ゲーム開発用のツールやサービスが集合。「GTMF 2024」東京会場ブースレポート
2024年7月9日,秋葉原UDXでGame Tools&Middlrware Forum(GTMF)が開催された。会場では各種技術セッションのほか,展示ブースでの出展が行われていた。ここでは展示ブースの模様を紹介しよう。
ボーンデジタルはHoudiniとRizomUVの展示を行っていた。
最近取り扱い始めたというRizomUVは,煩雑になりがちなUVデータ編集を効率よく行うためのツールだ。専用ツールだけあって機能は豊富だが,最大の特徴はとにかく速いということ。また,多くのツールにはさまざまな大きさのUVデータを最適に配置する機能が備わっているが,このツールでは任意のUVデータの位置を固定して,それ以外を自動で最適化するようなこともでき,ユーザーに分かりやすい管理ができることなどが特徴であるという。
プロシージャルツールHoudiniはバージョン20.5が紹介されていた。新機能が多すぎてキャラクターエディタやアニメーションリグ用のツールが追加されるなど,意外な方向にも進化が進んでいる。
もっと多く使われてしかるべきツールだと思うが,恐ろしく多機能で扱いが難しく,価格が高いこともあってなかなか普及しない。大手のゲーム会社にはほぼすべて導入されているらしいが,生産性が高すぎて少人数で済むため,ユーザー数が増えないというジレンマを抱えているのだという。なお,同社からはまもなくHoudini関係の書籍が2冊発売されるとのこと。
ゲームでの各種データログを取得し,データマネジメントをサポートするのがシンキングデータだ。ゲームの状態の解析や流入経路といったマーケティングよりの解析以外に,エンゲージメントにつなぐような活用もできる。たとえば,ゲームからの離脱者に多い行動が目立つようになると,ゲームクリアのヒントやアイテムを該当プレイヤーに送って離脱を防ぐといったこともできるという。運営サイドだけで簡単に扱える点がウリだったが,さらにTiki君というキャラクターが導入され,自然言語での会話で必要なデータを取得できるようになるとのこと。
WOVN.gamesはゲームのローカライズに特化した製品を提供している会社だ。ゲーム自体のビルドとは独立しているのも特徴である。ゲームのスクリーンショットに翻訳修正を加えて翻訳データを管理するシステムを構築しており,ゲーム翻訳の効率化が図られている。また,UnityやUnreal Engineで同社のSDKを組み込んでいれば,テストプレイ中に見つけた誤翻訳を即座に修正し,ゲーム自体のビルドをやり直すことなく即座に画面に反映できる。これにより,ローカライズのQA部分を大幅に短縮できるそうだ。
スパイスは「Lumio3D H3 Face Scanner」を使ったフェイスキャプチャをデモしていた。顔に特化したキャプチャシステムで,形状とテクスチャを同時に取得できる。スパイスでは同システムのレンタルでの3Dデータ作成サービスや胴体と組み合わせてMetaHuman化するサービスなどを展開している。リアルな顔モデルの作成以外にも,フェイシャルキャプチャシステムでアニメーションのサポートのほか,主に顔に関するアニメーション支援をまとめて行っている。
音声データから唇の動きだけでなく,感情表現を伴う自然なフェイシャルアニメーションを実現するSpeech Graphics。昨今では多くのダイアログシーンを含むゲームが増えており,それぞれでアニメーションを用意するのも大変だ。
Speech Graphicsではその多くを省略できる。フェイシャルキャプチャができない,目がたくさんあるようなモンスターでも自然な動きができ,設定すれば手などの動きを加えることも可能だそうだ。最近ではChatGPTなどと組み合わせて使う案件が増えているそうで,NTTのバーチャル受付嬢に使用されるなど,ゲーム以外の分野にも利用が広がっているとのこと。
2D画像をアニメーションさせるLive2Dでは,Cubizmの新機能などが紹介されていたが,内容自体はalive 2023でのものと大きく変わらない。最近では鬼滅の刃などといったテレビアニメなどにも使われるようになったなどという話も,その時点と変わらない。
https://jp.gamesindustry.biz/article/2312/23120402/
新しい話はほとんどないので立ち話で生成系AIに関するを聞いてみた。同社では創業時から絵師(正確には2次元画像1枚絵を描く人)に焦点を絞って支援するツールを開発しており,生成系AIに対しても絵描きの味方の立場というのを鮮明にしている。ただ,同社のコンテストやnijimaでは全面的に禁止だ。一方で,生成系AIイラストも進化しており,傍目に見れば新たな市場ができつつあるのだが,立場の問題なのでいろいろと難しいようだ。
Epic Games Japanでは,Unreal Engine 5.4の新機能などが紹介されていた。ざっと見た感じではアニメーション関係での機能拡充が目立った。モデルへのリグ付けが通常のUnreal Editor上でそのままできるようになったり,多くのアニメーションパターンからMotion Matchingで滑らかに動きをつないだりといったところがハイライトだ。
従来,UEなどのゲームエンジンでゲームキャラの動きを制御するには,ステートマシンなどを使って動きの遷移をまとめ上げ,それぞれに必要なアニメーションパターンを用意する必要があった。自然な動きにしようとすると,要求されるアニメーション量も多くなり,ステートマシンも必要以上に複雑になるものの,それでも限界がある。それを解決する手段がMotion Matchingだ。これは多くのアニメーションクリップから,次の動きに近いアニメーションデータを探して,自動的に動きを補間してくれるというものとなる。この技術はGDC2015でUbisoftが発表したものが有名であり,そこでUbisoftが定義した基本的に必要なモーションキャプチャの動きをまとめたものが「Dance Card」であり,それに従ってモーションキャプチャデータを取っておけば,とりあえず困ることはないとのこと。従来のステートマシン用のモーションキャプチャも流用でき,それをそのまま使っても,少なくとも前より悪くなることはない。
ミライセンスでは,PS5での3Dハプティクス技術のデモが行われていた。展示されていたデモは,クルマでさまざまな状態の路面を走行するというものだが,オートモードで触感の違いだけを感じ取れるようになっていた。
路面の違いはそれなりにリアルに感じ取れるのだが,同社のウリである力感については,PS5のコントローラではいま一つ伝わってこなかった。コーナリングやブレーキングで使われていたらしいのだが,ほとんど分からない。このあたりは振動子の大きさや性能に依存するのでいたしかたないところか。昨今のコントローラはワイヤレスが当たり前で,バッテリーの内臓が必須であり,多機能化も進んでいて高出力な振動子を入れるのは難しくなっているようだ。
オーディシステムWwiseを展開するAudiokineticでは,Wwiseの新しいバージョンがデモされていた。新バージョンではUIが変更され,詳細情報などの配置が既存のゲームエンジンなどに近くなっている。また,UEのNiagaraなどに対応したほか,実機上で動作させつつ,ライブエディットで修正を加えることができるようになるなど,よりゲーム開発をしやすい方向でのアップデートが行われている。
そのほか,ゲームマップ内の地形による音の反射を考慮したリアルな音の伝播を行うデモも行われていた。CPU負荷でレイキャストの上限を制限することで,ゲームに大きな負荷をかけずにリアルな音響効果を得られるようになっている。
CRI・ミドルウェアでは,CRIWARE for C#,Sprite Studio,そしてヤマハのSoundXRが統合されたADXが展示されていた。先に紹介したヤマハのSoundXRはADXに標準搭載DSC07941されることになったのだ。会場では,同ソフトを使ったASMRのデモが行われていた。
Sprite Studioは,シンプルに言えば速くなった。旧製品の5倍,競合となりつつあるSpineと比較しても1割速いとのこと。また展示はされていなかったもののImage StudioでのAIを使った画像拡大でも高速化が行われているとのこと。
そして,C#というかMono環境でのCRIWAREサポートだが,最近ではGodotなどでの問い合わせが増えてきているのだという。そこでMono環境で汎用的に扱えるCRIWAREが作られることになったわけだ。Unityで使っても,標準のプラグインより高速化できる可能性はあるとのこと。
ヤマハでは,3DサウンドシステムSoundXRのデモ展示を行っていた。3Dサウンドは多くのゲームシステムで標準的に扱われるようになって久しく,とくに目新しいものではない。SoundXRの特徴は,ヘッドフォンとイヤフォンを前提にしている点だという。
他社製品でももちろんそれらはサポートされているわけだが,多くの3Dサウンドシステムは7.1chや5.1chによるスピーカー出力にも対応しており,一度7.1chなどのバーチャルスピーカーのフォーマットに変換されたのちにバイノーラルに変換されるために精度が落ちるのだそうだ。それゆえ3D定位が高精度である。
また,処理の軽さにも気をつかっており,CPU性能などにも依存するのだろうが,SoundXRでは,音源数で1000程度を扱える。これにより,多くの音源でよりリアルな音場を再現することも可能になる。開発中からすでにモンハンやバイオハザードなどのカプコン製品で利用されており,高い評価を得ているという。
Diarkisでは,オンラインゲームのN対Nのリアルタイム通信機能などを提供している。会場でアピールされていたのは鉄拳8での採用だ。同社のマッチメイク機能と通信機能が利用されているという。鉄拳8は全世界同時発売ということもあり,グローバルに大量のプレイヤーを扱うことが求められる。マッチング自体は1か所で行われるそうだが,全世界のゲームサーバーにプレイヤーを振り分けて捌いているそうだ。同社のシステムは自動スケーリングがサポートされており,不意なアクセス急増にも耐えるほか,より効率的なサーバー運用が可能になっている。
また,プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミクでは,バーチャルライブなどで同社のシステムが利用されており,こちらではより多くのユーザーを処理している。同社の通信基盤では,1対1のP2P,少人数を扱うRoom,MMO向けのFieldの3タイプが用意されている。
AccelByteは,オンラインゲームで使われる機能単位のサービスを提供している会社である。プレイヤーのマッチングや,ソーシャル機能,マネタイズ,リーダーボード,ストレージなどの各種サービスが用意されており,ゲーム会社はそれらのサービスを利用することでオンラインゲームを迅速に開発し,運営を効率化できる。
同様のサービスは各所で展開されているが,同社の特徴は,標準の各種サービスをユーザー側が自分のゲームにより適した仕様にできるExtendサービスが用意されている点にある。これはAccelByteが用意しているサービスの内容をオーバーライドするものから,AccelByteのクラウドストレージなどを利用しつつ,独自のサービスを追加すること,イベントハンドラを拡張することなど多岐にわたっている。
昨今ではほとんどのアプリケーションのバックエンドで多くのオープンソースソフトウェアが使用されている。これはゲームも例外ではない。非常に多くの分野で使われていることから,オープンソースソフトウェアの脆弱性を狙った攻撃が絶えない。脆弱性が見つかるたびに対応パッチが作られるので適切に運用する必要がある。Jfrog製品を導入したゲーム企業の例を見てみると,1日に2回セキュアビルドをデプロイし,毎月バックエンドの7割を更新しているという。システムをセキュアに保つためには,それくらいの対応が必要だということだ。同社の製品は,そういった作業を手助けしてくれるものだ。
また,Redhatとの協業で,システム側のセキュリティはOpenShiftで,アプリケーション側のセキュリティをJfrogで確保するようなソリューションも確立されている。
AIQVE ONEは,ゲームのテストを得意とする会社だが,今回紹介されていたのは,Oreoというサービスだ。これはX(旧Twitter)などでバグといったトラブル情報やゲームの評価などがつぶやかれた場合に,AIでフィルタリングして情報を集めてくるというものだ。不具合が発生した場合,真っ先に情報が出てくるのはSNSだと思われるので,24時間監視していれば最速で対応も可能になる。とくに緊急度の高いと判定された案件については通知も飛ばしてくれるという。
なお,Xでのデータ取得には有料のAPIが利用されているのだが,このサービスには無料版もあり,1000件分のデータ取得については無料で行える。Xのほか,Steamでのコメントにも対応しており,各種言語にも対応できる。Discordへの対応も予定されているという。
ゲームアプリでのカスタマーサポート代行サービスを提供するマーケティングアソシエーション。ゲームはエンドユーザー相手の商売なのでカスタマーサポートはどんな規模の会社でも必要になってくるが,小規模な会社では専任スタッフを抱えることは難しい。なにかと難しい業務でもあるので,プロに任せてしまうほうがよいと考える人も少なくないだろう。
マーケティングアソシエーションでは,電話,メール,チャットなどのほか,LINEなどのSNSまでカバーしている。同社では,スタッフが全員正社員であることもウリの1つで,ゲームサポートに慣れたゲーム専門のスタッフがユーザー対応を行ってくれる。
地図情報システムを提供しているMapbox Japanでは,同社のデータおよびライブラリを使ったさまざまなデモが展示されていた。最近のアップデート内容としては,気象庁が発表している風速などのデータをリアルタイムで表示できるようになり,3Dデータのうち主要なランドマークの精細化が図られるなどの進化を遂げている。
同社がゲームに注力し始めたのは比較的最近だが,すでにゲームでは「信長の野望 出陣」や「ドラゴンクエストウォーク」といった位置情報ゲームに使われるなどの実績を挙げている。とはいうものの,事例ではゲーム以外での活用が多い。Mapboxが提供するデータ以外に,さまざまなデータを組み合わせて,地図情報とリンクしたユニークなサービスが紹介されていた。地図情報に地震の震源データを組み合わせて3D表示するものでは,大陸プレートがはっきり可視化されていたり,スバル車で走って気持ちのいい道を示してくれるようなスバル提供のアプリなども面白い。
シリコンスタジオでは,UE用のYebisプラグインとEnlightenが展示されていた。UE用のYebisプラグインはYebisの次期バージョンを先取りしつつ,機能制限したものだそうで,主に建築や自動車業界などで映像制作を主眼にしたものだそうだ。名前もEbis Bizとなっており,あまりゲーム用っぽくなく,PC版のみでの発表となる。
当然ながら,Yebis 4となるであろうバージョンも開発中だ。これはまったく新しく作り直されるものであり,カメラのレンズなどをリアルに再現するのはYebis 3と同じでも,よりリアルなカメラの光学系エフェクトを実現できるものになるという。先のUEプラグインが映像向けだったのに対して,Yebis 4(?)自体はあくまでもゲーム用で使えるパフォーマンスを維持するとのこと。
OROCHIでは,国産ゲームエンジンの展示が行われていた。新機能としては,グローバルイルミネーションがサポートされたとのこと。GIによる照明が加わったことで,よりリアルな陰影を持つビジュアルを実現できるようになった。
また,新たにビジュアルスクリプト環境が追加されている。見た目的にはScratchライクなもので,マウスでメニューを開き,必要な要素を追加していく形になっている。ノードに線をつないでいく形式よりも処理の流れは分かりやすいかもしれない。これにより,プログラマ以外のデザイナーでも手軽にOROCHIを扱えるようになるという。
ダイキン工業では,同社のミドルウェアやツール製品をサポートするDAIKIN CG ChannnelとVtuber向けのフェイシャルキャプチャシステムCelFaceが展示されていた。CelFaceはVtuber専用ということで,とくにリアルタイム性が追求されており,同系統の簡易型フェイシャルキャプチャと比較すると,口の動きをしっかり取っているという。逆に本格的なフェイシャルキャプチャで顔の動きを忠実に取りすぎると生々しすぎるので,適度に調整してセルルックなキャラクターに反映させる。専用ヘッドマウントカメラは必須ではないが,これを使えばワイヤレス接続でき,動きのあるシーンでのフェイシャルキャプチャも可能になる。
NVIDIAの代理店でもあるエルザ ジャパンのブースでは,デスクトップとノートの2種類のワークステーションが展示されていた。デスクトップはQuadro系のRTX A6000 Adaが搭載されており,ノートのほうはRTX A5000 Adaが搭載されている。型番だと分かりにくいかもしれないが,A6000 AdaはGeForce RTX 4090の1割増しの規模のGPUでVRAMを48GB搭載している。単体で買うと130万円くらいのGPUである。PCではなくワークステーションとして売られているのもうなずける。なお,写真の製品は同社では最小のもので,ミニワークステーションと位置付けられている。最上位モデルだとQuadro Sync 2にも対応しており,複数のGPUを扱える。
HELTECは,モーションキャプチャ関連の技術をまとめて扱う企業だ。XSENSのスーツを使った全身のモーションキャプチャ,Metaglovesを使った手指のモーションキャプチャ,iPhoneを使ったフェイシャルキャプチャそれぞれのソリューションと全体をまとめたソリューションを展開している。MetaglovesはManusの製品だがXSENSからも発売されており,同社のMVNでまとめて扱うことができる。
フェイシャルでは東映ツークン研究所による国産のソリューションが使われており,とくに目線や瞳の揺らぎも忠実に再現するという。デザイナー目線のワークフローを構築しているといった特徴も備えている。
オンラインゲームの各種機能を提供しているGame Server Services。多くのゲームで使われるであろう要素をSaaSとして提供している。インベントリやガチャ,クエスト機能などのほうか放置ゲーム向けの機能なども用意されている。最近ではそれらがさらに拡充されているとのこと。通信周りやサーバー周りのことはあまり気にしなくても大丈夫で,必要になる機能のAPIを使うだけでオンラインゲームを構築できるサービスが展開されている。
クラスメソッドは,AWSを中心に各種ネットワーク関連での開発支援,コンサルティングを行っている。オンラインゲームでのバックエンド構築や負荷試験などの事例が紹介されていた。ゲーム開発用の各種SaaSの運用支援も行っている。隣のブースで展開していたGame Server Serviceのソリューションやクラウド対応TiDB Cloud,サーバーレスキャッシュサービスMomentoなどを幅広く扱っている。AWSパートナーなので同社を介することでAWS利用料金を割安で利用することもできるとのこと。
東洋テクニカではバージョン管理ツールHelix Coreのデモが行われていた。かつてはPerforceと呼ばれていたツールで,バイナリを含むファイルを高速高効率で管理することができる,ゲーム向きのバージョン管理システムである。本体のHelix Coreでは,ファイル転送が一段と速くなった程度であまり大きな変更はないとのことだった。来年にはセキュリティキーのサポートなどの大きな変更が予定されているという。Helix Coreと連動するアセット管理ツールHelix DAMでは,画像が持つEXIFのメタデータ内の検索ができる機能が追加されている。
ボーンデジタル
ボーンデジタルはHoudiniとRizomUVの展示を行っていた。
最近取り扱い始めたというRizomUVは,煩雑になりがちなUVデータ編集を効率よく行うためのツールだ。専用ツールだけあって機能は豊富だが,最大の特徴はとにかく速いということ。また,多くのツールにはさまざまな大きさのUVデータを最適に配置する機能が備わっているが,このツールでは任意のUVデータの位置を固定して,それ以外を自動で最適化するようなこともでき,ユーザーに分かりやすい管理ができることなどが特徴であるという。
プロシージャルツールHoudiniはバージョン20.5が紹介されていた。新機能が多すぎてキャラクターエディタやアニメーションリグ用のツールが追加されるなど,意外な方向にも進化が進んでいる。
もっと多く使われてしかるべきツールだと思うが,恐ろしく多機能で扱いが難しく,価格が高いこともあってなかなか普及しない。大手のゲーム会社にはほぼすべて導入されているらしいが,生産性が高すぎて少人数で済むため,ユーザー数が増えないというジレンマを抱えているのだという。なお,同社からはまもなくHoudini関係の書籍が2冊発売されるとのこと。
シンキングデータ
ゲームでの各種データログを取得し,データマネジメントをサポートするのがシンキングデータだ。ゲームの状態の解析や流入経路といったマーケティングよりの解析以外に,エンゲージメントにつなぐような活用もできる。たとえば,ゲームからの離脱者に多い行動が目立つようになると,ゲームクリアのヒントやアイテムを該当プレイヤーに送って離脱を防ぐといったこともできるという。運営サイドだけで簡単に扱える点がウリだったが,さらにTiki君というキャラクターが導入され,自然言語での会話で必要なデータを取得できるようになるとのこと。
WOVN.games
WOVN.gamesはゲームのローカライズに特化した製品を提供している会社だ。ゲーム自体のビルドとは独立しているのも特徴である。ゲームのスクリーンショットに翻訳修正を加えて翻訳データを管理するシステムを構築しており,ゲーム翻訳の効率化が図られている。また,UnityやUnreal Engineで同社のSDKを組み込んでいれば,テストプレイ中に見つけた誤翻訳を即座に修正し,ゲーム自体のビルドをやり直すことなく即座に画面に反映できる。これにより,ローカライズのQA部分を大幅に短縮できるそうだ。
スパイス
スパイスは「Lumio3D H3 Face Scanner」を使ったフェイスキャプチャをデモしていた。顔に特化したキャプチャシステムで,形状とテクスチャを同時に取得できる。スパイスでは同システムのレンタルでの3Dデータ作成サービスや胴体と組み合わせてMetaHuman化するサービスなどを展開している。リアルな顔モデルの作成以外にも,フェイシャルキャプチャシステムでアニメーションのサポートのほか,主に顔に関するアニメーション支援をまとめて行っている。
Speech Graphics
音声データから唇の動きだけでなく,感情表現を伴う自然なフェイシャルアニメーションを実現するSpeech Graphics。昨今では多くのダイアログシーンを含むゲームが増えており,それぞれでアニメーションを用意するのも大変だ。
Speech Graphicsではその多くを省略できる。フェイシャルキャプチャができない,目がたくさんあるようなモンスターでも自然な動きができ,設定すれば手などの動きを加えることも可能だそうだ。最近ではChatGPTなどと組み合わせて使う案件が増えているそうで,NTTのバーチャル受付嬢に使用されるなど,ゲーム以外の分野にも利用が広がっているとのこと。
Live2D
2D画像をアニメーションさせるLive2Dでは,Cubizmの新機能などが紹介されていたが,内容自体はalive 2023でのものと大きく変わらない。最近では鬼滅の刃などといったテレビアニメなどにも使われるようになったなどという話も,その時点と変わらない。
https://jp.gamesindustry.biz/article/2312/23120402/
新しい話はほとんどないので立ち話で生成系AIに関するを聞いてみた。同社では創業時から絵師(正確には2次元画像1枚絵を描く人)に焦点を絞って支援するツールを開発しており,生成系AIに対しても絵描きの味方の立場というのを鮮明にしている。ただ,同社のコンテストやnijimaでは全面的に禁止だ。一方で,生成系AIイラストも進化しており,傍目に見れば新たな市場ができつつあるのだが,立場の問題なのでいろいろと難しいようだ。
Unreal Engine
Epic Games Japanでは,Unreal Engine 5.4の新機能などが紹介されていた。ざっと見た感じではアニメーション関係での機能拡充が目立った。モデルへのリグ付けが通常のUnreal Editor上でそのままできるようになったり,多くのアニメーションパターンからMotion Matchingで滑らかに動きをつないだりといったところがハイライトだ。
従来,UEなどのゲームエンジンでゲームキャラの動きを制御するには,ステートマシンなどを使って動きの遷移をまとめ上げ,それぞれに必要なアニメーションパターンを用意する必要があった。自然な動きにしようとすると,要求されるアニメーション量も多くなり,ステートマシンも必要以上に複雑になるものの,それでも限界がある。それを解決する手段がMotion Matchingだ。これは多くのアニメーションクリップから,次の動きに近いアニメーションデータを探して,自動的に動きを補間してくれるというものとなる。この技術はGDC2015でUbisoftが発表したものが有名であり,そこでUbisoftが定義した基本的に必要なモーションキャプチャの動きをまとめたものが「Dance Card」であり,それに従ってモーションキャプチャデータを取っておけば,とりあえず困ることはないとのこと。従来のステートマシン用のモーションキャプチャも流用でき,それをそのまま使っても,少なくとも前より悪くなることはない。
ミライセンス
ミライセンスでは,PS5での3Dハプティクス技術のデモが行われていた。展示されていたデモは,クルマでさまざまな状態の路面を走行するというものだが,オートモードで触感の違いだけを感じ取れるようになっていた。
路面の違いはそれなりにリアルに感じ取れるのだが,同社のウリである力感については,PS5のコントローラではいま一つ伝わってこなかった。コーナリングやブレーキングで使われていたらしいのだが,ほとんど分からない。このあたりは振動子の大きさや性能に依存するのでいたしかたないところか。昨今のコントローラはワイヤレスが当たり前で,バッテリーの内臓が必須であり,多機能化も進んでいて高出力な振動子を入れるのは難しくなっているようだ。
Audiokinetic
オーディシステムWwiseを展開するAudiokineticでは,Wwiseの新しいバージョンがデモされていた。新バージョンではUIが変更され,詳細情報などの配置が既存のゲームエンジンなどに近くなっている。また,UEのNiagaraなどに対応したほか,実機上で動作させつつ,ライブエディットで修正を加えることができるようになるなど,よりゲーム開発をしやすい方向でのアップデートが行われている。
そのほか,ゲームマップ内の地形による音の反射を考慮したリアルな音の伝播を行うデモも行われていた。CPU負荷でレイキャストの上限を制限することで,ゲームに大きな負荷をかけずにリアルな音響効果を得られるようになっている。
CRIWARE
CRI・ミドルウェアでは,CRIWARE for C#,Sprite Studio,そしてヤマハのSoundXRが統合されたADXが展示されていた。先に紹介したヤマハのSoundXRはADXに標準搭載DSC07941されることになったのだ。会場では,同ソフトを使ったASMRのデモが行われていた。
Sprite Studioは,シンプルに言えば速くなった。旧製品の5倍,競合となりつつあるSpineと比較しても1割速いとのこと。また展示はされていなかったもののImage StudioでのAIを使った画像拡大でも高速化が行われているとのこと。
そして,C#というかMono環境でのCRIWAREサポートだが,最近ではGodotなどでの問い合わせが増えてきているのだという。そこでMono環境で汎用的に扱えるCRIWAREが作られることになったわけだ。Unityで使っても,標準のプラグインより高速化できる可能性はあるとのこと。
ヤマハ
ヤマハでは,3DサウンドシステムSoundXRのデモ展示を行っていた。3Dサウンドは多くのゲームシステムで標準的に扱われるようになって久しく,とくに目新しいものではない。SoundXRの特徴は,ヘッドフォンとイヤフォンを前提にしている点だという。
他社製品でももちろんそれらはサポートされているわけだが,多くの3Dサウンドシステムは7.1chや5.1chによるスピーカー出力にも対応しており,一度7.1chなどのバーチャルスピーカーのフォーマットに変換されたのちにバイノーラルに変換されるために精度が落ちるのだそうだ。それゆえ3D定位が高精度である。
また,処理の軽さにも気をつかっており,CPU性能などにも依存するのだろうが,SoundXRでは,音源数で1000程度を扱える。これにより,多くの音源でよりリアルな音場を再現することも可能になる。開発中からすでにモンハンやバイオハザードなどのカプコン製品で利用されており,高い評価を得ているという。
Diarkis
Diarkisでは,オンラインゲームのN対Nのリアルタイム通信機能などを提供している。会場でアピールされていたのは鉄拳8での採用だ。同社のマッチメイク機能と通信機能が利用されているという。鉄拳8は全世界同時発売ということもあり,グローバルに大量のプレイヤーを扱うことが求められる。マッチング自体は1か所で行われるそうだが,全世界のゲームサーバーにプレイヤーを振り分けて捌いているそうだ。同社のシステムは自動スケーリングがサポートされており,不意なアクセス急増にも耐えるほか,より効率的なサーバー運用が可能になっている。
また,プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミクでは,バーチャルライブなどで同社のシステムが利用されており,こちらではより多くのユーザーを処理している。同社の通信基盤では,1対1のP2P,少人数を扱うRoom,MMO向けのFieldの3タイプが用意されている。
AccelByte
AccelByteは,オンラインゲームで使われる機能単位のサービスを提供している会社である。プレイヤーのマッチングや,ソーシャル機能,マネタイズ,リーダーボード,ストレージなどの各種サービスが用意されており,ゲーム会社はそれらのサービスを利用することでオンラインゲームを迅速に開発し,運営を効率化できる。
同様のサービスは各所で展開されているが,同社の特徴は,標準の各種サービスをユーザー側が自分のゲームにより適した仕様にできるExtendサービスが用意されている点にある。これはAccelByteが用意しているサービスの内容をオーバーライドするものから,AccelByteのクラウドストレージなどを利用しつつ,独自のサービスを追加すること,イベントハンドラを拡張することなど多岐にわたっている。
JFrog Japan
昨今ではほとんどのアプリケーションのバックエンドで多くのオープンソースソフトウェアが使用されている。これはゲームも例外ではない。非常に多くの分野で使われていることから,オープンソースソフトウェアの脆弱性を狙った攻撃が絶えない。脆弱性が見つかるたびに対応パッチが作られるので適切に運用する必要がある。Jfrog製品を導入したゲーム企業の例を見てみると,1日に2回セキュアビルドをデプロイし,毎月バックエンドの7割を更新しているという。システムをセキュアに保つためには,それくらいの対応が必要だということだ。同社の製品は,そういった作業を手助けしてくれるものだ。
また,Redhatとの協業で,システム側のセキュリティはOpenShiftで,アプリケーション側のセキュリティをJfrogで確保するようなソリューションも確立されている。
AIQVE ONE
AIQVE ONEは,ゲームのテストを得意とする会社だが,今回紹介されていたのは,Oreoというサービスだ。これはX(旧Twitter)などでバグといったトラブル情報やゲームの評価などがつぶやかれた場合に,AIでフィルタリングして情報を集めてくるというものだ。不具合が発生した場合,真っ先に情報が出てくるのはSNSだと思われるので,24時間監視していれば最速で対応も可能になる。とくに緊急度の高いと判定された案件については通知も飛ばしてくれるという。
なお,Xでのデータ取得には有料のAPIが利用されているのだが,このサービスには無料版もあり,1000件分のデータ取得については無料で行える。Xのほか,Steamでのコメントにも対応しており,各種言語にも対応できる。Discordへの対応も予定されているという。
マーケティングアソシエーション
ゲームアプリでのカスタマーサポート代行サービスを提供するマーケティングアソシエーション。ゲームはエンドユーザー相手の商売なのでカスタマーサポートはどんな規模の会社でも必要になってくるが,小規模な会社では専任スタッフを抱えることは難しい。なにかと難しい業務でもあるので,プロに任せてしまうほうがよいと考える人も少なくないだろう。
マーケティングアソシエーションでは,電話,メール,チャットなどのほか,LINEなどのSNSまでカバーしている。同社では,スタッフが全員正社員であることもウリの1つで,ゲームサポートに慣れたゲーム専門のスタッフがユーザー対応を行ってくれる。
Mapbox Japan
地図情報システムを提供しているMapbox Japanでは,同社のデータおよびライブラリを使ったさまざまなデモが展示されていた。最近のアップデート内容としては,気象庁が発表している風速などのデータをリアルタイムで表示できるようになり,3Dデータのうち主要なランドマークの精細化が図られるなどの進化を遂げている。
同社がゲームに注力し始めたのは比較的最近だが,すでにゲームでは「信長の野望 出陣」や「ドラゴンクエストウォーク」といった位置情報ゲームに使われるなどの実績を挙げている。とはいうものの,事例ではゲーム以外での活用が多い。Mapboxが提供するデータ以外に,さまざまなデータを組み合わせて,地図情報とリンクしたユニークなサービスが紹介されていた。地図情報に地震の震源データを組み合わせて3D表示するものでは,大陸プレートがはっきり可視化されていたり,スバル車で走って気持ちのいい道を示してくれるようなスバル提供のアプリなども面白い。
シリコンスタジオ
シリコンスタジオでは,UE用のYebisプラグインとEnlightenが展示されていた。UE用のYebisプラグインはYebisの次期バージョンを先取りしつつ,機能制限したものだそうで,主に建築や自動車業界などで映像制作を主眼にしたものだそうだ。名前もEbis Bizとなっており,あまりゲーム用っぽくなく,PC版のみでの発表となる。
当然ながら,Yebis 4となるであろうバージョンも開発中だ。これはまったく新しく作り直されるものであり,カメラのレンズなどをリアルに再現するのはYebis 3と同じでも,よりリアルなカメラの光学系エフェクトを実現できるものになるという。先のUEプラグインが映像向けだったのに対して,Yebis 4(?)自体はあくまでもゲーム用で使えるパフォーマンスを維持するとのこと。
OROCHI
OROCHIでは,国産ゲームエンジンの展示が行われていた。新機能としては,グローバルイルミネーションがサポートされたとのこと。GIによる照明が加わったことで,よりリアルな陰影を持つビジュアルを実現できるようになった。
また,新たにビジュアルスクリプト環境が追加されている。見た目的にはScratchライクなもので,マウスでメニューを開き,必要な要素を追加していく形になっている。ノードに線をつないでいく形式よりも処理の流れは分かりやすいかもしれない。これにより,プログラマ以外のデザイナーでも手軽にOROCHIを扱えるようになるという。
ダイキン工業
ダイキン工業では,同社のミドルウェアやツール製品をサポートするDAIKIN CG ChannnelとVtuber向けのフェイシャルキャプチャシステムCelFaceが展示されていた。CelFaceはVtuber専用ということで,とくにリアルタイム性が追求されており,同系統の簡易型フェイシャルキャプチャと比較すると,口の動きをしっかり取っているという。逆に本格的なフェイシャルキャプチャで顔の動きを忠実に取りすぎると生々しすぎるので,適度に調整してセルルックなキャラクターに反映させる。専用ヘッドマウントカメラは必須ではないが,これを使えばワイヤレス接続でき,動きのあるシーンでのフェイシャルキャプチャも可能になる。
エルザ ジャパン
NVIDIAの代理店でもあるエルザ ジャパンのブースでは,デスクトップとノートの2種類のワークステーションが展示されていた。デスクトップはQuadro系のRTX A6000 Adaが搭載されており,ノートのほうはRTX A5000 Adaが搭載されている。型番だと分かりにくいかもしれないが,A6000 AdaはGeForce RTX 4090の1割増しの規模のGPUでVRAMを48GB搭載している。単体で買うと130万円くらいのGPUである。PCではなくワークステーションとして売られているのもうなずける。なお,写真の製品は同社では最小のもので,ミニワークステーションと位置付けられている。最上位モデルだとQuadro Sync 2にも対応しており,複数のGPUを扱える。
HELTEC
HELTECは,モーションキャプチャ関連の技術をまとめて扱う企業だ。XSENSのスーツを使った全身のモーションキャプチャ,Metaglovesを使った手指のモーションキャプチャ,iPhoneを使ったフェイシャルキャプチャそれぞれのソリューションと全体をまとめたソリューションを展開している。MetaglovesはManusの製品だがXSENSからも発売されており,同社のMVNでまとめて扱うことができる。
フェイシャルでは東映ツークン研究所による国産のソリューションが使われており,とくに目線や瞳の揺らぎも忠実に再現するという。デザイナー目線のワークフローを構築しているといった特徴も備えている。
Game Server Services
オンラインゲームの各種機能を提供しているGame Server Services。多くのゲームで使われるであろう要素をSaaSとして提供している。インベントリやガチャ,クエスト機能などのほうか放置ゲーム向けの機能なども用意されている。最近ではそれらがさらに拡充されているとのこと。通信周りやサーバー周りのことはあまり気にしなくても大丈夫で,必要になる機能のAPIを使うだけでオンラインゲームを構築できるサービスが展開されている。
クラスメソッド
クラスメソッドは,AWSを中心に各種ネットワーク関連での開発支援,コンサルティングを行っている。オンラインゲームでのバックエンド構築や負荷試験などの事例が紹介されていた。ゲーム開発用の各種SaaSの運用支援も行っている。隣のブースで展開していたGame Server Serviceのソリューションやクラウド対応TiDB Cloud,サーバーレスキャッシュサービスMomentoなどを幅広く扱っている。AWSパートナーなので同社を介することでAWS利用料金を割安で利用することもできるとのこと。
東陽テクニカ
東洋テクニカではバージョン管理ツールHelix Coreのデモが行われていた。かつてはPerforceと呼ばれていたツールで,バイナリを含むファイルを高速高効率で管理することができる,ゲーム向きのバージョン管理システムである。本体のHelix Coreでは,ファイル転送が一段と速くなった程度であまり大きな変更はないとのことだった。来年にはセキュリティキーのサポートなどの大きな変更が予定されているという。Helix Coreと連動するアセット管理ツールHelix DAMでは,画像が持つEXIFのメタデータ内の検索ができる機能が追加されている。