MojangはMinecraft Dungeonsでインディーズのルーツに回帰する

世界最大級のゲームを,誰もが楽しめるダンジョンクローラーにするために25人のチームが結成された。

 Minecraft Dungeonsのメーカーとチャットをしていると,数分後には世界で最も影響力のあるゲームデベロッパの1人と話していることを忘れてしまった。

 Minecraftは毎月1億人以上の人にプレイされている。世界中のあらゆる場所,あらゆるプラットフォームに存在するゲームであり,世界中の学校で子供たちの学習用にも使われている。Minecraftは,Microsoftで最大のゲーム IP であり,10 年以上もの間,関連性が高く人気のあるゲームであり続けている。しかし,それは元々インディーズゲームの1つでもあり,すべての主要なゲームパブリッシャが「次のMinecraftを見つける」ために多くのインディーズレーベルを立ち上げた原因ともなっている。

 しかしMojangはもはやインディーズではない。世界最大級の企業が所有するまっとうな規模のスタジオだが,Minecraft Dungeonsを開発した25人の開発チームには,インディーズの精神が生きているように見える。

 「全員ではありませんが,今でもそのような考えを持っている人は間違いなくたくさんいます。我々には,多くの他分野の才能を持った人たちがいるのです」と Minecraft Dungeons のゲームディレクターである Mans Olson 氏は語る。

ゲームディレクターのMans Olson氏
MojangはMinecraft Dungeonsでインディーズのルーツに回帰する
 アートディレクターのDaniel Bjorkefors氏は付け加える。「ときどき混乱します。私はアートディレクターですが,UIやデザインも全部やっていて,自分がアートディレクターなのかどうか分からなくなることもあります。みんなが引っ張り込んでいます。誰かがレベル全体を作ってアートディレクションすることもありました。私が触る必要はありませんでした。これは小さなチームだからこそできることなんです」

 Microsoft のシニアプロデューサー Nathan Rose 氏によると,Mojang の「インディーズ」要素は,親会社が維持し,保護したいと考えているものだそうだ。

 「私はレドモンドに拠点を置いているので,私の仕事の大部分は,彼らがインディーズのデベロッパとしての感性を維持できるようにし,より大きな会社の一部であることで生じる多くの負荷から彼らを保護することです」と氏は語る。「私はMicrosoftにゲームチームの一員として約8年間在籍し,Sunset OverdriveとWorld of Tanksに携わり,その後,約1年半前にこのチームに移籍しました。その前はディズニーで働いていました。このチームで自分の居場所を見つけたと感じているのは,こういった体験を構築することにこんなに情熱を注いでいるからです」

 Minecraft Dungeons は,このブランドの別の取り組みだ。ダンジョンクローラーであり,Co-op アクション アドベンチャーゲームであり,ブランドを他の分野にも拡大するという Mojang のミッションの一環となっている。昨年,ARゲームMinecraft Earthのアーリーアクセスを開始したことを受けてのことだ。

 「我々はしばらくの間,シリーズの中でもっと多くの Minecraft 体験を作りたかったのです」と Olson 氏は説明する。「ベースゲームである Minecraft の特徴は,その中でできることが非常に多岐にわたっているということです。サバイバル,クリエイティブ,さまざまな改造や遊び方がありますので,プレイヤーに新しい体験を与えるには,Minecraftでは得られないものを得るために,Minecraftの内容からかなり離れたところに行かなければならなかったのです」

Minecraft Dungeonsのコア開発チームは20人から25人の従業員で構成されている
MojangはMinecraft Dungeonsでインディーズのルーツに回帰する

 「我々は Minecraft の基盤となる2 つの柱(もっとたくさんありますが)に焦点を当てることにしました。つまり,冒険と探索です。チームとして,我々はダンジョンクローラーというジャンルにとても情熱を注いでいましたので,Minecraftと組み合わせる可能性を探りました。ダンジョンに入って宝を見つけたり,装備を整えたり,モブを見つけたりすることが多いので,自然にフィットすると思ったのです」

 「最初は,ニンテンドー3DS用に作りたいと思っていました。シングルプレイのプロジェクトだったのですが,試作を始めていくうちに,3DSだけで作る理由がないことに気付きました。また,マルチプレイでも楽しめそうだと思ったのです。そこで,マルチプレイヤーゲームにして,少し範囲を広げ,Switch,PlayStation 4,Xbox,Windowsをターゲットにしました」

 当初,Minecraft Dungeonsはゼルダのようなタイトルだったが,マルチプレイヤーに移行したことで,チームは他のゲームからインスピレーションを得たという。

「私の仕事の大部分は,彼らがインディーズのデベロッパとしての感性を維持できるように支援することです」-Nathan Rose 氏

 「Diablo,Torchlight,Gauntletなど,このジャンルの名作ゲームに注目しました」とOlson氏は語る。「また,Left 4 DeadやVermintideなど,現代の協力型の一人称視点シューティングゲームのをたくさん見て,どうすれば協力プレイをタイトにして面白くできるかを考えました」

 「しかし,明らかに主な(インスピレーションの)源はMinecraftそのものでしだ。ゲームに何かを導入するときはいつも,『Minecraftには何が存在するのか? 彼らはどうやってそれをやっているのか? それをそのままDungeonsにできないだろうか?』を考えます。それができれば,素晴らしいことです。しかし,ほとんどの場合,それができず,何らかの方法で適応させる必要がありました。ですから,Minecraft の中にあるものを少しずらして,同じように動作し,親しみやすく,Minecraft のように感じられ,実際にはDungeonsで動作する独自のものができるようにしているのです」

 Bjorkefors氏は続ける。「アートの観点から見ると,Minecraftの世界には,血が流れないとか,ゴア表現がないとか,そういうルールがいくつかあります。ですから,RPGのように見せる別の方法を見つけなければならなりませんでしたが,それが本当に成功したと思います」

 Olson 氏によると,開発期間中,"バニラ"な Minecraft チームとは密接な関係を保っていたという。Dungeonsは非常にジャンルの異なる作品とはいえ,同じ宇宙の一部であるように感じさせる必要があったからだ。

 「彼らとは日々関わっています」と氏は語る。「我々にとっては本当に重要なことなんです……。バニラ,Dungeons,Minecraft Earth に関連するものなど,さまざまなプロジェクトと毎週会っています。我々は,これらのゲームに何を入れるかについて意見を出し合っているのです。DungeonsやEarthに入るものは,バニラのMinecraftにも入れるべきだという考えです。ほとんどの場合,おそらくそうではないでしょうが,理論的にはMinecraftが何であるかの範囲内に収まるようにすべきだという考えです」

Minecraft Dungeonsは当初ゼルダのような3DS専用ゲームだったという
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 「重複している例がいくつかあります。派閥としてのIllagers,Dungeonsの悪の派閥は,Minecraftのデベロッパで現在はチーフクリエイティブオフィサーを務めるJens (Peder Bergensten)によってDungeonsの敵対派閥として作られました……。Pillagerのようにクロスボウを振り回すIllagerもいます。それらはDungeons用に開発されたものですが,バニラのMinecraftにも追加されました」

 Olson氏によると,他のプロジェクトと衝突したためにゲームに入らなかったものも "たくさんの例 "があるという ―そして場合によっては,Minecraftの宇宙で起こっている他の出来事と偶然にも,後から新しいアイデアが登場することもあるとのことだ。実際,チームはすでに数か月後,数年後もDungeonsに関連性を持たせる方法を考えている。このゲームが親タイトルのように永遠に生き続けることを目指しているのだろうか? 

アートディレクター,Daniel Bjorkefors氏
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 「Foreverは長い言葉です。たった7文字ですが 長い時間です」とOlson氏は語る。「我々は確かにそう願っています。今後もゲームの開発を続けていく予定です。2つのDLCが手に入ることも発表しました。その後,さらに多くのコンテンツを追加する予定です。しかし,これは明らかにプレイヤーの反応次第です」と氏は語る。

 Minecraft Dungeonsの開発は,世界的なパンデミックの真っ只中に完成を迎え,世界の多くがロックダウン状態にあるという異常な状況に包まれなければならなかった。その結果,4月の発売日から5月26日の発売日へと少し遅れてしまったが,チームはすぐに新しい現実に慣れたという。

 「予想以上にうまくいっています」とOlson氏は語る。「一部の人々は,より集中してより多くのことを成し遂げることができるので,単独でより良いパフォーマンスを発揮できます。しかし,彼らの1日はずっと長くなっています。慣れていない人は,最初の数週間は自分でコントロールできないと感じていました。しかし,今では3か月めに入っています」

 Olson氏は付け加えて「大きな課題は,明らかにローカルでの協力プレイのテストをどうするかということでした。すべての人が期間中ずっと閉じこもっているわけではありませんし,家の中に助けてくれる人がいることもあります。我々はオンラインでプレイする時間を少し増やしました」と語った。

「大きな課題は ローカルでの協力プレイのテストのようなものでした」 -Mans Olson氏

 他のMinecraftタイトルと同様に,DungeonsはXboxに特化したものではなく,プラットフォーム的にもユビキタスなものとなっている。このゲームは当初,任天堂の独占タイトルとして計画されていたので,Switch版がどのように動作するのかに多くの期待が寄せられているのは確かだ。確かに,ダンジョンクローラーは筋金入りのゲーマーにアピールする傾向があるが,これはそのハードな部分を和らげている。それにもかかわらず,PCゲームのコアなプレスからの初期の反応は大部分が熱狂的なものだった。

 Olson氏は「このゲームは,できるだけ複雑さと深みを残しつつも,親しみやすいものにしたいと考えていました」と語る。「ゲームパッドを誰かの手に渡せば,すぐに手に取ってプレイできるようにすることを目標にしています。驚くべきことに,これはほとんどうまくいっているようです。チュートリアルがなくても,ゲームパッドをプレイヤーの手に渡せば,すぐに手に取ってくれることが分かりました」

 「その多くは,Minecraftから来るデザインの決定に基づいているからです。Minecraftでは固有の能力はありませんし,キャラクタークラスもありません。我々は,自分が身につける装備で強さが変わるという考えを持っていましたが,それはDungeonsで顕著です。最初はほんの少しのギアでスタートし,基本的なゲームプレイをすが,ギアやアーティファクトを集めていくうちにプレイスタイルが変化していき,自然なペースでプレイすることができ,このゲームのためにとてもうまく機能していると思います」

 彼は続ける。「あまり期待しすぎないようにしたいものですから,人々が本当に気に入っているように見えたときには驚きました。祈っています。今のところ,反応はかなりポジティブです。β期間中にストリームを見ていましたが,素晴らしいものでした。人々がそれを使って何をしているのかを見るのは本当に楽しかいものでした。彼らは秘密を発見し,何度も何度も何度も繰り返し,β版で公開した限定的なコンテンツを考えると予想以上に時間を費やしていました」

 Rose氏は付け加える。「そして,我々はネガティブな部分を探していました。我々はゲームをより良くしたいと思っています。たくさんのフィードバックを受けていますが,1年以上前にゲームを公開して以来,否定的な意見は見たことがありません」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら