バイオハザード3からファイナルファンタジー7まで，まるで1999年であるかのようにプレイしているが，PlayStation時代のタイトルでこのような高額な予算をかけているタイトルはほかにはほとんどない。

　古いものはすべて新しい。

　世界中の何百万人もの人がそうであるように，この孤独な時期は，青春時代のゲームに耽溺するには絶好のタイミングである。今週はバイオハザード3（初版発売は，私が高校を卒業したばかりの1999年）に没頭しているが，ファイナルファンタジー7（初版発売は1997年，私が買った最初のゲーム機で最初に買ったゲームだ。― 私の両親は教育的価値のないコンピューティングデバイスに対して強硬な意見を持っていたのだ）の前には終わらないのではないかと心配している。

　もちろん，90年代後半の2つの巨大ゲームのリメイク版がまさにこの時期に出てきたのは偶然の産物だが，偶然ではないのは，PlayStation時代のゲームが今，これほどまでに商業的な関心を集めているという事実である。

ファイナルファンタジー7のリメイク版の開発は，現代のAAAタイトルと比べても決して安くつくものではない

　これらのゲームは，いくつかの要素の合流点に存在している。それはスクウェア・エニックスとカプコンが約束した高予算によるリメイクを，それにふさわしいものとしている。それらの年代は，多かれ少なかれ理想的だ。― 第一に，それらのゲームと一緒に育った世代は，30代後半から40代手前で，中年ノスタルジー第一波の中心的な部分を占めている。私が先週，仕事机の上に置くためにオリジナル版ファイナルファンタジー7の低ポリゴンキャラクターモデルのフィギュアを買ってきたとき，自分自身（少々不快ながら）それに気付いたのだ。

　一方，初代PlayStationの技術的な欠点により，オリジナルのゲームをほとんどプレイすることができなくなっている。ハードウェアやソフトウェアを手に入れるのが難しくなっているだけでなく，ゲームを実際にプレイしてみると，とくに最新のハイビジョンテレビでは，かなり不愉快な気分になるのだ。

　これはスイートスポットのようなものだ。90年代のゲームの多くは，それなりの可処分所得を持っているオーディエンスには懐かしくはあるものの，実際に元のソフトをプレイすることはできないというもしくはしたくないという人が大半なのだ。バイオハザード3やファイナルファンタジー7のリメイク版は，もちろんこれを利用しようとした最初の作品というわけではない。ここ数年の間に，その時代のゲームのかなりの数がアップスケールされて，新しいプラットフォームに移植されている。さまざまな努力により品質のアップデートが行われてきているが，昨年の素晴らしい出来だったバイオハザード2は，古いゲームを現代的な制作価値で本当にリメイクする可能性の門戸を開いたのだ。

ファイナルファンタジー7のリメイクには，オリジナルのAAA作品と同じくらいの時間とお金がかかっている

　これらのリメイクの成功を受けて，多くのパブリッシャが90年代後半の自分たちのバックカタログに目を通し，劇的なリメイクに適したゲームIPは何かと考えるようになったのは間違いないだろう。その世代のゲーマーなら誰でも，バイオハザード2/3やファイナルファンタジー7並みの扱いでリメイクしてほしいタイトルをいくつか挙げることができるだろう。もし投票するのであれば，私はサイレントヒル，ベイグラントストーリー，幻想水滸伝を挙げたい。そう，愛するIPのうち2つが陰惨な食肉処理場であるコナミが所有するフランチャイズであることを痛感して悲嘆に暮れている。

　同じようにお金をかけて作り直されたPlayStationのゲームがブームになることはないだろう。

　しかし，これは実際にはこのアプローチの問題点の一部を反映している。十数人のゲーマーを一室に集めてみると，好きなPlayStation時代のゲームのリストが13種類も出てくるだろう。実際に世界中で愛され，今もなおノスタルジックな愛着を持っているゲームはかなり稀であり，その中でも，リメイクに必要な投資が本当に適していると思われるものは数本しかない。

　「リメイク」という言葉は欺瞞的であるため，そのレベルの投資を認識することが重要である。バイオハザードのリメイク版やファイナルファンタジー7のリメイク版の開発費が，他のAAAタイトルと比べて安いということはない。PlayStation時代のゲームをリメイクしても，新しいものを一から作るのに比べれば，大したコスト削減にはならないのだ。

バイオハザードのような豪華なリメイクを真に受けるPlayStation時代のフランチャイズがどれだけあるだろうか

　しかし，これらのリメイクとは何かというと，「リスクの少ないなにか」である。それは，すでに成功したゲームの既存のテンプレートがあり，現代の嗜好に合わせて大幅に作り直さなければならないものではあるが，オリジナルを懐かしみ，新しい体験に興奮している観客がいるからである。もちろん，リスクを取り除くことは何の問題でもないが，90年代のバイオハザードやファイナルファンタジーほど高く評価され，愛されたゲームはほとんどなく，バックカタログの中でもあまり知られていない部分を調べるようになると，そのリスクを取り除く機能さえも弱くなってくる。

　あるIPが何らかの形で現在まで存続していない場合，ほとんどの場合，それにはそれなりの理由がある。

　だからこそ，今月の大作リメイクの成功にもかかわらず，同じようにお金をかけて作り直されたPlayStationのゲームがブームになることはないだろう。もちろん，パブリッシャはそれを調査するだろうが，可能な限り現実的であることが重要であり，バックカタログタイトルの高予算で艶やかなリメイクへの需要が実際にあるかどうかについて，バラ色の眼鏡に惑わされないようにしなければならない。

　多くの場合，シリーズのリブートは，IPへの愛着の源泉を利用するより賢明な方法になるだろう。― 2016年のDoomのリブートと最近の続編は，この特定の戦略を実行する方法の好例だ。他の多くの場合，消費者が純粋に懐かしんでいるフランチャイズと，単に覚えているだけのフランチャイズとの間の線引きについて，やや残酷になることが，賢明な投資と，バックカタログIPの愚かな過大評価との間の重要な線引きとなる。

　バイオハザードやファイナルファンタジーと，リメイクの対象になりそうなPlayStation時代のゲームの大半との間には，もう1つ大きな違いがあることにも注目すべきだろう。バイオハザードとファイナルファンタジーは，現在進行形のシリーズであり，繁栄を続けており，大人気のフランチャイズである。そのようなフランチャイズの中の新作ゲームは今でも何百万本も売れている。

　これは，古いフランチャイズを一掃して，「おい，これを思い出せ！」と盛り上げてリメイクするシナリオとはまったく異なる話となる。IPが何らかの形で現在まで存続していない場合，ほとんどの場合，それにはそれなりの理由があるのだ。