ウェアラブルEXPO開催。MagicLeap 2ほかAR端末にみる未来の姿

 2023年1月25日から27日まで,東京ビッグサイトで「第9回ウェアラブルEXPO」が開催されている。その名のとおりウェアラブルデバイス関連の展示会で,規模は大きくなっている気がするものの,ゲーム業界的に注目するような製品は減ってきている印象だ。各種AR対応製品は増えているが,VR的な製品はほぼなく,ゲームというよりは日常生活・作業を支援するデバイスとして提供されている。
 そんな会場内で見つけた注目の展示をピックアップして紹介してみたい。

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MagicLeap 2の展示


ウェアラブルEXPO開催。MagicLeap 2ほかAR端末にみる未来の姿
 日本ウェアラブルデバイスユーザー会のブースでは,神戸大学の塚本昌彦教授が率いるウェアラブルコンピュータ研究開発機構(チームつかもと)などによるAR用ヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)を各種展示して実機によるデモを体験できた。そこでの注目はMagicLeap 2が実機展示されていたことだ。

 かつて鳴り物入りで登場したMagicLeapだが,離陸失敗というか,ちゃんとローンチされたのかもよく分からない状態で消えていったデバイスだ。私も何度か入手しようとして結局購入にまでは至らなかった。開発版なら入手できたのだがNDA付きだったので正式発売を待っていたのだ。正式リリースが告知される前に値下げなどでなし崩しになっていたように思われる。デモ体験でも「よくできているが,さほど飛び抜けてもいない」といった印象だった。

 さて,MagicLeap 2だ。丸メガネの外観的な特徴は引き継いでいるが,中身はかなり進化しているようだ。
 視野角は70度と言われている。VRヘッドセットであるような100度とか110度といったものと比べると見劣りする数字ではあるが,実際のところ,メガネをかけたときに見えるレンズ部分のほぼ全面に映像が投影される仕様だ。上部は2,3ミリ隙間があった感じだが,左右と下はレンズフレームの1ミリくらいの内側まで映像がきていた。ほぼ全面と言ってもいいだろう。これは凄い。

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 バッテリー及びインタフェース部と表示部(メガネ)が分離されており,有線による接続となっている。これによりメガネ部の軽量化が行われ,装着感も向上している。おそらく分離式にしたことで,稼働時間やグラフィックス性能の拡大も無理なく行われているのだろう。

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インタフェース部は分離されている
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MagicLeap 2用のコントローラ

 MagicLeap 2は2023年3月から4月にかけて発売される予定だ。エンタメ寄りだった初代と比べて,業務用寄りに舵を切ったようで,値段は70〜80万円になるのではないかとのことだった。

 また,チームつかもとでは,主にAR用のヘッドマウントディスプレイ28機種をまとめたHMD比較表2023を配布していた。国内で入手できる全機種というわけではないようだが,メジャーどころのスペックがまとめられているのが素晴らしい。


リコー製スカウター型軽量HMD


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 日本ウェアラブルデバイスユーザー会の隣にウェアラブルコンピュータ研究開発機構もブースを構えており(実質的に1つのブースのようなもの),こちらでも各種HMDが展示され,デモが行われていた。

 そこで初披露されていたのが「片眼スカウター型スマートグラス」だ。正式名称はまだないみたいだ。
 これはメガネのレンズ部にクリップ(マグネット式)で留めるような形状のスマートグラスで,なにかのメガネを使うことを前提にしたグラスレスのスマートグラスとでもいうべき製品だ。

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 スカウター型という名のとおり,片眼のレンズの端に情報表示部を加えるものとなる。表示部はかなり小さいのだが,位置などがずれても鮮明な映像が確認できた。
 この手の小画面製品は,普段は通常作業をしていても邪魔にならず,通知などが入ったときに目をやれば見えるという感じで,大画面・中画面の製品とは違った使い方が中心となるものと思われる。情報表示もできなくはないが,狭すぎるので,そういったものは中画面以上のもののほうが適しているだろう。
 この製品はメガネ部を廃したことで軽く小さく綺麗という3点を実現している。価格は「数万円で収まる」とのことで,民生用でない機材としては破格のものとなりそうだ。


Vuzix Ultralite


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 今回展示製品というわけではないのだが,Vuzixの社長が先日のCESで発表されたばかりのVuzix Ultraliteを持ち込んでいた。Ultraliteの名前のとおり軽量で,ほぼメガネといっていいくらいのフォルムに収まっている。

 基本的にスマホとワイヤレス接続して使うことが想定されているが,このスリムな本体にプロセッサもバッテリーもすべて内蔵しているのだという。「38グラムで48時間稼働ってマジ?」という感じなのだが,公式ページにはそのような謳い文句が並んでいた。会場で見たときは,「大きさは理想的だけど,バッテリーがもたなそう」と思っていたのだが,果たして。
 右目側に中程度の画面サイズのプリズムが確認できたが,この製品はOEM専用で用意されているそうで,このサイズ以外にもコンポーネントの選択ができるようだ。

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 技適の関係で電源は入れられないとのことで,画質などは確認できていない。それにしても,これならば本当の意味で常用できるデザイン&重さであり,たとえ48時間という稼働時間が半分であっても十分に実用になる。


富山大学の生体センサー


 HMD以外の展示では富山大学のセンサー類が目を引いた。触るだけで汗から健康状態を診断できるようなデバイスや,椅子に仕込んで体の動きなどから健康状態を測るようなものが展示されていた。

 微量な物質に対応した化学センサーと,浸潤式という生体内の化学物質を染み出させて化学センサーにかけるという方式の組み合わせで,さまざまな用途でのセンサーが開発されているようだ。汗以外にも唾液1滴で判定を行ったり,植物の状態を傷つけることなく判定したりすることも可能だという。

 脈拍や心電図などを取るデバイスは珍しくなくなった昨今では,より高度な健康管理手段も求められている。方式は不明だが血糖値や血中酸素飽和度を測れるとするリストバンドなども過去にはあったが,はっきりいってちょっと怪しかった。次の時代の健康管理を担うのは化学センサーかもしれない。

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