より小型で携帯性の高いNintendo Switchの可能性
携帯ゲーム機は死んだと言われている。―では,なぜ任天堂はより小さなSwitchの発売を検討するのだろうか?
今週初め(※元記事の掲載は4月28日),Wall Street Journalは,任天堂が今年後半にNintendo Switchの二つの新しいバリエーションを発表する予定であると報じた(関連記事)。一方の機種は,「熱心なゲーマーを対象とした拡張機能」を備えたNintendo Switchの最新版であることが示唆されている。もう一つは,ニンテンドー3DSに代わる初心者向けのゲーム機器として設計された,Switchのより小型でよりポータブルでより手頃なバージョンだという。
報告によれば,この二つのデバイスはこの夏の早い時期に発表される可能性がある。
現在のSwitchと比べて段階的な改良が加えられた新しいモデルをリリースすることは完全に理にかなっている。今日の競争の非常に激しい環境では,それは単に常識的なことであり,ゲーム機メーカーであればどこでも,程度の差はあれそういったことを行っている。ニンテンドー自身,過去にニンテンドーDSとニンテンドー3DSシステムの強化されたバリエーションをリリースしたこともあるので,とくに驚きはないだろう。
その一方で,ニンテンドー3DSに代わるべく設計された小型のSwitchのバリエーションを理解するのは,それほど簡単ではない。Switchはすでに携帯ゲーム機であり,それに要求されることを見事に実現している。なぜそれをさらに小さくする必要があるのだろうか。それはなんの役に立つのか?
これは,ニンテンドー3DSが発売されてから数か月後の2011年に始まっている。その年の7月に,任天堂はニンテンドー3DSの残念な売上を報告して,デバイスの価格を250ドルから170ドルに下げると発表した。3DSの期待を裏切る業績には多くの理由があったが,その主な理由は,対象となる層にとっては高すぎるということだった。この問題は,発売時にゲームのポートフォリオが弱かったことから,当初の需要が軟調に推移して,さらに複雑になった。3DSは最終的には成功を収め,7,500万台が出荷された。これはXbox One以上の数字だが,総合的に見ると初期のダメージはまったく回復していなかった。
2011年後半までに業界の専門家やアナリストらは,3DSの不振には複雑な要因が数多く伴っていたにもかかわらず,原因を一つの非常に単純な仮説にまとめていた。つまりスマートフォンがこれからの主流であり,誰も二つめのデバイスを持ち歩きたくはないという判断だ。
結局,あなたは「外出先」で,本当にどれくらいゲームをすることを期待しているだろうか? あなたが電車の中で遊びたがっているのが単純な時間つぶしであるなら,スマートフォンは無料でたくさんのものを提供してくれるだろう。あなたがその判断に同意したかどうかは関係ない。業界のほとんどは当時それが状況の正確な読み方であると判断していた。そして欧米のパブリッシャはNintendo 3DSのサポートを即座にやめて,代わりにスマートフォンでマイクロトランザクション主導のビジネスモデルに目を向けた。
一方,「ハードコア」なゲームの代表的企業もまた,もはや携帯ゲーム機はゲームの世界に必要ないと見なしていた。「本物の」ゲームは,大きな予算と大きなグラフィックス,そして大きな爆発と,専ら大画面に属するものだと彼らは考えたのだ。代わりに目を見張るような1080 pのゲーム機を手にしたとき,誰も手のひらの上のゲーム機を顧みることはなかった。すべてがより大きく,より良く,より素晴らしいものであることが要求された。そうでなければ,まったく意味がないと思われていたのだ。
では,なぜわざわざ? その後何年経っても,そんなデバイスが必要だという証拠がまったくないのに,なぜもっと小さくて携帯性の高いNintendo Switchを発売するのだろうか。現在のモデルは目的にかなっている。ベッドに持ち運んだり,移動中はバッグに入れることができる。あなたはマリオカートやスマッシュブロスといったゲームをプレイするために友達のところに持っていくことができる。それが済んだら,自宅でFortniteやDoom用にテレビ接続することができる。それは機能しており,しかもうまく機能している。すでにSwitchは,携帯機の柔軟性と家庭用ゲーム機の完成度の間でバランスのよい位置をを見いだしていた。もっと小さいモデル ―テレビに接続することさえできないかもしれないもの ― は,確かに意味をなさない。
そこに問題がある。よりポータブルなSwitchは,ネット上でこれらのトピックについての議論を好む人々にとっては,実際にはあまり意味がない。
これは重要だ。小型で携帯性の高いデバイスがライフスタイルに適している,特定のゲームや特定のプレイヤー層というものが存在する。そして常に存在した。これらは今日でも業界が見過ごしがちなプレイヤー層だが,歴史的には任天堂のプレイヤー層の大部分を占めている。今後数か月から数年にわたってもそうだろう。
例を挙げよう。上のグラフは,2013年に任天堂が投資家に提示したものだ(参考URL)。これはニンテンドー3DSと一緒に「とびだせ どうぶつの森」を買った日本の消費者の年齢と性別を示している。
ゲームがリリースされた時点では,日本の3DSのプレイヤー層は男性69%,女性31%だった。それでも,どうぶつの森が3DSに移行したとき,ゲームのプレイヤーの56%が女性で,男性はわずか44%だった。このゲームは,より多くの女性 ―とくに20代と30代の女性― によるニンテンドー3DSの購入と使用を促した。6年後,とびだせ どうぶつの森は1200万本以上を販売し,その過程で3DSプレイヤーを大幅に多様化させている。
どうぶつの森やわがままファッション ガールズモードのようなゲームをプレイする人々の多くは,ゲームを始めるために50インチのテレビの前でソファに落ち着くことを望んでいない。これらはまさにスマートフォンでプレイする種類のものですが,適当なゲームが登場したときに,「カジュアルコア」のゲームをちょっとやってみるのにも向いている。そして,より軽くて扱いやすい小型かつ安価なデバイスは,現在のSwitchよりも理にかなっている。現在のSwitchは非常に高価で,おそらく必要以上にに洗練されていた。
次にポケモンがある。
2002年以来,すべての主要ポケモンゲームは平均1600万本の売り上げを記録してきた。また,このシリーズはオンラインプレイの分野でも進歩を遂げているが,それでもほかのプレイヤーと共有することは優れたソーシャルエクスペリエンスになる。ポケモンゲームを購入して遊ぶ人々の多くは,児童や大学生だ。彼らは,バスの中で遊ぶために,あるいはクラスで仲間と遊ぶために,ニンテンドー3DSを学校に持ち運んでいる。繰り返しになるが,より小型で,より耐久性があり,よりポータブルなデバイスは,この種のエクスペリエンスをずっと良いものにする。
携帯性はさておき,ポケモンに夢中になっている多くの子供たちにも兄弟姉妹と遊ぶ習慣はあるが,それを機能させるためには,世帯ごとに複数のSwitch本体を購入する必要があるだろう。それには300ドルかかる。繰り返しになるが,この層のプレイヤーにとって,より手頃な価格のSwitchのバリエーションは,現在のモデルよりもはるかに理にかなっている。
最後に,任天堂の本拠地である日本がある。
携帯ゲーム機は日本では長い間キングであり,据え置き機は,バスや電車の中で,またはテレビを必要とせずにゲームをプレイできるという便利さに後れを取っている。ニンテンドー3DSハードウェアの売り上げの約3分の1(約2500万台)は日本での売り上げであり,ほかのプラットフォームでこの売り上げに匹敵するものはない。現在日本で最も売れているゲーム機器であるSwitchでさえも,最初の2年間では3DSが達成した数字に迫ることはできていない(上のグラフ参照,メディアクリエイトより)。これに対処する唯一の方法は,―お察しのように― もっとポータブルでより手ごろな価格のモデルを投入することだ。それは平均的な日本の消費者のライフスタイルによりよく適合する。
2019年に登場する新しいどうぶつの森とポケモンソード/シールドがあれあば,今年任天堂がよりポータブルなNintendo Switchを発表するのは非常に理にかなっている。カプコンからは,Switchのための新しいモンスターハンターの話さえ出ている。そして,モンスターハンター:ワールドは西洋をターゲットにした作品だ。人はSwitchのゲームが,よりいっそう日本市場を包括していくと思うかもしれない。日本市場では,典型的にはゲームごとに約400万本が販売されている(※モンハンシリーズの話としても少し誤解があるようです)。日本では,モンスターハンターは主に各プレイヤーが自分の画面にアクセスできるローカル通信の協力ゲームとして扱われている。
これらの主要なソフトがすべてそろい始めたこともあり,より持ち運びに適したSwitchの新型が出る時期だというのももっともらしく感じられる。
実際,その目標は,単一のハードウェア世代内のすべてのデバイスが同じOSとアーキテクチャで動作することだけではない。将来のすべてのニンテンドーデバイスでも動作するよう,それらの間でのゲームの移植も容易にさせることだった(参考URL)。これは,新しいデバイスを発売する際のソフトウェアの枯渇を軽減するのに役立つだろう,と任天堂は考えたのだ。
「現時点では,Wiiソフトウェアをニンテンドー3DSに移植するには,その解像度だけでなくソフトウェア開発の方法もまったく異なるため,多大な労力が必要です」と,岩田 聡前社長は語っていた。「ニンテンドー3DSソフトウェアをWii Uに移植しようとしたときにも同じことが起こります。プラットフォームからプラットフォームへのソフトウェアの移行を,より簡単にすることができれば,これは新しいプラットフォームの発売期間におけるゲーム不足の問題の解決に役立ちます」
岩田氏はのちに詳しく説明している。「特定の事例を挙げると,あらゆるプラットフォームで採用されているプログラミング方法が一つであるため,Appleはさまざまなフォームファクタを持つスマートデバイスを次々と発売することができています。AppleはiOSと呼ばれる共通のプラットフォームを持っています。別の例はAndroidです。さまざまなモデルがありますが,さまざまなモデルで動作するAndroidプラットフォームでも,プログラミングするための一般的な方法が一つあるため,Androidはソフトウェア不足に直面することはありません。ニンテンドープラットフォームは,この二つの例のようになるはずです」
任天堂がこの考え方を追求するのであれば,仮説上の「Switch Mini」は比較的簡単に出すことができ,さらにレポートで示唆されているように「Switch Pro」にさえなるだろう。
Switchの売上高の増加について最近任天堂が行ったコメントと相まって,さまざまな目的のためのさまざまなSwitchモデルについての説得力のある事例がある。その好例:1月の投資家との話し合いで,現在の任天堂社長の古川俊太郎氏は,Switchのプレイヤーベースを拡大するための次のステップの一つは,家庭内に所有する複数のNintendo Switchに対する需要を生み出すことだと語っている。
「何人の家族がNintendo Switchを使用しているかを尋ねる世帯調査で,我々は一定数の世帯が1台のゲーム機で複数人が遊んでおり,いくつかの世帯ではすでに複数のゲーム機を購入していることを発見しました」と古川氏は語る。「今後は,ソフトウェアを提供するなどして『自分のNintendo Switchを所有したい』という消費者の間で需要を生み出すことを目指しています。1人1台とはいかなくても家庭内に複数のNintendo Switchがあるようにしたいですね」
古川氏はこれを実現するための鍵として「ソフトウェア製品」を挙げているが,それがすべてではない可能性が高い。どんな種類のソフトが発売されようと,1世帯で同じ種類の家庭用ゲーム機を複数のバージョンで所有して使用するのは比較的まれなことだ。しかし,複数の携帯機器? それはオリジナルのゲームボーイ以来のことであり,そして「Switch Mini」タイプのデバイスも同じようになるだろう。
※Ishaan SahdevはビデオゲームニュースサイトSiliconeraの元編集長です
今週初め(※元記事の掲載は4月28日),Wall Street Journalは,任天堂が今年後半にNintendo Switchの二つの新しいバリエーションを発表する予定であると報じた(関連記事)。一方の機種は,「熱心なゲーマーを対象とした拡張機能」を備えたNintendo Switchの最新版であることが示唆されている。もう一つは,ニンテンドー3DSに代わる初心者向けのゲーム機器として設計された,Switchのより小型でよりポータブルでより手頃なバージョンだという。
報告によれば,この二つのデバイスはこの夏の早い時期に発表される可能性がある。
現在のSwitchと比べて段階的な改良が加えられた新しいモデルをリリースすることは完全に理にかなっている。今日の競争の非常に激しい環境では,それは単に常識的なことであり,ゲーム機メーカーであればどこでも,程度の差はあれそういったことを行っている。ニンテンドー自身,過去にニンテンドーDSとニンテンドー3DSシステムの強化されたバリエーションをリリースしたこともあるので,とくに驚きはないだろう。
その一方で,ニンテンドー3DSに代わるべく設計された小型のSwitchのバリエーションを理解するのは,それほど簡単ではない。Switchはすでに携帯ゲーム機であり,それに要求されることを見事に実現している。なぜそれをさらに小さくする必要があるのだろうか。それはなんの役に立つのか?
「Switchはすでに携帯ゲーム機であり,それに要求されることを見事に実現しています。なぜさらに小さくする必要があるんですか?」
それはもっともな疑問だろう。結局,ほんの数年前まで,ゲーム業界は全体としてスマートフォンを支持しており,より小型でポータブルなゲームデバイスの廃止を求めているように見えた。これは,ニンテンドー3DSが発売されてから数か月後の2011年に始まっている。その年の7月に,任天堂はニンテンドー3DSの残念な売上を報告して,デバイスの価格を250ドルから170ドルに下げると発表した。3DSの期待を裏切る業績には多くの理由があったが,その主な理由は,対象となる層にとっては高すぎるということだった。この問題は,発売時にゲームのポートフォリオが弱かったことから,当初の需要が軟調に推移して,さらに複雑になった。3DSは最終的には成功を収め,7,500万台が出荷された。これはXbox One以上の数字だが,総合的に見ると初期のダメージはまったく回復していなかった。
2011年後半までに業界の専門家やアナリストらは,3DSの不振には複雑な要因が数多く伴っていたにもかかわらず,原因を一つの非常に単純な仮説にまとめていた。つまりスマートフォンがこれからの主流であり,誰も二つめのデバイスを持ち歩きたくはないという判断だ。
結局,あなたは「外出先」で,本当にどれくらいゲームをすることを期待しているだろうか? あなたが電車の中で遊びたがっているのが単純な時間つぶしであるなら,スマートフォンは無料でたくさんのものを提供してくれるだろう。あなたがその判断に同意したかどうかは関係ない。業界のほとんどは当時それが状況の正確な読み方であると判断していた。そして欧米のパブリッシャはNintendo 3DSのサポートを即座にやめて,代わりにスマートフォンでマイクロトランザクション主導のビジネスモデルに目を向けた。
一方,「ハードコア」なゲームの代表的企業もまた,もはや携帯ゲーム機はゲームの世界に必要ないと見なしていた。「本物の」ゲームは,大きな予算と大きなグラフィックス,そして大きな爆発と,専ら大画面に属するものだと彼らは考えたのだ。代わりに目を見張るような1080 pのゲーム機を手にしたとき,誰も手のひらの上のゲーム機を顧みることはなかった。すべてがより大きく,より良く,より素晴らしいものであることが要求された。そうでなければ,まったく意味がないと思われていたのだ。
「よりポータブルなSwitchは,実際には多くの意味を持っています。―ネット上でこういったトピックについての議論を好む人たちにとっては意味がないことですが」
またもや業界は従った。ゲームは大きくなり,より高価になった。オープンワールドも普通になった。これらの技術的な飛躍をサポートするために要求されるハードウェアも同様に強化されている。西洋パブリッシャによるニンテンドーDSとPSPのサポートは何年も前に終わっており,ニンテンドー3DSのみが日本のデベロッパと,ときおりインディスタジオによってサポートされてきた。では,なぜわざわざ? その後何年経っても,そんなデバイスが必要だという証拠がまったくないのに,なぜもっと小さくて携帯性の高いNintendo Switchを発売するのだろうか。現在のモデルは目的にかなっている。ベッドに持ち運んだり,移動中はバッグに入れることができる。あなたはマリオカートやスマッシュブロスといったゲームをプレイするために友達のところに持っていくことができる。それが済んだら,自宅でFortniteやDoom用にテレビ接続することができる。それは機能しており,しかもうまく機能している。すでにSwitchは,携帯機の柔軟性と家庭用ゲーム機の完成度の間でバランスのよい位置をを見いだしていた。もっと小さいモデル ―テレビに接続することさえできないかもしれないもの ― は,確かに意味をなさない。
そこに問題がある。よりポータブルなSwitchは,ネット上でこれらのトピックについての議論を好む人々にとっては,実際にはあまり意味がない。
これは重要だ。小型で携帯性の高いデバイスがライフスタイルに適している,特定のゲームや特定のプレイヤー層というものが存在する。そして常に存在した。これらは今日でも業界が見過ごしがちなプレイヤー層だが,歴史的には任天堂のプレイヤー層の大部分を占めている。今後数か月から数年にわたってもそうだろう。
例を挙げよう。上のグラフは,2013年に任天堂が投資家に提示したものだ(参考URL)。これはニンテンドー3DSと一緒に「とびだせ どうぶつの森」を買った日本の消費者の年齢と性別を示している。
ゲームがリリースされた時点では,日本の3DSのプレイヤー層は男性69%,女性31%だった。それでも,どうぶつの森が3DSに移行したとき,ゲームのプレイヤーの56%が女性で,男性はわずか44%だった。このゲームは,より多くの女性 ―とくに20代と30代の女性― によるニンテンドー3DSの購入と使用を促した。6年後,とびだせ どうぶつの森は1200万本以上を販売し,その過程で3DSプレイヤーを大幅に多様化させている。
「とびだせ どうぶつの森は,より多くの女性にNintendo 3DSの購入と使用を促した」
どうぶつの森に限ったことではない。ほかにも3DSの視聴者の多様化を助けたゲームは存在する。プレイヤーがファッションブティックを運営し,顧客のために衣装をまとめるわがままファッション ガールズモードシリーズは,ほぼ女性を対象としており,どうぶつの森同様に,多くの女性プレイヤーを集めるのに役立った。任天堂が3DSだけで四つのわがままファッション ガールズモードのゲームをリリースしたことは十分に成功している。どうぶつの森やわがままファッション ガールズモードのようなゲームをプレイする人々の多くは,ゲームを始めるために50インチのテレビの前でソファに落ち着くことを望んでいない。これらはまさにスマートフォンでプレイする種類のものですが,適当なゲームが登場したときに,「カジュアルコア」のゲームをちょっとやってみるのにも向いている。そして,より軽くて扱いやすい小型かつ安価なデバイスは,現在のSwitchよりも理にかなっている。現在のSwitchは非常に高価で,おそらく必要以上にに洗練されていた。
次にポケモンがある。
2002年以来,すべての主要ポケモンゲームは平均1600万本の売り上げを記録してきた。また,このシリーズはオンラインプレイの分野でも進歩を遂げているが,それでもほかのプレイヤーと共有することは優れたソーシャルエクスペリエンスになる。ポケモンゲームを購入して遊ぶ人々の多くは,児童や大学生だ。彼らは,バスの中で遊ぶために,あるいはクラスで仲間と遊ぶために,ニンテンドー3DSを学校に持ち運んでいる。繰り返しになるが,より小型で,より耐久性があり,よりポータブルなデバイスは,この種のエクスペリエンスをずっと良いものにする。
携帯性はさておき,ポケモンに夢中になっている多くの子供たちにも兄弟姉妹と遊ぶ習慣はあるが,それを機能させるためには,世帯ごとに複数のSwitch本体を購入する必要があるだろう。それには300ドルかかる。繰り返しになるが,この層のプレイヤーにとって,より手頃な価格のSwitchのバリエーションは,現在のモデルよりもはるかに理にかなっている。
最後に,任天堂の本拠地である日本がある。
携帯ゲーム機は日本では長い間キングであり,据え置き機は,バスや電車の中で,またはテレビを必要とせずにゲームをプレイできるという便利さに後れを取っている。ニンテンドー3DSハードウェアの売り上げの約3分の1(約2500万台)は日本での売り上げであり,ほかのプラットフォームでこの売り上げに匹敵するものはない。現在日本で最も売れているゲーム機器であるSwitchでさえも,最初の2年間では3DSが達成した数字に迫ることはできていない(上のグラフ参照,メディアクリエイトより)。これに対処する唯一の方法は,―お察しのように― もっとポータブルでより手ごろな価格のモデルを投入することだ。それは平均的な日本の消費者のライフスタイルによりよく適合する。
2019年に登場する新しいどうぶつの森とポケモンソード/シールドがあれあば,今年任天堂がよりポータブルなNintendo Switchを発表するのは非常に理にかなっている。カプコンからは,Switchのための新しいモンスターハンターの話さえ出ている。そして,モンスターハンター:ワールドは西洋をターゲットにした作品だ。人はSwitchのゲームが,よりいっそう日本市場を包括していくと思うかもしれない。日本市場では,典型的にはゲームごとに約400万本が販売されている(※モンハンシリーズの話としても少し誤解があるようです)。日本では,モンスターハンターは主に各プレイヤーが自分の画面にアクセスできるローカル通信の協力ゲームとして扱われている。
これらの主要なソフトがすべてそろい始めたこともあり,より持ち運びに適したSwitchの新型が出る時期だというのももっともらしく感じられる。
「ニンテンドー3DSハードウェアの売上の3分の1は日本からのものであり,ほかのプラットフォームの売上でこれに匹敵するものはありませんでした」
そして実際,Switchの小型版の一報は,驚くべきことではなかった ―理にかなっているという理由だけでなく,バリエーションというのはNintendo Switchが発表される前から任天堂が計画しているものでもある。スマートフォンやタブレットのように,将来のすべての任天堂デバイスがオペレーティングシステム,組み込みソフトウェア,さらにはソフトウェアツールキットさえも共有するという思想の下に,同社が最初に家庭用ゲーム機と携帯機のハードウェア開発グループを統合したのは2013年のことだった。これにより,任天堂は同じOSで実行される複数のハードウェアデバイスを比較的簡単に作成することができる。実際,その目標は,単一のハードウェア世代内のすべてのデバイスが同じOSとアーキテクチャで動作することだけではない。将来のすべてのニンテンドーデバイスでも動作するよう,それらの間でのゲームの移植も容易にさせることだった(参考URL)。これは,新しいデバイスを発売する際のソフトウェアの枯渇を軽減するのに役立つだろう,と任天堂は考えたのだ。
「現時点では,Wiiソフトウェアをニンテンドー3DSに移植するには,その解像度だけでなくソフトウェア開発の方法もまったく異なるため,多大な労力が必要です」と,岩田 聡前社長は語っていた。「ニンテンドー3DSソフトウェアをWii Uに移植しようとしたときにも同じことが起こります。プラットフォームからプラットフォームへのソフトウェアの移行を,より簡単にすることができれば,これは新しいプラットフォームの発売期間におけるゲーム不足の問題の解決に役立ちます」
岩田氏はのちに詳しく説明している。「特定の事例を挙げると,あらゆるプラットフォームで採用されているプログラミング方法が一つであるため,Appleはさまざまなフォームファクタを持つスマートデバイスを次々と発売することができています。AppleはiOSと呼ばれる共通のプラットフォームを持っています。別の例はAndroidです。さまざまなモデルがありますが,さまざまなモデルで動作するAndroidプラットフォームでも,プログラミングするための一般的な方法が一つあるため,Androidはソフトウェア不足に直面することはありません。ニンテンドープラットフォームは,この二つの例のようになるはずです」
任天堂がこの考え方を追求するのであれば,仮説上の「Switch Mini」は比較的簡単に出すことができ,さらにレポートで示唆されているように「Switch Pro」にさえなるだろう。
Switchの売上高の増加について最近任天堂が行ったコメントと相まって,さまざまな目的のためのさまざまなSwitchモデルについての説得力のある事例がある。その好例:1月の投資家との話し合いで,現在の任天堂社長の古川俊太郎氏は,Switchのプレイヤーベースを拡大するための次のステップの一つは,家庭内に所有する複数のNintendo Switchに対する需要を生み出すことだと語っている。
「何人の家族がNintendo Switchを使用しているかを尋ねる世帯調査で,我々は一定数の世帯が1台のゲーム機で複数人が遊んでおり,いくつかの世帯ではすでに複数のゲーム機を購入していることを発見しました」と古川氏は語る。「今後は,ソフトウェアを提供するなどして『自分のNintendo Switchを所有したい』という消費者の間で需要を生み出すことを目指しています。1人1台とはいかなくても家庭内に複数のNintendo Switchがあるようにしたいですね」
古川氏はこれを実現するための鍵として「ソフトウェア製品」を挙げているが,それがすべてではない可能性が高い。どんな種類のソフトが発売されようと,1世帯で同じ種類の家庭用ゲーム機を複数のバージョンで所有して使用するのは比較的まれなことだ。しかし,複数の携帯機器? それはオリジナルのゲームボーイ以来のことであり,そして「Switch Mini」タイプのデバイスも同じようになるだろう。
※Ishaan SahdevはビデオゲームニュースサイトSiliconeraの元編集長です
※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)