成功例に学ぶ:プレイアブル広告の効果を最大化する6つのポイント

 前回の記事では,モバイルゲーム広告のエンゲージメントを高めるための方法について,ユーザーの興味を引くポイントを交えながら紹介しました。AppLovinには,ゲームデベロッパへのクリエイティブのサポートに特化した「SparkLabs (スパークラブズ)」というチームがあり,データドリブンで成功につながるモバイルアプリの広告クリエイティブについて,豊富な知識と経験を有しています。

 そこで今回は,モバイルゲームの成功に欠かせない広告のクリエイティブをテーマに置き,SparkLabsのこれまでの経験から,効果的な広告クリエイティブのあり方について,4回に分けて考察していきます。1回めとなる本稿では,現在広がりを見せる「プレイアブル広告」にフォーカスし,ユーザーの興味を引き立てる効果的な広告を作るうえで押さえるべき6つのポイントについて,成功事例を交えて紹介します。

プレイアブル広告とは


 プレイアブル広告は,いわゆる「ゲームの簡易版を体験できる」広告フォーマットであり,ユーザーは製品をダウンロードすることなく,表示されている広告上でゲームを試しにプレイすることができます。これにより,ユーザーはそのゲームでどんな遊び方ができるのかを体験したうえでダウンロードできるため,コンバージョン率が高く,長期的にプレイするユーザーを獲得しやすくなります。このプレイアブル広告を上手に活用することでIPMが200%増加することもあるとされています。




1.チュートリアルのゴールを明確にする


 1つめは,ユーザーがゲームのチュートリアルを見て,即座にゲーム側の伝えたいメッセージを理解できるような内容を考えることです。ゲームの始めに表示するチュートリアルは,ユーザーは「ただ見ているだけ」の状態であり,この段階で明確なメッセージを伝えられず,ユーザーを夢中にさせられなければ,すぐに機会損失に繋がります。とにかく「初めが肝心」であり,魅力的なチュートリアルを作ることに集中しましょう。ここは非常に重要なポイントになります。


2.テキストとUIの簡素化


Park Master(改善前)
成功例に学ぶ:プレイアブル広告の効果を最大化する6つのポイント
 2つめは,「テキストやUIの簡素化」です。UIは洗練されたものが良いと思われがちですが,ここで一番重要視すべきことはユーザーにシンプルで分かりやすいメッセージを伝えるように意識することです。たとえば,プレイアブル広告の上のほうにプログレスバー(長時間かかるタスクの進捗状況がどの程度完了したのかを視覚的・直感的に表示するもの)などを設置してユーザーに状況を教えてあげるものがいいでしょう。一方で,コインやレベル名など,具体的なUIを追加しても,必ずしもユーザーへの付加価値が上がるとは限らないため,「良いユーザー体験を提供するには何が必要なのか」を考えることが重要です。

 例として,面白法人カヤックの「Park Master」という日米の無料ダウンロードランキングで1位を獲得したゲームで実際に使われたプレイアブル広告を紹介します。改善前と改善後のプレイアブル広告を見ると,もともと4台あった車を2台だけに絞っていることが分かります。また,2つの広告を比較してみると,改善前の広告は,複数の車や駐車場を表示している一方で,改善後の広告はUIとチュートリアルを簡素化し,よりユーザーにとって理解しやすい広告になっています。



3.コンテンツは1〜2つのゲーム機能に限定する


 3つめは,ポイント2つめの「簡素化」ともつながっていますが,広告にすべての要素を詰め込むのではなく,ユーザーに「ゲームを体験してもらう」ことにフォーカスして,1〜2つのゲーム機能に絞ることが重要です。特定の機能に集中させることで,アプリをダウンロードしたくなるようなコンテンツを作り上げることがポイントです。


4.ユーザーにとって最も抵抗の少ないストーリーを追求し,ゲームに引き付ける


 4つめは,プレイアブル広告ならではの利点でもありますが,とにかくユーザーに楽しい体験を提供することです。たとえば,ゲームをクリアしたときにポジティブなコメントを表示したり,正しい方向へ導く点滅した矢印などを入れたりなど,ユーザーがゲームに夢中になれるように誘導しましょう。

 Jelly Button Gamesの「Board Kings」 のプレイアブル広告では,大きい矢印と点滅したボタンを表示し,ユーザーに先を進むためのプレイボタンを押すように誘導しています。サイコロを回してボードゲームのマスを進みコインを手に入れると「ナイス!」や「ファンタスティック!」などのポジティブな言葉がポップアップで表示され,ユーザーを楽しませてくれます。



5.次のステップを明確にする


 5つめは,ユーザーがゲームを達成しやすい内容にすることです。また,ユーザーがゲームに勝った場合も負けた場合も,次のステップを明確に示しましょう。たとえば「10-15秒のタイマー」を表示させ,時間が切れたら「残念ながら今回は失敗に終わりましたが,もう一度ゲームを試しますか」というテキストを表示させ,App Store へリンクすると効果的といったデータもあります。
 たとえば Lion Studios の「Pull Him Out」のプレイアブル広告動画では,ピンを抜くように示すことで,ユーザーが次の動作を容易に理解することができます。また,ゲームプレイのヒントを途中まで見せることで,ユーザーの「最後まで見たい」という気持ちを掻き立て,ダウンロード獲得につなげることができます。




6.ユーザーに報酬や達成感を与える


 6つめは,短いプレイアブル広告の間で報酬や達成感を与えることで,ユーザーの満足感を高めることです。忘れられやすい点ですが,ユーザーを楽しませることができたら,必ず結果に出ます。UIやアニメーションにより何かを達成したあとに,ユーザーに報酬を与えましょう。


 以上,6つのポイントについて事例を交えて紹介しました。次回は,モバイルゲーム業界において最も利用されている「動画広告」にフォーカスし,クリエイティブの観点からその広告効果を高める6つのポイントについて解説します。

林 宣多(はやし・のりかず)
AppLovin日本法人代表取締役。GREE,Yahoo! Japanでの広告プロダクト立ち上げ後,米国に拠点を移し,設立直後のAppLovinに参画する。AppLovin本社の営業責任者として事業の成長をけん引した後,2016年4月にAppLovin日本法人の代表取締役に就任する。