ChinaJoy会場で見かけたVR機器あれこれ
ちなみに,あちこちで行われているVRデモの主流はViveによるものだが,ごくたまにRift CV1が見られた。GearVRもそれなりに使われていたようだ。
まあ,このあたりはかつての日本でも同じで,VR関連の研究には政府からの支援金がいくらでも出たので,10年ほど前に第1次VRブームをもたらしたと,ソリッドレイ研究所の神部勝之社長がOmegaShipの発表会で語っていたのを思い出す(関連記事)。
ちなみに,その日本の第1次VRブームはNVIDIAがGeForceを出すまで続いたそうだ。GeForceが数千万円するSGIのワークステーションの性能を数万円で出すようになってしまったので,大手商社がごっそり手を引いたため急速にしぼんでいったという。まあ,そのおかげでVR技術を蓄積できた会社もあるので,こういったバラマキ気味な政策も効果がないわけではあるまい。
中国で展開されているVRヘッドセットだが,いくつかのフェーズがあり,一時,雨後の筍のように乱立していたCardboardやGear VRのようにスマホを挟み込んで覗き見るタイプの製品を作っていたところの多くが,スマホ部分の機能を内蔵した独立型の製品を出品していた。また,それらとは別の方向性で高性能を狙ったPC接続のハイエンド製品もある。
どちらにしても,ほぼその会社の独自仕様であり,ソフト供給などに不安を抱えるという点が共通している。これはSDKやUnity用のプラグインを提供すればすべて解決するという問題でもない。
●3Glasses Blubur S1
会場内を見た限り,スペックで一番上になるのがこの機種ではないだろうか。「My First VR Headset」というキャッチフレーズだが,カタログスペックはかなり高い。念のために言っておくと,RiftやViveのようにPCに接続するタイプのVRヘッドセットである。3Glassesは,オールインワンタイプのヘッドセットなども作っているが,これはハイエンドタイプとなる。
解像度とリフレッシュレートを見てピンときた人もいるかもしれないが,PCとヘッドセット間の接続はDisplayPortによって行われている。HDMIでは無理な帯域でもDisplayPortなら余裕があったりするわけだ。
特徴は,まさに「全部入り」といった感じで,あちこちのシステムのいいとこ取りがされている。箇条書き風に列記してみよう。
視野角は110度で,RiftやViveと同じ。
デモ機のコントローラは両手それぞれで握るタイプのもので,Viveのドーナツ部を棒にした感じのものになっていた。
両眼部(やや上)にカメラが付いているように見え,ARやMRにも対応できそうだ(言及はナシ)。単眼のViveとは違い,ステレオ対応だ。
ヘッドホン付き,かつノイズキャンセル付きマイク機構も搭載している。
右側面にタッチパッドが付いている(ように見えるが言及はナシ)。
わりとどうでもいいことだが,ブルーライトカット機能も付いている。
価格は2999人民元(約4万7千円)。
公表されているスペック表に挙げられていない重量や装着性,調整機能などでの比較も必要ではあろうが,RiftやViveよりスペックが上で,値段が半額となるとインパクトは大きい。ハイスペックで低価格を実現できた要因としては,
- 中国製であること
- 先行製品のノウハウが丸ごと使えたこと
- DisplayPortと液晶パネルを選択したこと
などが考えられる。
あと出しだけあって話どおりなら悪い製品ではないのだが,先行する2社がエコシステムまで考えて活動しているのに対し,製品だけの展開ではちょっと弱い。マイナーなプラットフォームにゲームをわざわざ出そうと考える人は少ないだろう。そういう意味で,今後どう展開させていくのかは興味深い。また,たとえ提供される体験が高品質のものだったとしても,現在のPC用VRヘッドセットの価格は,一般への普及を目指すにはあまりに高すぎるのは事実である。こういった製品が登場することは,VR業界にとってよい刺激になるのか,価格崩壊をもたらすのか気になるところである。
どうでもいいが,同社のロゴはOculus VRの昔のロゴ,さらに言えばCry ENGINEのロゴに似ているのがちょっと気になる。
3Glasses公式サイト(製品ページはナシ)
●IMMEREX VRG-9020
グラフィックス性能は残念ながらさほど高くなさそうだ。親機の大きさからして,本体がスマホ相当のものであることは察しがつくと思う。
ヘッドセット部分は重量200gと軽量で,比較的薄型である。接岸部の穴が小さくて少し不安になるものの,かけてみると意外と本格派であることが分かる。解像度は「4K」とされているが,具体的な縦横サイズは分からなかった。単眼あたりで1080pという表記からすると,1920×1080×2で,横4Kという計算だろうか。前述のように,視野は上下が短めの横長となっている。
AR対応になって,表示デバイスは置いておいて,ゲーム機本体側を新しいものに更新することで年々性能を上げることもできるようにもなると夢も膨らむのだが。
アリアドネスレッドジャパン公式サイト(日本支社)
●HYPERREAL Pano
トラッキング技術そのほかは独自開発とのことなので互換性はないと思うが,レーザー走査型ヘッドトラッキングユニット2個とヘッドセット,両手用コントローラから構成されている。つまり,だいたいViveと同じシステム構成となる。
なお,デモ機のコントローラは棒に窪んだ皿が付いたような形状のものだったが,最終的には,ドーナツ型のViveコントローラとOculus Touchを足して2で割ったような形状になる模様だ。
会場で流されていたビデオではレイテンシが11ms以下とかなり低めなようなことが謳われていたと思うのだが,実際に装着するとレイテンシは多めな感じだった。これはソフト側の問題かもしれないのでなんともいえないのだが。試したデモゲームがルームスケールには対応しておらず,コントローラでの移動になっていたり(ぬるっと動いて気持ち悪い),製品の魅力を引き出すデモが選ばれていたとはいい難い。
デモ内容は迫りくるモンスターを二丁拳銃で撃ちまくるというディフェンスゲームだった。無茶だろうと思いつつ,どんどん前へ出ろという指示に従っていると,2ウェーブめであっさりゲームオーバー。たぶん動き回って地形のギミックを駆使しないとかなり厳しい感じではあった。ただ,あの移動方式でスウェイバックとかは,ちょっとやりたくはない。
製品としてViveと同等とまでは言えないかもしれないが,「だいたい同じ」というのはまず確実だ。これが仮にSteam VR端末として認定されたり,一時行われていた「RiftのソフトをViveで動かす」ようなモノが出たりすると,Viveの市場が崩壊する可能性もある。RiftやViveの価格がVRの普及にマイナス材料となっていることは確かなのだが,どうしたもんだろうか。
●Visionertech VMG-PROV01
VR,MR,ARそれぞれのデモを見てみたところ,残念ながら遅延も大きめで映像がズレる。MicrosoftのHoloLenzのような素通し映像とCG映像の重ね合わせの場合にズレるのはしかたないのだが,一度カメラで取り込んだ映像であれば,それに合わせてCGを合成するのは当たり前なので,基本的にズレてはいけないのだ。このあたりはまだまだこなれてない感じであった。
開発中とのことなので,今後に期待しよう。なお,このデバイスは民生用ではなく,研究用などの市場をターゲットにしているとのことだった。
Visionertech公式サイト
●Shadow Creator Halo
使用法としては,Snapdragon 820搭載のAndroid端末と組み合わせるらしい。おそらく外付けだと思うのだが,内蔵かどうかは確認できていない。予定では2017年にリリースされるとのこと。価格はHoloLenzの半額くらいとのことらしいのだが,すでに公式サイトでは800人民元(1万2000円)で予約が開始されているように見える。
これはNano |
萌え絵でアピール |
Shadow Creator Halo製品情報ページ
●Pimax 小派VR 4K
実は,ChinaJoy会場で非常に目立っていたぐるんぐるんと回る大型体感筐体で組み合わされていたのが,このヘッドセットだったのだが,稼動していた2か所が両方ともヘッドセットトラブルであまり回転していなかった。加熱しすぎるらしく,冷却のためにデモが中断されていたりしたのだ。
配られていたパンフレットにはOculusとSteam VRプラットフォームのゲームが動くと書いてあったのだが,実際のところは不明。コストパフォーマンスは非常に高いので,本当に互換性があるのなら注目されるヘッドセットではある。