「モバイルアプリトレンド 2022:日本版」記者発表会レポート。インストール数とアプリ内滞在時間はゲームアプリが突出

 モバイルマーケティング分析プラットフォームのAdjustと,モバイルアプリマーケティングとリターゲティングプラットフォームを提供するLiftoffは,2022年10月26日,「モバイルアプリトレンド 2022:日本版」に関するオンライン記者発表会を開催した。

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 本発表会では,Adjust 日本ゼネラルマネージャーの佐々直紀氏と,Liftoff Mobile 日本・韓国代表(シニアカントリーマネージャー)の天野耕太氏が,「モバイルアプリトレンド 2022:日本版」のレポート結果と,そこから明らかになった最新のトレンドについて解説した。

佐々直紀氏
天野耕太氏

「モバイルアプリトレンド 2022:日本版」ハイライト

 「モバイルアプリトレンド 2022:日本版」は,日本におけるモバイルゲーム,Eコマース,フィンテック,マッチングアプリ,およびコネクテッドTV(CTV)のパフォーマンスについて,AdjustとLiftoffが共同で作成したレポートである。

 本レポートによると,日本のモバイルアプリ市場は世界的な傾向と同様に,この2年間で急激に成長しているとのこと。その理由は,コロナ禍において日本のモバイルユーザーが生活必需品の購入や家計の管理,娯楽,ゲームなどにさまざまなモバイルアプリを利用するようになったからだ。その中でも2021年のゲームアプリのインストール数は,前年比52%増と突出している。

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 また全アプリカテゴリーのセッション数もこの2年間で伸びており,2021年は前年比23%を記録。2021年8月には過去2年間の最高値を記録し,2020年の平均より33%多かったとのこと。ちなみに2022年上半期は前年比12%と,まだまだ増加傾向にあるそうだ。

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 さらに,カテゴリー別のアプリ内滞在時間においても,1セッションあたり約26.5分とゲームアプリが突出。すべてのカテゴリーの平均が約15分なので,ゲームアプリは10分以上も上回っているということになる。

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モバイルゲームアプリ

 2020年から2022年上半期のゲームアプリのセッション数を見ると,2020年春,コロナ禍における最初の緊急事態宣言が出たタイミングで急激に増え,2021年の年明けに出た2度めの宣言後に再び急激に増えていることが分かる。そのあとも緊急事態宣言やまん延防止等重点措置,オミクロン株の流行などがあるたびにセッション数が増えており,直近になってようやく落ち着いてきたが,長いスパンで見るとこの期間のゲームアプリの利用は増加傾向にあると言えるそうだ。

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 ゲームアプリをジャンル別に見ると,セッション数の増加に貢献しているのはRPGやアクションゲームである。これは,ロングセラーの人気タイトルが遊ばれ続けている傾向があるからとのこと。
 一方インストール数に関しては,ハイパーカジュアルゲームが突出している。この理由は,各社が次々に新しいタイトルを出していること,またコロナ禍の隙間時間の中で,簡単に遊べるものをいろいろ試しているユーザーが多いことが挙げられた。

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 ゲームアプリのプラットフォームについては,iOSが67%とandroidの2倍のシェアを占める。したがって,日本においてはiOSを重視してビジネスを進める必要がある。ただAppleが2021年4月に個人情報報保護関連のアップデートを行い,「App Tracking Transparency」(ATT)を導入したため,ユーザーを獲得する必要がある各企業のマーケティング担当者や事業者は今も対応に苦慮しているというのが実情だ。

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 ゲームアプリの継続率に関しては,グローバルおよびAPACと比較した場合,日本はやや低い傾向にある。

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 ユーザーがカジュアルゲームを新たにダウンロードして使い始めるときのインストール単価,すなわち1インストールあたりの広告コスト(CPI)は平均5.46ドルとなる。一般的にRPGのような長く遊ぶゲームはCPIが高い──すなわち新規ユーザーの獲得がしにくいとという。逆にハイパーカジュアルゲームような手軽に遊べるものは,CPIがより低くなる傾向があるとのことで,カジュアルゲームのCPIはゲームアプリ全体の平均的な金額と言えるそうだ。
 ただグローバル全体におけるカジュアルゲームの平均CPIは1ドル台とのことで,日本は結構高いことが分かる。したがって世界のゲーム企業からすると日本での展開は少々ハードルが高いが,逆に日本のゲーム企業としては日本でビジネスを続けつつ世界に進出することにより,低いCPIでユーザーを獲得できることとなる。

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 ハイパーカジュアルゲームのCPIをプラットフォーム別に見ると,iOSのほうが高くなっているが,これはiOSのほうがマーケティング的なチャレンジが多いということも要因になっているかもしれないとのことだ。

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 プロモーションコストやマーケティングコストに対する,カジュアルゲームの課金による回収率を示すROASも示された。ただし最近のカジュアルゲームでは,ユーザーの課金だけでなく広告収入を加えたハイブリッド型のマネタイズが主流とのこと。また一般的にRPGの収益は課金の比率が高く,ハイパーカジュアルゲームの収益は広告の比率が高いという。ここで示されたカジュアルゲームのROASは,ゲームアプリ全体としては,やはり平均的な値になっているそうだ。

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パズルとシミュレーションゲームのCPIとROASも示された
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Eコマースアプリ

 Eコマースアプリのセッション数は,2021年に前年度比で20%増加した。これはコロナ禍において外出を控えることを強いられたユーザーが,新たにEコマースアプリを使い始めたからだと考えられる。また2022年上半期においても前年比7%増とのことで,Eコマースの便利さを実感したユーザーが,外出しやすくなった現状においても継続してEコマースアプリを使い続けているとの分析もなされた。

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 Eコマースアプリのサブカテゴリー別インストール数では,楽天市場,メルカリなど大手プラットフォームを含むマーケットプレイスが75%と比率が高い。なおショッピングは,ブランドなどが単独で提供しているアプリを指し,お得情報はポイント還元アプリやチラシアプリなどを指すとのこと。

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 Eコマースアプリの継続率は。グローバル全体よりはやや低め,APACの中では高めという傾向にある。またインストール後1日めの継続率はAPAC全体で14%,日本が17%となっているが,物流などが介在するため簡単に海外進出できない点がゲームとは異なることが指摘された。

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フィンテックアプリ

 フィンテックアプリのセッション数は2020年1月以降増加傾向にあるが,これはコロナ禍において多くのユーザーが非接触型の決済方法を選ぶようになり,普及が急速に拡大したという背景がある。また日本政府もキャッシュレス決済を推進しており,世界的な流れに沿って,2025年までに普及率を40%にするという目標を掲げていることにも言及がなされた。
 なおフィンテックアプリのセッション数は,2020年から2021年にかけて47%も増加したとのこと。さらに2022年上半期は前年比13%増だったそうで,今後もこの傾向が続くという予想がなされた。

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 セッション数の前年比成長率は,全カテゴリーの中でフィンテックアプリがトップとなる。

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 フィンテックアプリのサブカテゴリー別セッション数の割合では,スマホ決済が73%でダントツのトップだ。続いてバンキングが15%,仮想通貨(暗号資産)が12%となっており,そのほか株取引や家計簿のアプリなどもあるのだが,それだけアプリを使ったスマホ決済が浸透しているという見解が示された。

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 フィンテックアプリの継続率は,APACの中では高いほうだが,グローバルと比較すると結構低めだ。これには,海外では日本よりもバンキングアプリが普及しているという背景があるとのこと。また日本でも,地方銀行などが計測ツールを導入し,サービスを充実させてバンキングアプリのインストールユーザーを増やそうとする動きが高まっているそうだ。

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マッチングアプリ

 マッチングアプリの利用は以前にも増して一般化しており,着実に増加しているという。実際,セッション数の増加で見ると2021年上半期には前年度比で7%の増加, 2022年は前年度比で13%増加している。
 もともとマッチングアプリのセッション数は季節による変動が激しく,マーケティング担当者は一般的に暖かくなる時期からプロモーションを強化しているとのこと。またコロナ禍においては,直接出会うことができなくとも,自宅に1人でいるのはさびしいのでメッセージのやり取りやビデオチャットの相手を探すといったニーズに合わせて,サービスや機能を変化させていったという背景があるそうだ。加えて今後,人と直接会える機会が増えたとしても,そうしたニーズがなくなるわけではないので,オンラインとオフラインのハイブリッドでマッチングアプリの利用が増えていくのではないかという予想も示された。

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 マッチングアプリのCPIと,アプリ登録における顧客獲得単価(CPA)も示された。CPAは,一般的にマッチングアプリが,ただインストールしただけでは使用できず,ユーザーが自身の情報を登録して初めて使えるようになることから参照される指標である。
 CPIは2022年2月に最高値の6.6ドルを記録したが,その後下がっている。また登録CPAも下がる傾向にあり,直近ではユーザーを獲得しやすくなっていると言えることから,世の中の流れとともに,人に会いたいというユーザーが増えているのではないかとの見解が示された。

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プラットフォームごとのCPIとCPAも示された
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コネクテッドTV広告

 セッションの終盤には,今後の日本市場で普及していくであろうものとして,コネクテッドTV広告が紹介された。コネクテッドTV広告とは,テレビにつながっているインターネットを通して取得した情報をもとに配信する広告のことである。佐々氏によると,日本における2021年のコネクテッドTV広告市場の規模は175億円で,2022年には277億円,2024年には558億円まで成長するとの予測がなされているという。一方アメリカでは,2021年に2兆円くらいまで市場規模が拡大していたそうで,当時の日本とは100倍以上の開きがあり,2024年の比較で言っても30倍から40倍の開きがあることが示された。

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そのほかコネクテッドTV広告の特徴や,Adjustの提供する計測ツールによるサポートなどが紹介された
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