[CJ2017]視野角210度のStarVRがポジショントラッキングに対応。日本展開もあるか?
本稿では,ChinaJoy会場のBTBエリアのみに出展していたVRヘッドマウントディスプレイ(以下,
StarVRは,スウェーデンのStarbreezeが開発したVR HMDで,最初から一般家庭用ではなく,業務用のハイエンド製品を目指して作られていたものだ。2015年の時点で,解像度は「5K」をターゲットとして展開しており,左右の目に独立した液晶パネルを用意したことによる,特徴的な「くの字型」の概観が目を引く。
詳しくは,E3 2016における西川善司氏の記事を見てもらうのが分かりやすいだろう。
[E3 2016]5K解像度のVR HMD「StarVR」最新試作機を体験してきた。製品化に向けた画質の向上を実感
StarVRの開発については,E3 2016の直前にAcerとの協力体制が取られることが決まっており,今回の出展はその成果が確認できる機会とも言えそうだ。
さて,E3 2016時点のStarVRでは,両目用のパネルに2560×1440ドットの液晶パネルが2枚使われていた。2016年の記事では「液晶パネルを有機ELパネルに置き換えるかも……」といった話もあったが,今回体験した機材は,実際に有機ELパネルが使われていた。話どおりに進んだようだ。
具体的には,HMDやコントローラの各部に赤いLEDを設置して,それを天井部にある多数のカメラから捉えるという,モーションキャプチャシステムに近いものが採用されている。
ちなみに,使われているLEDは,Riftのような赤外線LEDではなく,可視光のものなので,VR HMDや銃などが見た目的にも光っていて,独特の雰囲気をかもし出している。
筆者はStarVRを体験するのは今回が初めてだったので,インプレッションを交えてデモの模様を紹介してみたい。
まずはHMDの視界についてだ。2枚の有機ELパネルを斜めに配置したことで,視界全体は完全にリニアというわけにはいかず,左右に微妙な不連続線が存在する。中央部は重なっているのだが,両サイドは1枚のみでカバーする形だ。当然,サイドは立体視できないことになるが,そもそも視界の右端などは左目で見えない範囲なのであまり問題ないのだろう(※実際は少し中央寄りだが)。
装着直後は,視界の問題が少し気になるものの,ゲームが進んでいくとほぼ気にならなくなる。このあたりは好き嫌いが分かれるかもしれない点だ。
次に体験したゲームは「The Mummy: Prodigium Strike」というFPSだ。見当のついた人も多いだろうが,ユニバーサルスタジオによる映画のVRゲーム版となるものである。
StarVRを装着したプレイヤーは,手にポジショントラッキング用のLEDが付いた銃型のコントローラを持ち,Prodigium Agent(対怪異部隊?)の一員としてヘリコプターの座席という設定の(ガタガタ揺れる)ベンチに座ってゾンビ(アンデッド?)が大量発生した地点に向かっている。
移動するゾンビの群れを機上から銃撃し,着陸後はヘリの周囲を拠点に襲い来るゾンビを撃ちまくるといった感じの内容だ。
「そこはヘリじゃ飛べないだろ」とか「仲間の兵士が泰然としすぎ」とか少し突っ込みどころはあるが,窓を覗き込むような感じのVR HMDが多いなかで,開けた視界というのは新鮮だ。
ただ,広さの感動は装着時が最も大きい。見え方自体は自然なので,慣れると当たり前になって,ありがたみはちょっと薄れるかもしれない。
一方,新しく追加されたポジショントラッキングシステムは,広さの制限はよく分からなかったものの,現在10×30mのルームも作られているので,多人数でも大丈夫とのこと。話の途中で960fpsという単語が出てきていたのだが,おそらくトラッキングのサンプリングレートのことだろう。
現在,米国・ロサンゼルスで,すでにStarVRを使ったVR施設が稼動を開始しているという。今後は,Acerの地元である台湾や中国本土へも進出していくのだろう。詳しいことは聞けなかったが日本からも問い合わせはきているとのことだった。
視野角210度の開けた視界は,情報量としての価値よりも臨場感を高めることに貢献してくれる。業務用VR施設であれば,家庭用では味わえない次元の体験ができることはアピールポイントになるはずだ。VRの没入感をさらに高める機材として,日本でも導入されることに期待したい。