アリババクラウド,日本市場向けAIパートナーシッププログラムを開始。ゲーム業界向けのカスタムAIソリューションも提供へ

 アリババクラウドは3月5日,日本市場向けの新たな「AIパートナーシッププログラム」を開始したと発表した。同プログラムでは,同社の独自基盤モデル「Qwen」を活用し,日本国内のパートナー企業と協力してカスタマイズ可能な生成AIソリューションを開発・提供していくという。ゲーム業界も対象産業に含まれており,業界特化型のAIソリューションが期待される。

 本プログラムの特徴は,テクノロジー企業やコンサルティング企業との戦略的パートナーシップを通じて,AIモデルのデプロイや微調整,カスタマイズされた生成AIモデルやアプリケーションの共同開発など,日本市場に最適化されたサービスを提供することにある。これらのソリューションは日本語に最適化されるだけでなく,小売,ゲーム,企業ITなどの業界に特化した専門知識によって強化されるとのことだ。

 アリババクラウドジャパンのカントリーマネージャーである与謝野正宇氏は「革新的なAI主導のアプローチを通じて,企業のAI導入の加速や業務効率の向上,課題への対処を支援することを目指しています」とコメントしている。

最新のAIモデルを日本市場に投入

 パートナーシッププログラムに加え,アリババクラウドは最新のQwenモデルを日本市場に導入する。主力の「Qwen2.5シリーズ」は高度なマルチモーダル機能や長文文脈入力処理に対応し,日本語を含む29言語をサポートする。また,LLMやAIチャットボットの評価で高い評価を得ている「Qwen2.5-Max」の日本市場への導入も予定しているという。

 さらに,動画基盤モデル「通義万相(Wan)」の最新バージョン「Wan2.1」も日本市場に導入予定だ。このモデルは高品質なテキストから動画,画像から動画の生成が可能で,動きの精度や空間の一貫性,色の正確さ,動画のリアルさが大幅に向上しているとのこと。特にメディア,広告,デジタルコンテンツ業界に最適とされており,ゲーム開発などにも活用できる可能性がある。

AIを支える強固なインフラも強化

 AIの活用には堅牢なコンピューティングインフラが不可欠だ。アリババクラウドはインフラの強化も進めており,同社のクラウドネイティブなリレーショナルデータベース「PolarDB」は,極端な条件下でのデータベースパフォーマンスを評価するベンチマーク「TPC-C」で世界記録を樹立したという。

 同社によると,PolarDBは高速パフォーマンス,高い同時実行性,自動スケーリングを特徴とし,ビジネスクリティカルなアプリケーション向けに設計されている。日本のトップクラスのゲーム企業を含む世界中の1万社以上の企業顧客をサポートしているとのことだ。

日本企業のAI導入における課題

 アリババクラウドが実施した自主調査「テクノロジー・サステナビリティ・インデックス2024」によると,日本の回答者の70%がデジタルテクノロジーは持続可能性の進歩を加速させると考えている一方,75%が自社のクラウドコンピューティングとAI導入が遅れていると認識しているという。

 課題としては,日本の回答者の73%がAI導入の障壁としてエネルギー消費量の多さを挙げており,70%がAIのようなテクノロジーのエネルギー需要がそのメリットを上回る可能性を懸念しているとのこと。

 「日本におけるアリババクラウドのAIパートナーシッププログラムは,AI導入とイノベーションの推進に対する当社のコミットメントを強調しています」と与謝野氏は述べている。「先端のテクノロジー,戦略的パートナーシップ,堅牢なインフラを活用し,日本企業がAI時代の課題を克服し,変革を加速し,持続可能な成長を実現できるよう支援します」

 なお,アリババクラウドはAI検索エンジン「Felo」を開発したAIスタートアップ企業のSparticleなど,すでに日本企業と提携を始めているという。今後,日本国内におけるパートナーシップのエコシステムを拡大することで,最新のQwenモデルに基づく共同AIソリューションの開発を目指すとしている。

「アリババクラウド」公式サイト