【月間総括】ポリコレ問題を認知していないソニーグループ経営陣。垣間見える「ユーザーとの乖離」
今月はソニーグループの話を3つに分けて進めたい。
最初は歴史的大失敗となった「CONCORD」についてだ。発売から10日ほどでサービス終了と,前例がないことで大変話題になった。
だが発売当日,CONCORDというタイトル自体を知らないというゲーマーのほうが多かったという印象だ。つまり,CONCORDは認知すらされていなかったのである。
ではなぜこんなにも有名になってしまったのか? それは普段から良く指摘しているのだが,人間は悪いニュースほど引き付けられる傾向があるためだ。
CONCORDはサービス停止が発表されて初めて話題になったのだが,そのタイミングでSteamでの同時接続数が1000人以下と,過去にないレベルであったことも明らかになった。
たった10日でサービス終了という歴史的な大失敗というレッテルが貼られ,バッドニュースとなって拡散したことで,多くの人の心を捉えたということだろう。
そして原因探しが始まった。
メディアやSNSでは,大失敗の原因はポリコレ(ポリティカル・コレクトネス:すべての人が平等に扱われるよう意識した表現や施策のこと)によりキャラクターに魅力がなくなり,ユーザー受けが悪くなったこと,あるいは買い切りのパッケージでFree to Play(F2P)ではなかったため,との指摘が多かったように思う。
しかし筆者の見方は違う。
買い切り型にはHELLDIVERS 2などの成功事例もあり,F2Pだけが原因には思えない。
また,ポリコレのせいで遊ばれなかったように,筆者には見えなかった。むしろ,「不快感を与えないデザインやゲームシステムだったため誰も知らない状況に陥っていた」と考えたほうが自然ではないだろうか。
同時接続数の少なさから見ても,認知されていないことが問題だったのだろう。そしてこれは筆者のヒアリング結果とソニーグループの見解も同じだった。
つまりSIEらしいといえばそれまでなのだが,叩かれない無難なもの追求した結果,誰にも興味を持たれなかっただけである。
また説明会の質疑応答で,日経記者からの「ポリコレで失敗したのではないか?」という質問に十時氏の回答がかみ合っていなかった。おそらく十時氏は,ゲーマーの間でポリコレ問題が騒がれていることをそもそも知らなかったのではないだろうか。
この点についてはソニーグループにも聞いたが詳細は分からないとしたので,ソニーグループの経営陣もポリコレ問題の存在自体を認識していない可能性が高い。
そもそもソニーグループやSIEからすると,ポリコレは遵守して当然のものであり,当たり前でしかないからだ。
誤解のないようにしておきたいが,投資家もコンプライアンス(法令遵守)を重視するようになっており,正論に異を唱えることはない。ただ,投資家やアナリストがポリコレを求めているわけでもないことには留意いただきたい。
結果,経営陣もアナリストもよく分からないまま,ゲーマーが騒いでいる,という奇妙な現象が発生したのだ。
なぜこのような現象が起こったのかというと,投資家から経営陣にKPI(重要経営指標)が何かと求められるようになったからだと,筆者は考えている。
東証が資本の効率性などを求める姿勢を打ち出したことで,ゲーム販売も定量化できる指標を要求するようになっており,KPIとは何かと聞くことになる。
筆者はゲームハードの販売数は薄さやデザインと相関性があることを示したが,ゲーム業界で根源的なゲームソフトには売れる因果性が何か,ということが解明されていない。
経営者はゲームソフトが売れる理由が分からないため,KPIが何かに応えられないのだ。
しかし答えないわけにはいかない。その結果,「メタスコアが大事」,というな回答になってしまっていると考えている。経営者がKPIをメタスコアにする→経営者も開発者も売れることより,高いメタスコア目指すとなってしまっているのだろう。
高メタスコアを目指すことが一般化すると,メタスコアを高くするにはどうするかに知恵を絞るようになる。
メタスコアは,ゲームのフォトリアル化が進むにつれて,芸術性や社会性が評価される割合が高くなっているようであり,このなかには多様性も含まれる。
したがって高メタスコア=KPIを追求し始めると,会社の株価がインデックス(株価指数)よりも上回ったであるとか,メタスコアが高いことは評価されたとか,ポリコレを重視したといったことになり,ユーザーと投資家,経営者で認識が違う結果を生み出しているわけだ。
1.ユーザーが求めているもの(楽しいゲーム)
2.経営者/開発者が求めているもの(高いメタスコア)
3.投資家が求めているもの(高いリターン)
4.結果として販売数量と因果性ないポリコレ(多様性)が重視される
といったそれぞれが求めるものが異なり,経営者はユーザーが言っていることが分からなくなる,という怪奇現象が発生するのである。
こうなるとゲームソフトが売れる因果性を明らかにしないと,状況は悪化してしまう。
メタスコアはゲームを作った結果であって,メタスコアが高ければ売れるわけではない。にもかかわらず高いメタスコアを目指すと,評論家の地位が上がって社会性や芸術性を求めるようになり,ユーザーとの乖離が増し,長期に関係性を維持できなくなってしまう(ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーは評論家のスコアは低いのに大ヒットするような現象が起こっている)。
次に,11月19日にソニーグループがKADOKAWAを買収する協議を行っているという報道がでてきた。
まだ交渉は初期段階なので確定的なことは何も言えないが,いくつか解説はしておきたい。
KADOKAWAはフロムソフトウェアを傘下にもち,バンダイナムコと協業している。
協業タイトルである「ELDEN RING」は2500万本以上の販売実績を持っているので,この買収はゲームが目的だと思った人も多いだろう。
確かにフロムソフトウェアのゲームは世界に売れるコンテンツであり,買収の目的の一つであることは確かだ。
しかし筆者は見逃せない視点が一つあると考えている。それは電子配信である。
以前から東洋証券の見解として,「2030年代にかけて日本のアニメ文化が世界を席巻すると予想している」としてきた。
この話を初めてしたのが2019年頃と記憶していて,今や米国のZ世代は3大スポーツよりもアニメを視聴していると報道されるまでになっている。
先ほども少し述べたが,東証からは上場企業に対して効率性を求められている。これは,簡単に説明すると,少ない資本(お金)で高い利益を実現してほしいということだ。
電子配信は一度デジタルデータさえ作ってしまえば,サーバーにデータを置いておくだけで再生されて収益になる非常に効率の高いビジネスである。
ソニーグループの音楽事業は世界の楽曲の6割にも及ぶ配信権を持っており,人の手をほとんど介さずに収益をあげている,高効率ビジネスだ。そのままライトノベル,漫画,アニメ配信等に転用できるビジネスモデルである。
サーバーにこれらのデータを置いておけば,いろいろなプラットフォームからストリームやダウンロード販売されていく。本当に買収を実現できるなら配信権は魅力的で,ソニーグループにとっては将来にわたって貢献してくれるだろう。
こう考えると,ソニーグループは全体的に適切な判断をしているように見える。やはりゲーム事業だけがおかしなことになっていると思う。
最後に決算に触れておきたい。
ソニーグループのゲーム事業は,第2四半期の決算は東洋証券の予想を大きく上回った。
ソニーグループの決算資料には3つの要因があるとされている。
(1)ハードウェアの収益性改善
(2)自社制作以外のゲームソフトウェア販売増
(3)ネットワークサービスの増収の影響
これは金額が大きい順に記載されている。ソニーグループと議論した感触では,過半は(1)のハードウェアによるもののようだ。
となると400億円以上の収支改善となるのだが,それは不可解だ。
今年の2月時点では値上げできない理由として,薄型のPS5は旧モデルと比較してコストが下がっていないとしていた。だが今回,新モデルはコストが下がったと言ったのである。
この点は説明会では明らかにならなかったが,どうも一部の部材を安く調達できたためのようだ。しかも昨年は2500万台の販売を目指して生産台数が多かったこともあり,製造時点では販売価格と製造原価の差を多額の費用として認識する必要があった。
さらに、会計上の話になるが販売価格と製造原価の差額(逆ザヤ)を費用として認識する必要がある。昨夏は,2500万台の目標に向けて大量生産していた時期であり,この費用が数百億円規模だったと推測している。これに対して,(1)今年は1台当たりの逆ザヤ額が減少したか、下図右のように利益がでるようになり、損失を計上しなくても済むようになったこと,(2)生産台数も減っていることが,増益要因となったと考えている。
また,年間のPS5の販売計画は1800万台を据え置かれている。以前は,ハード的な施策を前提に1650万台を予想しているとした。
ソニーグループもPS5 Proを前提に1800万台を維持したようだが,値下げできないから売れないとしていたのでProを出した意義がよく分からない。
その一方で,ブラックフライデーで恒例の値下げを実施するとしている。どうもSIEの方針が見えないのである。
業績は確かにいい。素晴らしいといっていいほどである。しかし何のためにゲームビジネスをするのかが見えない。
今後AAAとライブサービスゲームのバランスを考えて展開すると言っているのだが,ヒアリングするとCONCORDの失敗でソロAAAゲームに注力するわけではない,と説明を受けた。
このコメント自体は分かるのだが,AAAがうまくいかなかったらどうするのか,そしてPS6はどうするのか,ビジョンがまったく示されていない。
PS6は現在の延長線上で,XboxをベンチマークしたKPI経営を続けるということだろう。だが,そうなるとひたすら演算能力を向上させ,ハード価格もソフト開発費も大きく上がってしまう。
そういう性能を喜んでいるニッチなユーザーだけでは,少なくともサードパーティは採算をとるのが難しくなるし,SIEもPCでの販売を伸ばすしかなくなってしまう。杞憂に過ぎないのかもしれないが,なんとも不安である。
西野氏にはぜひSIEだけが発展するのではなく,業界全体を発展させるようなビジョンを提示していただきたいものだ。
と締めくくったところで,ソニーグループが携帯ゲーム機を開発しているとの報道があった。
詳細は次回にする予定だが,コメントしたように市場で勢いがあるのは携帯ゲーム機だ。この報道にある携帯ゲーム機市場への再参入が事実ならば,結局,批判ばかりしていた筆者の言い分が認めたにほかならないだろう。
Xbox陣営も携帯ゲーム機を開発中だとしている。演算能力を追って性能で優越感を与えるだけではだめということが共通認識になったということだ。これはとても喜ばしいニュースになったと言っていいだろう。
最初は歴史的大失敗となった「CONCORD」についてだ。発売から10日ほどでサービス終了と,前例がないことで大変話題になった。
だが発売当日,CONCORDというタイトル自体を知らないというゲーマーのほうが多かったという印象だ。つまり,CONCORDは認知すらされていなかったのである。
ではなぜこんなにも有名になってしまったのか? それは普段から良く指摘しているのだが,人間は悪いニュースほど引き付けられる傾向があるためだ。
CONCORDはサービス停止が発表されて初めて話題になったのだが,そのタイミングでSteamでの同時接続数が1000人以下と,過去にないレベルであったことも明らかになった。
たった10日でサービス終了という歴史的な大失敗というレッテルが貼られ,バッドニュースとなって拡散したことで,多くの人の心を捉えたということだろう。
そして原因探しが始まった。
メディアやSNSでは,大失敗の原因はポリコレ(ポリティカル・コレクトネス:すべての人が平等に扱われるよう意識した表現や施策のこと)によりキャラクターに魅力がなくなり,ユーザー受けが悪くなったこと,あるいは買い切りのパッケージでFree to Play(F2P)ではなかったため,との指摘が多かったように思う。
しかし筆者の見方は違う。
買い切り型にはHELLDIVERS 2などの成功事例もあり,F2Pだけが原因には思えない。
また,ポリコレのせいで遊ばれなかったように,筆者には見えなかった。むしろ,「不快感を与えないデザインやゲームシステムだったため誰も知らない状況に陥っていた」と考えたほうが自然ではないだろうか。
同時接続数の少なさから見ても,認知されていないことが問題だったのだろう。そしてこれは筆者のヒアリング結果とソニーグループの見解も同じだった。
つまりSIEらしいといえばそれまでなのだが,叩かれない無難なもの追求した結果,誰にも興味を持たれなかっただけである。
また説明会の質疑応答で,日経記者からの「ポリコレで失敗したのではないか?」という質問に十時氏の回答がかみ合っていなかった。おそらく十時氏は,ゲーマーの間でポリコレ問題が騒がれていることをそもそも知らなかったのではないだろうか。
この点についてはソニーグループにも聞いたが詳細は分からないとしたので,ソニーグループの経営陣もポリコレ問題の存在自体を認識していない可能性が高い。
そもそもソニーグループやSIEからすると,ポリコレは遵守して当然のものであり,当たり前でしかないからだ。
誤解のないようにしておきたいが,投資家もコンプライアンス(法令遵守)を重視するようになっており,正論に異を唱えることはない。ただ,投資家やアナリストがポリコレを求めているわけでもないことには留意いただきたい。
結果,経営陣もアナリストもよく分からないまま,ゲーマーが騒いでいる,という奇妙な現象が発生したのだ。
なぜこのような現象が起こったのかというと,投資家から経営陣にKPI(重要経営指標)が何かと求められるようになったからだと,筆者は考えている。
東証が資本の効率性などを求める姿勢を打ち出したことで,ゲーム販売も定量化できる指標を要求するようになっており,KPIとは何かと聞くことになる。
筆者はゲームハードの販売数は薄さやデザインと相関性があることを示したが,ゲーム業界で根源的なゲームソフトには売れる因果性が何か,ということが解明されていない。
経営者はゲームソフトが売れる理由が分からないため,KPIが何かに応えられないのだ。
しかし答えないわけにはいかない。その結果,「メタスコアが大事」,というな回答になってしまっていると考えている。経営者がKPIをメタスコアにする→経営者も開発者も売れることより,高いメタスコア目指すとなってしまっているのだろう。
高メタスコアを目指すことが一般化すると,メタスコアを高くするにはどうするかに知恵を絞るようになる。
メタスコアは,ゲームのフォトリアル化が進むにつれて,芸術性や社会性が評価される割合が高くなっているようであり,このなかには多様性も含まれる。
したがって高メタスコア=KPIを追求し始めると,会社の株価がインデックス(株価指数)よりも上回ったであるとか,メタスコアが高いことは評価されたとか,ポリコレを重視したといったことになり,ユーザーと投資家,経営者で認識が違う結果を生み出しているわけだ。
1.ユーザーが求めているもの(楽しいゲーム)
2.経営者/開発者が求めているもの(高いメタスコア)
3.投資家が求めているもの(高いリターン)
4.結果として販売数量と因果性ないポリコレ(多様性)が重視される
といったそれぞれが求めるものが異なり,経営者はユーザーが言っていることが分からなくなる,という怪奇現象が発生するのである。
こうなるとゲームソフトが売れる因果性を明らかにしないと,状況は悪化してしまう。
メタスコアはゲームを作った結果であって,メタスコアが高ければ売れるわけではない。にもかかわらず高いメタスコアを目指すと,評論家の地位が上がって社会性や芸術性を求めるようになり,ユーザーとの乖離が増し,長期に関係性を維持できなくなってしまう(ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーは評論家のスコアは低いのに大ヒットするような現象が起こっている)。
次に,11月19日にソニーグループがKADOKAWAを買収する協議を行っているという報道がでてきた。
まだ交渉は初期段階なので確定的なことは何も言えないが,いくつか解説はしておきたい。
KADOKAWAはフロムソフトウェアを傘下にもち,バンダイナムコと協業している。
協業タイトルである「ELDEN RING」は2500万本以上の販売実績を持っているので,この買収はゲームが目的だと思った人も多いだろう。
確かにフロムソフトウェアのゲームは世界に売れるコンテンツであり,買収の目的の一つであることは確かだ。
しかし筆者は見逃せない視点が一つあると考えている。それは電子配信である。
以前から東洋証券の見解として,「2030年代にかけて日本のアニメ文化が世界を席巻すると予想している」としてきた。
この話を初めてしたのが2019年頃と記憶していて,今や米国のZ世代は3大スポーツよりもアニメを視聴していると報道されるまでになっている。
先ほども少し述べたが,東証からは上場企業に対して効率性を求められている。これは,簡単に説明すると,少ない資本(お金)で高い利益を実現してほしいということだ。
電子配信は一度デジタルデータさえ作ってしまえば,サーバーにデータを置いておくだけで再生されて収益になる非常に効率の高いビジネスである。
ソニーグループの音楽事業は世界の楽曲の6割にも及ぶ配信権を持っており,人の手をほとんど介さずに収益をあげている,高効率ビジネスだ。そのままライトノベル,漫画,アニメ配信等に転用できるビジネスモデルである。
サーバーにこれらのデータを置いておけば,いろいろなプラットフォームからストリームやダウンロード販売されていく。本当に買収を実現できるなら配信権は魅力的で,ソニーグループにとっては将来にわたって貢献してくれるだろう。
こう考えると,ソニーグループは全体的に適切な判断をしているように見える。やはりゲーム事業だけがおかしなことになっていると思う。
最後に決算に触れておきたい。
ソニーグループのゲーム事業は,第2四半期の決算は東洋証券の予想を大きく上回った。
ソニーグループの決算資料には3つの要因があるとされている。
(1)ハードウェアの収益性改善
(2)自社制作以外のゲームソフトウェア販売増
(3)ネットワークサービスの増収の影響
これは金額が大きい順に記載されている。ソニーグループと議論した感触では,過半は(1)のハードウェアによるもののようだ。
となると400億円以上の収支改善となるのだが,それは不可解だ。
今年の2月時点では値上げできない理由として,薄型のPS5は旧モデルと比較してコストが下がっていないとしていた。だが今回,新モデルはコストが下がったと言ったのである。
この点は説明会では明らかにならなかったが,どうも一部の部材を安く調達できたためのようだ。しかも昨年は2500万台の販売を目指して生産台数が多かったこともあり,製造時点では販売価格と製造原価の差を多額の費用として認識する必要があった。
さらに、会計上の話になるが販売価格と製造原価の差額(逆ザヤ)を費用として認識する必要がある。昨夏は,2500万台の目標に向けて大量生産していた時期であり,この費用が数百億円規模だったと推測している。これに対して,(1)今年は1台当たりの逆ザヤ額が減少したか、下図右のように利益がでるようになり、損失を計上しなくても済むようになったこと,(2)生産台数も減っていることが,増益要因となったと考えている。
また,年間のPS5の販売計画は1800万台を据え置かれている。以前は,ハード的な施策を前提に1650万台を予想しているとした。
ソニーグループもPS5 Proを前提に1800万台を維持したようだが,値下げできないから売れないとしていたのでProを出した意義がよく分からない。
その一方で,ブラックフライデーで恒例の値下げを実施するとしている。どうもSIEの方針が見えないのである。
業績は確かにいい。素晴らしいといっていいほどである。しかし何のためにゲームビジネスをするのかが見えない。
今後AAAとライブサービスゲームのバランスを考えて展開すると言っているのだが,ヒアリングするとCONCORDの失敗でソロAAAゲームに注力するわけではない,と説明を受けた。
このコメント自体は分かるのだが,AAAがうまくいかなかったらどうするのか,そしてPS6はどうするのか,ビジョンがまったく示されていない。
PS6は現在の延長線上で,XboxをベンチマークしたKPI経営を続けるということだろう。だが,そうなるとひたすら演算能力を向上させ,ハード価格もソフト開発費も大きく上がってしまう。
そういう性能を喜んでいるニッチなユーザーだけでは,少なくともサードパーティは採算をとるのが難しくなるし,SIEもPCでの販売を伸ばすしかなくなってしまう。杞憂に過ぎないのかもしれないが,なんとも不安である。
西野氏にはぜひSIEだけが発展するのではなく,業界全体を発展させるようなビジョンを提示していただきたいものだ。
と締めくくったところで,ソニーグループが携帯ゲーム機を開発しているとの報道があった。
詳細は次回にする予定だが,コメントしたように市場で勢いがあるのは携帯ゲーム機だ。この報道にある携帯ゲーム機市場への再参入が事実ならば,結局,批判ばかりしていた筆者の言い分が認めたにほかならないだろう。
Xbox陣営も携帯ゲーム機を開発中だとしている。演算能力を追って性能で優越感を与えるだけではだめということが共通認識になったということだ。これはとても喜ばしいニュースになったと言っていいだろう。