「Niantic Lightship ARDK」の説明会が開催に。3つの機能や具体的な活用事例,サポート体制を紹介

 Nianticは2021年11月9日,AR開発キット「Niantic Lightship AR Developer Kit」(以下,Lightship ARDK)のオンライン説明会を開催した。
 Lightship ARDKは,同日にリリースされたAR開発者向けプラットフォーム「Niantic Lightship Platform」のAR開発ツール第1弾で,説明会ではそのコアとなる3つの機能やそれらを使った具体的な事例などが紹介された。

 Lightship Platformは,Nianticが社内で培ってきたAR開発技術をパッケージにして,AR開発者に広く公開するもの。同社の「INGRESS」や「ポケモンGO」,「Pikmin Bloom」などのARゲームはすべてLightship Platform上で動作している。

 プレゼンを行ったNiantic CPO 河合敬一氏によると,今回Lightship Platformを公開したのは,同社の掲げる「Nianticは,人々が仲間とともに世界を探索するお手伝いをします」というミッションにつながると考えているからだという。これまではNianticはユーザーにゲーム体験を直接届けてきたが,今後は同社のミッションに共感する多くの開発者と一緒に,ARを使ったゲームやアプリを実現したいとのこと。

 現在Nianticが描いているビジョンは,「リアルワールド メタバース」である。河合氏はメタバースの一般的なイメージについて,「どちらかと言うと“今いる場所”ではなく,代わりに“新しい世界”を作ってその中で幸せになろう,楽しく過ごそうというトーンで捉えられている」と表現。
 しかし同社では,「“ここではないどこか”ではなく,“今ここにある場所を,いかに豊かにするか”という方向に技術を使いたい」と考え,リアルワールド メタバースを掲げたという。

 河合氏は,Nianticでは次のプラットフォームへのシフトが始まりつつあると捉えていることを明かし,「次が“ここではないどこか”に向かうのか,それとも“今ここにある場所を,いかに豊かにするか”に向かうのかは,私達や皆さんの選択次第」「できれば私達に共感してくださる開発者の皆さんと一緒に,“この場所を豊かにする”ためのARの世の中にしていきたいと考え,Lightship Platformを公開しました」と語った。

「Niantic Lightship ARDK」の説明会が開催に。3つの機能や具体的な活用事例,サポート体制を紹介

 続いてLightship Platform用のARゲーム・アプリ開発キットである,Lightship ARDKの紹介がなされた。この開発キットは,Nianticが培ってきたAR開発技術を大きく3つの機能に集約したもので,Unity上で動作する。なおLightship ARDKで開発したゲームやアプリは,特別な手順を踏まなくともiOSとAndroidの双方で動作するそうだ。

 具体的な機能としては,まず「MAPPING」が紹介された。この機能は,Nianticのさまざまな技術を駆使して,スマートフォンのカメラに映った世界の奥行きやどんな部屋なのかといった現実世界の状況を,自動的に3次元のマップで再現するというもの(リアルタイム・メッシング)。

 また「UNDERSTANDING」は,周囲に何があるのか環境を理解する(セマンティック・セグメンテーション)ことによりで,テーブルの上にジャンプしたり,木の陰に隠れたりといった行動をキャラクターに取らせることを可能にする機能だ。

 そして「SHARING」は,現実世界を再現したマップと理解した環境を複数のユーザーが同時に共有できる機能である。この機能は,例えば同じキャラクターを,1人が正面から,もう1人が横から見ることや,あるいはカメラが動いたら,そのキャラクターとの位置関係を自動的に補正するといったことを実現する。現状は,最大5台のスマホで同じ環境を共有できるとのこと。なお河合氏によると「見ると当たり前だが,実現しようとすると難しい技術」だそうである。

「Niantic Lightship ARDK」の説明会が開催に。3つの機能や具体的な活用事例,サポート体制を紹介

 Lightship ARDKを採用した3つの事例も紹介された。最初に紹介されたのはソフトバンクのコンテンツ配信サービス「5G LAB」内の「AR SQUARE」で,ソフトバンク サービス企業本部 コンテンツ推進統括部 プロダクト開発部 坂口卓也氏は,「今後Lightship ARDKを採用することで,これまでになかった高度なAR体験を提供していきたい」と話していた。

坂口卓也氏
山崎春貴氏

 またLIFULLが開発中のAndroid向けアプリ「空飛ぶホームズくん」は,地図データから生成された3Dの街にある物件のバーチャル内見をシームレスに実現するというもの。LIFULL クリエイティブ本部未来デザイン推進室リサーチ&デザイングループ 山崎春貴氏は,「Lightship ARDKの新機能をいち早く採用することで,『空飛ぶホームズくん』や不動産・住宅情報サイト『LIFUL HOME'S』のアプリ体験を部屋の外に持ち出し,実際の街歩きに活用できるようにしたい」と意気込みを見せた。

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稲生晋之氏
 集英社では,同社の多彩なIPを活用したXRコンテンツの開発に取り組んでいるとのこと。この説明会では,「ワンピース」のチョッパーがテーブルなどの障害物を避けて走り回ったり,サニー号が空を飛んだりするデモアプリの映像や,それらの状況を複数のユーザーがスマホで確認する姿を収録した映像が公開された。集英社 XRチーム プロジェクトリーダー 稲生晋之氏は,今回開発したのデモアプリにLightship ARDKのすべての機能を盛り込んだとし,「今後もより豊かで,より進化を遂げるARサービスを実現したい」と話していた。

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「Niantic Lightship ARDK」の説明会が開催に。3つの機能や具体的な活用事例,サポート体制を紹介

 またLightship Platformの公開とLightship ARDKの提供に合わせ,サポート体制も整えたとのこと。具体的にはまずデベロッパポータルを一新し,デベロッパコミュニティを用意した。今後も開発者の声をもとに,プラットフォームとして展開していくとのこと。
 加えて,コーポレートベンチャーキャピタルとして「Niantic Ventures」を設立し,日本のスタートアップ企業を含むアーリーステージの企業への支援をすることもアナウンスされた。

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現在Nianticが開発している「ビジュアル・ポジショニング・システム」(VPS)も紹介に。この機能を使うと,例えばユーザーがARアプリを介して特定の場所に木を植えると,後日その場所に来たほかのユーザーにもその木が見えるようになる
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