【ACADEMY】機密文書とオンラインプラットフォームの物語:EUの新ルールに対応する方法
4月,アメリカでマサチューセッツ州空軍州兵のJack Teixeira容疑者が,ウクライナ戦争に関する機密文書をDiscordで流出させた疑いでFBIに逮捕された。
以来,この捜査や,ゲームフォーラムでの情報共有が制限されたほかのケース,「War Thunder」などのゲームに関連するもの(関連英文記事)について多くのことが書かれている。
しかし,このような情報漏洩は,情報が掲載されたプラットフォームにどのような影響を与えるのだろうか。ホストしているコンテンツに対する責任や義務はどうなるのだろうか。
移りゆく風景
欧州では歴史的に,プラットフォームが違法なコンテンツを認識しておらず,気づいた時には迅速に削除するなら,サイト上の違法なコンテンツについて責任を負うことはないとされてきた。
それ以来,技術は変化し(控えめに言っても),ゲームやゲームプラットフォーム,ソーシャルメディアにおける,オンラインインタラクションやユーザー生成コンテンツの役割は,爆発的に増大した。オンラインの安全性,特にインターネットを取り締まるうえでプラットフォームが果たす役割は,ヨーロッパ中の政府や規制当局にとってホットな話題となっている。
イギリスでは,この領域でどのように規制を行うかという議論がまだ続いており,「英国オンライン安全法案」が議会の承認プロセスをじわじわと進んでいる。
しかしEUでは,その答えは決まっている。「デジタルサービス法」だ。
次世代のデジタルサービス
2022年10月に施行されたデジタルサービス法は,EUにおけるオンラインサービス規制の次世代を象徴するもので,2024年2月17日までに遵守することが求められている。
ソーシャルメディア大手への適用が注目されているが,デジタルサービス法は実際には幅広いデジタルサービスを対象としており,ゲーム内コミュニケーションやユーザー生成コンテンツを含むゲーム,ライブストリーミングサービスやチャットルーム,さらには特定のバックエンドインフラやサービスまで,ゲーム部門の多くの人々に影響を与えることになる。
デジタルサービス法では,提供するデジタルサービスの種類や,違法コンテンツの拡散に対するリスクの認識に応じて,コンプライアンスを段階的に高めていくアプローチを取っている。
また,デジタルサービス法に違反した場合,最大でグローバル売上高の6%となる罰金が科せられる。
では,何をすべきか
ここでは,同法への準備のためにできる5つのポイントを紹介する。
- 1.提供するサービスが適用範囲に入っているか確認する
また,仲介サービスに該当するものは多岐にわたる。これには,ほかの当事者から提供され,その要求に応じて情報を保存するもの,その当事者の要求に応じて情報を公開するものが含まれる。
つまり,第三者の情報(個人・企業を問わず)を保存したり,一般に公開したりする場合は対象となる可能性が高いということだ。複数のゲームやサービスを持っている場合,異なる規則が適用される可能性があるため,サービスごとに評価する必要がある。
- 2.提供する仲介サービスの種類を確認する
デジタルサービス法では,ホスティングサービス,オンラインサービス,超大型オンラインプラットフォームなど,仲介サービスのカテゴリを多数設けている。各カテゴリには,これまでのカテゴリをベースに,さらに準拠すべき要件が追加されている。
自社がどのような立場にあり,準拠するために何が必要なのか,すぐに分析してほしい。例外や注意事項によっては,より厳しい要件の一部を回避できる可能性がある。
- 3.アクティブユーザー数の報告(オンラインプラットフォームの場合)
オンラインプラットフォームとみなされる場合,サービスの月間平均アクティブユーザー数をすでに報告しているはずだ。もし,まだしていないのなら,早急に対応すべきである。
- 4.違法なコンテンツを認識した場合は削除する
ホスティングサービスに関する古いルールは,今でも適用される。したがって,サードパーティのコンテンツに対する責任を回避するためには,そのコンテンツに気づいた時に迅速に削除する仕組みを組織内で用意する必要がある。これは,ゲーム業界が広く積極的に取り組んできたことであり,優れたプレイヤー体験を保証するための多くのツールや方法が採用されている。
- 5.どのような新しい義務が適用されるかを確認し,必要なコンプライアンス措置を講じる
仲介サービスの各カテゴリには,多くの新しい要件と義務がある。どの要件が適用されるかは,提供する仲介サービスの種類によって異なる(異なる制度に該当する複数のサービスを持つ場合もあることを忘れずに)。
ホスティングサービスの場合,サービスの利用制限やコンテンツモデレーションアプローチを反映した利用規約の更新,透明性の報告,告知・撤去義務などが注目されるだろう。
良いニュースは,適用するための時間が来年の2月17日まであるということだ。悪いニュースは,対処しなければならない運用,法律,技術的な問題がそれなりにあるかもしれないということだ。
オンラインプラットフォーム(第三者の情報を公開するもの)には,さらに遵守すべき要件がある。これは,違法コンテンツ関連の決定に同意できない際に使える苦情処理システムの導入,裁判外での和解手続き,オンライン広告の透明性に関する規則などを含んでいる。消費者市場でもあるオンラインプラットフォーム(アプリストアなど)には,追加のルールが適用される。未成年者がアクセスできるプラットフォーム(ゲーム分野で多くなると思われる)については,子供のプライバシー,安全,セキュリティの確保に関する特定の要件がある。
加えて,非常に大規模なプラットフォームや検索エンジン(4500万人以上のアクティブユーザーを持つもの)は,そのプラットフォームの運営方法や違法コンテンツの流布における組織的リスクの評価,これらのリスクに向けた対策の実施,危機対応メカニズムなど,最も過酷な義務を負う。
これらすべてのコンプライアンスには時間がかかる。良いニュースは,適用するための時間が来年の2月17日まであるということだ。悪いニュースは,あなたが該当するカテゴリによっては,対処しなければならない運用,法律,技術的な問題がそれなりにあるかもしれないということだ。早いうちに始めよう。
ほかに気をつけるべきこと
デジタルサービス法は,EU全域のオンライン安全に関する主要な規制だが,ドイツやアイルランドなどでは国別の法律も整備されている。もちろん,英国オンライン安全法案もまだ進行中だ。このため,対象者は欧州全域の法律のパッチワークに従わなければならなくなる。
このため,コンプライアンスを管理する方法について,各国/規制レベルで取り組むリソースを持つところもあれば,コンプライアンスに対してより総合的なアプローチを取り,すべての国で最高水準を適用するところもある。極端な場合(一部の大手通信事業者が示唆しているように),特定の市場から一斉に撤退する企業も出てくるかもしれない。
John Brunning氏は,Fieldfisherでゲームおよびテクノロジー分野のパートナーを務める。ゲーム業界全般を担当し,パブリッシャやディストリビューター,デベロッパ,ソーシャルメディアプラットフォーム,アドテク,バックエンド技術プロバイダなどを代行している。Frankie Everitt氏は,Fieldfisherの公共・規制担当弁護士だ。テクノロジー企業に対して,著名な訴訟や非訟事件のアドバイスをしている。
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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)