【ACADEMY】ゲーム開発においてリーダーを効果的に導く方法

CriterionのCharity Joy氏は自身の経験を共有し,管理職を効果的に監督するための戦略を提供した

画像クレジット:Develop Conference
【ACADEMY】ゲーム開発においてリーダーを効果的に導く方法

 先月のDevelop Brightonでは,CriterionのゼネラルマネージャーであるCharity Joy氏が,ほかのリーダーを管理する立場にある人々を導く技術について講演を行い,彼女がゲーム開発におけるキャリアで得た方法を紹介した。

 Joy氏は,管理職をサポートするうえで好奇心,信頼,明確なコミュニケーションが重要だと強調し,とくに専門外の分野で人々を導く際に,効果的なフィードバックを提供し,組織全体の人々を調整するための戦略を提供した。




好奇心


 好奇心旺盛で,心を開いて質問する能力を持つことは,リーダーを導くうえで重要だ。しかし,Joy氏は「知っているという感覚」が好奇心を邪魔することがあると指摘した。

 「私たちは職務に対する専門知識と経験を持っているので,知っていることがたくさんあります」と彼女は説明した。「『知っている』ことの問題点は,学習から閉ざされていることです。『知っている』ことは,自分とは異なる専門知識を持つ人々を導く際に危険であり,理解する機会を閉ざしてしまいます」

 Joy氏は,知らないことに安らぎを見いだし,その分野の専門家でないことに心地よさを感じることを勧めた。

 「知らなくていいんです。むしろ,本当に興味を持てるので,知らないことは本当に楽しいことです」と彼女は強調する。「そこには見つける喜びがあり,好奇心の主な用途は尋ねることです」

「そこには見つける喜びがあり,好奇心の主な用途は尋ねることです」

 リーダーにとって質問する能力は非常に重要であり,とくに特定の方法で質問をすることでチームの能力を最大限に引き出せる。

 「(質問をする際には)水面下に何があるのかを知り,何かが見つかるかもしれないということに心を開くべきです」とJoy氏は言う。「本当に興味を持って質問すれば驚かされるかもしれませんし,それはいいことです。答えが気に入らないかもしれませんが,それもいいことです。気に入らなければ,もっと質問すればいいんです」

 「周囲の人々に興味を持つことは,自分自身に興味を持つことです」と彼女は付け加えた。「これはリーダーを導く際に不可欠なスキルです」

 そしてリーダーとして質問されたら,答えを言う前に,少し立ち止まって考える時間をとろう。

 「答えが分かっているつもりでも,もう少し深く掘り下げて,細かな差異があるかどうかを確認しましょう。その答えが思慮深く,役に立ち,適切であり,独白にならないようにするためです」


コミュニケーション


 Joy氏は,リーダーを導く際にはビジョンの一致と明確なコミュニケーションが必要であり,チーム全体の一貫性を維持するためには明確でシンプルなメッセージに生来の力があると強調した。

 「とくにリーダーシップにおいては,トップが混乱していると,その混乱が下にも広がるという現実があります」と彼女は指摘する。「リーダーレベルに明確さがなければ,チームレベルにも明確さはありません」

「リーダーレベルに明確さがなければ,チームレベルにも明確さはありません」

 Joy氏は,管理職が陥りがちな罠を浮き彫りにした。つまり,自分が監督している人たちはその分野の専門家であり,自分の言っていることをよく理解していて,指導など必要ないはずだと思いこんでいるのだ。

 逆の見方は,彼らがそれを処理できないと思い,チームと悪い知らせを共有するのを避けることだと彼女は言う。

 「それを共感だと思うかもしれませんが,実際にはチームの成熟度や,彼ら自身の感情を管理する能力について判断しているんです」とJoy氏は説明した。

 「人々が何を知るべきかを知っている,あるいは人々がどう反応するかを知っていると考えることは,自分の居場所がわからないという高みに自分を置くことになります。そして,自分のチームが何をするか,どう反応するか,何を言うかを理解する能力も奪われてしまいます」

 すべては,一歩下がってチームを信頼し,立ち止まって反省する能力を持つことに帰結する。


コーチング


 Joy氏にとってコーチングは,とくに公平なサポートを提供する能力において,人々を導く重要な側面である。

 「コーチとしてのあなたの役割は,質問を投げかけ,フレームワークを提供し,その答えが何なのか,何がその人にとってベストなのかを発見する旅に導くことです」と彼女は説明した。

 Joy氏によると,自分の専門分野以外の人を指導するほうがずっと簡単だという。彼女はCriterionの技術部長を例に挙げた。

 「技術的なアドバイスはできませんが,コーチングや質問はできます」と彼女は語った。「もし私が知っていることなら,『私ならこうする』という思考に陥るので,より危険です」

 Joy氏は,コーチングとはファシリテーション(円滑化)であり,サポートの提供であり,「絶対に正しい答えを持っているという目の前の人の信念」を育てることだと強調した。

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ファシリテーション


 管理職として,あなたは優れたファシリテーターになることを目指すべきだとJoy氏は言う。

 「意図的に一歩下がってフォローしたいときもあるでしょう」とJoy氏は指摘する。「チームを輝かせる最善の方法は,彼らの邪魔をしないことです」

「(あなたのチームに)話を聞いてもらう余地を与え,自分自身にも驚く余地を与えましょう」

 ファシリテーターとして,管理職は最後に発言すべきだが,グループのほかのメンバーから「アイデアを引き出す」べきであり,会話を支配すべきではないとJoy氏は勧める。「自分の意見を言うのではなく,チームのほかのメンバーから意見を引き出しましょう」

 「意図的に一歩下がってフォローしたいときもあるでしょう。そして,私たちはリーダーの立場にあるとき,良いリーダーとは何かをよく話し合います」

 Joy氏は付け加える。「結局のところ,決断するのはあなたなので,急がないことです。もし,それが突拍子もないもので,あなたが嫌いになったとしても,変更できます。彼らに話を聞いてもらう余地を与え,自分自身にも驚く余地を与えましょう」


信頼


 どのような職場でも信頼は重要な鍵だが,個人を信頼できるかを見極めることは難しい。その結果,Joy氏はリーダーシップチームを指導する際に使用するフレームワークを構築し,根本的な問題を簡単に解決できるようにした。

 このフレームワークは「能力」「確実性」「動機」という3つの柱を軸に展開される。

 「私は,利害関係者やチームメンバーとの間に問題がある場合,チームにこれを使うように勧めています。『あなたが悩んでいるのは,その人のどんなところですか? 能力なのか,確実性なのか,動機なのか』そうやって分解していくと,会話がしやすくなりますし,問題解決もしやすくなります」と彼女は説明した。

 Joy氏はまた,このフレームワークによってチームがフィードバックを受け,自分たちがどのように受け止められているかを内省するよううながしている。

 信頼は組織内のプロセスを高速化するためにも活用できる。Joy氏は,企業にはしばしば「大きな法律と小さな法律」があると指摘する。大きな法律は,時間を守る,予算を守るといった包括的な原則である。

 しかし,大きな法律が破られると,その問題を二度と起こさないようにするために小さな法律が追加され,それはすべてを遅らせるかもしれない。

 例えば,チームが予算とずれている場合,予測レビューやミーティングを増やすなど,より小さなチェックポイントを設定できる。

 「私たちの組織やチームにおける多くのことの解決策は,別の会議やプロセスを追加することのように思えます」と彼女は言う。「しかし,それが本当に問題を解決し,スピードと信頼を高めるのでしょうか?」

 プロセスを増やすのではなく,こうした小さな法律を減らすことで,組織内の効率と信頼を高められると彼女は提案した。


一貫性


 Joy氏は,一貫性と信頼性が管理職を導くうえで重要であり,それが信頼と信用を築くのだと強調した。

 「私たちは自分がどうありたいか,どのように見せたいかを選べます」とJoy氏は語る。「リーダーを導くのであれば,それが何なのかを意図的に考えるべきです」

 彼女は,リーダーを導く人は,明確であること,信頼に足ること,確実であること,一貫性があることよりも,「しばしば実行することにとらわれてしまう」ことがあると付け加えた。Joy氏にとって大切なのは,自分がどういう人間であるかを思い出すことであり,それが行動につながるのだ。

 Joy氏は,ある瞬間に自分がどうあるべきか,チームがどうあるべきかを自問することを勧めた。

 「チームのあらゆる変化,昇進,方向転換,そしてプロジェクトのあらゆる段階を通じて,リーダーであるあなたはこれまでとは違う姿を見せる必要があるかもしれません。あなたが,どのように見られるかを認識し,意図的である限りは問題ありません」

 どんな物事にも言えることだが,一貫性を保つ鍵は練習にある。

 「私たちは,私たちが望むようなやり方で姿を現し,私たちが望むようなやり方で調子を整え,私たちが望むようなやり方でリーダーを高揚させ,サポートできるように練習しなければなりません」とJoy氏は言う。

 Joy氏は「マントラ」と「私は」宣言を活用するという2つの方法を提案した。例えば,彼女のマントラの1つに「気分は主人じゃない」というものがある。

 「会議室に入ったら,リセットするんです」と彼女は説明する。「頭から離れ,体に入って,この部屋にいるための合図を自分に植え付けます」

 「私は」宣言としては,次のようなシンプルなものがある。「私はコーチであり,ファシリテーターであり,チームの偉大なサポーターです」

 「役割を引き受けることで,私のやることが生まれます」とJoy氏は締めくくった。「完璧ですか? いいえ,それは練習であり,絶え間ない進化なのです」

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