【月間総括】日本ゲームを海外へ。国内コンシューマ市場は復活するか?

 今月は,国内サードパーティが実は海外での販売比率が高い,あるいは販売数を伸ばしているという話をしたい。

 まず,その前に足下では,PlayStation 4の品薄が深刻である。原因は,「モンスターハンターワールド」のヒットとされている。エース経済研究所では,ダウンロード版を含め,国内の実売は270万本を超えたと推測している。確かにPS4に10%程度の牽引効果が想定されるため,ハード販売が通常より30万台程度の押し上げされる要因になったと思われる。
 その一方で,供給が追い付いていないのである。4月に入ってからは週に1.5万台に満たない数量しか供給できていない。以前Nintendo Switchの生産で説明したのと同様に,半導体と電子部品の需給がタイトになっており,簡単には増産できないのである。PS4は生産性が高い優れた製品ではあるが,データセンター投資やマイニング需要の盛り上がりで半導体・電子部品需給がひっ迫していることが大きな要因なので,改善にはしばらく時間がかかるだろう。

 では本題に入ろう。各社の海外比率に関する話だが,2017年度の決算はまだ出揃っていないため,前期実績が出ているコーエーテクモホールディングスは,2019年3月期計画を含む販売本数,スクウェア・エニックス・ホールディングス,バンダイナムコホールディングスは,2018年3月期は会社計画を含めた2015年度以降の販売本数をグラフ化してみた。


 コーエーテクモホールディングスは,ここ4年間で海外比率を大きく伸ばし,約70%に達した。意外かもしれないが,既存の無双シリーズやアトリエなどがアジア圏で販売を伸ばしたこと,仁王といった国内外でヒットしたIPの寄与によるものである。
 今回の決算発表会では,さらにグローバル化を進める方針を示しており,成長が著しい中国市場の開拓を進める方針を示した。
 テクモは,以前からNINJA GAIDEN,DOAなど比較的北米に強い傾向があった。継続的なアジア圏の経済発展で賃金が大きく上昇し,購買力が増加した結果,コーエータイトルもアジア圏での販売が伸びているのである。


 次にスクウェア・エニックス・ホールディングスである。
 2018年3月期は国内比率の高い「ドラゴンクエストXI」を発売したため,国内比率が上昇する見通しになっているものの,総じて80%前後と海外比率が高くなっている。
 英国のゲームソフトメーカーEidosを傘下に収めたこと,「ファイナルファンタジー」シリーズやキングダムハーツなど海外で販売できるタイトルを持つことが大きい。


 最後にバンダイナムコホールディングスである。実に販売本数の9割近くが海外となっている。アニメ系タイトルが日本だけでなく世界で受けるようなったこと,旧ナムコ系のタイトルも海外で強いこと,さらに同社が販売を手掛けるダークソウルシリーズなどが寄与している。
 日本のサードパーティは30年前と比較してシェアが下がっていることもあり,海外での販売は低調だと思われているが,大手3社の動向を見てもそれは感じられない。
 ここでは示していない任天堂も,80%以上が海外での販売となっており,日本メーカーが海外で販売ができていないわけではない。

 エース経済研究所では,日本のサードパーティのシェアが下がった要因は,フォトリアル対応の遅れといった技術力に依存するものではないと考えている。フォトリアル対応に遅れたためならば,近年の「ペルソナ5」や「ドラゴンボールファイターズ」の世界的ヒットによる国内ゲームの復活は説明できない。
 エース経済研究所がサードパーティへの取材を通じて調査したところ,国内コンシューマゲーム市場の縮小によって,従来の国内で開発費を回収しつつ海外市場で利益を稼ぐビジネスモデルが成り立たなくなったことのほうが遥かに大きな要因と考えている。このため,中堅タイトルの続編を開発することが難しくなり,国内でもタイトル数減少→海外ローカライズタイトルの減少→シェア低下につながったと考えている。

 昨年から続くSwitchの大ヒット,PS4向け「モンスターハンターワールド」のヒットで,ある程度,国内のゲーム専用機市場が復活すると考えている。国内市場が拡大すれば,サードパーティも国内で以前のビジネスモデルを復活できるからだ。しかも,Switchは3DSやWii Uのようなアーキテクチャの断絶がなく,移植がしやすい。
 さらに,上記で触れた通り,アジア圏で,購買力が増加していることも見逃せない。実際に訪日旅行者(インバンウンド)の消費が百貨店の業績を大きく伸ばした事例もある。アジア圏はキャラクターなど日本と好みが近い部分があり,今後は販売を伸ばせるだろう。日本・アジア市場で開発費を回収できるようになれば,タイトル数を増やすことも可能になる。
 日本・アジア市場の拡大で悲観論が多かった日本のコンシューマサードパーティは大いに脚光を浴びることになるだろう。
 次回は「ニンテンドーラボ」について触れてみたい。