GTMF 2017,展示会場に見る最新ゲームツール&ミドルウェアの状況

GTMF 2017,展示会場に見る最新ゲームツール&ミドルウェアの状況
 2017年7月14日,東京・秋葉原UDXで「Game Tools & Middleware Forum 2017 Tokyo」が開催された。このイベントは国内のゲームツール,ミドルウェア関係企業の多くが集うことで知られているが,毎年,大阪と東京の2箇所で開催されており,今回は東京会場でのイベントのレポートとなる。GTMFでは各企業による専門的なセッションのほか,最新製品の展示も行われていた。ここでは展示会場の様子をお伝えしてみたい。

GTMF2016東京会場ブースレポート(昨年の模様)


●サードウェーブデジノス
 展示会場入り口付近にブースを構えたサードウェーブデジノスでは,クリエイター向けPC RayTreckを中心とした展示が行われていた。今回の目玉になるのは,PCのレンタルサービス開始だそうで,たとえばVR開発でUnreal Engine 4が動くPCといった,一般的なPCレンタルでは取り揃えていないような製品を最短期間1日,最短納期2日で貸し出すという。もちろん,長期も可能で,そこまで高性能ではない一般的なPC,ノートPCも取り揃えられている。ドスパラのWebサイトで扱っているPCならすべてレンタル可能とのこと。
 価格は,一番高いものだと,Core i7 7700K+GeForce GTX 1080Ti,メインメモリ16GB,SSD 256GB+HDD 2TBといった構成のPCで1か月4万8000円から。一覧を見るとCADツールなどにも対応できるQuadro搭載PCも用意されている(搭載OSがWindows 10 Proなのかは不明)。
 ハイエンドPCだと,急な故障で代替機がすぐに用意できないこともあるだろう。短期の設備拡充などが必要になったら,このサービスを思い出すといいかもしれない。

ドスパラパソコンレンタルページ



●ツクモ
 ツクモブースでは,VR用PCやグラフィックスカード,スマートフォンに取り付ける360度カメラなどが展示されていた。360度カメラは,USBに接続するタイプ(Android用)とLightning端子に接続するタイプ(iOS用)の2種類があった。画質的にはリコーTHETAとだいたい同等と言われたが,動画解像度は最大3Kなので(※ただしスマホの機種を選ぶ),2KのTHETAよりは解像度が高い。
 なお,展示はされていなかったが,さらにスマホ用ではない,ちゃんとした360度カメラも販売されている。Insta360 Proらは立体視撮影対応で,単なる360度映像ではない,VR映像と呼べるものも撮影できる代物だ。出力映像解像度は8Kの2D映像か6Kの3D映像,解像度を4Kにすると100fpsでの2D撮影もできる。6個のレンズによる映像はカメラ内で自動的にスティッチング処理をしてくれるので,手間も時間もかけずに扱える。Proという名前のとおり,プロ用機材なので定価では税別41万4000円となかなかのお値段だが,会場内では特別価格39万8000円で販売されていた。

ツクモ公式サイト


●GMOクラウド
 通信エンジンPhotonとHTML5ベースのゲームエンジンPlay Canvasを展示していたGMOクラウド。新たにPhotonに加わったTrueSyncは,Unityでマルチプレイヤー時の物理エンジンを完全に同期させるものだという。これまでのPhoton Unity Networking(PUN)などでは,クライアントごとに実装されている物理エンジンに対して,通信の遅延などにより同時性が保障されない。物理エンジンはリアルタイムに動作するが,操作タイミングが違えば結果も異なるのは当然だ。TrueSyncでは,PUNの機能に加えて独自の物理エンジンを持っており,ユーザーの入力を予測して完全同期を行うという。ある意味,投機的実行なので外れる場合もあるわけだが,予想が外れた場合は巻き戻しが発生する。そのあたりが迅速かつ最小限で自動的に行われるというのがウリなようだ。
 また,Webページ上でゲームを作るPlay CanvasではVRがアピールされており,組み立て式簡易型VRゴーグルが配布されていた。

Photon Engine公式サイト


●グランドステージ
 グランドステージは,ゲーム業界ではなくイベント業界の会社である。今回のGTMFやUniteなど,ゲーム業界系イベントを多く請け負ってきており,イベントにブースを出してみたいがどうしたらいいのかよく分からないといったゲーム会社に向けたアピールが行われていた。
 ゲーム開発とはまったく関係ないのだが,GTMF参加者や出展企業に,東京ゲームショウ出展のアピールを行っていた。
 また,サードウェーブデジノスと組んで,VR体験施設の設置サービスなども手がけており,ルームスケールの施設でのケーブルの天井レール配線を含む基本プランからグリーンバッククロマキーを想定したプランなどが提案されていた。

グランドステージ公式サイト


●ニフティクラウド
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 ニフティクラウドでは,ニフティクラウドmobile backend(NCMB)関連の展示を行っていた。NCMBとは,スマホアプリで定番的に使われるネットワークサービスをパッケージ化して簡単に利用できるようにしたもので,「サーバーレス」つまり,サーバーの存在を意識せずにネットワークアプリを構築できる。
 デモでは,どんなゲームにもありそうな「お知らせ」機能や「フレンドリスト」といったコミュニティ管理,「キルランキング」のようなランキング管理,「みんなスクショ」ではスクリーンショット共有,「アイテムガチャ」ではガチャ機能など,NCMBで提供される機能が紹介されていた。そのほかにも,プッシュ通知や端末引継ぎなど,スマホゲームで利用されそうな機能が用意されている。

NIFTY Cloud mobile backend公式サイト


●アクセル
 アクセルは,動画再生ミドルウェアH2MDと音声ミドルウェアC-FAを展示していた。昨年はインディーズライセンスがあるということで,一條氏大喜びのH2MDのみだったが,今年は音声も扱うようになり,ミドルウェア全体をAXIPというブランドでまとめていた。
 H2MDについては昨年から変わったところはとくにないとのことだった。新たに追加されたC-FAは,独自のコーデックで圧縮された音声を再生するミドルウェアで,とくにAndroid端末で見られる発音遅延の低減を意識したものだという。
 また,処理も軽く,音声トラックを8トラック16チャンネルで再生した場合,Unityの標準だとCPU負荷が20%に達し,AD PCMだと5%程度になるが,C-FAでは高圧縮で8%とリーズナブルな負荷に収まるとのことだった。ただ,残念ながらC-FAにはインディーズライセンスは用意されていないとのこと。

AXIP公式サイト


●丸紅情報システムズ
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 TestPlantはセッションレポートですでに紹介されているのだが,デモの様子を紹介してみよう。
 このツールは,オンラインゲームのテストを自動化するものだ。モバイル端末をVNCでリモート操作しつつPCにスマホ画面を取り込み,その絵を解析しつつ操作を行うものとなる。たとえば,画面内に「Attack」ボタンが現れたら,そこを押し,2秒後の画面をキャプチャして保存する……などといった運用ができる。
 膨大な時間が掛かるガチャのチェックなども,指定したタイミングでボタンを押し,アイテムが出たタイミングの画面をキャプチャして保存し,保存した画像群を自動解析することで,実際のガチャの出目を確認できる。
 ブースではFGOを自動化するスクリプトが実行されていたが,キャラが画面に登場すると,それをトリガーに処理が進み,「ボタンがアクティブになるまで100秒待つが,ボタンがアクティブになり次第押す」といった指定ができることが分かる。
 取り込んだゲーム画像に対して,画像認識やOCR処理で状況を判別しつつ自動処理ができるシステムはかなり柔軟に使えそうだった。

TestPlant公式サイト


●ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン
 ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンブースでは,いくつかのデモが行われていた。現時点でも数多くのプラットフォームに対応しているUnityだが,会場ではAMDのSoCを使ったパチスロ用の組み込み基板上でデモを動かしている様子が公開されていた。使われていたSoCはx86系CPUコアとGCN世代のGPUコアなどを組み込んだものである。デモの内容は自動操作によるスロット処理の確認で,スロットの出目でさまざまな演出が展開されるというものだ。OSはUbuntuで,演出の一部にCRI・ミドルウェアのSofdec7が使われていた。
 その横ではUnity 2017.1のCinemachineのデモ,さらにその横には見慣れないデモが置かれていた。なにかと聞いてみると,Asset Storeのデータで組まれたシーンのデモとのことだった。GI処理でリアルに描写された家の中をウォークスルーで回っていくようなデモだったが,建築系などにアピールする目的のようだ。
 一番端に置かれたタブレットでは,ユニティちゃんが踊っていたのだが,ユニティちゃんトゥーンシェーダ2.0のデモだと思って見ていたが,どちらかというとMetal対応のデモだそうだ。MetalはMacOSやiOS用の低レベルグラフィックスAPIで,パフォーマンスアップもさることながら,会場では色の再現性が強調されていた。Metal対応以前はPCと同じ色が出せなかったのだが,Metal対応でほかの機種と同じ色が出せるようになるのだそうだ。

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン公式サイト


●Epic Games Japan
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 Epic Games JapanブースではUnreal Engine 4の機能紹介ビデオを流しつつ,Sequencerのデモが行われていた。このツールは,ノンリニア系のビデオ編集ツールのようにゲームシーンを編集できるというもので,同社の伝統的なツールMatineeの後継,UnityでいえばTimelineに相当するものだ。とくに最新の機能というわけではないのだが,それだけに運用ノウハウも溜まっており,すでに多く活用されているとのこと。カットシーンの作成など,ゲーム用途でも十分に活用できるツールだが,最近ではゲームエンジンの映像制作用途での活用が盛んに行われており,その中核を成すツールともなっている。

Epic Games Japan公式サイト


●wise
 wiseは元々は映像制作系の会社だが,最近ではVRゲームにも進出しており,PSVR用に発売されている「眠れぬ魂」のデモが行われていた。これは360度映像をベースに,プレイヤーの行動をトリガーにしたイベントを取り入れた映像作品で,ストーリーが分岐する仕組みを取り入れている。3DCGのゲームとは違った作り方のインタラクティブな360度映像だ。
 映像は室内を写したもので,プレイヤーの視線などに応じて,注視していると変化したり,逆に視界外に出ると映像が切り替わっているような演出が取り入れられている。軽いホラー系で,デモの後半ではかなり派手に声を上げる人が続出していた。

wise公式サイト


●Save Point
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 MUGENNUPでは,進行管理ツールSave Pointを展示していた。これは,ガントチャートやメッセージボードを使った進捗管理ツールで,大量のアセットを使うクリエイティブな現場での作業効率を改善するものである。機能的には後出のShotgunとかなり似ている。Shotgunが単独のツールであり,ストレージやバージョン管理システムなどとは連動していないのに対し,こちらはストレージと連動していることなどが機能的な特徴となるが,最大の違いは「簡単であること」だという。
 Shotgunは拡張性は高いものの導入時の初期設定に手間が掛かるが,Save Pointであれば,システム関連の知識のない人でもすぐに使えるというのがウリだ。導入実績ではサイバーエージェントやバンダイナムコオンライン,マーベラスなど,60社で採用されているという。

SavePoint公式サイト


●Audiokinetic
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 オーディオミドルウェアWwiseを展開するAudiokineticブースでは,SteinbergのオーディオツールNuendoとの連動がデモされていた。Nuendoはサウンドエフェクトなどを得意とするツールだが,Game Audio Connect機能を使うことで,Wwiseとのデータのやり取りが簡単にできるようになる。基本的にはNuendoのデータをセーブしてWwise側でロードする一方通行の流れだが,Wwise側の右クリックメニューにはNuendoで編集が追加されており,Wwiseでの作業中にNuendoを立ち上げて,元データからの切り出し範囲などを指定しての編集画面に自動的に移行できるようになる。ほぼシームレスな作業が可能だ。

Audiokinetic公式サイト


●モノビット
 モノビットではVRボイスチャットを使ったVRデモを行っていた。TiltBrushのように,コントローラで空間に絵を描いていくのだが,2人のプレイヤーが共同で作業できるというのがウリだ。
 ただ,新バージョンへの差し替えが間に合わなかったとのことで,デモでは発声から耳に届くまで1秒強の時間が掛かっていた。最新版では0.4秒くらいに抑えられているとのこと。音声をエンコードし,サーバー経由でやり取りしてデコードして再生という一連の流れなのである程度の遅延はしかたないが,1秒もあるとリアルタイムの会話は少しつらい。3G回線での携帯電話の通話遅延が0.3秒くらいらしいので,0.4秒であればさほど気にならなくなるだろう。VRはコミュニケーションツールとしても期待されているので,ボイスコミュニケーションにも注目したい。

モノビットエンジン公式サイト


●シリコンスタジオ
 シリコンスタジオブースでは,EIZOのHDRディスプレイによるデモが目を引いた。これについては話すと長くなるので別記事で紹介したい。
 そのほかだと,同社が扱っている各種ツール&ミドルウェアの紹介が行われていた。一部で期待されているかもしれないYURIさんの新作デモはなかった。
 GIミドルウェアのEnlightenについては,IP自体はARMに残し開発と販売のライセンスを取得するという,非常に変わった契約だが,実質的にシリコンスタジオに移管し,ブランドだけARMが持っているという理解でいいようだ。人的な異動はほぼなく,開発も完全にシリコンスタジオで行っている。
 会場の隅にUnreal Engine 4のKiteのデモが置かれていてなにかと思ったのだが,これはGraphineのデモだった。テクスチャの境界を分かりやすく色分けしており,テクスチャがストリーミングでシームレスに読み込まれている様子が示されていた。

シリコンスタジオ公式サイト


●ウェブテクノロジ
 ウェブテクノロジでは,最近発表されたSpriteStudio 6が展示されていた。SpriteStudio 6では,メッシュ変形とボーン機能がウリとなっている。最近のこのツールについては「スプライトってなんだっけ?」と思ってしまうような展開がされているのだが,新バージョンではますます磨きがかかっている。3D風デモを撮影してきたのでムービーで見ていただきたい。


 ランプのような草が多関節で揺れているのはいいとして,女の子が座っている本は単なる1枚絵だ。左右に分割してメッシュ変形しているのかと思ったのだが,ボーンが2本入れられているだけだった。回転に見えるように長さを変化させているらしい。多関節だとIKでアニメーション制御できるようになったようなので,そこまで手間がかかるわけでもないのだろうか。
 3D表現をするものではないのだろうが,やろうと思えば1枚絵でこんなこともできるようになっている。表現力がかなり上がっているのは確かだろう。

ウェブテクノロジ公式サイト


●ソニー・インタラクティブエンタテインメント
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 SIEブースは,実際にはソニー・イメージングプロダクツ&ソリューションズが
展示を行っていた。中心となるのはProject Fieldのデモである。Project Fieldは,白いタブレット状の盤上にチップの封入されたカードを配置して,カードの種類や角度を判別するシステムである。三国志大戦みたいなことが家庭でできる(かもしれない)デバイスなのだ。
 判定できるのは,カードの種類,位置,角度(縦か横)といった情報だ。現在は実装されていないようだが,表裏の判定も可能とのことだった。やろうと思えば,カードが重なっている状態でも状態を読み取れるらしい。また,カード内に記憶領域があり,データを読み書きすることもできるという。
 実際に使って見るとカードを動かしても動きは粗く,更新は1秒間に10回ほどで滑らかさには欠ける。これは通信にBLEを使っているためで,帯域的に苦しいのだそうだ。実質10kbps程度だとしても,もう少しなんとかなりそうなものだが。
 スマホアプリにアナログなカードゲーム要素を加えるものとして面白い位置にあるデバイスではある。現在,SDKを準備中とのことなので,興味がある人は公式サイトからコンタクトを取ってみよう。

Project Field公式サイト


●CRI・ミドルウェア
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 CRI・ミドルウェアブースでは,サウンドミドルウェアADX2を中心にした展示が行われていた。トピックはADX2のVSTプラグイン対応だろう。
 VSTはオーディオソフトウェアで一番メジャーなプラグインの規格だ。多くのエフェクトプラグインが提供されている。コンプレッサやリバーブなど,サウンドクリエイターであればお気に入りの製品があるだろうが,プロ用のプラグインをそのままゲームに使うわけにはいかない。その状況が変わってくるかもしれないのが,今回のプラグイン対応だ。
 とにかくこの対応により市販(orフリー)のVSTプラグインがADX2で使用できるようになるわけだが,仮に一流メーカーの高品質プラグインを使ったとしても,ゲームにそのプラグインを組み込むにはいろいろとハードルが存在する。ターゲットのゲーム機で動くプラグインなどは普通用意されていないからだ。プラグインのメーカーが各種ゲーム機向けのランタイムを提供してくれないとどうしようもない気はするが,それでも,よりリッチなゲームサウンドに向けて一歩前進するのは確かだろう。
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 それ以外の展示では,Nintendo Switch用のサラウンドサウンドシステムが参考出品され,そのデモされていた。パイオニアとDiracの協力によるものである。Diracはスウェーデンの音響技術メーカーだが,デモ機の画面に「SWITCH Dirac Panorama」と書いてあるので,DiracのPanorama Soundの技術が使われているはずだ。同社独自のアルゴリズムで小さいスピーカーでリッチなサウンドを実現するらしい。
 実際に聞いてみると,原音より広がりはあるが「いかにもサラウンド」というぼんやりした音にはなっていない。なかなか期待できそうだが,ゲームで使うには負荷や遅延などの確認は必要かもしれない。

CRI・ミドルウェア公式サイト


●Havok
 物理エンジンで有名なHavokでは,主にAI関連を中心としたデモが行われていた。
 Havok AI周りの改善ではナビメッシュの生成が10倍以上高速化され,ダイナミックなパスの変動にも強くなった。また,AI処理が非同期化され,全体に負荷が軽くなっているという。
 Havok Visual Debuggerも一新されて,どの処理でどのくらいCPUやメモリなどを消費しているかが一目で分かるように表示できるようになり,ボトルネックになっている部分を簡単に判別できるようになった。これにより,物理処理の比較的重いシーンをゲーム内で扱いやすくなっているようだ。

Havok公式サイト


●インクレディビルドジャパン
 ゲームのビルドを高速化するというIncrediBuild。その秘密は,社内にある複数のPCを統合し,仮想的なスーパーコンピュータを構成することにある。これによりビルドやコンパイルの速度は最大30倍に高速化するという。海外では非常によく使われており,すでに国内でも大手を中心に多数採用されているとのこと。このツールがなければ開発できないという声も聞かれるほどだとか。VisualStudioをはじめ,make,gmake,Ant,Pythonなど多くのツールに対応しており,主要なゲームエンジンもすべて対応済みとなっているので,あらゆる開発現場に対応できるとのこと。技術的には,ビルドだけではなく,レンダリングやユニットテスト,ファイル変換など,重い処理には万能で使えるツールとなっているとのことで,ゲーム開発を根底から支えてくれそうだ。

IncrediBuild公式サイト


●ラクス
 ラクスでは,メールディーラーとチャットディーラーの展示が行われていた。メールディーラーは問い合わせメールの共有・管理に特化したサービスで,担当案件の通知機能やグループチャット,電話対応した場合の内容管理機能などを備えている。チャットディーラーは,問い合わせ案件をベースにしたチャットBotを使って,問い合わせの前段階の処理を行うサービスだ(関連記事)。
 FAQなどでのチャットBotというと,最近あちこちのサイトで過去の問い合わせ事例に機械学習を利用したようなものの採用が進んでいるが,チャットディーラーのチャットBotはAIによるものではなく,単語に対しての応答を基本としたルールベースのものとなっているようだ。簡単なやり取りで問題を切り分けていき,メールや電話で対応する前の段階で適切な回答に誘導できる。対応できないものはメールディーラーと連動して対応するというシステムになっている。

ラクス公式サイト


●RAD Game Tools
 海外のゲームミドルウェアで有名なRAD Game Tools。同社の代表的なミドルウェアであるビデオ再生コーデックBINKではHDRに対応したという。
 同社の一推しは,昨年も紹介したデータ圧縮ツールOodleで,最近では多くの大作ゲームで使用されているという。Horizon: Zero Dawn,Call of Duty: WWII,Assassin's Creed: Origines,FIFA 18などの大作がこぞって使っているのだからたいしたものだ。Oodleは3種のロスレス圧縮アルゴリズムを使い分け,ゲームに最適なデータ圧縮を提供する。データ量の多い大作ゲームではロード時間はユーザーの体感を左右する重要な要素であり,こういったミドルウェアは威力を発揮する。

RAD Game Tools公式サイト


●マッチロック
 マッチロックブースでは,エフェクトツールBISHAMONの新機能デモが行われていた。昨年も展示されていたVR対応機能だが,今回は実際に乖離性ミリオンアーサーVRで使われた例が示されていた。そのほかに,今年はゲームキャラクターのモーションと各種エフェクトの連動を確認するためのプレビュー機能が紹介されていた。RPGでキャラクターが攻撃したりスキルを発動するとその動きとエフェクトがゲームライクな画面で示される。デモでは同社のエフェクトコンテストのイメージキャラであるフレアちゃんと影武者が戦闘するシーンが展開されていた。

マッチロック公式サイト


●Too
 Tooでは,PsoftによるUnity用のプラグインであるPencil+4 Line for Unityとプロジェクト管理ツールShotgunを展示していた。Shotgunについては,今回のGTMFでは3社のブースで展示されていたので,ここではPencil+4を中心に紹介しよう。
 Pencil+4は以前Uniteのレポートで紹介したこともあるが,非常に高品質なアニメ風描線を実現するプラグインだ。映像制作用のものなので,残念ながらゲームで使える速度では動かない。それでもUnity上で扱えるようになることで,アニメ調の映像制作が劇的に加速されることが期待される。ちなみに性能的には非プラグイン版と変わらないとのこと。

Too公式サイト


●オートデスク
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 オートデスクは,プロジェクト管理ツールShotgun推しの展示だった。元々映画制作の現場で生まれたツールということで,コンテンツ制作の現場とは相性がよく,現在,モバイル系の開発現場で絶賛採用急増中だという。展示もソーシャルゲームを意識したような例になっていた。
 プロジェクトの進捗をガントチャートで管理し,その時点でのアセットなどをスナップショットで共有して一覧できるなどの特徴を持つ。Pythonでいろいろ拡張できるというのもウリだ。
 一応,Maya 2017 update 3の情報も聞いてはきたが,とくに展示はされていなかった。ゲームに関係ありそうなところでは,アニメーションでTention Deformerを使った精度の高い変形制御ができるようになり,その出力のモデルの変形情報そのままにUE4やUnityに送って再現できるようになったとのことだ。

Shotgun公式サイト


●ダイキン工業
 例年だと同社が扱うCGツールやプラグインなども展示していたダイキン工業だが,今年はMayaのセミナー告知のみを行っていた。同社はMayaの販売代理店の一つでもあるわけだが,同社でMayaのライセンスを購入すると,さまざまなセミナーが受講できる。直近だとゲームとはあまり関係がないが,Arnoldレンダラーに関するセミナーが告知されていた。
 また,過去のセミナーの資料や動画が公開されており,それらを利用できるのも同社でライセンスを取得するメリットとなっている。

ダイキンCOMTEC公式サイト


●ボーンデジタル
 ボーンデジタルもShotgunを展示していた。Shotgunの国内代理店はTooとボーンデジタルの2社だそうで,両社ともShotgunを展示し,オートデスクも展示していたので会場内はShotgunだらけでもあった。
 そんな中でボーンデジタルのウリは,導入が容易な点だそうだ。基本的に英語主体で比較的設定が難しいとされるShotgunの初期テンプレートを同社が作成してくれるのだ。とかく多忙な業界では,一刻も早く導入したいという需要も多く,好評を博しているようだ。

ボーンデジタル公式サイト


GTMF 2017公式サイト