【月間総括】アニメに対する不寛容さが目立つSIEの事業説明
今月は最初に,Microsoftについて述べたいと思う。
6月12日に配信されたXbox Showcaseで公開されたゲームについてここでは触れないが,注目すべきはXbox Series Sが白から黒へ,ストレージ容量を512GBから1TBに拡張してきたことである。
Xbox Series Sは日本市場をターゲットにしたと聞いているのだが,現行の白モデルはデザイン的には今一つであった。東洋証券としては,視覚情報で購買は決まっているという意見なので,今回改善したことは喜ばしいことであろう。また,ストレージも512GBから倍増した。以前からストレージコスト問題を提唱している筆者としては,Microsoftがこの問題を意識していることが明らかになったのは大変良いことだと思う。廉価版であるXbox Series Sが1TBになったことは,PS5にとっては厳しい話である。PS5は825GB(内ゲーム用は663GB)しかなく,カタログスペックで見劣りしてしまう。これはソニーグループやSIEにとってはなかなか許容できないことだと思うので,PS5のマイナーチェンジ時にはストレージ容量は増やしてもらえると期待したい。
Gamepassではソニーグループに対抗できないことはすでに明らかである。Microsoftは,今後の方向性を考える必要があろう。そもそも,ソニーグループに勝てないことを前提にしたビジネスは良くないと思う。フィル・スペンサー氏にはソニーグループを上回れるように,よりハードを重視した施策を実施してもらいたいものである。ビジネスは貪欲に成長を目指すものであり,現状に満足した時点で終わりだと東洋証券では考えている。
次に,ソニーグループの事業説明会について簡単に触れておきたい。
IRのプレゼンなので,ある意味当然ともいえるのだが,あれだけ誇っていたアドオンの売り上げについて今回はまったく触れられなかった。
ゲームの開発には多額の資金と人的資源が必要であり,ジム・ライアン氏は触れないだけで済むのだろうが,アドオンゲームが2022年度に失速したことで,昨年の経営方針がどうなったのか良く分からないのは問題だと思う。
しかも昨年までと違い,質問が英語でしかできなくしてしまった。これはあまりいいことではないと思う。日本での説明会で日本語で質問をできなくすることの意図がよく分からないが,めんどうな質問を受けたくないからではないかと邪推してしまう。
この説明会では,第4四半期のPS5のセルスルー(実売)が500万台と記録的な数字であったことが明らかになった。PS4やSwitchはハードが普及するほどソフトの販売本数が大きく伸びたことを考えると,かなり特殊な状況と考えていいだろう。
ところがソニーグループは,第4四半期のサードパーティの一部は健闘したと説明しているのである。
当該のサードパーティにヒアリングしたところ、メタスコアの高さを考えるともっと販売は伸びると見ていたとしていた。
日本の多くのサードパーティは、第4四半期のゲームソフト販売は期待ほどではなかったと説明しているので、先月も書いた通り,PS5のゲームソフト販売数は不振なのである。
その点が表れているのだが上に掲載したプレゼン資料だと思う。
プレイ時間とフルゲームの販売本数がPS4を超えたのは喜ばしいのだが,合算した水準が以前に及ばないように見えるのである。ゲームソフトが売れていないとサードパーティが感じている背景だと思う。要するに市場に成長感がないのである。
先月も指摘したが,PS5はゲーム機なのにゲーム機として物足りず,ゲームソフトの販売状況が良くない。PS3も同様で,Linuxがインストールできたり、Webブラウザが使えたりしたうえに,久夛良木氏がゲーム機以上のマシンでビジネスにも使えると主張いしていたこと,そして大型で丸い形のデザインがその原因だったと筆者は考えている。PS5はデザイン的にゲーム機には見えないことがその一因だとは思うが,ゲーム機として物足りないのは,それだけでが原因ではなさそうである。
そうなるとストレージコストが重いということしかないと思う。
スクウェア・エニックスのFF16も90GBを超えるサイズになっており,現行のPS5の仕様はユーザーの期待に応えられない。ぜひ容量の拡大を検討していただきたい。
M2SSDの増設には筆者もチャンレジしたが,カバーの取り外しが必要で,ストッパーのねじが分かりにくいことなどもあり,簡単ではなかった。これではユーザーのゲーム購買意欲が減退しまう。
FF16はスクウェア・エニックスの吉田プロデューサーによると,HDRに最適化したそうである。だが,筆者所有のOLEDレグザとPS5ではHDMI端子の設定変更が必要で,400ページ以上もあるマニュアルと格闘するだけでは設定方法が分からなかった。
PS5の特徴としてHDR対応をうたうのであれば,ソニーグループには業界団体を通じて仕様の統一などを進めるように強くお願いしたい。PS5は選ばれた人向けではないゲーム機を目指してほしいものである。
また,ファミ通に掲載されたジム・ライアン氏のインタビューでも感じたが,SIEは日本のアニメ絵に対する言及がほとんどないのである。
ソニーミュージックジャパンのCEOは,アニメの有望市場してアメリカとサウジアラビアを挙げていた。東洋証券もたびたびアニメが今後これらの地域で伸びるとしており,ソニーグループも同じと認めているのに,ジム・ライアン氏だけはかたくなにフォトリアルに固執しているようだ。
日本ローカルの東洋証券の意見を認めて欲しいと言っているわけではないので,こっそりでもいいので路線変更を行ってほしいものである。
最後に任天堂である。前回はボリューム面の問題もあって決算の話はできなかったが,Switchの販売は,第4四半期に顕著に減速し1800万台の目標にわずかながら届かなかった。
古川社長も,決算発表の時点ではSwitchの減速傾向が顕著になっており,2023年度の計画である1500万台は高い目標水準であり,達成できないかもしれないとしていた。
東洋証券では前回決算時のこの場でも,ピークアウトすると基本そのまま落ち込むとコメントし,前回時点では最悪も想定して1200万台まで予想を修正していた。今回,1350万台にしたのも,この発言などを考慮してのものである。
ところが,日本のSwitchの販売動向が奇妙なことになっている。
Switchの販売がGWを境に急増しているのだ(4月の最終週と5月の最初は合算なので単純に案分している)。
6月はさらに増えて10万台ものセルスルーを実現しているのである。7年目のボーナス期直前のタイミングで週販10万台は異例もいいところだ(DSやPS3の同時期は2万台程度)。
この販売ペースは,年間500万台ペースであり,日本のSwitchの世界シェアは約1/4なので,グローバルでは年間2000万台になるほどなのである。
先ほどのグラフでも見た通り,もし昨年の1800万台弱を超えるような推移が続けば,Switchはゲーム史での偉業を達成するかもしれない。
問題は,6月にかけて販売数が急増した理由がよく分からないことだ。東洋証券では当初「Nintendo Switch(有機ELモデル)ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダムエディション」の発売とマリオの映画による効果だと思っていたが,これらの効果は時間経過とともに減衰するのが一般的な傾向である。ところが勢いが落ちるどころか増しているのである。
なぜ,こんなことが起こっているのか原因を探求する必要があるので,この点のリサーチは今後も進めたい。しかし,長くゲーム業界を見ているが,まだまだ分からないことだらけである。
6月12日に配信されたXbox Showcaseで公開されたゲームについてここでは触れないが,注目すべきはXbox Series Sが白から黒へ,ストレージ容量を512GBから1TBに拡張してきたことである。
Xbox Series Sは日本市場をターゲットにしたと聞いているのだが,現行の白モデルはデザイン的には今一つであった。東洋証券としては,視覚情報で購買は決まっているという意見なので,今回改善したことは喜ばしいことであろう。また,ストレージも512GBから倍増した。以前からストレージコスト問題を提唱している筆者としては,Microsoftがこの問題を意識していることが明らかになったのは大変良いことだと思う。廉価版であるXbox Series Sが1TBになったことは,PS5にとっては厳しい話である。PS5は825GB(内ゲーム用は663GB)しかなく,カタログスペックで見劣りしてしまう。これはソニーグループやSIEにとってはなかなか許容できないことだと思うので,PS5のマイナーチェンジ時にはストレージ容量は増やしてもらえると期待したい。
Gamepassではソニーグループに対抗できないことはすでに明らかである。Microsoftは,今後の方向性を考える必要があろう。そもそも,ソニーグループに勝てないことを前提にしたビジネスは良くないと思う。フィル・スペンサー氏にはソニーグループを上回れるように,よりハードを重視した施策を実施してもらいたいものである。ビジネスは貪欲に成長を目指すものであり,現状に満足した時点で終わりだと東洋証券では考えている。
次に,ソニーグループの事業説明会について簡単に触れておきたい。
IRのプレゼンなので,ある意味当然ともいえるのだが,あれだけ誇っていたアドオンの売り上げについて今回はまったく触れられなかった。
ゲームの開発には多額の資金と人的資源が必要であり,ジム・ライアン氏は触れないだけで済むのだろうが,アドオンゲームが2022年度に失速したことで,昨年の経営方針がどうなったのか良く分からないのは問題だと思う。
しかも昨年までと違い,質問が英語でしかできなくしてしまった。これはあまりいいことではないと思う。日本での説明会で日本語で質問をできなくすることの意図がよく分からないが,めんどうな質問を受けたくないからではないかと邪推してしまう。
この説明会では,第4四半期のPS5のセルスルー(実売)が500万台と記録的な数字であったことが明らかになった。PS4やSwitchはハードが普及するほどソフトの販売本数が大きく伸びたことを考えると,かなり特殊な状況と考えていいだろう。
ところがソニーグループは,第4四半期のサードパーティの一部は健闘したと説明しているのである。
当該のサードパーティにヒアリングしたところ、メタスコアの高さを考えるともっと販売は伸びると見ていたとしていた。
日本の多くのサードパーティは、第4四半期のゲームソフト販売は期待ほどではなかったと説明しているので、先月も書いた通り,PS5のゲームソフト販売数は不振なのである。
その点が表れているのだが上に掲載したプレゼン資料だと思う。
プレイ時間とフルゲームの販売本数がPS4を超えたのは喜ばしいのだが,合算した水準が以前に及ばないように見えるのである。ゲームソフトが売れていないとサードパーティが感じている背景だと思う。要するに市場に成長感がないのである。
先月も指摘したが,PS5はゲーム機なのにゲーム機として物足りず,ゲームソフトの販売状況が良くない。PS3も同様で,Linuxがインストールできたり、Webブラウザが使えたりしたうえに,久夛良木氏がゲーム機以上のマシンでビジネスにも使えると主張いしていたこと,そして大型で丸い形のデザインがその原因だったと筆者は考えている。PS5はデザイン的にゲーム機には見えないことがその一因だとは思うが,ゲーム機として物足りないのは,それだけでが原因ではなさそうである。
そうなるとストレージコストが重いということしかないと思う。
スクウェア・エニックスのFF16も90GBを超えるサイズになっており,現行のPS5の仕様はユーザーの期待に応えられない。ぜひ容量の拡大を検討していただきたい。
M2SSDの増設には筆者もチャンレジしたが,カバーの取り外しが必要で,ストッパーのねじが分かりにくいことなどもあり,簡単ではなかった。これではユーザーのゲーム購買意欲が減退しまう。
FF16はスクウェア・エニックスの吉田プロデューサーによると,HDRに最適化したそうである。だが,筆者所有のOLEDレグザとPS5ではHDMI端子の設定変更が必要で,400ページ以上もあるマニュアルと格闘するだけでは設定方法が分からなかった。
PS5の特徴としてHDR対応をうたうのであれば,ソニーグループには業界団体を通じて仕様の統一などを進めるように強くお願いしたい。PS5は選ばれた人向けではないゲーム機を目指してほしいものである。
また,ファミ通に掲載されたジム・ライアン氏のインタビューでも感じたが,SIEは日本のアニメ絵に対する言及がほとんどないのである。
ソニーミュージックジャパンのCEOは,アニメの有望市場してアメリカとサウジアラビアを挙げていた。東洋証券もたびたびアニメが今後これらの地域で伸びるとしており,ソニーグループも同じと認めているのに,ジム・ライアン氏だけはかたくなにフォトリアルに固執しているようだ。
日本ローカルの東洋証券の意見を認めて欲しいと言っているわけではないので,こっそりでもいいので路線変更を行ってほしいものである。
最後に任天堂である。前回はボリューム面の問題もあって決算の話はできなかったが,Switchの販売は,第4四半期に顕著に減速し1800万台の目標にわずかながら届かなかった。
古川社長も,決算発表の時点ではSwitchの減速傾向が顕著になっており,2023年度の計画である1500万台は高い目標水準であり,達成できないかもしれないとしていた。
東洋証券では前回決算時のこの場でも,ピークアウトすると基本そのまま落ち込むとコメントし,前回時点では最悪も想定して1200万台まで予想を修正していた。今回,1350万台にしたのも,この発言などを考慮してのものである。
ところが,日本のSwitchの販売動向が奇妙なことになっている。
Switchの販売がGWを境に急増しているのだ(4月の最終週と5月の最初は合算なので単純に案分している)。
6月はさらに増えて10万台ものセルスルーを実現しているのである。7年目のボーナス期直前のタイミングで週販10万台は異例もいいところだ(DSやPS3の同時期は2万台程度)。
この販売ペースは,年間500万台ペースであり,日本のSwitchの世界シェアは約1/4なので,グローバルでは年間2000万台になるほどなのである。
先ほどのグラフでも見た通り,もし昨年の1800万台弱を超えるような推移が続けば,Switchはゲーム史での偉業を達成するかもしれない。
問題は,6月にかけて販売数が急増した理由がよく分からないことだ。東洋証券では当初「Nintendo Switch(有機ELモデル)ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダムエディション」の発売とマリオの映画による効果だと思っていたが,これらの効果は時間経過とともに減衰するのが一般的な傾向である。ところが勢いが落ちるどころか増しているのである。
なぜ,こんなことが起こっているのか原因を探求する必要があるので,この点のリサーチは今後も進めたい。しかし,長くゲーム業界を見ているが,まだまだ分からないことだらけである。