマスターズ」が,大型アップデートを機に名称を変更する予定なのだという。
パネルに貼り付けられているのは,ゲーム内で「コラボランド」を作成可能な「LAND Partner」に認定されているクリエイターの情報だ。
HashPaletteは,ゲームだけではなく,自社のブロックチェーン「パレットチェーン」やウォレット「PLTウォレット」も開発していて,今回はパレットチェーン上で展開される「NFTガチャ」を引くことができた。
カプセルの中にはQRコードが入っていて,それをスマートフォンのカメラで読み取ると,LAND Partnerが描かれたNFTアートをその場でもらえる仕組みだ。
事前にウォレットを準備していない人でも,「ブラウザウォレット」という技術のおかげでNFTを受け取れるのだが,キャッシュを削除するとNFTが消えてしまうため,結局はどこかのタイミングでウォレットを作成することになりそうだ。
ウォレットの作成は,セキュリティの観点からシードフレーズという12〜24個の英単語を記録する面倒な作業が求められ,NFT関連のコンテンツに手を出す際の高いハードルとなっている。
この技術は,その困難を完全に解決するものではないが,新規ユーザーにイベント会場でNFTをプレゼントして,家に帰ってから落ち着いてウォレットを作成してもらうという形で,参入障壁を低減しそうだ。
また,ここまでウォレットというワードを使ってきてしまったが,HashPaletteの担当者は“ウォレット”と“ウォレットアドレス”を厳密に区別して説明してくれた。
ウォレットは,ウォレットアドレスにあるNFTを閲覧するためのアプリケーションを指すとのことなので,おそらく筆者がこれまでウォレットだと思って作成していたものはウォレットアドレスなのだろう。
しかし,ウォレットアドレスでは長すぎるし,アドレスと略した場合もコントラクトアドレスと混同してしまう。(特に対面で)ブロックチェーンの話をする際は,言葉の問題が避けられないかもしれない。
SUSHI TOP MARKETING
同じくブロックチェーン EXPOに出展していたのが,SUSHI TOP MARKETINGだ。ユニークな社名は,寿司屋「銀座渡利」のNFT「SUSHI TOP SHOT」を作ったメンバーを中心に創業したからだという。
こちらのブースでも,「NFTスマートガシャポン」が押し出されていたため,ブロックチェーン業界は空前のガチャブームなのかと思ったが,HashPaletteのブースで引いたNFTガチャの技術を提供しているのがSUSHI TOP MARKETINGとのことだ。
NFTガチャには,「NFT Shot」というブラウザウォレットを使用して簡単にNFTを受け取れるサービスと,「One Shot」というNFT配布用のリンクを1度しか使用できないようにするサービスが併用されている。これらは,パレットチェーン以外にも,Ethereum,Polygon,Oasys,Astar,Shidenに対応している。
SUSHI TOP MARKETINGはこのほかにも,NFTの保有者限定でコンテンツを提供するサービスや,「Audio Shot」という音でNFTを配布するサービスを展開中だ。
Edoverse
江戸の街並みを忠実に再現する「Edoverse(江戸バース)」も,「第3回 ブロックチェーンEXPO【秋】」(関連記事)に引き続き出展していた。徳川宗家第19代当主の徳川家広氏が最高顧問を務めるメタバースプロジェクトだ。
まだ,ゲーム内の土地を段階的に販売しているところで,土地の所有者のみがアクセスできるα版とのことだが,2023年末に一般ユーザーへの公開が予定されている。
1つの土地は15坪なので,大きな家を建てたい人はまとめて購入することになり,建設に必要な区画の土地をどうしても売ってくれない人とのトラブルが発生するかもしれないというのは,現実のようで面白かった。
Edoverseは,美術品オークション事業で知られるSHINWA WISE HOLDINGSの完全子会社であるEdoverse株式会社のコンサルティングによって,Edoverse Foundationが開発中のプロジェクトなので,もともとはNFTアートの文脈からスタートしている。
しかし,美術館のような鑑賞型のゲームになるのかと思いきや,意外にもPlay to Earnを重視する路線で,ガバナンストークンの「Koban(小判)」,ユーティリティトークンの「Zeni(銭)」を採用したGameFiタイトルとなるようだ。
ゲーム部分の詳細は明かされなかったが,対戦のような要素も積極的に検討しているという話だったので,ブロックチェーンゲーマーにとっても注目すべきタイトルといえる。
CubyFun
AI・人工知能 EXPOは,ChatGPTを業務に導入するサポートをしてくれるサービスや,AIを搭載したセンサー類の展示が多く,ゲームに関連するものは少なかったが,その中から2つのブースを紹介しよう。
1つ目は,中国・深センを拠点とするテック企業のCubyFunが展開する「JOYO」というボードゲームブランドだ。
UFO型の装置をマップに置いてプレイするゲームとなっており,UFOの底面にあるカメラが特殊印刷されたマップを読み取って,そのマスで遭遇する敵や,獲得できるアイテムを判定してくれる。
マインスイーパのように,UFOを置いたマスの周囲にあるマスの情報も開示されるので,プレイヤーはそれを頼りに行動していくとのこと。
プレイするたびにマップが変わるローグライク要素が特徴だが,ゲーマーにとっては目新しいものではなく,子供向けのプロダクトという印象を受けた。“ボードゲームなのにローグライク”という点と,スマートフォンなどの外部機器を必要としない点を,どう評価するかだろう。
HEROZ
2つ目は,会場で唯一“ゲームAI”という表記を確認できたHEROZのブースだ。バンダイが2019年2月から2021年2月までサービスしていた,“パートナーAI”と共に戦うデジタルカードゲーム「ゼノンザード」のAI部分を担当した会社だ。
ほとんどのケースが,大手企業のプロダクトのAI部分を担当する形なので,表に出せる情報は以下のパネル写真で確認できるものがすべてとのことだったが,水面下ではいろいろとプロジェクトが進行しているようなので,今後のゲームAIの発展に期待したいところだ。