ゲームツール&ミドルウェアの最先端技術が集合。GTMF 2016 Osaka ブースレポート

 2016年7月5日,大阪府グランフロント大阪にて「Game Tools Middleware Forum 2016 Osaka」(以下,GTMF)が開催された。
 GTMFは名前のとおり,ゲーム開発を支えるツールやサービスの提供会社が一同に集まり,最新の技術についてお披露目するビジネスカンファレンスである。毎年大阪と東京で開催されているイベントだが,本記事では,その大阪開催の展示ブースレポートをお届けする。


展示ブースの傾向


 今年は前年度にも増してVR(仮想現実)対応のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の展示が非常に目立っていた。
 各社とも自社製品の強みを生かしたデモンストレーションをVR機器で行い,Oculus VRの「Riff」, HTCの「Vive」, そして「PlayStation VR」とそろい踏みであった。

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エピック・ゲームズ・ジャパンでは3種類のVRHMDすべてでデモを行っていた
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デジカは,同社が日本展開をサポートしているHTC Viveの実機を展示
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ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンのブースでは,PSVRを使った,いわゆる奥スクロール3Dシューティングのデモを初展示していた
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オートデスクはStingrayエンジンによるVRデモをRiftで動作させていた

 「Unreal Engine 4」を展開するエピック・ゲームズ・ジャパンは,サードウェーブデジノスの「GALLERIA」ブランドのPC展示と連携し,UE4デモをRift,Vive,PSVRのVRハイエンド三銃士で一斉に展示していた。
 ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンのデモは,Unite 2016で話題をさらった上級者向けセッション「ハードウェア性能を引き出して60fpsを実現するプログラミング・テクニック」(関連URL) で,同社の安原祐二氏が披露したPS Vita向けデモがベースになっている。もともとPS Vitaで高いフレームレートを出すために作られただけあり,非常に滑らかな動作が印象的であった

 会場全体ではとくにPSVRの展示が多く見られ,ソニー・インタラクティブエンタテインメントが非常に力を入れていることがうかがえる。なお,満員御礼となったPSVRのセッションについては,別途記事でレポートする予定だ。


ゲームプロジェクトの進行管理を協力にサポートする「Save Point」


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 「Save Point」はMUGENUPが提供する,デザイン制作に特化したクラウド型の制作管理ツールだ。
 ゲームのイラスト素材制作において,デザイナーと進行管理者がデータのやり取りをする際は,自社のサーバーにデータを置くか,何らかのオンラインストレージサービスを利用することが多いだろう。作業の進行については,Google SheetやExcelなど表計算ツールを使った管理や,メールベースの対応になることもあるかもしれない。

 結果,どのデータが最新版か分からなくなったり,進行管理のExcelシート自体の管理に時間がかかったりと,進行を止めてしまう要因になることも多い。またデザイナー側も,優先するべき作業の特定が難しくなる,制作過程のバックアップデータに必要な物が埋もれる……などの悩みがあるのではないだろうか。
 プロジェクト管理ツールとして「Redmine」などを導入している企業も多いと思うが,一定の学習コストが必要で,社内のアーティスト全員に周知させることは難しい場合もある。

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 そうしたデザイン現場での進行の問題に対して,Save Pointは一元的な制作フローの提供を行っている。とくにカードソーシャルゲームのような,絵素材が大量に存在するゲームプロジェクトをターゲットとしているという。

 Save Pointのメイン画面には,イラストごとにタスクがタイル状に表示されている。進行の管理者は,新しいタスクを立ててデザイナーをアサインし,期日を設定することでそのタスクがスタートする。

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 タスクを立てると裏側で自動的にガントチャートが更新される。ガントチャート表示においては,作業の進行度合は色で示されており,プロジェクトの進行具合が俯瞰的に確認できるようになっている。

 それぞれのタスクには,別のタスクのリンクを埋め込むことができる。例えば,ディレクターが「特定のキャラクター3人が入った,プロモーションバナーを用意したい」と考えたとする。
 これまでは,いちいち作業用フォルダを作って,元素材となる画像をコピーして入れ,メールで指示を出して……と手間のかかる作業が必要になっていたが,Save Pointではそんな面倒臭さは一切ない。ツールの中でタスクを立て,使いたいキャラクター画像のリンクを付けて,デザイナーをアサインするだけだ。

 デザイナー側は元素材と期日をいつでも参照することができ,ディレクターはほかの操作をすることなく,ガントチャート上で進行を確認することができる。結果としてデザイナーとの成果物に対するコミュニケーションが増え,クオリティアップにつながる。

 MUGENUPは,もともとゲーム用のイラスト制作の事業を行ってきた企業だ。多くのイラストレーターの進行管理をする中で生まれたツールがSave Pointだという。サービスがスタートして1年めだそうだが,すでにサイバーエージェント,バンダイナムコオンラインなど,大手ソーシャルゲーム開発の現場でも活用され始めているとのことだった。

 なお,利用ライセンスは,使用する容量と人数,プロジェクトの数に合わせて決定される。ミニマムプランとしてはデータ容量200GB,15名,2プロジェクトまでの規模で月額5万円だ。ソーシャルゲームに限らず,イラストデータの多いゲーム開発には非常に有効なツールだろう。

Save Point公式サイト



待望のインディーズライセンスが登場,ゲーム向け動画ソリューション「H2MD」


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 「H2MD」はアクセルが提供しているスマートフォンやブラウザで動作する動画コーデックだ。HTML5対応ブラウザで軽快に動作するほか,先月からUnityプラグインの提供が始まっている。同社オリジナルの動画コーデックは,H.264と比較すると圧縮率は落ちるものの,動画をテクスチャとしてポリゴンに貼ったり,複数同時に再生したりと柔軟な利用が可能になっている。

 昨年の発売以降,H2MDは基本的に法人との契約が必要な製品であったが,つい先日多くの要望を受けてインディーズ開発者向けライセンスを発表したばかりだ。動画ソリューションの需要が高いVRクリエイターにとっては嬉しい状況だ。
 「Indies」ライセンスは7月中の提供を予定しており,1年間で2万5000円となっている。これは動画エンコーダへのライセンス価格となっているため,プロジェクトの数に関係なく1年間使い放題のプランなのだそうだ。Indiesライセンスの規定として,事業売り上げが1000万円以下の法人・個人に限られるほか,起動時のH2MDロゴ表示が必須となる。ライセンスの認証はUSBドングルを利用する方式で,PayPalを通して支払いを行うとドングルが送付されるとのことだ。

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 Unityを使ったデモンストレーションでは,複数のムービーを重ねあわせたデモを再生していた。
 もちろん,VRなどだけでなく,スマートフォンのゲームの演出にも有効だ。最近はMac用のエンコードツールを提供し始め,Mac環境の多いアプリ開発者から好評だという。
 公式サイトからは,評価用の無料体験を申し込むことが可能になっている。まずは手持ちの素材を変換・再生してみて,性能や画質を確認するとよいだろう。

H2MD公式サイト



サウンドツールにスマホの振動演出を組み合わせた 「CRI HAPTIX」


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 高性能なサウンドミドルウェア「ADX2」を提供するCRI・ミドルウェアは,新たな振動ソリューション「CRI HAPTIX」を出展した。
 これは,米イマージョンと協力して開発されたADX2向けの拡張機能で,スマートフォンゲームに振動を使った演出を簡単に組み込むことができるものだ。ブースでは,ラインバトル系のゲームアプリに振動演出を加えたデモを展示していた。

 設定は非常に簡単で,ADX2のツールの中で効果音などと同じように振動パターンを作り,ゲームプログラム側からは音と同列に呼び出すだけだ。振動演出のプログラム作業は一切なく,ただツールの中で効果音と一緒に設定するだけで,すぐ利用することができる。

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 振動は時系列の変化で演出されるものなので,サウンドツールの中でまとめて設定できるとなにかと使い勝手がよさそうだ。

 さて,振動機能を使う際に気になるバッテリー消費だが,実はスマートフォンの振動における必要電力は非常に低いそうで,むしろ液晶画面のほうが何倍も消費量が高いそうだ。
 ツール内で設定できる振動のパターンは数百種類が用意されており,選択肢が豊富な半面,迷ってしまうこともありそうだ。

 スマートフォンのゲームタイトルでは振動を積極的に使ったゲームはあまり見たことがなく,導入の簡便さと相まって今後のブームになるかもしれない。気になる人は「CRI HAPTIX」のニュースもご覧いただきたい(関連記事)。

 また,同ブースでは高品質な動画ソリューション「Sofdec2」のPSVRデモを展示していた。残念ながらSofdec2にはインディーズライセンスは用意されていないが,法人がPCタイトルをSteamで販売する場合に限り,売り上げの0.95%を支払うレベニューシェア形式を選択できる。
 現在Steamは,VRタイトルに限り比較的リリースしやすくなっている (参考URL)] ため,PC向けのVRタイトルであればSofdec2をリーズナブルに利用することができるかもしれない。ADX2,Sofdec2のいずれも,無償での試用に申し込むことができる。

CRI・ミドルウェア公式サイト



企業同士のマッチングを目指した5分間アピール大会「GTMF Meet-Ups」


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DIGITAL DEVELOPMENT MANAGEMENTは,ゲームタイトルの海外展開事業にかける同社の情熱をトークのみでアピール
 「GTMF Meet-Ups」は,セッションの休憩時間に展示エリアの一角を使って行われる,ライトニングトーク大会のような催し物だ。

 ゲーム開発会社や,アセットアウトソーシングを支援する会社,翻訳・海外展開を専門とする会社などの会社が,新たな開発者との出会いを求めて,5分間という短い時間で自社のアピールを行うものである。
 アピール内容は,王道的に自社紹介を行う会社や,社内で使っているツールの紹介を行う会社,あるいはスライド資料一切なしで事業にかける情熱をマイク一本で語る会社などさまざまだ。

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ヒストリアは,開発ワークフローで利用している各種ツール・ソフトウェアの紹介を行った
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アメージングは,自社のコンテンツ開発における強みについて話した。なぜか登壇者は覆面レスラーだ

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ジェムドロップは,PS4/PS Vita/PCの『いけにえと雪のセツナ』を事例に,サウンドミドルウェアADX2の利用について紹介した
 このアピールタイム枠のそれぞれには,GTMF出展企業のスポンサーがついている。会社によってはそのスポンサー企業のツールを使ってみてどうだったかを話すこともあった。ツール・ミドルウェアのプレイヤー自身からその効力を紹介をしてもらうことによって,より具体的な活用事例を見ることができるシステムだ。



VR開発需要で活気あふれるGTMFブース会場


 GTMFは,ここ数年で協賛会社・来場者ともに上昇傾向にあり,今年の大阪会場の来場者は600名を超えた。新発表の技術や初出展の企業も多く,VR開発の需要増加とあいまって活気あふれる会場になっていた。

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GMOアプリクラウドとの連携で導入しやすくなったマルチプレイソリューション,「Photon Cloud」
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GTMF初出展,高品質オクルージョン・カリングミドルウェア「Umbra」

新たにVRやUnity for PS4での利用にも対応した,マッチロックの「BISHAMON」
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 ハイエンドタイトル,モバイル,VRコンテンツいずれの開発にも,ツール・ミドルウェアの導入はほぼ必須だ。
 GTMFは7月15日には東京でも開催される。上記に取り上げた会社以外にも,グラフィックス,サウンド,ネットワークなど33社が魅力的なツールの紹介を行っている。
 普段使用しているツールの担当者へ,要望やサポートを気兼ねなく聞ける絶好の機会なので,ゲーム開発を支える技術の最先端を確かめたい方は,ぜひ参加してみてはいかがだろうか。

GTMF 2016 Tokyo
日時:2016年7月15日(金)
場所:秋葉原 UDX(GALLERY,NEXT1〜3,THEATER を使用)
〒101-0021 東京都千代田区外神田 4-14-1
公式サイト:http://gtmf.jp/2016/tokyo/

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