Amy Hennig女史:ストリーミングは「単なる目に見えない家庭用ゲーム機」以上のものでなければなりません
Reboot Develop 2019でのHennig女史の講演より。リアルタイムストリーミングはストーリーテリングに革命を起こすだろうが,より多くのオーディエンスを引き付けるためには新しい種類のコンテンツが求められると語った。
Naughty Dogの元クリエイティブディレクター,Amy Hennig女史によれば,(Netflixの人気ドラマ「ブラック・ミラー」の双方向版)「ブラック・ミラー:バンダースナッチ」(以下,Bandersnatch)のヒットは「これまでの一本道なメディアと,インタラクティブなメディアの融合」に向かうものだったという。しかし,ゲーム業界がこの巨大な商機を有効活用するためには,自分たちのコンテンツがいかに限られた範囲のものであるかを認識する必要があるとのことだ。
4月初旬に開催されたReboot Develop 2019の壇上に上がったHennig女史は,大衆向けエンターテインメントのニューウェーブが立ち上がってきた例としてBandersnatchを挙げた。すなわち,これまでの一本道だったナラティブが,5Gインターネット技術の普及によってインタラクティブ性が高まってきたというわけだ(※5Gはほぼ関係ありません)。
Bandersnatchは,表面的にはNetflixのスペシャル番組だったが,Hennig女史はそこにゲーム開発で散見されるストーリーテリングのテクニックが用いられていたことについて言及した。また,「リアルタイムコンテンツ」が急増するにつれて,これが一層重要になるとしている。
Hennig女史は,広まるハイスピードのモバイルインターネットがナラティブなエンターテインメントに与えるインパクトをきちんと捉えるには「ゲームストリーミング」という言葉は「限定的過ぎる」と考え,意図的に「リアルタイムストリーミング」を使っていた。
「何年後に革命が起こるのかについては議論の余地があるでしょう。2年から5年くらいでしょうか? さまざまな意見があるでしょうが,ゲームを根本的に変えるだけではなく,私たちのビジネスモデル,ゲーム業界の関係者,私たちが作るコンテンツ,そして,観客をも変えていくことになるでしょう」
「それこそがBandersnatchが素晴らしいと思える理由です。ゲームをしない人たちを,心理的な障壁なく徐々にインタラクティブ型のコンテンツに導き入れるベストなモデルだと思うのです」
Bandersnatchは今年の初めにNetflixでリリースされるやいなや,大きなセンセーションを巻き起こした。テレビや映画業界はその成功に細心の注意を払っていくだろう。実際,これらの業界は,すでに長い間リアルタイムのインタラクティブストーリーテリングの可能性を認識しており,独自のスキルと経験を持つゲーム業界の方が,今や機会を逃す危険性があるとHennig女史は示唆する。
「テレビや映画のすべてのスタジオにはインタラクティブ部門があり,この機会を逃すまいとしています。しかし,実際のところ彼らは私たちがやっていることのやり方を知りません。物語やキャラクターはゲームよりも長い実績を持っていて,より熟達しているという主張もあるでしょう。しかし,リアルタイムのアプリケーション向けのコンテンツ開発を理解してはいません。できるはずありませんよね? そして,インタラクティブ性についても理解していないのは確かです。私たちゲーム業界が持ちうる経験を持っていないからです」
我々GamesIndustry.bizがBandersnatchのセンセーションの余波のあとに掲載した一対の記事(関連英文記事)で書いたように(関連英文記事),いくつかの小規模なデベロッパはすでにこの領域に踏み込んでいる。しかし,Netflixのようなプラットフォームやそのリソースはいまだ届かない。多種多様な巨大企業が今ではそのあとを追い上げる。
スマートフォン技術の出現以来,ゲーム業界では,より多くの人にリーチするための障害はただ一つ,参入コストであると考えられる傾向があった。たとえば,家庭用ゲーム機またはゲーム用PCの価格,あるいはAAAタイトルにつけられた60ドルの値札などだ。この考え方は,Googleが発表したリアルタイムのストリーミングプラットフォームStadiaでも明らかだ。GoogleはStadiaをUbisoftのAssassin's Creedに,より簡単にアクセスできるという強みを用いて紹介した。
「発表を見てこう思いました。『これは驚くべきことだ。テレビや映画のように,リアルタイムのコンテンツが私たちの家やデバイスに直接ストリーミングされる,なんて素晴らしいことだろう』と。しかし,すべてがゲームストリーミングに調整されているように思えました。それではまるで,目に見えない家庭用ゲーム機なだけです。幅広いオーディエンスに向けているわけではなく,すでにハードウェアを購入しているゲーマーたちを対象にしてしまっているのです。恩恵はあるでしょうが,非常に狭い範囲での考え方のように思えるのです」
「より多くの人々にリーチできるということで,Googleはいかにして [ゲームの]オーディエンスを10倍にできるかという話をしています。しかし,その話の次に来るのはコンテンツです。単に幅広いオーディエンスにリーチできればいいというものではありません。私たちは,彼らに対してこれまで作ってきたコンテンツを引き続き押し出していけばいいのでしょうか? もし彼らがそれらのエクスペリエンスに夢中になっていたのであれば,すでにそういったものにお金を払っているでしょう」
Stadiaの発表について言えば,,Assassin's Creedはゲーム業界最大の金額が投下されたコンテンツでありAAAゲームを広く代表するものだ。ただし,そのようなプロダクトにはゲームのオーディエンス以外の人々にアピールしにくい固有の障壁がある。Hennig女史によればそれは,操作の複雑さ,プレイヤーの器用さとリアクションへの依存,そして進行度を定義するために失敗を利用することについて言及した。一方,インディーズデベロッパは,こうした伝統的な価値観を拒絶し,覆し,超越するようなゲームエクスペリエンスを熱心に作り出してきた。Hennig女史は,Florence,フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと,,Return of the Obra Dinnといった比較的低予算のゲームが(皮肉なことに)業界で最も有名なタイトルのいくつかよりも幅広い魅力があるという。
「この新しいマーケットの可能性について考えるとき,もっと多くの人々を私たちのやり方に迎え入れられるという考え方をすべきです」と彼女は諭す。「この可能性はインタラクティブなコンテンツを経験していないオーディエンスへのリーチも拡大します。決して,彼らがゲーマーであると納得させようとしたり,ゲーマーに変身させて私たちのほうに引きずり込もうしてはいけません。むしろやり方を知っている私たちのほうから彼らに会いに行くことが,私たちに課せれられた義務だと思います」
Reboot Developは,フロム・ソフトウェアのSekiro:Shadows Die Twiceが引き起こした,難度とアクセシビリティに関する議論(関連記事)と完全に同時期に開催された。Hennig女史は直接のコメントはしなかったものの,より広く世の中の人たちに魅力的であるものが媒体全体として意味があるだろうという意見について,ゲーマーのコミュニティの一部が明らかな不信を抱いていることについては言及した。
「競争や難度が高かったり,習得が必要だったりするゲームも存在すべきです。私が作ったゲームの中にもあります」と彼女は認めた。「しかし,そういうゲームはより広範なオーディエンスへのアクセスを難しくします。私たちの趣味についても「大丈夫,問題ない」という人もいるかもしれません。これらはすべて「git gud(もっとうまくなれよ)」的なことです。私たちの媒体や趣味について排他的な風潮がありますが,それが健全だとは思えません」
「私たちは,旅やエクスペリエンスなど,失敗や難度から離れたコンテンツを作成できるという考えにもっと寄るべきです。[アンチャーテッドのようなゲームで]9割がたそこに到達していますから,あとはちょっとした調整の問題と言えるでしょう。『PlayStation 4を購入しようとしない人や,その15個以上のボタンを持つゲームパッドを手に取らないようなオーディエンス向けにそのようなコンテンツを作成することができますか?』ということです」
Hennig女史は,ゲーム業界は,はるかに多くの人々がアクセスできるという点で,「9割がた」そこに寄ったゲームをすでに開発していると主張した。実際,彼女はゲーム業界のクリエイターによって広く知られ理解されている,ある「現象」について語った。
「私たちはオーディエンスを正しく評価できていないような気がしています。アンチャーテッド,そしてSupermassive Games のUntil Dawn,また,Quantic DreamのDetroit: Become Humanでもあったそうですが,それらではゲーマー以外のその家族もゲーマーと同じようにお金を使っているという話を聞いたことがあります」
「私たち(Naughty Dogで)は,たとえ話ではなく実話として,ある人の子供や配偶者が『私抜きでそのゲームをしないで,次に何が起こるか見たいから』と言うのを聞きました。それはテレビ番組を一緒に見るというようなものではなく,コラボレーションなのです。彼らにとってはこれがインタラクティブなエクスペリエンスでした」
「そういった現象を見て,また,人々がゲーマーとしてエクスペリエンスに投資するのを見て,こう考えました。『私たちはただボーっと巻き込まれるのではなく,なぜそういうところに向けて能動的に物事をデザインしていないのだろう。それらの人々のことを考慮せず,彼らのためのコンテンツを作っていないのはなぜだろう?』と」
「そういった人たちを検討の枠に入れていかねばなりません。そして,だからこそ習得や難度といった障害をゲームに投げ入れてはいけません」
ステージ上のインタビューではSEKIRO(隻狼)という名前が何度か登場した。これについてHennig女史は,彼女の見解が「ゲーム業界への批判」ではないことを丁寧に強調した。実際,彼女が手がけたゲームが幅広なオーディエンスにアクセスできていないという事実もきちんと述べていた。そして,よりアクセシブルな新しいゲームの登場を,自分たちのアイデンティティへの脅威と捉える人々に「敏感さ」を意識するよう訴えた。「それは単なる人間の本性なのです」―しかし新しい形態のゲームが出てくることで消えなければならないものはないという。
「私は,幅広いオーディエンスにリーチするために今後何が必要なのかを考えているだけです」と彼女は語った。「おそらく,既存のゲーマー向けのゲームを作る代わりに,ゲーマー以外向けのゲームを作ることになるという,実存的な懸念が呈されることになるでしょうが,そうは思いません。代わりに(instead),ではなく,加えて(and),つまり,両方を目指してゲームを作っていくのだと思うのです」
「もし私たちがハッチを閉じて,既存の人たちだけを相手にしていたら,潜在的なマーケットとオーディエンス,そして,それらが私たちの表現形態にもたらしてくれるであろう大切なものを遠ざけてしまうと思うのです」
GamesIndustry.bizはReboot Developのメディアパートナーであり,主催者の協力を得てイベントに参加した。
Naughty Dogの元クリエイティブディレクター,Amy Hennig女史によれば,(Netflixの人気ドラマ「ブラック・ミラー」の双方向版)「ブラック・ミラー:バンダースナッチ」(以下,Bandersnatch)のヒットは「これまでの一本道なメディアと,インタラクティブなメディアの融合」に向かうものだったという。しかし,ゲーム業界がこの巨大な商機を有効活用するためには,自分たちのコンテンツがいかに限られた範囲のものであるかを認識する必要があるとのことだ。
4月初旬に開催されたReboot Develop 2019の壇上に上がったHennig女史は,大衆向けエンターテインメントのニューウェーブが立ち上がってきた例としてBandersnatchを挙げた。すなわち,これまでの一本道だったナラティブが,5Gインターネット技術の普及によってインタラクティブ性が高まってきたというわけだ(※5Gはほぼ関係ありません)。
Bandersnatchは,表面的にはNetflixのスペシャル番組だったが,Hennig女史はそこにゲーム開発で散見されるストーリーテリングのテクニックが用いられていたことについて言及した。また,「リアルタイムコンテンツ」が急増するにつれて,これが一層重要になるとしている。
「Bandersnatchはゲームをしない人たちを,心理的な障壁なく徐々にインタラクティブ型のコンテンツに導き入れるベストなモデルだと思うのです」
「Bandersnatchが実現されたという事実は素晴らしいことだと思います。個人的にもとても楽しめました」とHennig女史は続け,最初は自らコントローラ持って,2回はほかの人たちのプレイを見学しながら,合計3回,最後まで視聴したと付け加えた。「これはリアルタイムだからこそ可能なことで,この部分に革命が起きると思います」Hennig女史は,広まるハイスピードのモバイルインターネットがナラティブなエンターテインメントに与えるインパクトをきちんと捉えるには「ゲームストリーミング」という言葉は「限定的過ぎる」と考え,意図的に「リアルタイムストリーミング」を使っていた。
「何年後に革命が起こるのかについては議論の余地があるでしょう。2年から5年くらいでしょうか? さまざまな意見があるでしょうが,ゲームを根本的に変えるだけではなく,私たちのビジネスモデル,ゲーム業界の関係者,私たちが作るコンテンツ,そして,観客をも変えていくことになるでしょう」
「それこそがBandersnatchが素晴らしいと思える理由です。ゲームをしない人たちを,心理的な障壁なく徐々にインタラクティブ型のコンテンツに導き入れるベストなモデルだと思うのです」
Bandersnatchは今年の初めにNetflixでリリースされるやいなや,大きなセンセーションを巻き起こした。テレビや映画業界はその成功に細心の注意を払っていくだろう。実際,これらの業界は,すでに長い間リアルタイムのインタラクティブストーリーテリングの可能性を認識しており,独自のスキルと経験を持つゲーム業界の方が,今や機会を逃す危険性があるとHennig女史は示唆する。
「テレビや映画のすべてのスタジオにはインタラクティブ部門があり,この機会を逃すまいとしています。しかし,実際のところ彼らは私たちがやっていることのやり方を知りません。物語やキャラクターはゲームよりも長い実績を持っていて,より熟達しているという主張もあるでしょう。しかし,リアルタイムのアプリケーション向けのコンテンツ開発を理解してはいません。できるはずありませんよね? そして,インタラクティブ性についても理解していないのは確かです。私たちゲーム業界が持ちうる経験を持っていないからです」
我々GamesIndustry.bizがBandersnatchのセンセーションの余波のあとに掲載した一対の記事(関連英文記事)で書いたように(関連英文記事),いくつかの小規模なデベロッパはすでにこの領域に踏み込んでいる。しかし,Netflixのようなプラットフォームやそのリソースはいまだ届かない。多種多様な巨大企業が今ではそのあとを追い上げる。
「私たちは押し付けない謙虚さを持つべきです。『これが,私たちが作ってきたゲームです。“はい,あ〜んして!”,ゲーマーになりましょう!』という感じです」
Hennig女史は,三つの専門分野,リアルタイム,インタラクティブ性,ストーリーで構成したベン図をスクリーンに出した。ゲームデベロッパは,テレビや映画業界の誰よりもこれらの分野が交差する領域に近いという。「そこに入って行って,より幅広いオーディエンスに向けて物事を定義できる機会があるのです。私たちがやらなければ,ほかの業界がやってしまうでしょう」スマートフォン技術の出現以来,ゲーム業界では,より多くの人にリーチするための障害はただ一つ,参入コストであると考えられる傾向があった。たとえば,家庭用ゲーム機またはゲーム用PCの価格,あるいはAAAタイトルにつけられた60ドルの値札などだ。この考え方は,Googleが発表したリアルタイムのストリーミングプラットフォームStadiaでも明らかだ。GoogleはStadiaをUbisoftのAssassin's Creedに,より簡単にアクセスできるという強みを用いて紹介した。
「発表を見てこう思いました。『これは驚くべきことだ。テレビや映画のように,リアルタイムのコンテンツが私たちの家やデバイスに直接ストリーミングされる,なんて素晴らしいことだろう』と。しかし,すべてがゲームストリーミングに調整されているように思えました。それではまるで,目に見えない家庭用ゲーム機なだけです。幅広いオーディエンスに向けているわけではなく,すでにハードウェアを購入しているゲーマーたちを対象にしてしまっているのです。恩恵はあるでしょうが,非常に狭い範囲での考え方のように思えるのです」
「より多くの人々にリーチできるということで,Googleはいかにして [ゲームの]オーディエンスを10倍にできるかという話をしています。しかし,その話の次に来るのはコンテンツです。単に幅広いオーディエンスにリーチできればいいというものではありません。私たちは,彼らに対してこれまで作ってきたコンテンツを引き続き押し出していけばいいのでしょうか? もし彼らがそれらのエクスペリエンスに夢中になっていたのであれば,すでにそういったものにお金を払っているでしょう」
Stadiaの発表について言えば,,Assassin's Creedはゲーム業界最大の金額が投下されたコンテンツでありAAAゲームを広く代表するものだ。ただし,そのようなプロダクトにはゲームのオーディエンス以外の人々にアピールしにくい固有の障壁がある。Hennig女史によればそれは,操作の複雑さ,プレイヤーの器用さとリアクションへの依存,そして進行度を定義するために失敗を利用することについて言及した。一方,インディーズデベロッパは,こうした伝統的な価値観を拒絶し,覆し,超越するようなゲームエクスペリエンスを熱心に作り出してきた。Hennig女史は,Florence,フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと,,Return of the Obra Dinnといった比較的低予算のゲームが(皮肉なことに)業界で最も有名なタイトルのいくつかよりも幅広い魅力があるという。
「この新しいマーケットの可能性について考えるとき,もっと多くの人々を私たちのやり方に迎え入れられるという考え方をすべきです」と彼女は諭す。「この可能性はインタラクティブなコンテンツを経験していないオーディエンスへのリーチも拡大します。決して,彼らがゲーマーであると納得させようとしたり,ゲーマーに変身させて私たちのほうに引きずり込もうしてはいけません。むしろやり方を知っている私たちのほうから彼らに会いに行くことが,私たちに課せれられた義務だと思います」
「PlayStation 4を購入しようとしない人や,その15個以上のボタンを持つゲームパッドを手に取らないようなオーディエンス向けにそのようなコンテンツを作成することができますか?」
「私たちは押し付けない謙虚さを持つべきです。『これが,私たちが作ってきたゲームです。“はい,あ〜んして!”,ゲーマーになりましょう!』という感じです。私たちは彼らに経験を作ってあげるべきです。私たちはゲームの考え方を広げ,経験として考えることが必要であり,そこに困難,競争,習得,失敗,後退は必ずしも伴いません」Reboot Developは,フロム・ソフトウェアのSekiro:Shadows Die Twiceが引き起こした,難度とアクセシビリティに関する議論(関連記事)と完全に同時期に開催された。Hennig女史は直接のコメントはしなかったものの,より広く世の中の人たちに魅力的であるものが媒体全体として意味があるだろうという意見について,ゲーマーのコミュニティの一部が明らかな不信を抱いていることについては言及した。
「競争や難度が高かったり,習得が必要だったりするゲームも存在すべきです。私が作ったゲームの中にもあります」と彼女は認めた。「しかし,そういうゲームはより広範なオーディエンスへのアクセスを難しくします。私たちの趣味についても「大丈夫,問題ない」という人もいるかもしれません。これらはすべて「git gud(もっとうまくなれよ)」的なことです。私たちの媒体や趣味について排他的な風潮がありますが,それが健全だとは思えません」
「私たちは,旅やエクスペリエンスなど,失敗や難度から離れたコンテンツを作成できるという考えにもっと寄るべきです。[アンチャーテッドのようなゲームで]9割がたそこに到達していますから,あとはちょっとした調整の問題と言えるでしょう。『PlayStation 4を購入しようとしない人や,その15個以上のボタンを持つゲームパッドを手に取らないようなオーディエンス向けにそのようなコンテンツを作成することができますか?』ということです」
Hennig女史は,ゲーム業界は,はるかに多くの人々がアクセスできるという点で,「9割がた」そこに寄ったゲームをすでに開発していると主張した。実際,彼女はゲーム業界のクリエイターによって広く知られ理解されている,ある「現象」について語った。
「私たちはオーディエンスを正しく評価できていないような気がしています。アンチャーテッド,そしてSupermassive Games のUntil Dawn,また,Quantic DreamのDetroit: Become Humanでもあったそうですが,それらではゲーマー以外のその家族もゲーマーと同じようにお金を使っているという話を聞いたことがあります」
「私たち(Naughty Dogで)は,たとえ話ではなく実話として,ある人の子供や配偶者が『私抜きでそのゲームをしないで,次に何が起こるか見たいから』と言うのを聞きました。それはテレビ番組を一緒に見るというようなものではなく,コラボレーションなのです。彼らにとってはこれがインタラクティブなエクスペリエンスでした」
「そういった現象を見て,また,人々がゲーマーとしてエクスペリエンスに投資するのを見て,こう考えました。『私たちはただボーっと巻き込まれるのではなく,なぜそういうところに向けて能動的に物事をデザインしていないのだろう。それらの人々のことを考慮せず,彼らのためのコンテンツを作っていないのはなぜだろう?』と」
「そういった人たちを検討の枠に入れていかねばなりません。そして,だからこそ習得や難度といった障害をゲームに投げ入れてはいけません」
ステージ上のインタビューではSEKIRO(隻狼)という名前が何度か登場した。これについてHennig女史は,彼女の見解が「ゲーム業界への批判」ではないことを丁寧に強調した。実際,彼女が手がけたゲームが幅広なオーディエンスにアクセスできていないという事実もきちんと述べていた。そして,よりアクセシブルな新しいゲームの登場を,自分たちのアイデンティティへの脅威と捉える人々に「敏感さ」を意識するよう訴えた。「それは単なる人間の本性なのです」―しかし新しい形態のゲームが出てくることで消えなければならないものはないという。
「私は,幅広いオーディエンスにリーチするために今後何が必要なのかを考えているだけです」と彼女は語った。「おそらく,既存のゲーマー向けのゲームを作る代わりに,ゲーマー以外向けのゲームを作ることになるという,実存的な懸念が呈されることになるでしょうが,そうは思いません。代わりに(instead),ではなく,加えて(and),つまり,両方を目指してゲームを作っていくのだと思うのです」
「もし私たちがハッチを閉じて,既存の人たちだけを相手にしていたら,潜在的なマーケットとオーディエンス,そして,それらが私たちの表現形態にもたらしてくれるであろう大切なものを遠ざけてしまうと思うのです」
GamesIndustry.bizはReboot Developのメディアパートナーであり,主催者の協力を得てイベントに参加した。
※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)