3D&バーチャルリアリティ展開催,最新VRの動向は?

 2018年6月20日から3日間,東京ビッグサイトで「3D&バーチャルリアリティ展」が開催されている。
 主に産業用VRの展示会として開催されていた歴史を持つが,最近では民生用品が発展していることもあって,さまざまな展示が行われるようになってきている。今回は,3DやVR以外に,併催されているイベントの情報も織り交ぜてお届けしたい。

●4K裸眼立体視ディスプレイ
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 4Kディスプレイを使った裸眼立体視ディスプレイがLet'sコーポレーションブースに展示されていた。8視差に対応し,2視差の映像入力をディスプレイ側で8視差に変換して表示する。メガネなどを利用せずに使え,3Dコンテンツを複数の人が同時に視聴できるというのが最大の利点だ。出力視差数が多く,左右に移動してもほぼ連続的に立体映像が視聴でき,視野角120度内のだいたいどこから見てもちゃんと立体に見える。
 テレビはどんどん4K化されているのだが,Ultra HD Blue-rayがそこまで普及しているとも思えず,なんとなくもったいない使われ方がされているのではないかという気がしている。裸眼立体視テレビは,一時東芝などが製品化していたものの,ほとんど普及しなかった。4K時代こそ裸眼立体視だという気がしているのだが。

同社ブースでは,スタンドアロンタイプのVRヘッドセットGOOVIS G2や3Dカメラも展示されていた。GOOVIS G2はAndroidベースで,フルHD×2画面のいわゆる4Kタイプだが,Amazon価格10万5049円とちょっとお高い
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●IDEALENS K3
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 IDEALENSは,スタンドアロンタイプのVRヘッドセットの草分け的存在であり,ゲーム用やコンシューマ用とは違った路線で展開しているデバイスだ。
 新型となるK3は夏発売とのことだが,画面サイズなどは従来と変わらないものの,使用するSoCがExynos 8890(Galaxy S7などに使われているSoC)に変わり,表示性能もアップしているという。リフレッシュレートが75Hzから90Hzに上がっており,この手のデバイスではほぼ最高品位のVR体験が楽しめそうだ。
 装着しやすいサイドバンドのないシステムは健在で,構造はよりシンプルになっているようだ。また,スピーカーやマイクが内蔵できるようになったことで,ヘッドフォンなしでより手軽に扱えるようになっている。

●Crystal LEDディスプレイ
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 直接VRと関係ないのだが,個人的に展示で最もよかったのはソニービジネスソリューションのLEDディスプレイだった。
 画素がすべてLEDなので色もコントラストも高く,ある意味で究極のディスプレイではある。HDR(10bit)表示に対応し,最大輝度は1000cd/m2となっている。120Hz表示にも対応するという。LEDなのでもっといけそうな気はするが,高解像度で超高リフレッシュレートだと映像信号の送信で限界がきそうだ。
 見たところまったくシームレスなのだが,構造としては,このディスプレイは40.3×45.3cmのユニットを18枚並べて構成されている。計算すると,135.9×241.8cmとなり,画面サイズでいうと109型くらいに相当することになる。ユニットとなるパネル自体も複数のパネルで構成されており,近寄って斜めから見るとその区切りは分かるが,普通に見ている分には映像に途切れはない。よくよく見ると画素の欠損ぽい部分は何箇所かあったが,一般的な視聴距離からだとまず分からない。価格は3000万円くらいとのこと。
 大きさはスケーラブルに変更でき,やろうと思えば壁一面のディスプレイ化も可能だろう(消費電力は知らないが)。今後が期待されるデバイスである。

●HPバックパックワークステーション
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 HPはゲーム用にバックパックPCを発売しているが,それのワークステーション版だ。デザインが変更されているほか,GPUがQuadro P5200になっており,CADツールなどのアプリケーションを動作させることができる。メモリを32GB搭載しているのも,ワークステーションらしいところと言えるだろう。
 なお。これは設計・製造ソリューション展で展示されていたものである。

●VRデバイス各種
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 BeRISEは広島市立大学と協力関係にあり,CGやVR関係のシステム・コンテンツを開発している会社だという(と,広島県出身の私が知らない大学だと思って調べたら1994年創立か。知らないわけだ)。会場では,フォークリフトのシミュレータ,ローラーコースターなど用のライド機器,VR歩行デバイスを展示していた。
 興味深いのは歩行デバイスだろう。これは腰の下あたりに丸い鉄柵を設け,その内部で歩行を行ったときの動きを検出するものとなっている。緩衝材の下には圧力センサーがあり,そのセンサーで脚がどの程度動いたかを検出して歩幅を推定しているようだ。

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●DeepFrame
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 ハーフミラーを使った大型MRディスプレイであり,ミラーの外枠部の寸法が1.4m四方ほどで65型の画面になるとのこと。ヘッドアップディスプレイなどと同じで,下に置かれた映像ソースをハーフミラーに反射させて風景越しに見せるものだと思って置けばよい。立体映像ではなく,空中映像といった感じではある。
 映像ソースとしては,湾曲有機ELパネルを使ったディスプレイの併用が想定されている。コントラストなどからして自発光のデバイスがよいのだろう。

●球体投影機
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 渋谷光学ブースに展示されていた球形のガラススクリーンにプロジェクタからの映像を投影するディスプレイ。球体の全面に映像を投影可能となっている。展示されていたディスプレイは2種類の大きさのものがあったが,どちらもプロジェクタを直結したような構造になっている。ソース映像は3:4のXGA映像なので情報量はさほど多くない。デモされていた地球儀表示などは実用的なアプリケーションといえるが,タッチスクリーン化できればもっと用途が広がりそうなのだが,ちょっと難しいだろうなあ……。

●VREZ CINEMA
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 取材時点では準備が間に合わっていなかったが,韓国BREZ INNOVATIONがサービス予定の「VREZ CINEMA」というVRシアタープラットフォームのシステム自体はシリコンスタジオの開発であるという。平たく言うとVRで映画館を再現したもので,コンテンツとしては立体映画や平面映画などが中心とのことだった。360度映像などは残念ながら扱わないようだ。2018年10月14日のオープンが予定されている。
 ただ,独自VRヘッドセット(約10万円くらいとのこと)専用とのことで,正直,サービス自体はちょっと厳しい気はする。VRヘッドセットは高解像度のそこそこよさそうなものではあるらしいのだが。
 公式サイトにはAppleマークとGoogle Playマーク,そしてCardboardマークが付いているので,一般的なスマホなどでも視聴は可能にはなるのだろう。

●空間認識
タブレット画面では実際にはない木を増やしている
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 NSENSEブースでは,主にスマートフォン向けのAR関連技術2点が出展されていた。NVISは空間認識技術で,単眼のカメラから距離を測定することを中心にした空間認識エンジンであるらしい。SLAMとも少し違うようで,オブジェクトの生成などまではやっていないようではあったが,ドローンの制御や自動運転にも使えるものだという。
 もう一方のARmeは画像(映像)認識技術だ。顔認識などのほか,任意のオブジェクトを登録しておけばそれも認識できる。ARデバイスが普及してきたらこのような技術も注目を浴びるようになるのだろう。

●なぜか3Dプリンタ
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 全然ゲームとは関係ないのだが,本イベントは昔から製造系のイベントと併催されいて,3Dプリンタなどと隣り合わせで展示されることが多かった。今回は会場は別だったのだが,最近の動向を少し確認しておこう。

 会場を見ると,大手のストラタシスが強い。
 カラープリンタで使える材料が追加され,クリアでビビッドな発色の材料が利用できるようになっている。アウディによるテールランプの作例は圧倒的だ。色の違う透明素材による造形が一発で出力できるという。
 また,カーボンファイバー入りのプラスチックを利用できる機種もあり,こちらはマクラーレンに使われてブラケットを4時間で作成できたとのことだった。
 また,デジタルモールド(3Dプリンタで金型を作るようなこと)での精度や仕上がり問題に対応して,少し肉厚に削りしろを取って主力力したものを別のデバイスで研磨してクオリティを上げるなどといったソリューションも展示されていた。

アウディのテールランプのようなクリアパーツも一発成形できる。右はカーボンファイバー入り樹脂を扱える3DプリンタFortus 380CF
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左が出力したもの。焼結すると右のサイズになるらしい?
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 金属3Dプリンタというと高価なものばかりなのだが,比較的(※相対値)安価な製品も展示されていた。BruleのDesktop Metal Studio Systemがそれだ。金属粉ないしセラミック粒子をポリマーで固めて成型していく。
 ただ,出力すればすぐに結果が手に入るわけではなく,できあがったものを溶液に数時間浸してポリマーを除いたのちに焼結するといった過程を経る必要がある。
 気になるヒケはやはり出てくるようで,最初は「1%以上」と聞いていたのだが,出力後のものと焼結跡のものを見せてもらうと明らかに大きさが違う。聞くと「20%程度」とのことだった(それではちょっと使いにくすぎるだろうとは思うのだが,このあたり日本語でのやり取りで意思疎通が取れていたかは自信がない)。
 レーザーやほかの方法で金属粉末を加熱し加工していくタイプの3Dプリンタは1億円くらいするわけだが,この方式なら3000万円くらいで済み,導入時に電源の心配や安全対策なども必要なく,デスクトップで使えるくらい手軽である。いくつか欠点はあるが,予算と用途次第では魅力的な製品かもしれない。


砂場での溶岩シミュレーション。砂の高さを読み取って溶岩を流すほか,さまざまなインタラクトができる
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卵型の椅子型スピーカーVRS-1。12.2chサウンドが体験できる。イベント期間中はアンプ2個をつけて特別価格で提供中

3D&バーチャルリアリティ展公式サイト