Vive ProとはどんなVRヘッドセットなのか? スペックから読み解く新次元VR
CES 2018に合わせて発表された新世代のVRヘッドセット「Vive Pro」だが(関連記事),ここでは公式サイトの情報などからこのVRヘッドセットの素性を探ってみたい。
■Vive Proの仕様
画面:3.5インチ有機ELパネル×2
解像度:片目あたり1440×1600ピクセル(合計2880×1600)
リフレッシュレート:90Hz
視野角:110度(対角)
オーディオ:Hi-Res認定ヘッドセット
音声入力:組み込みマイク
接続:USB 3.0 Type-C,Displayport 1.2,Bluetooth
センサー:SteamVR Trackingセンサー,加速度センサー,ジャイロスコープ,近接センサー,IPDセンサー
調整機構:レンズ距離,IPD(瞳孔間距離),ヘッドフォン,ストラップ
Vive Proでは有機ELパネルのピクセル数が2880×1600ドットと78%アップしており,それに伴って接続方式もHDMIからDisplayport 1.2に変更されている。ピクセル密度も上がっているため,画面の粒状感などは軽減されているものと思われる。
ヘッドセット全面の凸凹,つまりベースステーションからのレーザーを拾う赤外線センサー部はほぼ旧式のViveと同じ位置と個数のようである。
映像が90fpsで視野角が110度なのも同じだ。とくに視野角はソフトの互換性を保つうえでも重要になると思われる。パネルの縦横比も揃えられているので上下左右の視野角も変わらない。なお,110度というのは対角の数字なので左右と上下に直すと,
左右102.6度 上下69.5度
のような視野角になる(計算が違っていたらゴメン)。
ムービーを見る限り,接眼レンズがフレネルレンズなのは変わらずだ。フレネルレンズだと通常時は問題なくても逆光時にあからさまに輪っかが出てくるので,個人的にここは改善してほしかった部分ではある。低反射コーティングくらいはされているとよいのだが。
新たに標準装備となったヘッドフォン部分はサイドのフレームから吊り下げられたような構造だ。ヘッドフォンを取り付けるため,サイドのフレームは大きく上方に回り込み,イヤパッドを制限しないデザインとなっている。
スピーカーを支えるステーはがっちり固定されており,2軸の回転機構がある。公開されているビデオだけでは詳細は確認できないのだが,おそらくエンクロージャ部がステーに沿って移動するタイプだと思われる。Riftでは取り付け位置側が可動だったのだが,Vive Proはイヤカップが動くのだろう。このヘッドフォン部分は取り外し可能だ。
サウンドはハイレゾ化されるとのことだが,どこまで効果があるものなのかは正直分からない。
搭載されたセンサー群を見てみよう。Steam VR Trackingセンサーはベースステーションの信号を受け取るくぼみの部分だ。
加速度センサーやジャイロスコープは旧式でも搭載されてたものだ。近接センサーとは,触れなくても近づくだけで反応するタイプのセンサーで,おそらくはヘッドセットの装着チェックで使われているもののことだろう。
そして新たにIPDセンサーが搭載され,おそらく瞳孔間距離の調整で補助が行われるのであろう。手動の調整機構があるため自動調整ではないようだが,適切な設定かを判定してくれれば大いに役立つ。
調整機構では,ヘッドセット部左側面下のボタン部を押すことでヘッドセット本体が前後に移動し,目とレンズの距離を調整できるようになった。主にメガネをかけている人に朗報だろう。……念のために旧式Viveのスペックを見てみると,旧式でもレンズ距離は調整できることになっていてちょっと驚いた。内側の横の丸いのを回す? うちのはまったく動かせそうにないのだが,新しい製品では動くのだろうか。ちょくちょく改良されているとのことだし……。
PSVRのような背面のスクリュー式バンドアジャスタ部は,オプション機器ではすでに取り入れられていたものだが,Vive Proで正式採用となっている。
ヘッドセット本体部の重心位置が最適化され,また支点となる部分がヘッドセット本体の付け根部分と後頭部のヘッドバンド部分に分散され負担が減少されている。背面部を見ると,単なるヘッドバンドではなく,下向きにサポーターが付いているのが分かるだろう。ここで後方部の加重を分散してがっちりホールドするようになっている。
さらに顔に直接接触するフェイスガスケットの表面積が24%拡大されており,遮光性を上げるとともに本体部の重量をストレスなく支えられるようになっているという。鼻当ての部分も従来のくぼんだゴムの構造から,2ピースの調整可能なものに変更されている。
ワイヤレス化もあってか,上にワイヤレスアダプタを取り付けたうえでそれなりにプレイヤーが動いてもしっかり装着が維持されるように,装着の安定性はかなり気を使われていることが分かる。
2眼になったカメラではAR/MR的な展開が期待されるのだが,現在発表されているシステムはちょっとそれらとは異なる使われ方がされている。Chaperone(監視人の意)テクノロジーにより外界を認識し,そのアウトラインだけをバーチャル空間に表示するというのだ。以前のシステムでは設定した境界部に近づくと檻のようなものが表示されていたのに対し,実空間の状態を認識して,実際の障害物を把握したプレイができるようだ。
Vive Proではヘッドセットだけでなく,トラッキング技術でも進化が見られ,SteamVR Tracking 2.0でトラッキングエリアの拡大と精度の向上,マルチプライヤーのサポートなどが挙げられている。
また,注目されるワイヤレスでの映像転送にはIntelのWiGigが使われている。HTC系列のTPCastで開発していたWirelessHDベースのものではなく,Intelの技術を採用したというのが興味深い。WiGigはTPCastよりもやや遅延が大きいとされているが,おそらく最悪で1フレーム弱の遅延になるものと思われる。
ワイヤレス,AR/MRサポート(?)などいろいろと次世代を先取りしたスペックのVive Proだが,コントローラは旧式のままで,いわゆる「Knuckles」は使われていない。まだ発売までに使い勝手は進化していきそうである。
OculusのSata CruzがPCを内蔵し,In side Outなトラッキング機構を搭載する予定なのに対して(関連記事),Viveは別の解を示しているのが興味深い。いまのところどちらもまだアイトラッキングには手を出していないが,OculusはEye Tribeの買収で明らかにそれを取り入れようとしていることが分かる。今後,両社の新製品がが登場し,VRデバイスの次元をまた一つ引き上げてくれることに期待したい。
■Vive Proの仕様
画面:3.5インチ有機ELパネル×2
解像度:片目あたり1440×1600ピクセル(合計2880×1600)
リフレッシュレート:90Hz
視野角:110度(対角)
オーディオ:Hi-Res認定ヘッドセット
音声入力:組み込みマイク
接続:USB 3.0 Type-C,Displayport 1.2,Bluetooth
センサー:SteamVR Trackingセンサー,加速度センサー,ジャイロスコープ,近接センサー,IPDセンサー
調整機構:レンズ距離,IPD(瞳孔間距離),ヘッドフォン,ストラップ
変わらない部分と変わった部分
Vive Proでは有機ELパネルのピクセル数が2880×1600ドットと78%アップしており,それに伴って接続方式もHDMIからDisplayport 1.2に変更されている。ピクセル密度も上がっているため,画面の粒状感などは軽減されているものと思われる。
映像が90fpsで視野角が110度なのも同じだ。とくに視野角はソフトの互換性を保つうえでも重要になると思われる。パネルの縦横比も揃えられているので上下左右の視野角も変わらない。なお,110度というのは対角の数字なので左右と上下に直すと,
左右102.6度 上下69.5度
のような視野角になる(計算が違っていたらゴメン)。
ムービーを見る限り,接眼レンズがフレネルレンズなのは変わらずだ。フレネルレンズだと通常時は問題なくても逆光時にあからさまに輪っかが出てくるので,個人的にここは改善してほしかった部分ではある。低反射コーティングくらいはされているとよいのだが。
スピーカーを支えるステーはがっちり固定されており,2軸の回転機構がある。公開されているビデオだけでは詳細は確認できないのだが,おそらくエンクロージャ部がステーに沿って移動するタイプだと思われる。Riftでは取り付け位置側が可動だったのだが,Vive Proはイヤカップが動くのだろう。このヘッドフォン部分は取り外し可能だ。
サウンドはハイレゾ化されるとのことだが,どこまで効果があるものなのかは正直分からない。
搭載されたセンサー群を見てみよう。Steam VR Trackingセンサーはベースステーションの信号を受け取るくぼみの部分だ。
加速度センサーやジャイロスコープは旧式でも搭載されてたものだ。近接センサーとは,触れなくても近づくだけで反応するタイプのセンサーで,おそらくはヘッドセットの装着チェックで使われているもののことだろう。
そして新たにIPDセンサーが搭載され,おそらく瞳孔間距離の調整で補助が行われるのであろう。手動の調整機構があるため自動調整ではないようだが,適切な設定かを判定してくれれば大いに役立つ。
ボタンを押してレンズの距離を調整できる |
旧型でもできるらしい…… |
PSVRのような背面のスクリュー式バンドアジャスタ部は,オプション機器ではすでに取り入れられていたものだが,Vive Proで正式採用となっている。
ヘッドセット本体部の重心位置が最適化され,また支点となる部分がヘッドセット本体の付け根部分と後頭部のヘッドバンド部分に分散され負担が減少されている。背面部を見ると,単なるヘッドバンドではなく,下向きにサポーターが付いているのが分かるだろう。ここで後方部の加重を分散してがっちりホールドするようになっている。
ワイヤレス化もあってか,上にワイヤレスアダプタを取り付けたうえでそれなりにプレイヤーが動いてもしっかり装着が維持されるように,装着の安定性はかなり気を使われていることが分かる。
2眼カメラで実現されるChaperoneシステム
Vive Proではヘッドセットだけでなく,トラッキング技術でも進化が見られ,SteamVR Tracking 2.0でトラッキングエリアの拡大と精度の向上,マルチプライヤーのサポートなどが挙げられている。
また,注目されるワイヤレスでの映像転送にはIntelのWiGigが使われている。HTC系列のTPCastで開発していたWirelessHDベースのものではなく,Intelの技術を採用したというのが興味深い。WiGigはTPCastよりもやや遅延が大きいとされているが,おそらく最悪で1フレーム弱の遅延になるものと思われる。
ワイヤレス,AR/MRサポート(?)などいろいろと次世代を先取りしたスペックのVive Proだが,コントローラは旧式のままで,いわゆる「Knuckles」は使われていない。まだ発売までに使い勝手は進化していきそうである。
OculusのSata CruzがPCを内蔵し,In side Outなトラッキング機構を搭載する予定なのに対して(関連記事),Viveは別の解を示しているのが興味深い。いまのところどちらもまだアイトラッキングには手を出していないが,OculusはEye Tribeの買収で明らかにそれを取り入れようとしていることが分かる。今後,両社の新製品がが登場し,VRデバイスの次元をまた一つ引き上げてくれることに期待したい。