米国特許文書から探る「Nintendo Switch」の概要
任天堂のSwitchに関連したいくつかの特許文書が米国で話題を呼んでいる。残念ながら日本の特許庁による公開データではまだ出てきていないようなのだが,米国特許によるデバイスの接続関連図だけでもいろいろなことが推測できるものとなっているのだ。特許申請の書類と実際の製品がまったく同じになるという保証はないものの,ある程度機能や性能を推測する助けにはなるだろう。
以下,特許文書の情報を基にした推測を含むことをお断りしつつ,目に付いたものを拾って紹介してみたい。
まず全体的なブロック図は以下に示したものとなる。
これだけだとスマートフォンにちょっと加えた程度の構造であり,特許文書の特許たる所以というか,どのあたりを発明として申請しているのかが分かりにくい。メインユニット(タブレット形ゲーム機本体)には2つのゲームコントローラ(以下,ゲーム用入力デバイスはゲームコントローラと表記)がついて,どのように電源を供給してどんなつながり方をしてといったあたりが要点となるのだろうか。
本体ブロック図を見ると空冷ファン(「COOLING FAN」)がついていることが分かる。
Kepler世代のTegra K1を搭載して,タブレット系Androidデバイスではいまだに3DMark最速クラスであるSHIELD Tabletにも付いていなかった空冷設備が,消費電力の下がったPascal世代のGPUコアを搭載したSoC用に用意されているわけだ。
Kepler世代のPascal世代でどの程度消費電力性能が違うのだろうか。デスクトップGPUでいうと,Kepler世代のGeForce GTX 680が190W(TDP)で3090GFLOPS,Pascal世代のGeForce GTX 1080が180W(TDP)で8228GFLOPSであることを考えると,同じ消費電力(≒発熱量)で2.7倍程度の性能のものをさらに高速に動かしていることが推察される(クレードル接続時のみ稼動という可能性もあるが)。
カートリッジスロットが「FIRST SLOT」(スロット1)と「SECOND SLOT」(スロット2)の2つついているのも目を引く。別の図を見ると,大小の違いはあるのだが,いずれもゲームアプリ格納およびユーザーデータ管理に使えるようだ。小さなスロット2のほうは,一般的な記録メディアが使えるとされている。その例として「SDカードなど」となっていたので,SDないしmicroSD系が利用できるのではないかと思われる。
センサー類は,磁気(MAGNETIC FORCE SENSOR),加速度(ACCELERATION SENSOR),角速度(ANGULAR VELOCITY SENSOR),温度(TEMPERATURE SENSOR),明度(AMBIENT LIGHT SENSOR)があり,一般的なスマートフォンよりも豊富な入力を扱えるようだ。
搭載するネットワークコントローラ(NETWORK COMMUNICATION SECTION)は一般的な無線LAN用で,Switch本体の一般的な通信全般を主に担当する。外部機器とのWi-Fi接続だけでなく,携帯電話回線への接続機能も有するとのことだ。
ちなみに本体にはもう1つ,Bluetoothベースのコントローラ(CONTROLLER COMMUNICATION SECTION)もあるが,こちらはゲームコントローラとの接続用だという。
そのほか,通信機能でいうと,ゲームコントローラ側(ただし右側のみ)でNFCと赤外線通信(受信)をサポートしているという記述も見られる。
続いてゲームコントローラ部を見てみよう。
左右のゲームコントローラは,1台あたり1個のアナログスティックと4つのボタン,2個のトリガー,そしてレコードボタンとマイナスボタンを搭載している。レコードボタンはスクリーンショットの保存など,マイナスボタンはゲームのヘルプ機能などでセレクトボタンのように使えるという。ボタン個数などは左右で同じだが,前述のNFCと赤外線機能は右側だけに搭載される。
このうち赤外線センサーなのだが,赤外線カメラとして機能するとある。これを使ってジェスチャー入力などが可能になるとされているのには注目してよいだろう。
ゲームコントローラには,さらにアタッチメントをつけることでバッテリー使用時間や握り心地を改善させることが想定されている。ちょっと見た感じでも標準ゲームコントローラは小さくて,操作性に不安を抱く人もいそうだが,アタッチメントで解決できるわけだ。発売後は周辺機器展開も見どころとなりそうだ。
本体とゲームコントローラの接続は,長めの溝にレールをはめ込み,がっちり固定するような図になっており,公開されているムービーでのデモ機もそのような固定方法になっている。
ただ,特許文書には,「短い固定部での実装もありえる」といった図面も載っていたりすいるので,このあたりが最終的にどうなるかは,まだ何とも言えない。
VR用HMDへの組み込みを示した図もある。スマホでよくある感じの接続方法でとくに新規な点はないのだが,一応,ヘッドハンドが2本に分かれているところが特徴なのだろうか。文書内の扱いも「こういう機器との接続もありえますよ」といった程度の記述にすぎないので,ただちにVR展開が行われそうとはいえないが,少なくともいろいろと考慮していることはうかがえる。
ただ,見たところ,HMD部にカメラはないようなので,AR展開はあまり考慮されていないようである。HMD装着時にもゲームコントローラは付け外しできるとのことなので,ゲームコントローラ側の赤外線カメラを使うという手はあるが,どうだろうか。一応,特許文書では赤外線カメラは普通のカメラやほかのイメージセンサーに置き換わる可能性が示されていることも付記しておこう。
クレイドル(ドック)部分との接続には本体にUSBメス型コネクタが使われる。本体からの映像はDisplayPortで転送のうえ,クレードル側でHDMIに変換するとあるので,コネクタはUSB Type-Cの可能性が高そうだ。任天堂製品で汎用的な端子が使われるとすれば,正直驚きである。
子供が乱暴に扱うことなども考えると,通常,このような製品ではかなり丈夫なコネクタが使われるのだが,しっかりとはめ込む形のクレードルであれば,民生品としての強度確保などで問題が出ないという判断であろうか。
クレードルのブロック図では,DisplayPort−HDMI変換を行うビデオコンバータ(CONVERSION SECTION)のほかに,メインユニットとの接続用となるコントローラ(CONNECTION PROCESSING SECTION)と電源管理用コントローラ(POWER CONTROL SECTION),そしてプロセッシングユニット(PROCRSSING SECTION)の姿も確認できる。
気になるのはプロセッシングユニットだが,さまざまな処理を行う汎用だとしか特許文書には書かれておらず,ぱっと見にはスリープボタンの処理くらいしか担当していないように見える。ただ,その程度であれば,「電源のオン/オフなどを制御する」という電源管理用コントローラで賄えるはずなので,単に充電とテレビ出力だけで3つのプロセッサ部を載せるのは無駄が多いようにも感じられる。この汎用プロセッッシングセクションが,ゲームの処理で使えるような規模のものなのかが注目されるところだ。
以上,挙げているとキリがないのでこのへんで切り上げておこう。さらなる詳細については各自で特許文書をあたってみてほしい。
Switchの詳細は2017年1月12日に開催されるカンファレンスでお披露目になる模様だが,今のうちに想像をたくましくしておくのもよいだろう。
以下,特許文書の情報を基にした推測を含むことをお断りしつつ,目に付いたものを拾って紹介してみたい。
United States Patent Application 20160361640
まず全体的なブロック図は以下に示したものとなる。
これだけだとスマートフォンにちょっと加えた程度の構造であり,特許文書の特許たる所以というか,どのあたりを発明として申請しているのかが分かりにくい。メインユニット(タブレット形ゲーム機本体)には2つのゲームコントローラ(以下,ゲーム用入力デバイスはゲームコントローラと表記)がついて,どのように電源を供給してどんなつながり方をしてといったあたりが要点となるのだろうか。
本体ブロック図を見ると空冷ファン(「COOLING FAN」)がついていることが分かる。
Kepler世代のTegra K1を搭載して,タブレット系Androidデバイスではいまだに3DMark最速クラスであるSHIELD Tabletにも付いていなかった空冷設備が,消費電力の下がったPascal世代のGPUコアを搭載したSoC用に用意されているわけだ。
Kepler世代のPascal世代でどの程度消費電力性能が違うのだろうか。デスクトップGPUでいうと,Kepler世代のGeForce GTX 680が190W(TDP)で3090GFLOPS,Pascal世代のGeForce GTX 1080が180W(TDP)で8228GFLOPSであることを考えると,同じ消費電力(≒発熱量)で2.7倍程度の性能のものをさらに高速に動かしていることが推察される(クレードル接続時のみ稼動という可能性もあるが)。
カートリッジスロットが「FIRST SLOT」(スロット1)と「SECOND SLOT」(スロット2)の2つついているのも目を引く。別の図を見ると,大小の違いはあるのだが,いずれもゲームアプリ格納およびユーザーデータ管理に使えるようだ。小さなスロット2のほうは,一般的な記録メディアが使えるとされている。その例として「SDカードなど」となっていたので,SDないしmicroSD系が利用できるのではないかと思われる。
センサー類は,磁気(MAGNETIC FORCE SENSOR),加速度(ACCELERATION SENSOR),角速度(ANGULAR VELOCITY SENSOR),温度(TEMPERATURE SENSOR),明度(AMBIENT LIGHT SENSOR)があり,一般的なスマートフォンよりも豊富な入力を扱えるようだ。
搭載するネットワークコントローラ(NETWORK COMMUNICATION SECTION)は一般的な無線LAN用で,Switch本体の一般的な通信全般を主に担当する。外部機器とのWi-Fi接続だけでなく,携帯電話回線への接続機能も有するとのことだ。
ちなみに本体にはもう1つ,Bluetoothベースのコントローラ(CONTROLLER COMMUNICATION SECTION)もあるが,こちらはゲームコントローラとの接続用だという。
そのほか,通信機能でいうと,ゲームコントローラ側(ただし右側のみ)でNFCと赤外線通信(受信)をサポートしているという記述も見られる。
続いてゲームコントローラ部を見てみよう。
このうち赤外線センサーなのだが,赤外線カメラとして機能するとある。これを使ってジェスチャー入力などが可能になるとされているのには注目してよいだろう。
ゲームコントローラには,さらにアタッチメントをつけることでバッテリー使用時間や握り心地を改善させることが想定されている。ちょっと見た感じでも標準ゲームコントローラは小さくて,操作性に不安を抱く人もいそうだが,アタッチメントで解決できるわけだ。発売後は周辺機器展開も見どころとなりそうだ。
ただ,特許文書には,「短い固定部での実装もありえる」といった図面も載っていたりすいるので,このあたりが最終的にどうなるかは,まだ何とも言えない。
ただ,見たところ,HMD部にカメラはないようなので,AR展開はあまり考慮されていないようである。HMD装着時にもゲームコントローラは付け外しできるとのことなので,ゲームコントローラ側の赤外線カメラを使うという手はあるが,どうだろうか。一応,特許文書では赤外線カメラは普通のカメラやほかのイメージセンサーに置き換わる可能性が示されていることも付記しておこう。
クレイドル(ドック)部分との接続には本体にUSBメス型コネクタが使われる。本体からの映像はDisplayPortで転送のうえ,クレードル側でHDMIに変換するとあるので,コネクタはUSB Type-Cの可能性が高そうだ。任天堂製品で汎用的な端子が使われるとすれば,正直驚きである。
子供が乱暴に扱うことなども考えると,通常,このような製品ではかなり丈夫なコネクタが使われるのだが,しっかりとはめ込む形のクレードルであれば,民生品としての強度確保などで問題が出ないという判断であろうか。
クレードルのブロック図では,DisplayPort−HDMI変換を行うビデオコンバータ(CONVERSION SECTION)のほかに,メインユニットとの接続用となるコントローラ(CONNECTION PROCESSING SECTION)と電源管理用コントローラ(POWER CONTROL SECTION),そしてプロセッシングユニット(PROCRSSING SECTION)の姿も確認できる。
気になるのはプロセッシングユニットだが,さまざまな処理を行う汎用だとしか特許文書には書かれておらず,ぱっと見にはスリープボタンの処理くらいしか担当していないように見える。ただ,その程度であれば,「電源のオン/オフなどを制御する」という電源管理用コントローラで賄えるはずなので,単に充電とテレビ出力だけで3つのプロセッサ部を載せるのは無駄が多いようにも感じられる。この汎用プロセッッシングセクションが,ゲームの処理で使えるような規模のものなのかが注目されるところだ。
以上,挙げているとキリがないのでこのへんで切り上げておこう。さらなる詳細については各自で特許文書をあたってみてほしい。
Switchの詳細は2017年1月12日に開催されるカンファレンスでお披露目になる模様だが,今のうちに想像をたくましくしておくのもよいだろう。