【ACADEMY】AAAからインディーズに移行する際の注意点
最近は毎週のように,元AAAデベロッパが自分のスタジオを立ち上げたというニュースが流れているように感じる。
この半年だけを見ても,6月には元Call of DutyチームのDeviation Games(関連英文記事),7月にはNaughty DogとInfinity Warの出身者によるThat's No Moon(関連英文記事),8月には元Typhoon StudiosのスタッフがRaccoon Logicを(関連英文記事),9月にはBrendan Greene氏がPlayerUnknown Productionsを立ち上げ(関連英文記事),10月にはArenaNetとUbisoftのベテランがPossibility Spaceを立ち上げている(関連英文記事)。
そして,8月にはRaccoon Logicだけではなく,モントリオールを拠点とするAAA級の経歴を持つスタジオが新たに設立されていた。Monster Closetは,Ubisoftで何十年もの経験を積んだ出身者によって設立された会社だ。
GamesIndustry.bizでは,当時のCEOであるGraeme Jennings氏にインタビューを行い,チームのインディーズ化への意欲や,一般的なAAAでの頭脳流出について話を聞いている(関連英文記事)。
しかし,このような傾向があるにもかかわらず,AAAスタジオの快適さと利益を捨てて単独で活動することは,簡単な道ではない。GamesIndustry.biz ACADEMYでは,Jennings氏がこの点について詳しく説明し,これから冒険に出ようとする経験豊富なデベロッパにアドバイスをしてくれた。
今の状況では,魔法のパラシュートはありません。誰も窮地を救ってはくれないのです -Graeme Jennings氏
「我々は長い間,大規模なプロジェクトを遂行していましたが,それは常に,福利厚生,ヘルスケア,給与計算,休暇の計画方法などといった,基本的なことにまで構造を提供してくれる組織の中で行われていたものでした」と氏は語る。「しかし,突然,それらの仕組みがなくなり,ITポリシーの基本的な仕組みもなくなってしまったのです。そのため,小規模なグループを除いて誰も所有していないような,追加的な作業が必要になってきます。これが大きな違いです」「AAAでこのモントリオールにあるもう1つのスタジオのようなモンスタースタジオの人(※Ubisoft以外にも多すぎて特定しにくいがEA Montrealか)は,困ったときにはリソースを得ることができます。しかし現在のスタジオには魔法のパラシュートはなく,誰も助けてはくれません。ですので自分が何をしたいのか,どこに向かっているのか,どのようにしたいのか,皆が明確に理解しているかどうかを確認する必要がありました」
2021年3月,Monster Closetでは5人の共同創業者がホワイトボードのある会議室に集まって,これから何が起こるのかを考えていた。
「それくらいの低レベルでした」とJennings氏は語る。「ITからオフィス探し,採用方針,ゲームターゲットといったところから次の方向性に至るまで,スタジオを機能的にするために必要な柱を探しました」
同じようなホワイトボードを何時間も見なくて済むように,Monster Closetチームは,AAAからインディーズへの移行を目指す人にアドバイスをしてくれた。
スタートする前に:準備作業の重要性
●ビジョン
自分のスタジオを立ち上げる際の最優先事項は,自分が何を目指しているのかを明確にすることだ。これは,採用方法,資金調達方法,成長方法などに影響する。
「スタジオを作るということになったら,そのスタジオの目的を理解して決定する必要があります」とJennings氏は語る。「我々にとっての目標は,楽しくて,働きやすくて,優れたゲームを作るスタジオを作ることでした。うまくいけば10年,15年,20年先までここが我々の家になる,それが目標です」
「ですから,投資先を探す方法を考えるときには,この目標に照らし合わせていました。我々が創造性と決定において自律的に行動できること,そしてそのビジョンを実現するために必要な資本を得ること,これらの目標に照らし合わせて投資を募ったのです」
1年後,3年後,5年後,10年後,そのスタジオに何を求めているのかを考えて,それに基づいて最初のビジネス契約を構成する必要があります -Graeme Jennings氏
「人によってスタジオを作る理由はさまざまです。買収されることを目標にスタジオを作る人もいます。その場合は,買収されることを期待して,より派手なデモを作って,できるだけ早くスタッフを配置したいと思うでしょう。そうすれば,お金を稼ぐことができますから」
Monster Closetの場合は,将来のために構築し,創造性と文化的なコントロールを行うことを優先したため,初期の資金調達の決定はその目標に照らし合わせて行われたという。
「さまざまな投資家と話をする中で,我々のニーズに合う投資家が見つかるまで,どのようなターゲットを設定するかを話し合いました」とJennings氏は続ける。「理想を言えば,1年後,3年後,5年後,10年後にそのスタジオから何を得たいのかを考えて,それに基づいて最初の取引を構成する必要があります」
そのためには,意思決定の方法や株主の選び方など,さまざまな工夫が必要になる。これらはすべて,「現場のプロデューサー」からの大きな変化であると,プロデューサーとしてのキャリアを積んできたJennings氏は語る。
●法律用語を理解するためのパートナーを探す
スタジオの立ち上げには,一般的なデベロッパとしての仕事とは関係のない,多くの作業が伴うと氏は続けた。それには,理解しなければならない多くの法的および管理的な側面が含まれいる。
「それらを理解するには,優秀な弁護士やビジネスパートナーが必要です。なぜなら,ビジネスの観点から理解するだけでなく,相手国の法律を理解することも必要だからです」と氏は語る。「(※モントリオールのある)ケベック州には,会社の設立方法や意思決定の方法など,ビジネスに関連する法律があります。そのため,しっかりとしたガイダンスが必要なのです」
「法的観点から見た会社設立の複雑さは(とくに投資家が関与している場合には),この取り分を取得すれば問題ないよ,というような1枚の紙で済むものではありません。15種類もの書類,中には30ページに及ぶものもあり,それらを確認していると,内容をすべて理解できないことがあります。今は理解できていますが,始めた頃はまったく理解できませんでした」
どこにも明記されていない部分がたくさんあって,自分で試行錯誤する必要があります -Graeme Jennings氏
給与計算,納税番号,その他の管理面での実務的な配慮は,Monster Closetにとって大きな教訓となったが,これらはすべて,プロセスに精通していない場合には調査が必要だ。Jennings氏は,この問題を解決するために,Revenue Quebec(※税務署)に何度も電話をかけたことを思い出していた。「ビジネスを運営するうえでの現実的な観点から,どこにも明記されていないことがたくさんあります」と氏は付け加える。
「もし,あなたが会社で何をしたいのかを本当に理解しておらず,ビジネス用語も本当に明確に理解しておらず,法的な部分にも疎いようだと,絶対に望んでいないものになってしまうでしょう」
「時間がかかるというのは,予想以上に時間がかかるということです。ですから,もし将来的に再度挑戦してMonster Closet2を作るとしたら,『このタイミングでスタートしても,実際にスタートするのはここになると思う』というように,かなり長い時間をバッファリングすることになるでしょう」
●オフィスの確保
Jennings氏は,チームにとってオフィスを確保することが重要だったと語る。それは「自分たちの家と呼べるような場所を確保して,一緒に仕事をする」ためだ。スタジオの初期段階では,企業文化を構築するために,オフィスの確保はとくに重要だという。
「オフィスの交渉にはエージェントとの時間が必要で,オフィスのサイズや1フィートあたりのコストなど,これまで話したことのないようなことを話し合うことになります。だからこそ,日常的なシニアプロデューサーやエグゼクティヴの仕事とはまったく異なるビジネスオペレーションがたくさんあるのです」
オフィススペースの確保を考える際には,そのスペースが会社の成長のビジョンに合っているかどうかを確認する必要がある。
「基本的には,今必要なスペースよりもかなり広いスペースを確保しました」とJennings氏は語る。「我々は,モントリオールの旧市街に2つの異なるスイートルームを確保し,それらを一緒に使うことにしました。ですから,会社のビジョンと今あるサイズやスペースとのバランスが取れているのです。我々はすでに人の配置に余裕を持たせていましたので,我々の予測では非常に簡単に収まったのです」
「他の国ではどうなのかは分かりませんが,オフィスの価格は高騰していていましたものの,今現在は買い手市場です。多くの企業がオフィススペースを拡張しましたが,もうオフィスに戻ってこなくていいよと言っているのです。そのため,空のスペースがたくさんあり,掘り出し物がたくさんあるのです」
●ITインフラを整える
目的を整理し,管理面や法律面での理解が深まっても,準備作業は終わらない。スタッフにどのようなハードウェアとソフトウェアを提供するのか? どのようなメールプロバイダーを導入するのか? 必要になるかもしれないオンラインセキュリティポリシーは把握しているか?
「スタジオを作ることとゲームを作ることは,とくに技術面では同じではありません」とMonster ClosetのテクニカルディレクターであるThomas Félix氏は語る。「何に投資するか,何を最初にするかを賢く選択する必要があります」
「最初は,メールや通信手段もありません」と氏は笑う。「ですから,200人のプログラマがすでに知っているエンジンを使って作業するような,大きなプロジェクトを始めるのは,とても無理な話です。スタジオを軌道に乗せるためには必要でしたが,同時にプロトタイプを作り始めたいという人たちもいました」
スタジオを作ることとゲームを作ることは同じではありません。とくに技術面では -Thomas Félix氏
Félix氏は,技術面での優先順位の重要性を強調している。大企業の中でゲームを作るのとは,まったく異なる課題であるという。「我々は,どこに行きたいかというロードマップを描き始めましたが,最初の数カ月で,『できるだけ早く,ゲームのことはもう忘れよう』と言い出すようになりました」と氏は続ける。「メールやチャットとかが使える人がいるので,コミュニケーションの手段を確保しよう,というのが我々が最初に行ったことでした」
次にエンジンだ。Monster Closet では,Epic Games のエンジンである Unreal を使用している。Unreal についてよく知らない方は,GamesIndustry.biz ACADEMY ガイドを見てほしい(関連記事)。Félix 氏がこのエンジンを選択した理由は,デベロッパが手を煩わせることなく,すぐに開発に取り掛かることができるからだという。
「技術者であれば,デベロッパに最初に言いたいことは,エンジンを使って何をするのかを検討しよう,ということですよね。少なくとも Unreal があれば,『数週間の間は,我々を必要とせずに,あなた方が作業を進めてほしい』と言うことができたんです。Epicは,プロトタイプを作りたいときにすぐに使える優れたツールセットを提供してくれていたので,我々は,その間に会社とインフラストラクチャのセットアップを始めたのです。プログラマを必要とせずにプロトタイプを作ることができ,我々はすぐにIT部分に取り掛かれたという点で,この選択は正しかったと思います」
「我々がこれまでと違って取り組んだのは,必ずしも最高のソリューション,最高の機能セットを求めているわけではありませんでした。また,サポートやコストを最小限に抑えながら,素早く手に入れることができるものを探していました。それが我々にとっての鍵でした」
「電子メール,チャット,セキュリティポリシー(これは非常に重要です)など,さまざまなテクノロジーを提供している企業を調べました。しかし,ときには,85%の仕事を正しくこなせると判断できれば,それでよいと思うこともありました。あとになってそれに戻ることもできますし。このように優先順位をつけていくと,必ずしも最初の数週間ですべてを完璧にする必要はありません。人々を稼働させてから,その上にレイヤーを重ねていけばいいのです」
なお,Monster Closetでは,セットアップのためにITの専門家を雇うことはなく,すべて創業者が社内で行ったとのことだ。会社を設立するということは,スタジオを運営するために,自分がやりたくない仕事をすることになるということだ。
長い目で見れば,ただITをするだけのITチームは必要ありません ― それはほとんど役に立たないかもしれません -Thomas Félix氏
「私はITセキュリティの博士号を持っているわけではありません」とFélixは語る。「ですから,基本的には我慢するしかありません。長い時間がかかります。もう半年以上になるのですが,何人かの人が積極的に取り組んでくれたので,ようやく森の外に出られるようになったところです」「また,タイムシートなどの細かい作業もあります。そういうシステムが必要なのです。私はタイムシートマネージャーを作りましたが,これは私のキャリアの中でやろうと思っていたことではありませんでした」と氏は笑う。「しかし,同時に楽しいことでもあります。我々は複数の役割を担っているので,タイムシートマネージャーのデバッグから,長期的な戦略や技術のロードマップを議論するための電話までするのは難しいことでした。両方を同時にこなせるようにならなければなりません」
チームに加わった最初の数人のデベロッパが技術に精通していると便利だと,Félix氏は続ける。
「少なくとも,ITが何を意味するのか,まともなエンジンパイプラインを構築するためには何が必要なのか,そういったことを知っている必要があります。長い目で見れば,ただITを行うだけのITチームは必要ありません。それはほとんど意味がありません。実際には,デプロイやクラウドでの運用などを含めて,最初から最後まで自分の機能を所有できるようにしたいのです」
「それが我々にとって重要なことであり,だからこそこれまで成功してきたのだと思います。最初に雇う何人かは,このスキルセットを持っているか,それを学ぶ意欲があることが必要です」
適切なカルチャーの創造
自分のスタジオを設立するということは,単にオフィススペースを見つけ,インターネットプロバイダーを確保するだけではなく,従業員が健康的で,包括的で,歓迎されるような文化を作り上げることが重要だ。
「最初からそこにいた人たちは,善意の考え方を持っていたので,文化はすでにポジティブなものになっていましたが,新しい人を迎え入れたときに,どうやってこの状態を維持するかが課題でした」と,プロデューサーのMarie-Josée Ouellet氏は語る。「我々は,採用の部分に力を入れています。創業期を過ぎて新しいスタッフを採用する際には,自分と同じ価値観を持っているかどうかを確認するための時間と労力が必要になります。たとえば,Monster Closetでは,面接時にチームメンバーとの面談も行っています」
「また,我々のこと,入社する会社のことを十分に知ってもらい,自分に合うかどうかを判断してもらいたいと思っています」とOuellet氏は続ける。「入社してから,あとになって自分が求めていたものとは違っていたと気付いてほしくないのです。だからこそ,我々は徹底して,すべてのものを提示し,すべての人を提示する必要があるのです」
「そして,チームの全員が彼らに会い,誰が入ってくるのかを知り,その決定に同意するようにしたいのです。そうすれば,責任を共有できます」
全員が会社のオーナーであり,文化のオーナーであり,スタジオの雰囲気のオーナーなのです -Marie-Josée Ouellet氏
彼女は,新入社員を全員で保証することの重要性を強調している。AAAスタジオのように一部の幸せな人が責任を負うのではなく,全員が新人を保証することが重要性なのだ。「誰もが新人を歓迎し,自分の居場所を見つけ,チームの一員となるように手助けする責任があります。その責任を共有することで,大きな違いが生まれるのです。我々の会社,文化,スタジオの雰囲気は,全員がオーナーなのです。みんなの仕事なので,もし何かに不満があれば,それを提起し,変更し,解決策をもたらすのです。あなたもその一部であり,他の人と同じようにそれを担当しているのです」
採用について言えば,Jennings氏は,早い段階でインディーズの経験がある人を採用することを勧めていた。Monster Closetでは,大手スタジオ以外での経験者はいなかったのだ。
「コアグループはAAA出身でしたので,なるべく早い段階でインディーズスタジオで働いたことのある人を採用して,文化が一致しているかどうかを確認したかったのです。小規模なスタジオでの経験を活かしてもらい,自分たちがやろうとしていることが間違っていないかどうかを確認するためです」と氏は語る。
「これは重要なことだと思います。なぜなら,以前のものを小さな規模で再構築するのではなく,ビジョンに合った方法で本当に構築する必要があるからです」
また,早い段階で制作を担当する人を雇うようにしよう。これはJennings氏のように,自分がプロデューサーとしての経験があってもだ。スタジオを運営するということは,実際の仕事を以前と同じようにはできないのだから。
Ouellet氏は,チームの全員が何でもできることの重要性を指摘している。
「私は専門家だと1つのことに固執しないようにすることが重要なのです。これは共同事業ですから,みんなが手を動かさなければならないのです。Thomasがタイムシートのことを言っていましたが,これは誰にでも言えることです。全員が,必ずしも自分が夢見ていたことではないけれど,重要なテーマに取り組む必要があります。そして,それを実行する必要があるのです」
「すべてのことをじっくりと話し合うことはできません。いいよ。私が最初のバージョンを作ってみるから,じゃあ,早速やってみよう,といった感じで,勢いに乗って行動し,全員を実際に前進させるようにする必要があります。ベンチに座ってなにをするか指示されるのを待っているような人を許してはいけないのです」
優先順位と範囲を明確にする
自分のスタジオを立ち上げたときに,早い段階で出てくる課題で,ずっと続くのが,優先順位のチェックをどうするかということだ。何年もAAAで働いたあとにインディーズで働くには,簡単ではない考え方の転換が必要だ。
スケーラビリティに関して言えば,Félix氏は,以前にAAAスタジオで大きなパイプラインを経験したことがあって,少なくともチームはその面で何が期待できるかを知っていた。しかし重要なのは,現実的であることだ。なぜなら,今回は同じリソースがないからだ。
「我々は,10か国で1000人が同時にゲームを運営する方法を見てきたので,少なくとも物事をどのようにしてスケールさせるかは分かっていました。落とし穴としては,もう二度とそのような大規模なゲームは作らないので,同じようなニーズはないということでした。過去20年間やってきたことをそのまま再現しようとせず,どこに投資すべきかを知るために,自分の知識をどのように活用していくか? それが重要だと思います」
「スケーラビリティに関しては,クラウドが非常に有効です。というのも,最初は数台のマシンをクラウドで運用していましたが,今では成長に合わせてマシンの台数を増やしても,コストを監視していれば,ほとんど問題ないからです」
さらにOuellet氏は,直感的に「とにかくすべての基礎を構築しろ」と言われることがあると付け加える。問題は,何かに集中している間に,ほかの面で助けてくれるチームがいないことと,ほかのことで忙しいときに,スタジオを運営してくれる人がいないことだ。
「ゲーム体験をより快適にするために,どこで自分を止めるか,つまり『よし,これはこのままにして,何か他のことに移ろう』と言うことが重要なのです」と氏は続ける。「本当の意味でゲームを定義するものに取り組むためには最低限何が必要かが重要なのです。一般的なものだけでは,たとえやり方が分かっていて早くできたとしても,それが今後の障害を取り除き,製品化の準備を整えることにはならないからです」
誰かが取り組まないとなにも存在しません。だから重要なことに集中できるのです -Thomas Félix氏
「我々は皆,大きなスタジオの出身なので,何かをすることに慣れています。そこでは,並行してあらゆるテーマに取り組む人たちがいて,ある時点ですべてがまとまります。しかし今は,『よし,一歩下がってみよう』というのが本音です。そう,始めたからには最後までやり遂げるのが筋だと思うのですが,直感的ではありません。ときとして,終わりを見たいがために,夢中になってしまって難しいこともあります。しかし,『みんな,今はこのことについて十分な知識を持っているから,たとえ完璧でなくても,それは置いておいて,新しいテーマを完全に掘り下げて,これに取り掛かろう』と言うことが必要なのです」Félix氏はこう付け加える。「誰も作業していないものは存在しないという言葉は,設立当初は冗談のように言っていましたが,今ではほとんど柱のようにになっています。誰も取り組んでいないものは存在しないのです」
Jennings氏は,自分自身とグループに正直になり,チーム内でオープンな議論をして全員が同じ考えを持っていることを確認する必要があると語る。
「自分のスコープと自分の能力,そして自分ができると思うこととできないことを理解する必要があります。実際に作ることができないのであれば,見栄えのする派手なデモは意味がありません」
Félix氏は,この考え方はテクノロジーにも当てはまり,とくに大手AAAスタジオから来た場合は,謙虚さを保つ必要があると指摘する。
「少なくとも長い間,自分たちがそうなるわけではないという事実を受け入れなければなりません。それに応じて,ゲームの範囲を広げていきましょう。Unrealで次のオンラインオープンワールドゲームを10人で作れるなんて思ってはいけないのです。それは真実ではありません。たとえあなたがAAAの大企業出身で,以前にそれをやっていたとしても,それは真実ではないのです」
Ouellet氏は,Jennings氏がMonster Closetを最後まで作り続けると言っていたことを指摘し,ゲームを作ると同時にチームを作っているのだと付け加えた。
hello次のオンラインオープンワールドゲームをUnrealで10人で作れるとは思わないでください。それは真実ではありません。たとえあなたがAAAの大企業出身で,それをやったことがあったとしても,それは真実ではないのです -Thomas Félix氏
「ある時点で,ゲームは出荷されますが,チームは残ります。ですから,スコープを抑えることは,それにも影響します」と彼女は語る。「我々は社員を働かせすぎたくありません。このゲームをどのように制作するかを戦略的に考え,意味のあるものにし,我々が望む品質で出荷できるようにし,さらに社員が満足できるようにする必要があるのです。ゲームを出荷しながら,労働条件も良くするためには,多くの戦略的計画が必要です」最後にFélix氏は,AAAから自分のスタジオを作るということは,すべてを学び直し,自分の知っていることすべてに挑戦する準備をすることだと語る。
Monster Closetのチームのほとんどは,これまでにやったことのない仕事に取り組んでおり,全員がまだ学習段階にある。
「文化的にも一緒に学んでおり,お互いにサポートしながら進めています」とJennings氏は語る。「あることをマスターした人たちがいて,それを理解していない新しい人たちがいる,という状況ではありません」
「誰もが学びの段階にあります。ですので,お互いに助け合うことができる。それがうまく機能しています。なぜなら,多くの場合,『どうすればいいのか』と聞かれても,分からないので,一緒に調べてみようということになるのです。これは,グループとして目標を達成するための原動力として,とてもポジティブなことです」
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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)