【月間総括】Switchの販売トレンドとガチャに頼るモバイルアプリの限界
年末年始商戦が終わった。ここで日本のゲーム市場の動向を振り返りたい。下図は,この連載でよく用いている発売から250週のハードウェア販売推移をプロットしたものである。
Switch Liteの発売以降,Switchの販売角度が大幅に上方シフトする形となった。このような角度のシフトは,年末年始商戦以外では新型(マイナーチェンジ)ハード発売時にしか起こっていない。
Switch Liteという携帯ゲーム機が追加されたことで,Switchの販売推移はWiiを大きく上回り,3DSに近づいている。
●発売から250週のゲームハード販売推移
ここで改めて強調しておきたいのは,新規AAAタイトル数との相関性である。2018年は「大乱闘スマッシュブラザーズスペシャル」「ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ/イーブイ」の2タイトル,2019年は「ポケットモンスター ソード/シールド」の1タイトルだったにも関わらず。ハードの販売は大きく伸びた。新発売タイトル数の多寡とハード販売と相関性があるように見えないのである。詳細は来月にしたいが,1月30日に発表された任天堂の第3四半期決算では,Switchの販売(着荷台数)は10-12月で1080万台と非常に強い数字だった。前年同期の974万台と比較しても,やはり新規AAAタイトルとの相関性は低いようだ。むしろ,Switch Liteがハードウェア販売トレンドの角度を変えたと考えるべきだろう。
上記のグラフを見ても,ソフトによるハード牽引効果は一般的に信じられているよりも小さいと考えたほうがよさそうである。また,Switchは年明け以降の販売も非常に強い。エース経済研究所では,2017年の発売以来変更されていないデザインの変更を行えば,任天堂のゲーム機は寿命が短いとのイメージを一新できるだろうと考えている。
一方,PlayStation 4は期間・数量限定の1万円値下げを断行した。これによる需要喚起効果は大きく,クリスマス商戦期には多くの店舗でPS4が売り切れたようだ。
ただ,ここまでの大きい値下げは反動も大きかったようで,年明け以降の販売は週6000台強と,値下げ時ピーク10万台からすると6%程度と非常に厳しい状況にある。
エース経済研究所が,これまでハードウェアの販売は“デザイン”と“スタイル”で決まると主張し,PS4はマイナーチェンジが適切に行われていないので販売は急激に落ち込むだろうと予想していたとおりの展開である。
PS4は,PS5を控えた2020年にマイナーチェンジの投入があるとは考えにくいため,2020年度のPS4販売台数は600万台程度にまで落ち込むと予想している。この水準はおそらく,資本市場のコンセンサス以下だと思われるが,2019年度が2四半期連続で下方修正となり,日米での実売が大きく落ち込んでいることを考えると,それほど違和感のない予想だと考える。
さらに,このPS4の販売落ち込みは,おそらくPS5に対する期待を著しく高めるはずである。PS5は最初からPS4並みかそれ以上の販売ペースが求められることになるだろう。
次に,スマートフォンゲーム市場についてである。前回も述べたが,日系のスマートフォンゲームアプリメーカーの業績は厳しくなっている。
この最大の要因は,スマートフォンゲームの収益がゲーム自体の面白さとは相関しておらず,デジタルガチャでキャラクターを引くことで図鑑のコンプリートを目指すという射幸心を煽るビジネスモデルが限界に達したためと見ている。
初期の携帯電話Webブラウザゲームは2Dであった。この時期はキャラクターの静止画を追加するだけでよく,月10体以上キャラの追加は非常に容易であった。
このため,プレイヤーがガチャを引くペースよりも,キャラクターの追加ペースが上回り,あれほど過熱した状況になっていたのである。
しかし,スマートフォンゲームとなり,徐々にアクション性が増すと,キャラクターの追加ペースが落ちてきた。現在,各ゲームアプリメーカーにヒアリングすると,モーションを含めてキャラクーの作成に数か月から半年程度は必要で,月間のキャラクターの追加ペースは2〜3体というところが多いようである。
「Fate Grand Order」が大ヒットしたのは,前回も指摘したとおり,物語構造がキャラクターを追加しやすく,プレイヤーの射幸心を煽り続けることができたからだと考えている。
それがゲーム開発の複雑化で破綻しつつあると考えている。
実際,何度か取り上げたDeNAの「メギド72」は「メギド:キャラクター」の性能で大きな不具合を出して,プレイヤー間の議論が沸騰した(参考URL)。
ここでは,キャラクターの性能に関する是非は取り上げないが,DeNA側の説明では,年末に通常よりも多い「メギド」の追加を行ったことや周年イベントも重なり,挙動が仕様どおりになっているかのデバッグ作業で見落としたようだ。これは,DeNAの組織に大きな問題があると言わざるを得ない。「ポケモンマスターズ」もプレイヤーの真意を取り違えるなど,プレイヤー目線が欠けている。メディアビジョン側との意思疎通の欠如も見られることを考えると早急な対策が必要だろう。「メギド72」に関してのプレイヤーに対するヒアリングでは「戦闘」と「キャラクターの魅力」を挙げられることが多い。今回の不具合で尖った戦闘システムの魅力が欠如することがないよう期待したい。
話を戻そう,DeNAは,周年イベントでガチャによる収益を最大化しようと無理をした結果,開発やデバッグ工程に負荷が掛かりすぎ,大きなトラブルを引き起こしてしまった。
これは,非常に大きな教訓である。現状の複雑化したスマートフォンゲームアプリでは,キャラクターの追加は容易でなく,プレイヤーが早い段階で主要キャラクターを引き当ててしまうため,ヒットを出すことが難しくなっていると考えている。
現状のキャラクターを追加することで,プレイヤーの射幸心を煽るデジタルガチャビジネスは岐路に立っているのである。
エース経済研究所では,ガチャキャラクターの追加速度をプレイヤーのコンテンツ消費速度が上回ってしまう問題は,2020年にいっそう,スマートフォンゲームアプリ業界では業績の悪化という形で課題になるだろうと考えている。
Switch Liteの発売以降,Switchの販売角度が大幅に上方シフトする形となった。このような角度のシフトは,年末年始商戦以外では新型(マイナーチェンジ)ハード発売時にしか起こっていない。
Switch Liteという携帯ゲーム機が追加されたことで,Switchの販売推移はWiiを大きく上回り,3DSに近づいている。
●発売から250週のゲームハード販売推移
ここで改めて強調しておきたいのは,新規AAAタイトル数との相関性である。2018年は「大乱闘スマッシュブラザーズスペシャル」「ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ/イーブイ」の2タイトル,2019年は「ポケットモンスター ソード/シールド」の1タイトルだったにも関わらず。ハードの販売は大きく伸びた。新発売タイトル数の多寡とハード販売と相関性があるように見えないのである。詳細は来月にしたいが,1月30日に発表された任天堂の第3四半期決算では,Switchの販売(着荷台数)は10-12月で1080万台と非常に強い数字だった。前年同期の974万台と比較しても,やはり新規AAAタイトルとの相関性は低いようだ。むしろ,Switch Liteがハードウェア販売トレンドの角度を変えたと考えるべきだろう。
上記のグラフを見ても,ソフトによるハード牽引効果は一般的に信じられているよりも小さいと考えたほうがよさそうである。また,Switchは年明け以降の販売も非常に強い。エース経済研究所では,2017年の発売以来変更されていないデザインの変更を行えば,任天堂のゲーム機は寿命が短いとのイメージを一新できるだろうと考えている。
ただ,ここまでの大きい値下げは反動も大きかったようで,年明け以降の販売は週6000台強と,値下げ時ピーク10万台からすると6%程度と非常に厳しい状況にある。
エース経済研究所が,これまでハードウェアの販売は“デザイン”と“スタイル”で決まると主張し,PS4はマイナーチェンジが適切に行われていないので販売は急激に落ち込むだろうと予想していたとおりの展開である。
PS4は,PS5を控えた2020年にマイナーチェンジの投入があるとは考えにくいため,2020年度のPS4販売台数は600万台程度にまで落ち込むと予想している。この水準はおそらく,資本市場のコンセンサス以下だと思われるが,2019年度が2四半期連続で下方修正となり,日米での実売が大きく落ち込んでいることを考えると,それほど違和感のない予想だと考える。
さらに,このPS4の販売落ち込みは,おそらくPS5に対する期待を著しく高めるはずである。PS5は最初からPS4並みかそれ以上の販売ペースが求められることになるだろう。
次に,スマートフォンゲーム市場についてである。前回も述べたが,日系のスマートフォンゲームアプリメーカーの業績は厳しくなっている。
この最大の要因は,スマートフォンゲームの収益がゲーム自体の面白さとは相関しておらず,デジタルガチャでキャラクターを引くことで図鑑のコンプリートを目指すという射幸心を煽るビジネスモデルが限界に達したためと見ている。
初期の携帯電話Webブラウザゲームは2Dであった。この時期はキャラクターの静止画を追加するだけでよく,月10体以上キャラの追加は非常に容易であった。
このため,プレイヤーがガチャを引くペースよりも,キャラクターの追加ペースが上回り,あれほど過熱した状況になっていたのである。
しかし,スマートフォンゲームとなり,徐々にアクション性が増すと,キャラクターの追加ペースが落ちてきた。現在,各ゲームアプリメーカーにヒアリングすると,モーションを含めてキャラクーの作成に数か月から半年程度は必要で,月間のキャラクターの追加ペースは2〜3体というところが多いようである。
「Fate Grand Order」が大ヒットしたのは,前回も指摘したとおり,物語構造がキャラクターを追加しやすく,プレイヤーの射幸心を煽り続けることができたからだと考えている。
それがゲーム開発の複雑化で破綻しつつあると考えている。
実際,何度か取り上げたDeNAの「メギド72」は「メギド:キャラクター」の性能で大きな不具合を出して,プレイヤー間の議論が沸騰した(参考URL)。
ここでは,キャラクターの性能に関する是非は取り上げないが,DeNA側の説明では,年末に通常よりも多い「メギド」の追加を行ったことや周年イベントも重なり,挙動が仕様どおりになっているかのデバッグ作業で見落としたようだ。これは,DeNAの組織に大きな問題があると言わざるを得ない。「ポケモンマスターズ」もプレイヤーの真意を取り違えるなど,プレイヤー目線が欠けている。メディアビジョン側との意思疎通の欠如も見られることを考えると早急な対策が必要だろう。「メギド72」に関してのプレイヤーに対するヒアリングでは「戦闘」と「キャラクターの魅力」を挙げられることが多い。今回の不具合で尖った戦闘システムの魅力が欠如することがないよう期待したい。
話を戻そう,DeNAは,周年イベントでガチャによる収益を最大化しようと無理をした結果,開発やデバッグ工程に負荷が掛かりすぎ,大きなトラブルを引き起こしてしまった。
これは,非常に大きな教訓である。現状の複雑化したスマートフォンゲームアプリでは,キャラクターの追加は容易でなく,プレイヤーが早い段階で主要キャラクターを引き当ててしまうため,ヒットを出すことが難しくなっていると考えている。
現状のキャラクターを追加することで,プレイヤーの射幸心を煽るデジタルガチャビジネスは岐路に立っているのである。
エース経済研究所では,ガチャキャラクターの追加速度をプレイヤーのコンテンツ消費速度が上回ってしまう問題は,2020年にいっそう,スマートフォンゲームアプリ業界では業績の悪化という形で課題になるだろうと考えている。
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