【月間総括】Nintendo Switchは世界的に好調なるも国内展開は厳しいものになる?
2017年3月3日,新型据え置きゲーム機「Nintendo Switch」(以下Switch)が発売された。以前,この連載で,
(1)2週めまでに50万台生産できなければ,失敗がほぼ確定し
(2)発売までの準備が成否を決め
(3)それ以降は挽回策に効果がない
と指摘した。
日本では,初週が約33万台,2週めが約6万2000台,3週め約5万台の計44万台であった。エース経済研究所の想定を大幅に下回る展開となっている。発売4週めに52万台の実売を達成するなど,現状では国内の需要は極めて強いものの,これでもまだ供給が十分に満たされておらず,このままでは国内では求心力を得られず失敗に終わってしまう可能性が高い。
任天堂にヒアリングしたところ,供給量が少ないのは,欧米での受注が強く,欧米を優先したためとの回答であった。つまり,据え置き機の主戦場である欧米を優先した結果,日本に投入する台数が減ったとのことである。しかし,この施策はあまりよいとは思えない。日本市場はゲーム機ビジネス誕生から一貫して市場をリードする傾向があり,日本軽視の施策は今後への影響が大きいだろう。
この点は,すでに先行して国内市場を軽視するような施策を採っているソニー子会社のソニー・インタラクティブエンタテイネメント(SIE)が参考になろう。あまり,表立った動きはないが,国内のサードパーティにヒアリングしていても,SIEが本拠を米国に移してから,直接の言及はないものの国内での対応が変わってきているように感じることが増えた。本社のIRに聞いても,変化が出るのはやむをえないとしている。
この背景となるのはは,国内市場が長期低落傾向にあり,世界で好調なPS4が国内では不振なことに尽きる。SIE本社としては,世界シェアが10%程度の日本市場はSIEJAがローカル市場として対応すればこと足りるということなのであろう。
ただ,ここで反論もあろう。国内で4年めに入り,470万台を超える台数となっているPS4はPS3を上回るペースではないかと,しかし,以前も指摘したように,PS3はSIEが目標とする同時期のPS2よりは大きく劣っている状況なので計画からすると大失敗なのである。しかも,ソフト販売は洋ゲーと呼ばれる海外系のゲームが強い一方,国内サードパーティは計画に対して未達となるタイトルが目立つ。
Switchも,これと同じで国内の需要が強い現状において,十分な量が供給できないと結局,サードパーティタイトルの販売が不振となる状況に陥ってしまうだろう。
ところで,前述のとおり,Switchは欧米で相当に好調なようだ。すでに初週の販売が,任天堂が発売した歴代のハードで最も多かったことがアナウンスされたほか,欧州の一部でハードに対する「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」の装着率が90%を超えたとの一部報道がある。
また,3月17日には,Switchの来期の生産数量を倍増の1600万台とする記事が出ている。欧米の好調を考えると,増産しないとは考えにくい。実際,任天堂も増産の検討をしていることは認めている。
故岩田社長が語ったように,ゲーム機は勢いのビジネスであり,初動が強いとハードの普及⇒ソフト開発の増加⇒さらなるハードの普及ということで,エコシステムが自然に確立される。任天堂から正式な販売数量が発表されていないため,確定はできないが,欧米での立ち上げは成功の可能性が高まっているということであろう。
株式市場も,この増産報道がサプライズだったようで,株価は大きく上昇した。エース経済研究所では,来期のSwitchの販売台数予想を成功を前提に1300万台〜1600万台程度と見ていたため,あまりサプライズを感じなかったのだが,多くのアナリストはずっと少ない水準を想定していたようだ。
このような予想をしたのは無理からぬところではないだろうか? Wii Uは,任天堂の過去のハードでも最低の水準で大失敗であった。スマートフォンゲームの浸透など,環境の変化もあり,懐疑的な見方にならないほうがおかしい。それだけに,任天堂に対する期待が低水準であったため,急激な上昇となったと考えている。
今後は,任天堂が決算で正式発表する販売台数次第ということであろう
最後に,問い合わせが多いため,ハードの生産と任天堂の決算上における販売と統計データによる実売の違いについて触れておこう。
まず,図を見ていただこう。
まず,(1)生産である。現在,ゲーム機メーカーは外部の協力会社に組立を委託している。通常,生産台数と言えば,この段階の数字だと思われがちだが,日本の会計基準では生産高は(2)の生産出荷である。SIEのゲーム機の台数開示は生産出荷で行われていたが,会計基準的には特段イレギュラーというわけではない。
(3)出荷は,工場から小売店に出発した時点で収益認識を行うことがかつては一般的であった。しかし,現在はより保守的な会計が行われ,(4)の着荷をもって収益認識をする。任天堂が販売台数,ソニーが売上台数として開示しているのは,この数量である。
一般的には,販売とは(5)販売を指すイメージだが,メーカーから見た場合は卸や小売りに着荷した時点となり,小売店から消費者ではない点には注意が必要だ。
エース経済研究所では,これまで国内で発売からの2週間で50万の販売実績が必要であると指摘していた。読者におかれては,これを実売データだと思われていた方もおられたようだが,表で言えば下から2番めの(4)着荷のことである。つまり,メーカー公式発表で行われる販売台数の数字をもって語っている。
しかし,これは外部から計測することができないものであり,公式発表が行われるまでは実売データから予測するしかない。新機種の成否を決めるラインは,実売データでいうと小売りの在庫を除いて45〜48万程度だと考えている。実売数でこのラインを超えていないゲーム機の今後の展開は厳しくなる傾向があるということだ。今回,Switchの国内販売がこのラインを超えなかったことで,このままでは今後の国内展開は厳しいものとなることが予想される。
(1)2週めまでに50万台生産できなければ,失敗がほぼ確定し
(2)発売までの準備が成否を決め
(3)それ以降は挽回策に効果がない
と指摘した。
日本では,初週が約33万台,2週めが約6万2000台,3週め約5万台の計44万台であった。エース経済研究所の想定を大幅に下回る展開となっている。発売4週めに52万台の実売を達成するなど,現状では国内の需要は極めて強いものの,これでもまだ供給が十分に満たされておらず,このままでは国内では求心力を得られず失敗に終わってしまう可能性が高い。
任天堂にヒアリングしたところ,供給量が少ないのは,欧米での受注が強く,欧米を優先したためとの回答であった。つまり,据え置き機の主戦場である欧米を優先した結果,日本に投入する台数が減ったとのことである。しかし,この施策はあまりよいとは思えない。日本市場はゲーム機ビジネス誕生から一貫して市場をリードする傾向があり,日本軽視の施策は今後への影響が大きいだろう。
この点は,すでに先行して国内市場を軽視するような施策を採っているソニー子会社のソニー・インタラクティブエンタテイネメント(SIE)が参考になろう。あまり,表立った動きはないが,国内のサードパーティにヒアリングしていても,SIEが本拠を米国に移してから,直接の言及はないものの国内での対応が変わってきているように感じることが増えた。本社のIRに聞いても,変化が出るのはやむをえないとしている。
この背景となるのはは,国内市場が長期低落傾向にあり,世界で好調なPS4が国内では不振なことに尽きる。SIE本社としては,世界シェアが10%程度の日本市場はSIEJAがローカル市場として対応すればこと足りるということなのであろう。
ただ,ここで反論もあろう。国内で4年めに入り,470万台を超える台数となっているPS4はPS3を上回るペースではないかと,しかし,以前も指摘したように,PS3はSIEが目標とする同時期のPS2よりは大きく劣っている状況なので計画からすると大失敗なのである。しかも,ソフト販売は洋ゲーと呼ばれる海外系のゲームが強い一方,国内サードパーティは計画に対して未達となるタイトルが目立つ。
Switchも,これと同じで国内の需要が強い現状において,十分な量が供給できないと結局,サードパーティタイトルの販売が不振となる状況に陥ってしまうだろう。
ところで,前述のとおり,Switchは欧米で相当に好調なようだ。すでに初週の販売が,任天堂が発売した歴代のハードで最も多かったことがアナウンスされたほか,欧州の一部でハードに対する「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」の装着率が90%を超えたとの一部報道がある。
また,3月17日には,Switchの来期の生産数量を倍増の1600万台とする記事が出ている。欧米の好調を考えると,増産しないとは考えにくい。実際,任天堂も増産の検討をしていることは認めている。
故岩田社長が語ったように,ゲーム機は勢いのビジネスであり,初動が強いとハードの普及⇒ソフト開発の増加⇒さらなるハードの普及ということで,エコシステムが自然に確立される。任天堂から正式な販売数量が発表されていないため,確定はできないが,欧米での立ち上げは成功の可能性が高まっているということであろう。
株式市場も,この増産報道がサプライズだったようで,株価は大きく上昇した。エース経済研究所では,来期のSwitchの販売台数予想を成功を前提に1300万台〜1600万台程度と見ていたため,あまりサプライズを感じなかったのだが,多くのアナリストはずっと少ない水準を想定していたようだ。
このような予想をしたのは無理からぬところではないだろうか? Wii Uは,任天堂の過去のハードでも最低の水準で大失敗であった。スマートフォンゲームの浸透など,環境の変化もあり,懐疑的な見方にならないほうがおかしい。それだけに,任天堂に対する期待が低水準であったため,急激な上昇となったと考えている。
今後は,任天堂が決算で正式発表する販売台数次第ということであろう
最後に,問い合わせが多いため,ハードの生産と任天堂の決算上における販売と統計データによる実売の違いについて触れておこう。
まず,図を見ていただこう。
まず,(1)生産である。現在,ゲーム機メーカーは外部の協力会社に組立を委託している。通常,生産台数と言えば,この段階の数字だと思われがちだが,日本の会計基準では生産高は(2)の生産出荷である。SIEのゲーム機の台数開示は生産出荷で行われていたが,会計基準的には特段イレギュラーというわけではない。
(3)出荷は,工場から小売店に出発した時点で収益認識を行うことがかつては一般的であった。しかし,現在はより保守的な会計が行われ,(4)の着荷をもって収益認識をする。任天堂が販売台数,ソニーが売上台数として開示しているのは,この数量である。
一般的には,販売とは(5)販売を指すイメージだが,メーカーから見た場合は卸や小売りに着荷した時点となり,小売店から消費者ではない点には注意が必要だ。
エース経済研究所では,これまで国内で発売からの2週間で50万の販売実績が必要であると指摘していた。読者におかれては,これを実売データだと思われていた方もおられたようだが,表で言えば下から2番めの(4)着荷のことである。つまり,メーカー公式発表で行われる販売台数の数字をもって語っている。
しかし,これは外部から計測することができないものであり,公式発表が行われるまでは実売データから予測するしかない。新機種の成否を決めるラインは,実売データでいうと小売りの在庫を除いて45〜48万程度だと考えている。実売数でこのラインを超えていないゲーム機の今後の展開は厳しくなる傾向があるということだ。今回,Switchの国内販売がこのラインを超えなかったことで,このままでは今後の国内展開は厳しいものとなることが予想される。
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