「3D&バーチャルリアリティ展」で空中立体結像装置や視線探査メガネの可能性を探る
3Dプリンタの動向もしばらく追っていなかったのだが,近頃は金属は当たり前で,タービンブレードやエキゾーストチャンバーなどの1点モノでの用例など,かなり具体的に活用されている事例が示されていた。
いつのまにやら(筆者が知らなかっただけだが),最近の3Dプリンタではカーボンファイバーも出力できるようになっている。おお,アラミド繊維もグラフファイバーもいけますか。なにをどうすればそんなことができるのかと見てみると,プリンタにはカーボン繊維とプラスチックフィラメントの2つのリールがあり,プラスチックを塗った上にカーボン線をぐるぐると押し付けていくという仕様だった。敷き終わったらカッターで切って,間をプラで埋めていく。つまり,本当にカーボンファイバーだった。
これにより,出来上がったモノの強度はアルミに迫るとのことで,非常に夢のある製品であるように思われた。工作例の断面図を見せてもらうと,外側5mmくらいをカーボンで仕上げてあり,内側はプラだけの格子リブ仕上げになっていた。使い分けもできるわけだ。
余談は置いておいて,3D&バーチャルリアリティ展の展示だが,大方の予想どおり,非常に少なかった。VRコンテンツ制作やVR/XRでの業務訓練などが大半であり,正直ちょっと困った状況だ。そんな中で注目のブースを3つ紹介したい。
空中立体結像装置
名前だけでだいたい分かるものの,写真ではなんなのか分かりにくいとは思うが,これは特殊なディスプレイから投影された映像を空中に投影する表示デバイスである。裸眼立体視に自信のある人は,VR180のサイドバイサイド画像を掲載しておくので試してみてほしい。VRデバイスをお持ちの方は,YouTubeにVR180映像をアップしてあるので,YouTube VRで確認してみよう。
空間投影には同社がアスカネットが開発しているというハーフミラーぽい特殊なパネルが使用されている。
アスカネットのAIプレートに関しては姉妹サイトである4Gamer.netに小西氏の書いた取材記事があるので,参考にしていただきたい。ちなみに,この技術が当時いくつかの展示会に出展されていたのに小西氏の記事しかない(私の記事がない)のは,同技術のことをよく理解していなかったからだ。「浮き上がって見える」というウリだったのだが,当時はあまりそう見えなかった。この手のモノでは単純なハーフミラーを使った空中映像表示もあるのだが(これはこれで侮れない),ハーフミラーではミラーの奥側に結像するものをAIプレートは手前側に結像させることができる。今回のモノはちゃんと浮き上がって見えた。話を聞いても初期のものとは全然別モノレベルで改善が行われているとのことだった。
今回の展示では,多視点に対応しており,正真正銘立体映像の空間投影が行われていた。視野角は40度と狭かったのであまり奥行きを感じることはできなかったのだが,それでも左右に位置を変えると,映像の見える角度も変わっていく。最大120度まで視野角を広げることも可能だという。
現在,等身大表示を目指しているとのことだが,16K相当のディスプレイが必要とのことで1億円くらいかかるというか,そんなプロジェクタはまだ存在しないわけで,なかなか難しそうではあった。操作者の手の動きを検出したり,超音波触覚デバイスを組み合わせることも検討されているという。
単純に大きくすると凄く高価になるという難点はあるが,等身大までいかなくても複数人が裸眼で見える立体映像,さらにインタラクティブにもできるとなれば,その可能性は計り知れない。
バーチャルな歌姫のリアルコンサートなどで使えるかなと考えたが,さすがに大会場では視差数が足りないので立体表示までは無理だろう。しかし,遠い席だったら細部の立体感とかを両眼の視差で感じることは元々無理なのだと考えれば,少ない視差数でも案外問題ない気もしてくる。夢は広がる。
Mreal S1
MRなので,実際の風景の中にCGを合成し,さまざまな処理が行える。自動車のデザインを実寸大で目の前に表示し,ボディ色を変更して確認するといったことも簡単にできる。それを複数人で同時にというのも可能だ。何気に手持ち式というのが,位置合わせなどの手間がほぼなくて気軽かつ快適だった。
ただよく考えてみると,それはシースルー方式ではそうやるしかないものの,フルデジタル方式であれば風景ごとZバッファに入れてCGをレンダリングするなどしたほうが単純で応用が利くような気もする。Mrealシリーズのエントリーモデルということで,処理内容自体は,シースルー式に合わせてということなのだろう。
映像とのインタラクトは,指先などを該当部に当てて,ヘッドセット側にある物理ボタンを押すことで行われていた。このあたりはソフトの作り方にもよるのだろうが。
Tobiiの視線探査メガネ
さて,同社のグラス2などの製品を知っている人は,レンズ面に引かれた短い線に驚くかもしれない。
まず,下側にある左右に2つずつある少し大きめの点は,実はカメラなのだという。2つずつのカメラを使って瞳の動きを検出している。それ以外の短い線の先端には赤外線LEDが搭載されている。これを目に照射して,その反射を先ほどのカメラで拾うわけだ。超小型なので驚いてしまうが,レンズを小さくしてフレームに収めるような仕上げよりも広い視界を選択したのだろう。全体の見た目は,ほぼ普通の眼鏡である(レンズの線さえ除けば)。
映像とデータはケーブルで接続された記録デバイスに送られ,そこからさらにWi-Fiで飛ばしてリアルタイムモニタリングにも対応している。