「東京おもちゃショー2022」でエンタメ業界の潮流を見る。気になるおもちゃを紹介
ゲームとは直接の関係は薄いが,エンタテインメントの潮流を占ううえでも,会場を見て気になった展示を紹介しておこう。
SLGみたいな,将棋みたいなおもちゃ
ジーピーブースに展示されていたボードゲームの新製品を2つ紹介しよう。1つはポテトチップのようなパッケージ(実際はかなり小さいが)に入っている「ゲームオブチップス」というカードゲームで,もう1つはお馴染みキングダムのゲーム「キングダム BATTLE SHOGUN」だ。
ゲームオブチップスは,チップスのカードを指定されただけ順に引いていき,その内容が手札で示された条件を満たすと特典が与えられる。上にある4枚が場札(?)で左から順に実行する。最初にチップスを5枚引き,次は4枚,3枚,2枚と引いていく。手札は6枚で,1ターンめで条件から遠そうな2枚を捨て,以降のターンで1枚ずつ捨て,最終的に手札2枚に絞り込む。簡単な条件は得点が低く,難しい条件は得点が高いというギャンブル性が高く,4ターンでサクッと終わる。
キングダムのボードゲームは,4×6の小さな盤面で遊ぶ。ホームベース型の歩兵と人型をした将軍の駒が3つ,そのうち一番大きなのが大将だ。歩兵はスタックして強化可能だが前方にしか動けない。将軍は8方向に移動可能だが,歩兵上にスタックすると隊扱いとなり,前方3方向にしか移動できない。将棋などと違うのは向きを変えられるところで,移動と方向転換を1ターンで行える。方向が変えられることから,攻撃と防御で方向が重要となってくる。要するに背後からの攻撃は痛いのだ。
さらに,このゲームの最大の特徴となるのは大将の駒の機能がキャラクターカードで指定できること。キャラによって,さまざまな特性が与えられる。また,キャラクター以外のカードもあるので,カードゲームと将棋を組み合わせたようなゲーム性になるのだろう。
盤面には写真のサイズの2倍のものも用意されるほか,将来的にはさらにおおきなマップも出るかもしれないとのこと。当然ながら,キャラクターカードなどは拡張されていく予定だ。一見,もの凄くシンプルに見えるのだが,かなり戦略の幅が広いゲームになりそう。8月発売を目指して開発中とのことだった。
意外性のある解体パズル
メガハウスからは「解体パズル」が各種出展されていた。いろいろなものを解体した状態にして組み立てるという立体パズルだ。解体という名前のとおりに動物を解体したようなものが多く,ついで食品が多かった。パズル性については若干疑問があるものの,納豆やにんにく,雲丹などがあり,ウケ狙いにはよさそうなインパクトがある。
派手で巨大なGASHAPON CONNECT
出展されていたのは試作機なので,既存の自販機をベースに全体的なイメージをまとめただけで,現状ではまさにパン程度の大きさでそこまで大きなものは出せないのだが(ガシャポンに比べると遥かに大きいが),将来的には靴などの大型商品にも対応していく予定とのことだった。全面画面ではコストがかなり高くなりそうだが,そのあたりは今後抑えつつも,ほぼこのイメージで製品化したいとのことだった。
プレイ料金なども不明だが,大きさ的に1回1000円と仮定してみると,景表法的には20倍の2万円相当のものまで提供できるのでこれも夢が広がってくる。
チョロQも進化
タカラトミーブースで展示されていたチョロQの最新版は,電動でプログラム走行なども可能になっていた。別売りのリモコンで遠隔操作も可能だ。
電動チョロQ自体は新しいものではないが,ゼンマイ式と同様なプルバック操作で遊べる,チョロQらしい電動チョロQだ。要するに,プルバックすると走るのだが,プルバック自体は走らせるためのジェスチャーにすぎない。ただし,プルバック回数が2回,3回となると動作モードを切り替えることができ(多くプルバックしても長く走るわけではない),より多彩な走りが可能となっている。また,写真のようにウイリー走行用の専用コインも付属で発売される。
保護者の声で読み聞かせ
タカラトミーの「COEMO」は,保護者の声で読み聞かせができるというデバイスだ。音声登録は,所定のテキストを15分間(長い)読むことで行われる。いったん登録さえしてしまえば,用意されているコンテンツを保護者の声で読み上げることができる。
こういうのができると「もしお母さんが亡くなっても,声を聴くことができる」みたいな用途も考えられるので,両親ともにやっとけみたいな時代になるのだろうか。
月開発に使われる玩具
「SORA-Q」は,冗談みたいな話だが,タカラとJAXA,同志社大学による小型月探索ロボットの開発プロジェクトだ。
JAXAが計画する月探索では,従来のような着陸しやすい場所を選んで探査機を下ろすのではなく,調べたいところにピンポイントで探査機を送り込む高精度なミッションが予定されている。この場合,探査機は小さければ小さいほどよい。展示されていたプロトタイプは,握りこぶしより小さいくらいのものとなっており,球状のものから変形して探査機となる。このたび,このプロトタイプの市販が決まって会場で初公開されていたわけだ。
そば打ち名人復活
タカラトミーアーツの「そば打ち名人」は,以前からあったと思ったが,2014年に発売されていたものを2022年にリバイバル発売することになったのだそうだ。当初は中高年向けの大人の趣味的な玩具だったのだが,昨今の世情ではインドアでできる娯楽の需要が増えてきたので,今回は子供向けに発売していくとのこと。なお,商品自体はまったく同じものだ。
蕎麦というと,水回しやらなんやら結構難しいものというイメージもあるのだが,このセットを使うと,とりあえず失敗なく美味しい蕎麦が作れるということで以前も好評だったのだそうだ。
流しそうめんは二極化?
タカラトミーアーツの流しそうめんというと,年々巨大化を繰り返している小林幸子さん的(例えが古い)な定番商品なのだが,こちらは2021年に発売されたミニマル版の流しそうめん機で,どんぶり1個分しかない。まさに最低限の流しそうめん機だ。今年は昨年発表されていた白黒に加えて,新色のベージュ版が追加されている。
大型のものもあり,別売りパーツを使うことで大きな流しそうめん機を構築することもできるとのこと。うーむ。
寿司を作る玩具
メインは写真奥側のものだが,手前は昨年発売された「超ニギニギ おうちで回転寿司BASIC」,奥側が今年の「クルクルのりまき工場」だ。まず,超ニギニギから説明しよう。
握り寿司が作れると言われてもピンとこないかもしれないが,シャリ玉を作るシャリスポーンで適度な具合のシャリ玉を作ることができる。あとは切り身を載せるだけみたいだが。実質,回転寿司のレーンのほうが本体である。拡張パーツで自在なレーンを構築できるそうだ。
今年の新製品であるのりまき工場は,海苔巻きを自動で作れるという玩具だ。別途容器で作ったシャリを台車に載せて,コースを走らせると海苔巻きができる。ちなみに,海苔巻きというと,いわゆる巻き寿司を想像する人が大半だと思うが(実際そういう意味だし),ここでいう「のりまき」とは,軍艦巻きのことのようだ。レーンに従ってシャリを載せた台車が進行していくと自動で海苔が巻かれ,上にネタがトッピングされる。最後はゲタの上に自動で移して完成だ。
大人目線で言うと,海苔ローダーに海苔をセットして,トッピングを専用容器に入れておくといった前処理をするくらいなら自前で海苔を巻いてネタを載せたほうが早いのだが,こういった動作を自動でやってくれるというところがポイントなのであろう。あくまで子供用の玩具なのである。
「クルクルのりまき工場」は,海苔を自動で巻き付けるギミックなどが評価されて今年の日本おもちゃ大賞のコミュニケーショントイ部門を受賞している。確かにシャリの回転数や移動速度などをうまく調整して巻き付けており,それ自体はよいデキなのだが,若干,最初のゴール設定が低すぎはしないかと思ってしまう。偏心カムとかを駆使するとかで(知らんけど),小判型に巻き付けてこそ本物かもしれない。変な海苔巻きに日和ってしまっているのが,個人的には残念だった。
KUMONの学習用ロボット
こちらはKUMONの学習用ロボット「Tale-Bot」だ。専用マップに載せると,自動的に学習コンテンツを実行するほか,上面のボタンを使うことで,前進や方向転換などの動作をプログラミングできる。
アタッチメントでペンを取り付けると,プロッターのように絵を描くこともできる。音声は8か国語対応だ。
転がす新感覚入力デバイス
タッチスクリーン上で転がすことで入力を行う「デジコロ」は,2020年に発売されたデバイスだそうだ。専用コンテンツで使用すると,コンテンツにもよるのだが,説明しにくい挙動を示す。たとえば転がした方向に線が引かれるのだが,線というよりは道や階段になっていて,そこを人が歩いたりする。またそれが操作とともに別のものとなって変化していくといった具合だ。子供はそういったものを見て,自分でストーリーを作り出していくのだという。
分かりやすいものもある。たとえば時計回りに転がすと動画がコマ送りで再生され,反時計回りだと逆再生されるようなコンテンツがある。これは画面上を指でなぞって再生しても同じことなのだろうが,デジコロを使うと感覚的な部分で別の楽しさがある。幼児向けにはそういったインタフェースのほうが適しているのだろう。
地面に果てしなく広がったゴミを,デジコロを転がすことで消していく,塊魂みたいなアプリも分かりやすいものの例だ。
触感的に面白く,インタラクティブな遊びができるインタフェースとしてはユニークな位置づけなのだが,現状ではiPadのみの対応だそうだ。1歳から使えるインタフェースとして作られたそうだが,そういった幼児向けなら投げる,水に浸けるといったアクシデントは想定しておくべきだろう。米Amazonと提携してキャンペーンなどもやっているとのことだが,それであれば遥かに安い(破損時の経済的ダメージの低い)Fire HDなどに対応したほうがよかったのではないだろうか。幼児用玩具としてはiPadはやや高価だと思うのだが。
STEAM VR?
どう見てもスマホVRゴーグル使用なのに「STEAM VR」と書かれていてなんだろうと思ってしまったこちらは,アメリカ産のXR利用学習コンテンツだ。ATLAS,SCIENCE LAB,UNIVERSEの3つのシリーズが展示されていたが(写真は英語版だが発売されるのは当然日本語版だ),スマホ用VRゴーグルとリングバインダー式の教材書籍のセットである。そのまま読むこともできるが,スマホの専用アプリを使って(ほぼカメラ状態)テキストを見ると,特定の部分でXRコンテンツが起動する。画面の中央に一定時間置いておくと起動するといった感じで,図鑑の絵が動きだしたり,VRコンテンツを起動したりするのだ。最初からスマホ用のハイパーテキストコンテンツにしておけばいいんじゃないかという気がしないでもないが,紙のテキストがあるということも重要なのであろう。
当面は各セット販売のみのようだが,アメリカやカナダではVRヘッドセットを抜いたテキスト部分だけの販売も行われているとのことで,日本でも追々単独販売される模様である。
やや気になるのはVRコンテンツで対象年齢が8〜12歳となっていることだが,VRコンテンツを見てみると立体感はなく,いわゆる360度の平面視映像となっているようだ。両眼視差はないので,深度の誤解もなくて安全ということなのだろう。
ちなみに,STEAM VRというのは,STEM教育のSTEM(Science,Technology,Engineering,Mathmatics)にArtを加えたSTEAM教育をVRでできるものという意味でValveとはまったく関係がなかった。
キャラ絵のパンケーキが簡単(?)に作れる
こちらはキャラクターモノのパンケーキが簡単に作れるというテンヨーの「パンケーキアーティスト」の作例だ。ディズニーキャラが使えるバージョンと通常バージョンがあるが,付いてくる下絵が違うだけだと思われる。
どのようにしてキャラを焼き付けるのかというと……,羽を開いたような感じの左側の部分の片方に下絵を置くと,右側のプラスチック板に下絵が映り込んでいるので,よさげな位置にフライパンを置いて,映り込んだ線をパンケーキミックスの線でなぞる……のだ。それを90秒焼いた上からパンケーキミックスを入れてあとは普通に焼く。すると線のところだけ色が濃くなるというわけだ。
うーん,ちょっと高難度というか手間がかかる。その代わり,下絵さえ用意すればどんな絵でも比較的簡単に描くことができる。穴の開いたシリコン製のテンプレートを線画ごと焼いたりできないものかとも考えたが,焼いたあとで型を取り除くときに崩れそうではある……。しかたないのだろうか。
プレミアムバンダイから発売予定のシンウルトラマンのベーターカプセル |
バンダイブースに展示されていたウルトラマンでできたウルトラマン。カラータイマー付きだった |