【ACADEMY】英国における新しいルートボックスの透明性ガイダンス - それはゲームを変えるか
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2023年7月18日,英国の文化・メディア・スポーツ省(DCMS)は,ビデオゲームにおけるルートボックス(ガチャ)の使用に関する最新のガイダンスを発表した。これは,業界団体のUkieが取りまとめたもので,DCMSが昨年末に開催した技術作業部会の成果とされている。
このガイダンスでは,透明性基準や情報共有の改善について,極めて議論の余地のない提言がなされており,ほとんどの企業にとってコンプライアンス上の新たな課題が生じることはないと思われる。しかし,これは特に年齢制限と年齢保証に関して,より野心的な要求事項を新たに定めており,子どものプライバシーとオンラインの安全性の問題に対して,劇的な影響を与える可能性がある。
新しいガイダンスが要求すること
透明性
ガイダンスの中心となるUkieによる11の業界原則の多くは,ビデオゲームにおけるルートボックスを取り巻く透明性基準の改善に焦点を当てており,特に以下が含まれる(ほかにもある)。
- 原則4 - プラットフォーム,パブリッシャ,開発者にはゲームの購入やダウンロードの前に,ゲーマーが十分な情報を得たうえで判断できるよう,有料のルートボックスの存在を開示することを要求する
- 原則5 - 企業には明確な確率の開示を要求する
- 原則6 - 有料のルートボックスを,プレイヤーにとって理解しやすく,フェアで責任あるプレイを促進するような方法で設計し,提供することを要求する
同様に,原則2と原則10は「責任あるプレイに関わる情報」を保護者とプレイヤーに提供し,「支出を効果的に管理」し,それを管理するためにどのようなツールや技術的な手段が利用できるか「認識を促す」ことに重点を置いている。
これは,ほかの法域ではすでに採用されているアプローチである。例えば,中国は2017年からこのような情報開示を義務付けており,台湾も昨年これに続き,韓国でも2024年初頭から同様の法律が施行される予定だ。
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英国の新ガイダンスでは,この点に関してさらに実践的な提案がなされている。例えば,ガイダンスでは「アイテムやアイテムのカテゴリを獲得するチャンスは,それが意図するプレイヤーや観衆にとって,簡単にアクセスでき,意味があり理解しやすい方法で表示される」ことを提案している。
ここでの目的は明らかに,企業がどの程度の透明性を採用するかを検討する際に,ある程度の独立性を提供することだ。一方で,情報が無限のリンクや専門用語の陰に埋もれることを,企業が期待すべきではないと明確にしている。
とはいえ,より標準化されたアプローチを望んでいた企業は,今のところ個々のプラットフォーム(Apple,Google,Microsoftなど)が定めるガイドラインに依拠し続けなければならない。すでにこれらの規制を遵守している企業にとっては,実質的な変更はあまりないだろう。リスクベースのアプローチを取っていた人々にとっては,プラットフォーム自身からの監視が強まる可能性がある。新たな強制措置はないものの,業界全体で基準の厳格化が進んでいる。
情報
ガイドラインは,ユーザーに対する透明性だけでなく,業界が研究者や政府に対してルートボックスに関するより良い情報を提供することも約束している。この点に関して,原則7は5月末に発表された新しいビデオゲーム研究フレームワークを支援することを推進し,原則10はこれらの新原則の影響とその有効性を毎年見直すうえで,政府との協力を進めていくと約束している。
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直近の例では,6月29日にオランダ中央政府が新しい消費者保護アジェンダを発表した(オランダ語のみ)。これには「政府としては,いかなる場合にもルートボックスを禁止する」と記載されており,オランダの経済・気候保護大臣はオランダ議会への書簡の中で,ルートボックスをあらゆる状況下で不公正な商行為として認定するため,EU法の改正を推進することを明らかにした。
私たちは以前,英国が様子見のようなアプローチを取っているのではないかと推測したことがある。業界に自主規制が効果的だと示す機会を提供しつつも,コンプライアンスのインセンティブとして,より広範な禁止措置の脅威を保持しているのだ。欧州での禁止に対する合意が得られれば,英国でもそれに追随する圧力が高まるのは間違いない。たとえ,その遵守がほかの国々で見られるようにバラバラだとしても。
新しい要件
最も興味深いのは,ガイダンスがより劇的な実質的変更も提案していることだ。
- 原則1と3は,年齢保証の問題に焦点を当て,18歳未満の者が,親,保護者,後見人の同意または知識なしに有料のルートボックスを入手することを効果的に制限するための新たな技術的手段の開発,およびこのトピックについて業界のための新たな専門家パネルの形成を要求している。
- 原則9は,直接購入した有料のルートボックスやゲーム内通貨(特に保護者の同意や知識なしに行われたことが明らかな場合)に対して,寛大な返金ポリシーを採用するようゲーム会社に要求している。
- 原則8は,有料のルートボックスから入手したアイテムを実際の金銭で取り引きする無許可の外部販売に焦点を当てている。
最初のものは,年齢保証技術に最近注目が集まっていることを考えると特に興味深い。具体例として,英国のオンライン安全法案で提案された制度の一部や,FTCがESRB,Yoti,SuperAwesomeと共同で顔認識IDに関するコンサルティングを行うと発表したことが挙げられる。
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「公正かつ迅速」な返金ポリシーとはどのようなものなのか,より詳細な説明が望まれるかもしれないが,私たちはすでにこのような実例を目にしており,この点でアメリカの経験を活用する余地があることは間違いない。
最後の原則8は,ほかの原則とはやや異なり,問題を特定しているものの,その解決方法についてはあまり明確になっていない。明らかに「知的財産保護への継続的な投資」は,ゲーム内商品の無許可デジタル転売という問題に対する技術作業部会の理想的な解決策だが,ほかの多くの原則とは異なり,これが実際にどのようなものなのか詳細はほとんど示されていない。
この足跡と関連メンバーの経歴を考えると,その実態や時期が正確には分からないとしても,いずれ取り締まりが行われることは予想可能だ。
実際のビジネスにおいて何を意味するのか
この原則の明確な実施メカニズムがなければ,現在の市場慣行に期待できる変化の規模やスピードは不透明なものとなる。確かに今回の発表は,透明性と情報共有に対する業界の取り組みがより厳しくなることを予感させるものではあるが,ほとんどの企業にとってこれは実質的な変化ではなく,度合いの変化に過ぎないだろう。
知的財産保護を強化するという指令は,同様に企業の意識を集中させるかもしれないが,企業がこれまでに行っていない取り組みを始めることはあまりないだろう。とはいえ,企業がこの新たなガイダンスを検討する際は,ブランドの評判を第一に考えることをお勧めする。
何よりも,このニュースの後は間違いなく世間の監視の目が強まることが予想され,後塵を拝することになった企業は,世論法廷での長引く訴訟に巻き込まれる(そして最終的には,よりコンプライアンスを重視する競合他社にプレイヤーを取られる)リスクがある。
いずれにせよ,年齢制限に対する新しいアプローチは,ゲームを大きく変えるものだとも言われている。
John Brunning氏は,Fieldfisherのテクノロジー・データチームのパートナーであり,商業,テクノロジー,電気通信を中心とした幅広いプロジェクトで経験を積んでいる。Lorna Cropper氏は,Fieldfisherのテクノロジー・データチームのデータ保護弁護士で,国内外のさまざまなクライアントをサポートしている。Paul Lanois氏は,Fieldfisherの欧州におけるテクノロジーおよびプライバシーの専門家であり,カリフォルニア州,ニューヨーク州,コロンビア特別区,および米国最高裁判所の弁護士資格を持った弁護士だ。
本稿作成にあたり,Fieldfisherのシリコンバレーオフィスでリーガルアドバイザーを務めるJames Russell氏,アムステルダムオフィスのアソシエイトであるLaurent van der Bruggen氏の協力を得た。
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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)