【ACADEMY】生理休暇の実施状況について

GOGで,PR,コミュニケーション,カルチャーの責任者を務めるGabriela Siemienkowicz氏は,デジタル販売業者がこの新しい取り組みを導入した経緯を説明する

【ACADEMY】生理休暇の実施状況について

 GOGで生理休暇を導入するというアイデアは,1年以上前の会議で,何人かの社員がこの一般的な問題に注目したことから生まれた。

 月経と,それに関連する病気は多くの場所でタブー視されているが,当社は生理休暇をいち早く導入した企業の一つだ。


生理休暇の歴史


 生理中の人の約90%が,むくみ,頭痛,気分の落ち込みなど月経前症候群に伴う軽い症状を経験している。そのうちの約20%は,吐き気,腹痛,腰痛,疲労感など,日常生活に支障をきたす症状を訴えている。しかし,月経のある多くの人が同じような症状を訴えているにもかかわらず,各国の雇用主は彼女らのニーズと異なる対応をしている。

 生理休暇の歴史は20世紀までさかのぼる,日本の法律には,1947年という早い時期に生理休暇に関する記述があった。韓国では少し遅れて1953年に登場した。日本の場合,雇用主は生理中の人に休暇を与える義務があるが,休暇中の報酬を支払う義務はない。

 ヨーロッパでは,いまだに生理休暇がタブー視されている。法律で生理休暇の規定があるのはスペインが最初で唯一の国だが,この規定は2023年2月に施行されたばかりである。GOGが拠点を置くポーランドでもかなり新しいトピックであり,最初に生理休暇が導入されたのは2020年だ(法律による規定ではなく,雇用者の自主的な取り組み)。

月経のある人が,通常の休暇から月に1日を必要な休息にあてるとすれば,その半分以上を使い果たしてしまう

 ポーランドの労働法は西ヨーロッパの制度と類似性が高まっているにも関わらず,1980年代末にポーランドで起こった変革は,従業員の権利がまだ形成されていないことを意味する。なかでも生理休暇は新しいテーマで,かなりの誤解がある。

 しかし,地域によって専用の生理休暇がないからといって,生理中の人が仕事を休まないわけではない。オランダの研究者が2018年に実施した調査によると,女性の約14%が一般的な休暇の中から病気の対処に日数を費やしており,そのうちの約3.5%が毎月行っている。

 ポーランドの従業員が取得できる休暇日数は,例えばアメリカよりは確実に多いが,ヨーロッパの基準には及ばない。月経のある人が,通常の休暇から月に1日を必要な休息にあてるとすれば,その半分以上を使い果たしてしまう。

 多くの反対派は,生理休暇を病欠を使いすぎたり仕事を避けたりする機会とみなしている。そのうえ潜在的な受益者は,法律による生理休暇は雇用主が月経のある従業員の雇用を避けるようになるかもしれないと考えている。生理休暇を利用できる国であっても,その利用が少ないことは注目に値する。主な理由は,慣れない特権,上司(通常は男性)の前での恥ずかしさ,未使用の休暇に関連する報酬,大きな給与差,解雇への恐れなどである。

 したがって,生理休暇を嫌う理由は,潜在的な特権ではなく,労働制度そのものに求めるべきである。実際,月経そのものが不快な経験であれば,それは特権とは言いがたい。


GOGの生理休暇への取り組み


 2022年4月に開始した生理休暇は,当社にとって単なるテストではなく,従業員のニーズを知り,従業員にとって最も有益な方法でプログラムを調整するためのものであった。

 当初は四半期ごとに1日の休日を提供することから始め,その後1年かけて取得可能日数を月1日に増やす必要があるかどうかを検討し,従業員からのフィードバックを受けて今年1月にようやく実現した。

 また,チームメンバーにとって心理的にプラスになる面もあった。多くの有資格者が,たとえその手当を利用する必要がなくても,この変更に肯定的なコメントを寄せた。必要であれば追加で休みを取れることが,彼女らに安心感を与えたからだ。テストプログラムの期間中,利用可能な生理日のわずか16%しか従業員が利用しなかったため,実際に利用するのは必要な従業員だけであることが分かった。

GOGで,PR,コミュニケーション,カルチャーの責任者を務めるGabriela Siemienkowicz氏
【ACADEMY】生理休暇の実施状況について
 生理休暇を取得する手続きは非常に簡単だ。生理痛が発生する前日または当日に申請書を提出するだけで,申請はすぐに処理される。直属の上司が申請を拒否することはできない。

 現在のところ,導入モデルを拡大する予定はないが,将来の可能性を否定するわけではない。当社は従業員と話し合いを続けており,従業員のニーズに合わせて休暇を調整したいと考えている。

 ニーズがあるというシグナルがあれば,現在の生理休暇を必ず拡大しよう。そして生理休暇は,職場における公平性を促進する包括的な福利厚生の一例に過ぎない。当社はさらに多くの制度を導入することに前向きであり,従業員のニーズに合わせて対応する予定だ。


生理休暇に関する議論の始め方


 生理休暇についての議論に参加する際には,従業員のニーズ,つまり従業員が直面している問題や,1か月のうち大変な時期に従業員を機能させやすくする方法に耳を傾けることが重要だ。これは職場ごとに異なるので,どの休暇制度も従業員のニーズに合わせて調整されるべきである。当社の最優先事項は,生理中の従業員とそうでない従業員の両方と対話し,意識を高め,解決策を提示することだ。

 変革は対話から始まる。問題を特定し,適切な解決策を見つけていくのだ。当社の場合,生理休暇を導入するきっかけとなったのは,「Women of GOG」と呼ばれる従業員ネットワーク会議で,人生のどこかで対処しなければならなかった月経のつらい症状について,同じような見解を共有したことだった。

 その結果,従業員の多くが生理中に休めるように,休日を増やすことに賛成していると判明した。彼女らの症状は同じくらい重要であり,完全な体力回復のためには適切な治療が必要だ。

生理休暇についての議論に参加する際には,従業員のニーズに耳を傾けることが重要だ

 当社の従業員は,手当が必要なものもそうでない者も,このアイデアに肯定的な反応を示した。唯一の否定的な意見は,あるチームメンバーの知識不足から生じたもので,「生理休暇がほかの不定期な病気とどう関係するのか」という疑問だった。当社は,このデリケートな話題について完全な透明性を確保するため,特別なAMAセッションを企画した。そして,月経を病気とは解釈できないこと,すべての従業員には病気休暇を取得する権利があることを説明した。

 また,当社は社内でのオープンな議論と,このトピックに関する幅広いプレゼンテーションにも重点を置いた。月経がタブー視される社会だが,この取り組みによって,月経がどのようなもので,どのように現れるのかを教育し,人々に理解してもらうことができた。

 こうして,従業員が自分のニーズを話したり伝えたりすることを恐れない安全な空間が生まれ,不快感に悩まされる人々が同僚の理解を得られるようになったのだ。当社はまだ多くの課題があることを認識しているが,生理休暇制度の開始は,包括的でオープンな職場づくりに向けた最初の大きな一歩である。


ネット上の否定意見


 従業員からのポジティブなフィードバックは,当社が障害に遭遇しなかったことを意味しない。当社の取り組みに対する最初の否定的な反応は,LinkedInに投稿した記事のコメント欄に現れた。生理休暇を会社の規定として正式に導入した後,当社は月経のない従業員に対する差別の申し立てと闘わなければならなかった。

 当社は,このプログラムを継続することで,当社の取り組みの正当性を反対派に示せると考えていた。困っているグループに特権を与えることは,ほかの従業員から権利を奪うことではない。先述したように,病気休暇は誰でも取得できる。

 月経のない人は,たとえ身の回りで月経の影響を受けている人を見ても,月経がどのようなものなのか想像できないことが多い。

困っているグループに特権を与えることは,ほかの従業員から権利を奪うことではない

 批判のコメントは,当社の新しい取り組みに対するポジティブな反応の洪水の中で,すぐに消えてしまった。肯定的なコメントは,当社が活動を継続するモチベーションの源となった。多くの人が,自分の職場にも同様のプログラムを導入してほしいと言ってくれた。そのおかげで当社は,収集した経験とそれに基づく教訓を共有し,包括性という考え方に賛同する多くの企業を導けるという確信を得た。この重要な問題について当社が声を上げることで,ほかの企業が当社に続くことを期待している。

 月経は長い間タブー視されてきたため,月経に悩む人々はそのことを話すことを恥じており,月経の影響を受けていない人の中には,いまだにその深刻さを理解していない人もいる。生理休暇の導入は,「共感」について教育する絶好の機会となる。

 当社の意見では,生理休暇に関する質問は重要だ。それに答えることが,この話題をチーム内における通常の会話の一部とし,タブーの打破につながるからだ。

 生理休暇は多くの従業員にとって大きなメリットとなる。自らテストした企業が証明しているように,追加の休暇が従業員に乱用されることはなく,チーム全体の福利厚生も向上する。快適な職場環境を作るのは雇用主の責任であり,包括性は今の世界で最も重要なテーマの一つである。


Gabriela Siemienkowicz氏はGOGで,PR,コミュニケーション,カルチャーの責任者を務めており,「Women in Games」のアンバサダーでもある。Gabriela氏はチームリーダーとして,多様性,公平性,包括性に向けた新たな取り組み,長期的な戦略における雇用主のブランディング改善計画に関わり,担当している。

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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら