江戸の街並みのメタバースなど「XR総合展 秋」と「メタバース総合展」の気になる展示を紹介

 2022年10月26日,幕張メッセで「XR総合展 秋」「メタバース総合展」「Nextech Week 秋」が開催された。

 Nextech Weekは,「AI・人工知能 EXPO」「ブロックチェーンEXPO」「量子コンピューティングEXPO」「デジタル人材育成支援EXPO」といった展示会をまとめたイベントだ。


 XRについては,技術的に目新しいものは出尽くしたのか,業務用アプリケーションや関連サービスなどが中心で,ゲーム業界的にはいまひとつ面白みに欠ける内容だった。
 一頃はバズワード的な広がりを見せたメタバース関連の展示では,メタバースそのものに関するものは少なく(それメタバースですか? みたいなのはともかく),「Web3で表示できますよ」的なものや「簡単に構築できますよ」的なメタバース構築のためのツールや技術などの展示が中心だった。

Edoverse

 ここでは多くの人がイメージをするようなメタバースらしい展開をしていた例として「Edoverse(江戸バース)」を紹介するが,なぜかメタバース総合展ではなくブロックチェーンEXPOに出展されていた。このあたりはジャンルがクロスオーバーしているので,これらをまとめて開催するのは正解なのだろう。

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 さて,Edoverseは江戸の町を作り上げるメタバースだ。VRヘッドセットなどを使えば江戸のような街並みが再現されるのだという。
 メタバース内の土地を売るという,Second Life以来の伝統的なビジネスモデルに加えて,そこに入ったテナントが独自NFTによるビジネスを展開していくという建て付けだ。リアルビジネスとのリンクなども今後は検討したいとのことだった。 

 EdoverseのNFTは,イーサリアムベースのERC721という方式が使われており,Edoverse独自のマーケットで売買できるほか,一般的なNFTマーケットでやり取りすることもできる。仮にEdoverseのサービスが終了したとしてもNFT自体は有効であり,価値が毀損することはあっても無価値にはならない。
 また,ビットマップデータや3Dデータなどをブロックチェーン上に直接保存する形式なのだという。容量制限については確認できなかった。とにかく外部サーバーのURLだけ保存するような紛い物ではないらしい。

サービス開始は2023年の予定だが,メタバース内の土地は年内に販売が開始される模様だ
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 ちょっと込み入ったところで,NFT売却時の税金はどうなるのかなどについても聞いてみたが,仮想通貨(暗号資産)とだいたい同じと考えているようだ。仮想通貨ではリアルマネーに変える前の段階で利益分に課税されるルールなので,おそらくNFTの(仮想通貨での)売却でも,その取引が完了した時点で課税対象になるものと思われる。

 Edoverseはどういったユーザーをターゲットにしてるのかだが,日本はもちろんとして海外での展開を強く意識しているようだ。NINJAやSAMURAIが好きな海外ファン層に向けて展開したいとのこと。実際,海外での反響が大きいのだという。

 さて,以上のように,ある意味典型的なメタバースのビジネスモデルが展開される予定なのだが,このような形式のメタバースが成功するか否かは,結局のところメタバース内でNFTが売れるかどうかにかかっているだろう。

 販売されるNFTに価値を見出せるかどうかは人それぞれだ。Edoverseにいるアバターが持つ刀などにお金を払う人はいるだろう。アバターアイテム,コスチュームアイテムがオンラインゲームで有力な商品となりうることは事実であり,限定アイテムなどがRMTで取引される対象になるというのもおそらく事実だ。
 ただ,こういったビジネスが成立するのは,ゲームなり,そのワールドが魅力的であることが大前提になる。数多あるメタバースが懐疑的に見られている理由に,魅力的なワールドを構成できるのかという不信感があることも否めないだろう。

 短期的なイベントであれば,テーマに沿ったコンテンツと出展があればそれなりに形にはなるだろうが,長期的な展開は難しい。1周回ったらそれでお終い。ディズニー並みに何度でも楽しめるコンテンツを揃えることができたとしても,多くの人にとっては,ディズニーランドも毎日行くようなところではない。

 理論上,うまくいけば大きな成功も期待できる分野であることは多くの人が認めている。ただ,これは普通のゲームやあらゆるサービスでもだいたい同じことであり,大成功させることは簡単でないだろうというのも分かる。
 今後,同様なビジネスモデルのメタバースが登場してくるものと思われる。コミュニティを主としたMetaのHorizon HomeとNFTに依存したこれらのメタバースがどのような展開を行い,どのような評価になるのか注目したいところだ。


Voidol2


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 とくに新製品というわけではないようだが,Viodol2は,深層学習を利用したボイスチェンジャーだ。ユーザーの声を学習しておくと,登録されている声優の声に変換してしゃべることができるというアプリである。Windows版とMac版が用意されている。
 現在30種類ほどのボイスが登録されていたが,それぞれのボイスでいくつかのサブメニューもあったので,ピッチを変えるなどでもっと多くの声に変換することができるのだろう。
 このソフトを十全に使うには,声優の声とユーザーの声を学習しておく必要がある。データの録音時間は,声優で1時間半,ユーザーで3時間くらいかかるとのことだ。そのデータをもとに学習して利用するわけだ。

 AIを使った変換以外に,シンセサイザーモードが搭載されており,そちらはピッチやフォルマントをいじって声質を変えるものとなっている。
 
 肝心の音質はややノイジーでやはりボイスチェンジャーぽさは残る。それでもこの技術の延長線上には大きな可能性が広がっていることは分かるできだ。公開されている動画だとノイズは目立たないのでエフェクタをたっぷり使えばある程度は消せるものなのかもしれない。

 なお,このソフトの体験版なども公開されているが,原稿執筆時では動作確認もほぼできないものだった。販促用だとしたら逆効果でしかないと思うので改善してもらいたい。



PFN 4D Scan


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 Preffered Networkが出展していたPFN 4D Scanは,少数のカメラ映像から全周で撮影したかのような画像をAIで生成し,360度視点を滑らかに切り替えながら映像の再生が可能になるソリューションだ。グリーンバックやブルーバックなども不要で,1人で運べる程度の機材で対応できるという。展示されていた写真だとスタンド8基にカメラ2個ずつといったところだろうか。

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 最近のスポーツ中継ではたくさんのカメラを備えたスタジアムで視点をぐるぐる回す演出も多く見かけるようになってきたが,そういったものが特別な施設でなくても実現できるようになるのだ。

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絵本と連動したAR型の学習コンテンツ。タブレットに見下ろし型のカメラを装着する
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アスクが展示していたPico4。パンケーキレンズを採用した中国製のスタンドアロンVRヘッドセットだ
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バーチャルライブのデモ。ライティングやカメラが操作できそうに書いてあるのだが,デモは会場でケミカルライトを振り回すだけのようだった
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音に触れるというユニシスのデモ。しゃべった言葉が音声認識でテキスト化され,ポリゴン文字列としてAR空間に表示されて,それに触ることができるというものだった
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DiDiMは,超短距離プロジェクタで床面に映像を表示し,床面近くに設置されたセンサで足の位置を知ることで簡易的なゲームなどができるデバイスだ
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フォントワークスではARで使いやすいフォントのほか,AIで使用場面に合うフォントをお勧めしてくれる機能などが紹介されていた
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