コーエーテクモウェーブ,五感で感じる体感型VRアーケード筐体「VR SENSE」発表
2017年6月28日,コーエーテクモウェーブは都内で発表会を開催し,体感型VR筐体「VR SENSE」(VR センス)を発表した。これは,さまざまなギミックを搭載したアーケードゲームのVR体感筐体だ。
VR センスには可動シート,香り機能,タッチ機能,ファンによる風機能,温冷機能,ミスト機能が搭載されており,視覚だけでなく五感で感じるデバイスとなっている。ロケテストは8月以降に行われる予定だという。
まず,コーエーテクモホールディングス代表取締役会長 兼コーエーテクモウェーブ「VR センス」ゼネラルプロデューサー襟川恵子氏から本製品の開発経緯などが語られた。
今年はテクモ創立50周年にあたり,記念として新型アーケードゲーム筐体を作りたい,どうせならこれまでにないものをと,VRを取り入れた筐体が作られることとなったという。
VR センスは機能的にもこれまでまったくない形のアーケード筐体となるのだが,筐体のデザインについては,襟川氏が鉛筆画でだいたいのスケッチを描いて,そのまま中国に飛び,あれを切って,ここを曲げてと現場で指示を出して,翌朝にはだいたい出来上がっていたという。日本と中国でやり取りするよりも断然早いとのこと。
対応コンテンツを作るにあたって,夫であるコーエーテクモゲームス社長,襟川陽一氏からコーエーテクモゲームズ側の人員は使うなという指示を出されたと恵子氏は語っていた。これは主に残業時間的な面で余裕がなかったらしい。最近はいろいろとうるさくなっているので,時間外労働が増えそうなタスクは割り込ませられない状況だったようだ。
幸い同社ではパチンコなどでもプログラムを扱うので,そちらから南 達尊氏がメインプランナーに抜擢された。残業時間に余裕があったのが決め手らしい。
南氏からは「Dead or Alive Xtreme」系のコンテンツを作りたいとアピールされたが,品がないので却下したと恵子氏。しかし,第三者から諭されて,男女での需要の違いを認識し,最終的にはDoA Xtremeのコンテンツも作られることになったという。
VR センスのハードウェア的な特徴はプロジェクトマネージャーの藤井久徳氏から説明が行われた。
繰り返しになるが,VR センスは,VRゲーム用のアーケード筐体である。システム基板はPlayStation 4系のものが使われているようで,デモ機のVRシステムもPSVRが使われていた。
視覚的なVRのみならず,VRセンスには「五感を刺激するギミック」が搭載されているのが最大の特徴となる。冒頭でも挙げているが,以下の6つの機能それぞれについての簡単な解説が行われた。
多機能3Dシートは,3軸の回転と振動,突き上げといった機能を持った可動シートである。回転角は最大8度になっているとのこと。回転により,微妙な重力変動を実現でき,体感を大きく向上させることが可能になる。デモ機ではとくになかったのだが,実機では安全ベルトが付けられるとのこと。
香り機能は,一番こだわっている部分だそうで,コンプレッサを使って香りの付いた風を送るようになっている。女の子の匂いや硝煙の匂いなどを表現したいという。匂いのカートリッジは交換式だが,使用量とかは読めないとのことなので,実地で対応することになるのだろう。
タッチ機能はかなりユニークで,頭からクモが落ちてきたり,足元をネズミが走り抜けたりといった状況を実際の感触で再現するものとなるという。使いどころは限られそうだが,使える局面では効果をあげそうだ。
風機能は,前方・後方のファンとコンプレッサを使った複合的なもので,多段階の風量調整が可能で,かつ突風を再現する機能も持っている。
温冷機能は,炎であぶられたようなステージや雪山での体験などで気温を再現できる機能で,従来のVRデバイスではちょっとなかった新分野を切り開いている。
ミスト機能は,霧吹きから水が掛かるという機能だが,雨や飛沫を表現することができる。体験してみても非常に分かりやすい機能だ。
これだけ多彩なものを詰め込んだものはほかにないということで,国際特許を出願中とのこと。ただ,VR筐体の元祖ともいえるSensoramaの時代から(参考記事),五感に訴える手法は数多く使われているので成立するのかどうかは微妙な気もしないではない。デジタルでやってると別枠で扱われるの法則が通用するかは注目しておいてもいいだろう。
また,PS4系のシステムということで,デモでの操作ではPS Moveが使われた。しかし,襟川(陽一)氏がジーワン ジョッキーを試遊した際にMoveを筐体の壁にぶつけてしまったとのことで,今後の操作はコントローラでのみ行うようにするという。実際,筐体内はさほど広くないのでしかたないかもしれない。
さて,これだけの機能を詰め込んだVR センスだが,研究費などを考えてまともに値段を付けた場合に500万円程度になってしまうという。それでは現実的ではないので,原価を抑えたとのことで,最終的な価格は320万円(税抜)となっている。
100V電源で動作し,比較的コンパクトな大きさなので,一般的なゲームセンターにも設置は難しくないだろう。また,ヘッドセットの装着ナビゲーターなどによって,基本的にはアテンドのオペレーターなしでの運用が想定されているとのこと。衛生面については,基本的に頭で支えて顔がべったりつかないVRヘッドセットを使用するため,利用者に清掃を任せる運用で大丈夫だろうとのことだった。
1台の筐体には最大で5本のソフトをインストール可能で,初期状態で3本がインストールされるという。もちろん追加コンテンツを入れることも可能だ。現在,シルバーとパールブルーの2色の筐体での展開が予定されており,この二つは初期状態でインストールされるソフトが異なるのだという。まだなにを初期インストールするかについては決まっていないとのことだが,片方が主に男性向け,もう片方は女性にも楽しめるコンテンツを入れるいった方針だそうだ。
追加コンテンツの導入価格は,コンテンツによってさまざまだがと断ったうえで,30万円前後ではないかと襟川氏は語っていた。一方,プレイヤーがVR センスで対応ゲームをプレイする場合,1プレイでだいたい7分から10分程度の体験が想定されており,価格は700円程度になるだろうとのことだった。
あまりいないだろうとは思うが,少なくとも初年度の個人向け販売はしないとのことだった。将来的には個人販売もしないわけではないようだが,おそらくは床補強やメンテナンスも必要なので,個人での導入にはそれなりの覚悟は必要だろう。
コンテンツについては,メインプランナーの南氏から紹介が行われた。現在用意されているのは以下の5本である。
それぞれについて,発表会後の試遊での印象を交えて紹介しておこう。
ホラーゲームとなるだるまさんがころんだは,名前そのままではあるが,古い学校で子供の霊とだるまさんがころんだで遊ぶといった内容になる。ボタンを押している間だけ前進するので,それを駆使して鬼のところまでたどり着けばよい。失敗すると……いろいろありそうだ。
実際に試してみると,途中でさまざまなイベントが発生して脅かしてくるような構成になっていた。鬼担当の子供が「だるまさんがころんだ」と唱えている間だけでなく,鬼が後ろを向いている間は前進可能だ。まあ,どうせ引っ掛けがあるのだろうなと考えると,そうそう大胆にも行けないのだが。
なお,今回のデモで乗り物によらない移動があるのはこのゲームだけなのだが,直線的に前進するだけ,かつかなり遅い移動速度のせいか,酔いなどはまったく感じなかった。気持ち的にはもっと速く動きたいくらいなのだが,じわじわとしか動いてくれないのがもどかしい。
このゲームで使われる頭部へのタッチ機能は今回に限り,ARになっているとのことだったが,足の部分にあるはずのタッチ機能はよく分からないまま終わってしまった。
ジーワン ジョッキーは,VRで再現された中山競馬場でGIレースを戦うという分かりやすい内容だ。雨天でのレースということで,ミスト機能の駆使されたデモになっていた。
体験では搭乗馬はたしかディープインパクトだったか。一番人気の実力馬だが,1位は取りにくいバランスにしているとのことだった。結果は2位。
実際に試してみると,VRでの競馬ゲームというとジョーバを使ったアレという観念があるためか,残念ながら3Dシートでは体感的には最高というわけにはいかない。それでも可動シートには適した題材ではあろう。操作に慣れていないので,初見だとあまり視覚以外の部分に注意を払っている余裕がなかったのだが,少なくとも違和感はまったくない。一方で,風や雨や水しぶきは非常に分かりやすい刺激だった。
操作は,手綱での前進,左右への旋回,ムチでの加速といった3パターンになる。今回はPS Moveを使ったので,手綱を持った感じで両手を上下に振ると駆け足という分かりやすいものだったが,コントローラ版がどういう操作系になるのかは不明だ。
超 真・三國無双は,自分は移動しないVR系の三國無双のアレンジバージョンだ。ゲームプレイの中身自体はまさに無双そのままなので,あまり多くを語る必要もないだろう。「超」バージョンとしての最大の特徴は振動だろうか。爆弾を投げつけられたりすると,シートが大きく揺れるのだ。
操作系は,例によってPS Moveの場合はだが,右手で攻撃と防御,左手で弓という操作系だった。なお,ジーワン ジョッキーではPS Moveをぶつけることはなかったのだが,三國無双だと普通に剣を振ると壁に当たってしまう感じだ。やはりPS Moveの使用は筐体サイズ的に難しい。
爆発での振動については,個人的にはちょっと微妙なところだった。方向性が考慮されているのだろうか。なんとなく,椅子の背の片側を手でくいくい引っ張られているような感じでガツンとこないのだ。このあたりはもうちょっと改良の余地がありそうだ。もしかしたら爆発のときに熱風が出ていたのかもしれないが,プレイ中に感じることはできなかった。
超 戦国コースターは,戦国の町とローラーコースター(なぜか船状)が組み合わさった奇天烈なコンテンツだ。体感型VRでは定番コンテンツのローラーコースターとコーエーが得意とする戦国の町並みの合わせ技だが,今後のバージョンでは周りで合戦が行われていたり,大砲が使われたりとパワーアップされる予定だという。
試遊した感想では,風やミストとの相性がよく,3Dシートもぴったりハマっている。ただ,結構重いコンテンツなのか,動きの速い部分だとコマ落ちが起きているように感じられた。いま一つ動きが滑らかでないのだ。PSVRを使うのは久々だったので「60fpsってこんなもんだっけ?」と少し悩んでしまった。こんなもんだっけ?
Dead or Alive Xtreme SENSEは,DoAの女の子たちと南海のリゾートで遊ぶというコンテンツのVR版だ。すでにVR版も存在するが,それとはまた別のものになるという。先にも書いたように,体感VRで南氏が作りたかったという作品であり,実際,一番人気のコンテンツになるのだろうという気はする。ただ「シャワーを浴びたら肌が濡れなくては」とダメ出しも入ったようで,デモバージョンはそのあたりにも対応したものとなっていた。
操作はとくになく眺めるだけだ。デモ版はブランコに乗ったかすみちゃんを横から眺めるシーン,正面から眺めるシーン,そしてシャワーシーンなどで構成されていた。
体験デモで確認したところ,水濡れは肌の表面を水の膜が流れるような感じのシェーダになっており,水着の部分などは擬似屈折で柄が歪んでいるので流れが分かりやすい。ただ,19歳だったらもっと水を弾くのではないかとか,もう一声工夫がほしい気もしないではない。まあ,ちゃんとやると表面張力と重力と流体と油分の斥力が云々とシミュレートが無茶苦茶大変そうな課題ではあるのだが。コーエーさんだったら,水の当たってないところは油分が水を弾いていくような,ぴちぴちエンジンの実装に期待したいところだ。
以上5本のデモをすべて体験した結果,
香り 確認不能
温冷 確認不能
タッチ 確認不能
という結果だった。
初見のデモだったので画面と操作に集中していたというのもあるだろうが,ほかの刺激に比べて少し分かりにくい印象だ。タッチについては単に使用頻度が低かったからという理由もあるかもしれない。
なお,風については主に胴体部にファンの風が当たる。これには香りを阻害しないようにという配慮がうかがえるのだが,これも良し悪しといったところだ。個人的には頭部への風もあったほうが好ましい。今思うと,もしかして熱風や冷風も胴体に当たっていて,長袖シャツだったので感じられなかっただけだったのだろうか?
また,本機の基本的なシステムはPS4とPSVRを利用しているようなのだが,ソーシャルスクリーンのようなものは見当たらなかった。アーケードゲームではギャラリーへのアピールも重要な要素になると思うのでもったいない感じだ。
なお,今回のデモではPSVRが使用されていたが,現在のところSIEがB2B向けのVRビジネスをやっていないので,VRヘッドセットについては独自設計のものが採用される見込みだ。オペレーション的にもヘッドフォン一体型が望ましいということで,PSVR風ヘッドフォン一体型VRヘッドセットが開発されているという。
VR センスの今後の展開としては,対応ソフトの開発がさらに進んでおり,コーエーテクモのさまざまなIPが導入される予定だという。単なる移植ではなく,大幅にアップグレードし,ストーリーもVRを生かし,リプレイ性を備えたものにしていくという。とくに女性向けIPの投入が予告されていた。
VR センス用に開発されたゲームは,(多少ダウングレードにはなるだろうが)PSVRでも発売される予定とのことで,お店で完全版,家庭で簡易版といったVRアーケードの典型的なビジネスモデルが採られる模様だ。
また,このプラットフォームを他社にも開放してコンテンツを充実させる方向でも動いているという。すでにPSVRでコンテンツを発売しているようなところにとっては,新たなプロモーションツールとしても期待できるかもしれない。
世界的には結構盛り上がっているVRアーケードの展開は,日本ではかなり限定的なものとなっている。大規模な専用設備はリスクが高いというのも,その理由の一つではあるだろう。しかしすでにあるゲームセンターで体感型VR筐体が設置されるようになれば,VR自体の認知度も上がっていくだろう。VR センス&PSVRの展開でVRコンテンツのエコシステムが改善されることに期待したいところだ。
VR センスには可動シート,香り機能,タッチ機能,ファンによる風機能,温冷機能,ミスト機能が搭載されており,視覚だけでなく五感で感じるデバイスとなっている。ロケテストは8月以降に行われる予定だという。
今年はテクモ創立50周年にあたり,記念として新型アーケードゲーム筐体を作りたい,どうせならこれまでにないものをと,VRを取り入れた筐体が作られることとなったという。
VR センスは機能的にもこれまでまったくない形のアーケード筐体となるのだが,筐体のデザインについては,襟川氏が鉛筆画でだいたいのスケッチを描いて,そのまま中国に飛び,あれを切って,ここを曲げてと現場で指示を出して,翌朝にはだいたい出来上がっていたという。日本と中国でやり取りするよりも断然早いとのこと。
対応コンテンツを作るにあたって,夫であるコーエーテクモゲームス社長,襟川陽一氏からコーエーテクモゲームズ側の人員は使うなという指示を出されたと恵子氏は語っていた。これは主に残業時間的な面で余裕がなかったらしい。最近はいろいろとうるさくなっているので,時間外労働が増えそうなタスクは割り込ませられない状況だったようだ。
幸い同社ではパチンコなどでもプログラムを扱うので,そちらから南 達尊氏がメインプランナーに抜擢された。残業時間に余裕があったのが決め手らしい。
南氏からは「Dead or Alive Xtreme」系のコンテンツを作りたいとアピールされたが,品がないので却下したと恵子氏。しかし,第三者から諭されて,男女での需要の違いを認識し,最終的にはDoA Xtremeのコンテンツも作られることになったという。
繰り返しになるが,VR センスは,VRゲーム用のアーケード筐体である。システム基板はPlayStation 4系のものが使われているようで,デモ機のVRシステムもPSVRが使われていた。
視覚的なVRのみならず,VRセンスには「五感を刺激するギミック」が搭載されているのが最大の特徴となる。冒頭でも挙げているが,以下の6つの機能それぞれについての簡単な解説が行われた。
- 多機能3Dシート
- 香り機能
- タッチ機能
- 風機能
- 温冷機能
- ミスト機能
多機能3Dシートは,3軸の回転と振動,突き上げといった機能を持った可動シートである。回転角は最大8度になっているとのこと。回転により,微妙な重力変動を実現でき,体感を大きく向上させることが可能になる。デモ機ではとくになかったのだが,実機では安全ベルトが付けられるとのこと。
香り機能は,一番こだわっている部分だそうで,コンプレッサを使って香りの付いた風を送るようになっている。女の子の匂いや硝煙の匂いなどを表現したいという。匂いのカートリッジは交換式だが,使用量とかは読めないとのことなので,実地で対応することになるのだろう。
タッチ機能はかなりユニークで,頭からクモが落ちてきたり,足元をネズミが走り抜けたりといった状況を実際の感触で再現するものとなるという。使いどころは限られそうだが,使える局面では効果をあげそうだ。
風機能は,前方・後方のファンとコンプレッサを使った複合的なもので,多段階の風量調整が可能で,かつ突風を再現する機能も持っている。
温冷機能は,炎であぶられたようなステージや雪山での体験などで気温を再現できる機能で,従来のVRデバイスではちょっとなかった新分野を切り開いている。
ミスト機能は,霧吹きから水が掛かるという機能だが,雨や飛沫を表現することができる。体験してみても非常に分かりやすい機能だ。
これだけ多彩なものを詰め込んだものはほかにないということで,国際特許を出願中とのこと。ただ,VR筐体の元祖ともいえるSensoramaの時代から(参考記事),五感に訴える手法は数多く使われているので成立するのかどうかは微妙な気もしないではない。デジタルでやってると別枠で扱われるの法則が通用するかは注目しておいてもいいだろう。
また,PS4系のシステムということで,デモでの操作ではPS Moveが使われた。しかし,襟川(陽一)氏がジーワン ジョッキーを試遊した際にMoveを筐体の壁にぶつけてしまったとのことで,今後の操作はコントローラでのみ行うようにするという。実際,筐体内はさほど広くないのでしかたないかもしれない。
100V電源で動作し,比較的コンパクトな大きさなので,一般的なゲームセンターにも設置は難しくないだろう。また,ヘッドセットの装着ナビゲーターなどによって,基本的にはアテンドのオペレーターなしでの運用が想定されているとのこと。衛生面については,基本的に頭で支えて顔がべったりつかないVRヘッドセットを使用するため,利用者に清掃を任せる運用で大丈夫だろうとのことだった。
1台の筐体には最大で5本のソフトをインストール可能で,初期状態で3本がインストールされるという。もちろん追加コンテンツを入れることも可能だ。現在,シルバーとパールブルーの2色の筐体での展開が予定されており,この二つは初期状態でインストールされるソフトが異なるのだという。まだなにを初期インストールするかについては決まっていないとのことだが,片方が主に男性向け,もう片方は女性にも楽しめるコンテンツを入れるいった方針だそうだ。
追加コンテンツの導入価格は,コンテンツによってさまざまだがと断ったうえで,30万円前後ではないかと襟川氏は語っていた。一方,プレイヤーがVR センスで対応ゲームをプレイする場合,1プレイでだいたい7分から10分程度の体験が想定されており,価格は700円程度になるだろうとのことだった。
あまりいないだろうとは思うが,少なくとも初年度の個人向け販売はしないとのことだった。将来的には個人販売もしないわけではないようだが,おそらくは床補強やメンテナンスも必要なので,個人での導入にはそれなりの覚悟は必要だろう。
- ホラー SENSE 〜だるまさんがころんだ〜
- ジーワン ジョッキー SENSE
- 超 真・三國無双
- 超 戦国コースター
- Dead or Alive Xtreme SENSE
それぞれについて,発表会後の試遊での印象を交えて紹介しておこう。
実際に試してみると,途中でさまざまなイベントが発生して脅かしてくるような構成になっていた。鬼担当の子供が「だるまさんがころんだ」と唱えている間だけでなく,鬼が後ろを向いている間は前進可能だ。まあ,どうせ引っ掛けがあるのだろうなと考えると,そうそう大胆にも行けないのだが。
なお,今回のデモで乗り物によらない移動があるのはこのゲームだけなのだが,直線的に前進するだけ,かつかなり遅い移動速度のせいか,酔いなどはまったく感じなかった。気持ち的にはもっと速く動きたいくらいなのだが,じわじわとしか動いてくれないのがもどかしい。
このゲームで使われる頭部へのタッチ機能は今回に限り,ARになっているとのことだったが,足の部分にあるはずのタッチ機能はよく分からないまま終わってしまった。
体験では搭乗馬はたしかディープインパクトだったか。一番人気の実力馬だが,1位は取りにくいバランスにしているとのことだった。結果は2位。
実際に試してみると,VRでの競馬ゲームというとジョーバを使ったアレという観念があるためか,残念ながら3Dシートでは体感的には最高というわけにはいかない。それでも可動シートには適した題材ではあろう。操作に慣れていないので,初見だとあまり視覚以外の部分に注意を払っている余裕がなかったのだが,少なくとも違和感はまったくない。一方で,風や雨や水しぶきは非常に分かりやすい刺激だった。
操作は,手綱での前進,左右への旋回,ムチでの加速といった3パターンになる。今回はPS Moveを使ったので,手綱を持った感じで両手を上下に振ると駆け足という分かりやすいものだったが,コントローラ版がどういう操作系になるのかは不明だ。
操作系は,例によってPS Moveの場合はだが,右手で攻撃と防御,左手で弓という操作系だった。なお,ジーワン ジョッキーではPS Moveをぶつけることはなかったのだが,三國無双だと普通に剣を振ると壁に当たってしまう感じだ。やはりPS Moveの使用は筐体サイズ的に難しい。
爆発での振動については,個人的にはちょっと微妙なところだった。方向性が考慮されているのだろうか。なんとなく,椅子の背の片側を手でくいくい引っ張られているような感じでガツンとこないのだ。このあたりはもうちょっと改良の余地がありそうだ。もしかしたら爆発のときに熱風が出ていたのかもしれないが,プレイ中に感じることはできなかった。
試遊した感想では,風やミストとの相性がよく,3Dシートもぴったりハマっている。ただ,結構重いコンテンツなのか,動きの速い部分だとコマ落ちが起きているように感じられた。いま一つ動きが滑らかでないのだ。PSVRを使うのは久々だったので「60fpsってこんなもんだっけ?」と少し悩んでしまった。こんなもんだっけ?
操作はとくになく眺めるだけだ。デモ版はブランコに乗ったかすみちゃんを横から眺めるシーン,正面から眺めるシーン,そしてシャワーシーンなどで構成されていた。
体験デモで確認したところ,水濡れは肌の表面を水の膜が流れるような感じのシェーダになっており,水着の部分などは擬似屈折で柄が歪んでいるので流れが分かりやすい。ただ,19歳だったらもっと水を弾くのではないかとか,もう一声工夫がほしい気もしないではない。まあ,ちゃんとやると表面張力と重力と流体と油分の斥力が云々とシミュレートが無茶苦茶大変そうな課題ではあるのだが。コーエーさんだったら,水の当たってないところは油分が水を弾いていくような,ぴちぴちエンジンの実装に期待したいところだ。
以上5本のデモをすべて体験した結果,
香り 確認不能
温冷 確認不能
タッチ 確認不能
という結果だった。
初見のデモだったので画面と操作に集中していたというのもあるだろうが,ほかの刺激に比べて少し分かりにくい印象だ。タッチについては単に使用頻度が低かったからという理由もあるかもしれない。
なお,風については主に胴体部にファンの風が当たる。これには香りを阻害しないようにという配慮がうかがえるのだが,これも良し悪しといったところだ。個人的には頭部への風もあったほうが好ましい。今思うと,もしかして熱風や冷風も胴体に当たっていて,長袖シャツだったので感じられなかっただけだったのだろうか?
なお,今回のデモではPSVRが使用されていたが,現在のところSIEがB2B向けのVRビジネスをやっていないので,VRヘッドセットについては独自設計のものが採用される見込みだ。オペレーション的にもヘッドフォン一体型が望ましいということで,PSVR風ヘッドフォン一体型VRヘッドセットが開発されているという。
VR センスの今後の展開としては,対応ソフトの開発がさらに進んでおり,コーエーテクモのさまざまなIPが導入される予定だという。単なる移植ではなく,大幅にアップグレードし,ストーリーもVRを生かし,リプレイ性を備えたものにしていくという。とくに女性向けIPの投入が予告されていた。
VR センス用に開発されたゲームは,(多少ダウングレードにはなるだろうが)PSVRでも発売される予定とのことで,お店で完全版,家庭で簡易版といったVRアーケードの典型的なビジネスモデルが採られる模様だ。
また,このプラットフォームを他社にも開放してコンテンツを充実させる方向でも動いているという。すでにPSVRでコンテンツを発売しているようなところにとっては,新たなプロモーションツールとしても期待できるかもしれない。
世界的には結構盛り上がっているVRアーケードの展開は,日本ではかなり限定的なものとなっている。大規模な専用設備はリスクが高いというのも,その理由の一つではあるだろう。しかしすでにあるゲームセンターで体感型VR筐体が設置されるようになれば,VR自体の認知度も上がっていくだろう。VR センス&PSVRの展開でVRコンテンツのエコシステムが改善されることに期待したいところだ。