【月間総括】任天堂も巻き込まれる海外転売問題とSwitchの後継機
今月は前回触れられなかった,任天堂も巻き込まれている海外転売についてだ。
まず見ていただきたいのが下のグラフと表である。
任天堂の第1四半期決算資料を元に作成したものだが,表を見ると日本の構成比率が一貫して上昇しているのだ。
驚くべきことに,世界最大の市場であるアメリカよりも日本のSwitch販売数の構成比が高くなっているのである。明らかにおかしい点であり,日本でSwitchのブームが継続している……と言うわけでは当然ない。
特に第1四半期は一時,対ドル相場が161円と大幅に円安になったタイミングなので,日本の販売比率が上がったと考えるのが妥当だろう。
Switchの地域別構成比率
Switchも海外に転売されているのではないか,と筆者は先月書いた。
これを実際に裏付けると思われるデータがあるので,先月のグラフをアップデートした下図を見てほしい。
PS5は値上げ後に販売が急減したことに触れたが,その後も大きな変動は見られない。過去2回の値上げでは販売に影響が出なかったのだ。
そうなると,販売が急減したことは値上げが原因でないか,閾値を超えたためと考えられる。
値上げが原因であるならば,最近実施された7000円のポイント還元キャンペーンで,販売数がもっと増えてもよさそうである。だが,そうなってはいない。
7000円のキャッシュバックをしても販売は大して回復しなかったことと,前述のSwitchの販売比率を考えると,海外転売が事由と考えてよさそうである。
そしてこの2つのデータは,ゲーム市場が大きくなった結果,裁定取引(国際価格差を利用した値ざや稼ぎ=国際転売)が容易に実行できるような,国際売買システムが構築されたことを意味している。
こうなると,もはや日本だけ安く売ることは極めて困難だ。Switch後継機や次世代PlayStation(仮にPS6とする)も,日本だけ安く売ることは難しいだろう。この部分はぜひ多くのメディアやYouTuberに引用してもらいたい。
Switchの後継機の詳細はまだ出ていないが,発売時期は2025年前半,価格は499ドル以下,性能はPS4 Pro程度と言う報道が多いようである。
499ドルを1ドル100円の換算レートで売れば,裁定取引されてしまうだろう。また,欧州の法整備の影響もあり,リージョンロックも難しい。となると,残るは小売店で実施されているクレジット/会員カード規制かマイナンバーカードを利用した制限となる。
これらはインバウンド利用客には,2025年実施予定の税還付への移行と合わせて効果は大きいだろうが,国内で構築された裁定取引対応システムはすり抜ける部分がでてきそうだ。
そうでなくてもハードは低採算なので,こんな体制ができ上がってしまうと安く売っている国で採算が悪化してしまう。
下のグラフは何度か引用している,アメリカの消費者物価指数の変化率だが,直近のピーク時には前年同月比9%も上昇したのである。最近日本の物価も上昇するようになったが,差は大きい。
米国消費者物価指数変化率(前年同月比)推移
任天堂はSwitch後継機の値段は慎重に検討するとしているが,日本だけ安くするというのは相当困難に思える。古川社長以下,経営陣がSwitch後継機の価格をどうするかは,非常に興味深いところだ。
最後に下期のゲーム市場について述べておきたい。形仮説に基づく予想としては,
(1)PS5の販売は厳しい
(2)PS5 ProはPS5と見た目上の差異が小さく,販売を伸ばすことができない
この辺りは,発売前からの予想が顕在化してきたと考えている。
ソニーグループは値下げが過去のゲーム機が成功した理由だと思っているようだが,筆者は値段よりも見た目の影響が大きいと考えているので,PS5は構想の段階でいろいろ問題を抱えてしまったのではないだろうか。
SIEは筆者を批判ばかりしていると言っているそうなので,このような話に惑わされず,PS6の大成功を実現してくれると思う。
(3)Switchは勢いが相当落ちる。1350万台の達成はかなり厳しい結果になるはずだ
(4)Switch後継機は発表されないと確定できないが,多くの人がほしいと言わなければ,おそらく成功する。逆に,素晴らしいゲーム機とメディアが埋め尽くすようでは危うい
(3)はすでに進捗が悪いので当然と思われるだろうが,OLEDモデルが発売されて3年以上経過しており,賞味期限が切れているからだ。
車も一定期間ごとにユーザーが欲しくなるようにマイナーチェンジを実施するのと同じで,ゲーム機も変化が必要だろう。ゼルダの伝説やどうぶつの森モデルのSwitch Liteが堅調に推移していることからも,明らかではないだろうか。
そして最後に,以前も書いたように故岩田氏は褒められたものは売れないと語っていたそうである。
多くの会社は褒められたほうが売れると言っていたが,実際はそうではないというのは重要である。もう少し足りないなど,批判があるほうが興味を持たれている状況証拠と筆者は見ている。何にせよ,近いうちにあるでろう,Switch後継機の発表が楽しみである。
まず見ていただきたいのが下のグラフと表である。
任天堂の第1四半期決算資料を元に作成したものだが,表を見ると日本の構成比率が一貫して上昇しているのだ。
驚くべきことに,世界最大の市場であるアメリカよりも日本のSwitch販売数の構成比が高くなっているのである。明らかにおかしい点であり,日本でSwitchのブームが継続している……と言うわけでは当然ない。
特に第1四半期は一時,対ドル相場が161円と大幅に円安になったタイミングなので,日本の販売比率が上がったと考えるのが妥当だろう。
Switchの地域別構成比率
Switchも海外に転売されているのではないか,と筆者は先月書いた。
これを実際に裏付けると思われるデータがあるので,先月のグラフをアップデートした下図を見てほしい。
PS5は値上げ後に販売が急減したことに触れたが,その後も大きな変動は見られない。過去2回の値上げでは販売に影響が出なかったのだ。
そうなると,販売が急減したことは値上げが原因でないか,閾値を超えたためと考えられる。
値上げが原因であるならば,最近実施された7000円のポイント還元キャンペーンで,販売数がもっと増えてもよさそうである。だが,そうなってはいない。
7000円のキャッシュバックをしても販売は大して回復しなかったことと,前述のSwitchの販売比率を考えると,海外転売が事由と考えてよさそうである。
そしてこの2つのデータは,ゲーム市場が大きくなった結果,裁定取引(国際価格差を利用した値ざや稼ぎ=国際転売)が容易に実行できるような,国際売買システムが構築されたことを意味している。
こうなると,もはや日本だけ安く売ることは極めて困難だ。Switch後継機や次世代PlayStation(仮にPS6とする)も,日本だけ安く売ることは難しいだろう。この部分はぜひ多くのメディアやYouTuberに引用してもらいたい。
Switchの後継機の詳細はまだ出ていないが,発売時期は2025年前半,価格は499ドル以下,性能はPS4 Pro程度と言う報道が多いようである。
499ドルを1ドル100円の換算レートで売れば,裁定取引されてしまうだろう。また,欧州の法整備の影響もあり,リージョンロックも難しい。となると,残るは小売店で実施されているクレジット/会員カード規制かマイナンバーカードを利用した制限となる。
これらはインバウンド利用客には,2025年実施予定の税還付への移行と合わせて効果は大きいだろうが,国内で構築された裁定取引対応システムはすり抜ける部分がでてきそうだ。
そうでなくてもハードは低採算なので,こんな体制ができ上がってしまうと安く売っている国で採算が悪化してしまう。
下のグラフは何度か引用している,アメリカの消費者物価指数の変化率だが,直近のピーク時には前年同月比9%も上昇したのである。最近日本の物価も上昇するようになったが,差は大きい。
米国消費者物価指数変化率(前年同月比)推移
任天堂はSwitch後継機の値段は慎重に検討するとしているが,日本だけ安くするというのは相当困難に思える。古川社長以下,経営陣がSwitch後継機の価格をどうするかは,非常に興味深いところだ。
最後に下期のゲーム市場について述べておきたい。形仮説に基づく予想としては,
(1)PS5の販売は厳しい
(2)PS5 ProはPS5と見た目上の差異が小さく,販売を伸ばすことができない
この辺りは,発売前からの予想が顕在化してきたと考えている。
ソニーグループは値下げが過去のゲーム機が成功した理由だと思っているようだが,筆者は値段よりも見た目の影響が大きいと考えているので,PS5は構想の段階でいろいろ問題を抱えてしまったのではないだろうか。
SIEは筆者を批判ばかりしていると言っているそうなので,このような話に惑わされず,PS6の大成功を実現してくれると思う。
(3)Switchは勢いが相当落ちる。1350万台の達成はかなり厳しい結果になるはずだ
(4)Switch後継機は発表されないと確定できないが,多くの人がほしいと言わなければ,おそらく成功する。逆に,素晴らしいゲーム機とメディアが埋め尽くすようでは危うい
(3)はすでに進捗が悪いので当然と思われるだろうが,OLEDモデルが発売されて3年以上経過しており,賞味期限が切れているからだ。
車も一定期間ごとにユーザーが欲しくなるようにマイナーチェンジを実施するのと同じで,ゲーム機も変化が必要だろう。ゼルダの伝説やどうぶつの森モデルのSwitch Liteが堅調に推移していることからも,明らかではないだろうか。
そして最後に,以前も書いたように故岩田氏は褒められたものは売れないと語っていたそうである。
多くの会社は褒められたほうが売れると言っていたが,実際はそうではないというのは重要である。もう少し足りないなど,批判があるほうが興味を持たれている状況証拠と筆者は見ている。何にせよ,近いうちにあるでろう,Switch後継機の発表が楽しみである。