【ACADEMY】クロスプラットフォームゲームを作る開発者のためのヒント

AccelByteのRaymond Arifianto氏は,クロスプラットフォームデザインに関する戦略的かつ技術的な洞察を共有している。

 ゲーム機でのクロスプラットフォームプレイを認めることに対して,デベロッパが一部のプラットフォームホルダーの頑固さを嘆いていたのは,それほど昔のことではない。しかし今では,多くの大作ゲームがこの技術を利用している。

 AccelByteの技術担当副社長Raymond Arifianto氏は,クロスプラットフォームの台頭は今後も続くと考えており,GDC 2020での講演「あなたのゲームはクロスプラットフォームに対応していますか?」では,クロスプレイ,クロスプログレッション,クロスバイを含むクロスプラットフォームの導入を検討しているデベロッパに向けて,いくつかのヒントを提供していた。


使えるサービスと使えないサービスを知る


 「異なるプラットフォームでゲームを出す際に,利用できるプラットフォームサービスがあります」とArifianto氏は語る。「Xbox LiveやSteamworksなどは,しっかりとした機能を持っています。クロスプラットフォームのゲームを作りたい場合,残念ながらこれらのサービスはほとんど利用できません。独自のサービスと,裏で連携してさまざまなサービスに接続する独自のマッチメイキングを用意しなければなりません」

 「では,ファーストパーティプラットフォームから何が使えるのでしょうか? 間違いなくIDとアカウントを使わなければなりません。また,とくにアプリ内購入でゲームを収益化しようとしている場合は,彼らのEコマースサービスに接続する必要があります。そして,プラットフォームが使用を要求するものはたくさんあります。たとえば,Xbox Oneでゲームを出している場合なら,独自のマッチメイキングサービスを持っていても,彼らのマルチプレイヤーセッションディレクトリを使用しなければならないことを知っているでしょう」


プレイヤーを知る


 Steam,Epic,Xbox,PlayStation,Switchをまたいで,ゲームはどのようにプレイヤーを識別するのだろうか?

 「これはアカウントリンクと呼ばれるものによって行われます」とArifianto氏は語る。「アカウントリンクでは,共通のアカウントをさまざまなプラットフォームのアカウントとリンクできるようにしたいと考えています。すでにいくつか見たことがあるかもしれません。Ubisoft Uplayのアカウントを持っている場合,彼らのWebサイトにアクセスし,そこで異なるアカウントをリンクさせます。Epic Gamesの場合も同じです」

 「Call of Dutyをプレイしている人なら,最新のCall of Duty はクロスプラットフォーム機能を持っています。Call of Dutyで友達を探すときは,Activision IDを使う必要があります。Xboxでプレイしていても,PlayStationでプレイしている友人をPlayStationIDで検索することはできません」

 「この全体的に統一されたアカウントシステムは,クロスプラットフォームのゲームの残りの部分のための基本的な部分になります」

 Arifianto氏は,デベロッパがGDPRやCCPAなどの規制への準拠を早い段階から考えておくべきであり,アカウントシステムに新しいプラットフォームを簡単に追加できる方法を最初から確保しておくべきだと付け加えていた。


人々を一緒に遊ばせる


 Arifianto氏は,プレイヤーをクロスプラットフォームで同じセッションに接続するために,ほとんどのゲームで開発者が構築する必要のあるコンポーネントの一覧を概説した。

  • マッチメイキング
  • セッション管理
  • プレイヤープロファイル
  • 統計
  • リーダーボード
  • 実績
  • ルール
  • ゲーム内テキストとボイスチャット

 「ゲームエンジンを選択する立場にあるなら,選択するゲームエンジンがクロスプラットフォームに対応しているかどうかを確認してください」と続けた。「私が言いたいのは,クライアントとサーバーの同期を行うためのメカニズムがすでに組み込まれているということです」

 「クライアントを他のプレイヤーと接続してプレイしたい場合は,直接ピアツーピアのルートにしないことをお勧めします。Xboxのセキュアデバイス関連付けのような,組み込みのプラットフォームライブラリを使用することができないため,とくにゲーム機とPCの接続について話しているときには,かなり困難になってしまいます。私は,データゲートサーバーを使用するか,中継サーバーを使用してピアツーピアでメッシュを構築することをお勧めします」

 氏はまた,サーバーシミュレーションをロックしておくことを提案していた。しかし,レンダリングをロックする必要はないという。


SPOP vs. MPOP


 Arifianto氏は,可能な限りクロスプログレッションを実装することを推奨し,プレイヤーが複数のプラットフォームにまたがって1つのセーブデータをプレイし続けることを可能にするために,複数ではなく単一のポイントオブプレゼンスを使用することを勧めている。

 SPOPとは,ユーザーが一度に1つのデバイスでしかアカウントにログインできず,1つのデバイスにログインするともう1つのデバイスがログアウトしてしまうことだとArifianto氏は述べている。Arifianto氏によれば,これが最も簡単で安全な実装だという。

 MPOPは,ユーザーが一度に複数のデバイスにログインするとゲストアカウントが作成されるため,非常に複雑になる可能性があるとArifianto氏は述べていた。ほとんどの状況で SPOP を推奨していたが,デベロッパは特定のゲームのメリットとデメリットを慎重に検討する必要がある。


余分な認証要件に注意


 Arifianto氏は,ゲーム開発者の人生には3つのことが保証されていると断言した:死,税金,そしてパッチリリース時のプラットフォームでの認証の失敗だ。

 「認証はかなり厄介なものです」と氏は語る。「それは長いリストになり,プラットフォームによって異なります。そして,クロスプラットフォームのゲームを作る際に覚えておくべきことの1つとして,クロスプラットフォームのゲームについて書かれたセクションがあります」

 「プラットフォーム認証を通過するために,何が必要かを理解する十分なバッファを自分自身に用意してください」

 最後に Arifianto氏は,クロスプラットフォームでのプレイ,進行度,購入が自分のゲームにとって実際に意味があるのかどうかを慎重に考えるようにデベロッパに促していた。

 「クロスプラットフォームは,将来的にクロスプラットフォームのゲームを何本も作りたいと考えている開発者にとって理想的なものです」と氏は語った。「クロスプラットフォームのゲームを作るのは簡単なことではありません。時間と労力が必要であり,それをサポートするための適切なインフラストラクチャを実際に構築するための投資も必要です」

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