チーフスタジオオフィサーのLaura Miele氏が，プラットフォームの壁を取り払い，ゲームをより包括的する方法，そしてCOVID-19について語る。

　先週のPlayStation 5の素晴らしい発表会（関連英文記事）で1つ欠けていたことがあるとすれば，それは価格以外にも，大手サードパーティのパブリッシャの存在だった。

　Take-Twoはあったが，Electronic Arts，Ubisoft，Activisionはまったく存在しなかった。彼らに期待できるものは大まかに分かっているが，彼らのゲームが新しいプラットフォームに投資する最大の理由の1つになるのは必然である。

　昨夜（※6月19日），EAは我々に将来のための計画を示した。EA Originalsの驚くべきタイトルがいくつかあり，Skateがカムバックしていたが，だいたいにおいてスポーツ，シューティング，RPG，スター・ウォーズといったEAに期待されるものが揃っていたといえるだろう。しかし，それ以外にも多くのことが行われていた。プレゼンテーション全体を通して，EAでは新型機だけでなく，サブスクリプションやストリーミングが重要な存在感を持ち，Loot Boxが影を潜め，プラットフォーム間のクロスプレイが当たり前の世界を考えていることを示していた。

「ゲームプレイ，プラットフォームの拡大，開発戦略についての考え方を進化させる絶好の機会です」

　「この世代交代は，エンターテインメントやメディア全般にとって重要な時期に来ています」とEAのチーフスタジオオフィサーであるLaura Miele氏がGamesIndustry.bizに語っている。「新しいテクノロジーには常に変化があり，ゲームプレイやプラットフォームの拡大，開発戦略についての考え方を進化させる絶好の機会です」

　「プレイヤーの皆様には，当社のゲームを好きな場所でプレイしていただきたいと考えており，Stadia，Steam，Switch，Epic Game Storeなど，より多くのプラットフォームでより多くのゲームをプレイしていただくようにしています。また，クロスプレイにも力を入れています。ゲームをプレイするうえでの基本的な動機は，別の家庭用ゲーム機やプラットフォームでプレイすることを選択した友人や家族とつながることだと考えているからです。我々が事業を展開しているエコシステムは良い方向に変化しており，プレイヤーがいる場所ならどこにでもいるようにしたいと考えています」

　彼女は続ける。「我々の業界で見てきた大きな変化は，ハードウェアはもはやプレイヤーコミュニティ内の障壁ではなく，我々も同じように考えているということです」

　もちろん，新しい家庭用ゲーム機は通常の技術的な進歩をもたらす。PlayStation 5とXbox Series Xでは，プレイヤーがゲームに没頭できるスピードが向上しているとMiele氏は語る。「数秒でピッチの上やファンタジーの世界に没頭できます」と氏は語り，また，3Dオーディオがスポーツタイトルに与える影響，DICEがBattlefieldの戦闘を実現できる規模，そしてCriterionがNeed for Speedで実現する物理演算についても語っている。

EA studiosのボスLaura Miele氏

　しかし，重要なのは，必ずしも新しい家庭用ゲーム機でゲームがどのように見えるかではなく，どのように感じるかだとMiele氏は語る。

　「歴史的に家庭用ゲーム機の移行は，グラフィックスの忠実度の向上によって行われていましたが，それは今も変わっていません。 ― この次世代ゲームは，確かにビジュアル面で飛躍的な進歩を遂げていますが，我々は余分なメモリとCPUサイクルを活用して，より多くのディテールを実現しようとしています」

　「たとえば，Maddenでは，NFLの次世代統計情報を使用して，ゲーム内のすべてのアスリートがリアルタイムでデータを更新しながら，実際の生活の中でどのようにプレイするかを確認します。スタジアムにいるファンは，フィールド上のアクションに反応するユニークな人々になります。ディファードレンダリングにより，色やライトをよりダイナミックな方法で使用できます……そしてダイナミックな天候システムは，アスリート，その用具，そしてフィールドに影響を与えます。ゲームは今までとは違い，より良く，より直感的に感じられるようになるでしょう」

　もちろん，ゲームを「どのように感じるか」に基づいてプロモーションするには，実際にゲームをプレイする必要がある。
YouTubeの動画で人に見せることができるものは限られている。現在の世界的なパンデミックによりゲームイベントが中止され，小売店のデモ機が稼動していない中，EAはこれらの新しいマシンの利点を販売するのは難しいと予想しているのだろうか？　

　「私は実際にはそうは思っていません」とMiele氏は語る。「最初のデモで，瞬時のロード時間と巨大なワールドを体験したとき，これがプレイヤーの期待値に新たなバーを設定することになるとすぐに感じました。この世代の技術がどれほどアクセスしやすく，没入感のあるものであるかをプレイヤーが目の当たりにしたら，もう後戻りはできないでしょう」

「Star Wars Squadronsの最後の3分の1の楽器のスコアを一度に1つずつ収録しました（パンデミックのため）」

　COVID-19のパンデミックによって引き起こされた課題に対処する業界の能力に対するMiele氏の自信は，EAのチームを在宅勤務に移行させた彼女の経験に影響されているのかもしれない。

　「何よりもまず第一に，我々は社員の安全と健康に焦点を当て，社員が可能な限り快適に在宅勤務できるようにするために必要なものを確保することに注力していました。4か月前に，全世界の従業員を在宅勤務に移行させることができるかと言われたら，私は不可能で，その計画には1年かかると言っていたでしょう。実際には数日のうちに全員を自宅に帰して稼働させることができましたが，チームが成し遂げたことには驚かされました」

　「我々は2つのタイトル（Burnout SwitchとCommand and Conquer Remastered）をリリースし，Apex LegendsとThe Sims 4の大規模な拡張版をリリースし，ライブサービスを維持していました。また，今年後半にお目見えするであろうゲームのいくつかについても，多くの創造的なソリューションを発見しました。たとえば，当社のオーディオ チームは，Madden 21 の声優を自宅で，品質を落とさずに録音する方法を考え出したのです。さらに，Star Wars Squadronsのスコアの最後の3分の1を1つずつ楽器で録音し，ポストプロダクションで実際にミックスしました」

Rocket ArenaはEA Playで明らかになったEAオリジナルゲーム3本のうちの1本だ

　昨日EAが発表した内容の多くは，同社が通常出しているものに沿ったものだが，新しいものもいくつかあった。EA Motiveは新しいIPを制作中で，Rocket Arena，It Takes Two，Lost In Randomの3つのインディーズゲームを発表した。

　これらはすべて，同社がまったく流行に頼っていなかったということを示すものであり，過去にはこの点においてEAが批判されていた部分でもある。昨年，EAはAnthemをリリースしたが，これはDestinyに相当するEAのタイトルと言われており，Fortniteに対するEAの回答であるApex Legendsと並んでいる。どちらも現在業界を席巻しているライブサービスタイトルであり，EAはこの分野に大きく傾いている。しかし，2019年末にEAはWars Jedi: Fallen Orderをリリースした。シングルプレイヤーのストーリー主導型アドベンチャーだ。市場のトレンドに逆行するだけでなく，4か月で1000万本以上を売り上げた。

　「まったく驚きませんでした」とMiele氏は語る。「我々はRespawnがクラス最高のスター・ウォーズ体験を提供できると確信していました。プレイヤーもそれに同意してくれています。スター・ウォーズは豊かな宇宙であり，記憶に残るキャラクター，多様な世界，忘れられないストーリーを持つゲームを作るための肥沃な大地です。これに才能ある開発チームが加わることで，素晴らしいゲームが生まれるのです」

「Star Wars Squadronsは，市場調査から生まれたものではなく，我々のロードマップにはありませんでした」

　「Star Wars Squadronsは，開発チームの情熱に従ったことを示す好例です。このゲームは市場調査から生まれたものではなく，ロードマップにはありませんでしたが，Motiveチームはこのコンセプトに本当に感銘を受けていました。トレイラーを公開して以来，ファンの皆様にもご満足いただけたようです」

　ファンの声に耳を傾けることも大切だとMiele氏は語る。昨日明らかになったことの1つに，Skateシリーズが復活するというニュースがあった。前作のSkateは2010年にリリースされたが，この10年間でスケートボードというジャンルはほとんど姿を消してしまった。しかし，最後のSkateゲームであるSkate 3は，著名なYouTuberの数のおかげで2014年に少しカムバックした。このフランチャイズは，最新のTony Hawksのゲームが明らかになったことでも，Twitter上でSkate 4がトレンドになったという点で，声高にカルト的な支持を集めている。

　「スタジオの責任者として就任して最初の100日間に行ったことの1つは，最大のフランチャイズのコミュニティリーダーと一緒に時間を過ごすことでした」とMiele氏は語る。「私は彼らに率直に尋ねました。最大のテーマは，我々が求めているコンテンツについて話を聞いてほしいというものでした。それほど複雑なことではありません」

　「Plants Vs Zombies Founder's Program で行ったように，ゲームを発売する前にプレイヤーの前に出すことで，我々はゲームプレイに磨きをかけることができ，プレイヤーは最終的な製品を形作ることができます。我々はコミュニティと一緒にCommand & Conquerのリマスターを開発し，ソースコードを公開しています。我々は，2年半にわたってStar Wars Battlefront IIの無料アップデートを作成し，ゲーム体験を向上させていました。そして，ファンが長い間求めていたスター・ウォーズのゲームプレイであるStar Wars Squadronsを発表したばかりです。そしてSkate 4はEA Playの最後に明らかにされたばかりで，これは過去10年間のファンからの要望の中で最も大きなものでした。我々は耳を傾けています」

Star Wars SquadronsにはLoot Boxが登場しない

　これは既存のファンやデベロッパに関わるだけのものではなく，新しいファンにアピールすることにも関係しているとMiele氏は語る。Miele氏は，より多くの人を受け入れ，より多くの人を歓迎するというEAのミッションについて何度も語っていた。同社は，デベロッパがより多様な製品を作成できるようにするためのガイドラインとツールのセットである Inclusion Frameworkを開発している。

　「我々は，すべての人のためにゲームを作りたいと考えており，ゲームやキャラクターは，我々がサービスを提供するコミュニティと同じくらい多様でなければならりません」と氏は語る。「それを可能にする方法の1つが， Inclusion Frameworkです。これは，我々の考え方に挑戦し，スタジオがゲーム全体でより包括的なキャラクターやストーリーを開発できるようにするために設計された一連のフィルタだ。その好例がFIFAです。チームはこのフレームワークを採用し，毎年ダイバーシティ評価を実施しています。これにより，FIFAチームは，Kim Hunterがユニークで真の本物のキャラクターであり，スポーツストーリーで初めてプレイ可能な女性ヒーローであることを確認することができました」

　「より多様性のあるチームは，より大きな創造性につながります。我々は今後も，採用，キャリア開発，企業文化，コミュニティ，そしてゲーム業界全体の変革を推進していきます」と述べている。

　Miele氏は正しいことを言っているが，EAのボスはこれまでにも正しいことを言っていたものの，FIFAやLoot Box，Anthemをめぐる論争によって，それが台なしになってしまったことがある。ゲーマーの間ではEAに対する強い意見があり，とくにポジティブな意見ではない。

　しかし昨日のEA Playでは，新しいSkateゲームの制作，Star Wars SquadronsでのLoot Boxの不在，Apex Legendsなどとのクロスプレイ，Steamに来る多数のタイトルなど，興味をそそられる展開があった。これらは，消費者が長い間EAに求めてきたものばかりだ。

　EAがプレイヤーに優しい展望を持って新世代に向かっているという証拠がここにある。それは今，インタビューの発言を証明するためのゲームを提供しなければならないのだ。