Apple,独占禁止法調査に対し制御されたエコシステムを擁護

委託調査では,デジタルマーケットプレイスが「繁栄するためにはガバナンスが必要」としており,30%カットは標準的だと改めて強調している。

 Appleは,そのApp Storeのエコシステムに関する苦情に答えて, そのルールやポリシーが他のデジタルマーケットプレイスのものと一致することを強調している。

 iPhoneメーカーは,そのプラットフォームを比較するだけでなく,ライバルのアプリストアとだけでなく,物理的な製品を販売し,さらにはレンガとモルタルの小売チェーンをリードするオンラインマーケットプレイスと比較するために,分析グループによる調査を委託した。

 この報告書は,欧州委員会がApp Storeのルールに関する独占禁止法調査を開始したと発表したことを受けたものだ(参考URL)。

 主な懸念事項としては,デベロッパがダウンロード,販売,購読,アプリ内購入を処理できるのはAppleのストアのみであること,App Store以外で運営されている代替決済オプションを宣伝することが制限されていること,販売,アプリ内購入,購読のすべてに対してAppleが取るシェアが30%であることなどが挙げられる。

 Analysis Groupのレポートは主に後者に焦点を当てており(参考URL),「Apple's App Store and Other Digital Marketplaces. A Comparison of Commission Rates」と題されている。

 しかし,「Digital marketplaces need rules and governance to thrive」と題されたセクションでは,Appleがデベロッパに課している制限は,一般的なものであるだけでなく,必要不可欠なものであると分析グループは主張している。

 「買い手と売り手がプラットフォーム上で快適に取引できるようにするためには,信頼と誠実さが中心となるため,デジタルマーケットプレイスはしばしば,そのような環境を促進するために共通のルールと執行戦略を採用しています」と報告書には書かれている。

 「適切な取り締まりとガバナンスの欠如は,そのような信頼と完全性を損ない,成功しないプラットフォームにつながる可能性があります」

 この研究では,1983年のビデオゲーム市場の大暴落を引き合いに出しているが,その原因の一部は,信頼性の低い低品質のゲームが豊富にあったことにある。任天堂は,認可されていないゲームを追放するルールやポリシーを実施することで,市場を復活させたと評価されている。

 「デジタルマーケットプレイスはしばしば,顧客がそのサービスにタダ乗りすることを防ぐためのルールに頼らざるを得ず,プラットフォームが顧客を繋いだあとに料金を回避することができません」

 同グループは,他のアプリストアやオンラインマーケットプレイスで実施されているポリシーやルールをレビューした結果,「デジタルマーケットプレイスでは,料金回避を目的とした行動を日常的に禁止して」いることが明らかになったと付け加えている。

 また,他のほとんどのアプリストアでは,デベロッパがアプリユーザーに自社のマーケットプレイス以外での購入を指示しないように要求していると主張している。

 報告書の大部分は,Appleの手数料率を擁護するために捧げられた。現状では, Appleはすべての有料アプリの売上高とアプリ内の購入の30%を受け取り,さらに最初の1年間のサブスクリプション料の30%をデベロッパに請求し,その後これを85%に引き下げている。

 調査では,App Storeの30%カットは,「他の多くのアプリストアやデジタルコンテンツマーケットプレイスが請求する手数料率と同様の大きさであることが分かりました」としている。

 同グループは,Google Play Store,Amazon Appstore,Samsung Galaxy Store,Microsoft Storeなど,具体的な例を挙げて37のストアを調査したが,これらのストアも同様に30%を請求している。同様に,Xbox,PlayStation,任天堂のデジタルマーケットプレイスもすべて収益の30%を取っている。

 Steamは,売上が1000万ポンド(約13億5000万円)以下のゲームであれば30%を取り,1000万ポンドで25%に下がり,5000万ドルを超えると20%になる。Epic Games Storeは売上の12%しか取らない。

 この調査では,App Storeのようなデジタルマーケットプレイスと比較すると,製品販売者が一般的にブリック&モルタルの小売店を通じた場合同じアイテムの収益シェアが低くなることが追加されている。

 具体的にビデオゲームに目を向けると,小売マージンとホールセールマージンに加えて,家庭用ゲーム機のロイヤリティフィーやその他の流通コストが各売上高の55%を占めており,残り45%がパブリッシャとデベロッパの間で分配される。

 また,デベロッパは,ゲーム内広告など,App Store以外の手段でも収益を得ることができると指摘している。また,米国のスタジオは,App Storeでの課金よりも広告のほうが多くの収益を上げていると報告している。

 先日GamesIndustry.bizに寄稿した法律事務所Beiten BurkhardtのAndreas Lober博士は,欧州委員会の調査の意味と,それがモバイルゲームデベロッパのための30%カットの終了にどのようにつながるかについて論じている(関連記事)。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら