Slackを導入したゲーム企業の事例を紹介。「業界特化事例紹介セッション ゲーム・エンタメ業界編」をレポート

 Slack Japanは2021年8月3日,オンラインセミナー「業界特化事例紹介セッション ゲーム・エンタメ業界編」を開催した。このセミナーでは,同社のビジネス向けメッセージプラットフォーム「Slack」を導入し,ゲーム開発などの業務に活用している企業の事例が紹介された。本稿では,ワンダープラネットおよびサイバードの事例紹介をレポートする。

セミナーの冒頭では,Slackが単なるチャットツールではなく,社内外のチームコミュニケーションをサポートするツールであることや,メールなど業務に使う主要な外部サービス・アプリを一元管理できることなどが改めて紹介された
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アマゾンウェブサービス(AWS)が提供する「Amazon EventBridge」および「AWS Chatbot」をSlackと連携させれば,さまざまな形でゲームの運用に応用できることも紹介された
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ワンダープラネット:Slack導入からEnterprise Grid導入までの変遷と活用事例


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 ワンダープラネットのSlack導入事例は,同社 執行役員 開 哲一氏によって紹介された。開氏によると,同社では2012年の創業時からチャットツールを全社的に利用しており,職種に関係なくチャットを使う社内文化が根付いていたという。2016年にはそれまで使っていたチャットツールからSlackへ移行したが,理由は「そのチャットツールが不安定だった」「エンジニア目線で,Slackは外部サービス連携がやりやすい」「Slackは絵文字リアクションで気軽なコミュニケーションができる」の3点だったそうだ。

 当時のSlackは日本語に対応しておらず,社内では多少反発があったとのこと。しかし「移行のためのドキュメントを用意」「試用期間を設け,手厚くフォロー」「便利な使い方を啓蒙」といった準備や対策をしっかりやったところ,実際に使ったスタッフから好評だったという。

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 Slackを導入した結果,ワンダープラネットが目指すのは「とりあえずSlackを見ておけば,すべての情報が確認できる」状態である。それを実現するのが,GitHubやGoogleカレンダー,Zoomなどさまざまな外部サービスとSlackとの連携だ。

 そうした連携を活用して,社内ではSlack上に自社のゲームに対するSNS・掲示板の投稿やストアレビューなどを表示する「ユーザーの声チャンネル」を開設した。そうしたユーザーの反応を普段使っているSlackに常に表示することで嫌でも目に入るようになり,結果としてネガティブな意見にも真摯に向き合うことにつながったという。

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 その一方で,当初はあまり推奨できない形で使うスタッフも結構いたそうだ。例えば「プライベートチャンネルやダイレクトメッセージ(DM)の多用」「重要ではない内容なのに,@channelや@hereを使って広範囲に通知する」「深夜の時間帯や休みの人などに配慮して,意図的にメンションを外して通知が行かないようにする」といった使い方がそれである。
 そこでそれぞれを解決するべく,「可能な限りパブリックチャンネルでコミュニケーションを取り,プライベートチャンネルやDMの利用は限定する」「@channelや@hereなどは使い時を考えて,必要最低限にする」「通知がないと業務開始時に気づかないケースが生ずるので,メンションははいつでも付ける。通知は受け取る側で制御する,または最近実装された予約投稿機能を使う」といったルールやガイドラインが設けられていったとのこと。

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 またワンダープラネットでは,Slackコネクト実装以前から同社のワークスペースに外部スタッフをゲスト招待していたという。それによりメールによるやり取りがほぼなくなり,Slack上のやり取りだけでほとんどが完結するようになったとのこと。またやり取りのハードルが下がり,より密な対話が実現したそうだ。ただ,メールを見なくなった人も増えており,それはそれで問題になっていると開氏は語った。

 そんなワンダープラネットでは現在,Slackコネクトを積極的に活用している。この機能は,外部のワークスペースとチャンネルを共有できるというもの。社内スタッフも外部スタッフも,それぞれが普段使っているワークスペースでやり取りできるため,非常に便利だという。

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 2020年,ワンダープラネットはコロナ禍の影響により,週1日出社のリモートワーク中心の働き方に移行することとなった。それまでは物理的なオフィスが業務の中心にあり,Slackなどのツールがそれをサポートする形だったが,現在はオンライン空間がメインのオフィスとなり,物理オフィスはそれを補完する状態になったのである。

 そうした中,Slackは社内コミュニケーションの中心となった。しかしSlackの需要度や利用時間は増加したのは事実だが,以前から活用してきたこともあり,利用方法に劇的な変化はなかったそうだ。

リモートワーク中のコミュニケーションを活性化するSlackの活用方法も紹介された
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 そして2020年末,ワンダープラネットはSlackのEnterprise Gridプランを導入した。このプランは,複数のワークスペースをオーガナイゼーションの枠組みの中で一元管理できるという特徴を持つ。
 Enterprise Gridの導入のきっかけはIDプロバイダとしてOktaを採用したこと。そのときに,「1つの大きなワークスペースでの運用がごちゃごちゃしてきた」「スタジオ・部署の独立性を意識しており,それをSlackにも反映させたかった」という理由から,Slackのプラン昇格を検討したという。
 導入にあたっては,全体として守るべきところはオーガナイゼーションレベルで守り,それ以外は各ワークスペースで独自運用を促す方針を立て,Slack Japanのスタッフと密に連携しながら設計を進めていったそうだ。

 Enterprise Gridを導入するケースの一般的なモチベーションは,開氏によると「社内に乱立したワークスペースをオーガナイゼーションで一元管理したい」というものが多いという。しかしワンダープラネットの場合は,「1つのワークスペースを適度なサイズに分解したい」というものだった。

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 そのため目指す形を実現するためには,「元のワークスペースをオーガナイゼーションに追加」「分割先ワークスペースをオーガナイゼーション内に作成」「チャンネルやユーザーを各ワークスペースに割り振る」「チャンネル移動時に切れたアプリ連携やユーザーグループを再設定」という4つの段階を踏むことになった。この中で一番大変だったのは,元のワークスペースにあった膨大なチャンネルを1つ1つ新しいワークスペースに振り分けていく作業だったとのこと。

 またワンダープラネットでは,スタッフ全員が自身の所属している部署のワークスペースだけでなく,社内の全ワークスペースに登録されているという。そのため,普段は自身の部署のワークスペースに滞在しているが,興味があればほかの部署のワークスペースと情報共有することも可能という,オープンな環境になっているそうだ。
 
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サイバード:Slackが導く新しいワークスタイルへの挑戦


 サイバードのSlack導入事例は,同社 Voice UI部 部長・総合プロデューサー 根岸秀樹氏によって紹介された。根岸氏によると,コロナ禍が発生する前までの同社はほかの多くの会社と同じく,物理的なオフィスにスタッフが集合して業務を行っていたという。社内でのコミュニケーションはチャットツールが中心で,プロジェクトごとにチャットルームを作っていたとのこと。
 しかし,そのチャットツールを初め,グループウェアやメールなど業務に使うツールはそれぞれ個別に運用されており,統合されてはいなかった。

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 サイバードでは,コロナ禍の影響により2020年2月中旬より時差出勤及び一部在宅勤務を,3月末に全社員の原則在宅勤務を開始した。同時に,それまでと同様に業務を行えるよう対策タスクフォースを発足し,5月には全社的なリモートワークの継続を公表した。

 Slackの導入は,全社的なリモートワークの移行を成功させるための手段だったとのこと。すなわち,コロナ禍という不可逆な環境変化の中で,対面効果が喪失したり,業務が非効率化したりといったリスクへの対策を取るうえで,社内ツールの見直しをした結果,Slackが候補に挙がったというわけである。

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 リモートワークに移行した直後は,旧来の環境を利用するためにはVPN接続が必要となり,随時アカウントやパスワードの入力を求められるなど,非効率な状況が発生したという。

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 そこでSlackをビジネスOSとして社内ツールの中核に据え,能動的コミュニケーションとメッセージポータル,ツールの統合による効率化を担わせることを考えたそうだ。目指すところは,ワンダープラネットと同じく「Slackを見ておけば,すべての情報を確認できる」状態だったとのことで,根岸氏は「能動力が発揮できる環境」と表現していた。

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 Slackの導入にあたっては,コミュニケーション全般に関するタスクフォースを発足した。具体的には,クローズドテストにて実際に業務で使うことを想定した本気のチャンネル構成を試み,経営陣・バックオフィスからのメッセージや事業部門からの全社に向けた発信といった公式チャンネル,各プロジェクトのグループチャットやRSSによる自動情報収集,雑談といった任意参加のチャンネルなどを設定していった。
 また能動的コミュニケーションが活発になるよう,パブリックチャンネルでは,誰もが参画したり質問したりできるようにするなどの仕掛けを施していたという。

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各部署への問い合わせなどのワークフローもオープンにすることで,業務の効率化を図った
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 社内でSlackのクローズドテストがスタートしたのは,2020年9月。並行して全社的なコンセンサスを取り,部門ごとに10月には正式版を稼働し,順次アカウントを配布していった。続く11月から旧環境からの移行を進め,2021年3月には完全にSlackを中心とした新環境に移行したという。根岸氏によると,新環境への移行には強い意思を持って臨む必要があったそうだ。
 新環境への移行にあたっては,社内から「今の環境で十分」「いろんなことができすぎて,職種によってはとっつきにくい」「慣れ親しんだ環境から移るのは厳しい」などの意見もあったとのこと。それらの意見をほぐして移行を進めるのは大変だったそうだが,根岸氏は「良いものは結果的に定着する」と実感していると語った。

 Slackの社内運用開始以降,アクティブユーザーや1日あたりの利用時間は定着した状態にある。またSlackコネクトの利用により,外部スタッフとの連携も効率的に行えているそうだ。
 一方,スタッフ各自のコミュケーションの得手不得手,偶然性の少なさ,日々増えていくチャンネル管理,ストックされた情報の検索方法といった課題もがあることも示された。

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Slackに統合された外部アプリや,オープンにしたワークフローも活用されている
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業務と直接関係ないコミュニケーションも活発に。そこから業務に活かせるアイデアが出てくることも
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 最後に根岸氏は,「ツールは手段であり,それを使った業務の成否は“人”に依存する」とし,「ビジネスOSとしてSlackを活用し,業務をアップデートすればツールも組織も進化していく」とまとめていた。

新規事業や外部とのプロジェクトにおける即断即決などにも役立っているとのこと
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