アテンションエコノミーの終焉「エンゲージメントを獲得して測定するだけでは不十分です」

MidiaのKarol Severin氏は、エンターテインメント企業はこの豊かな時代では,肯定的な感情を測定すべきだと警告している。

 現在,すべての業界は,ピーク後のアテンションエコノミーで競争をしている。これは11月に行われた,さまざまなエンターテイメント分野の代表者を集めたMidia Researchの基調講演で中心にあったメッセージだった。

※アテンションエコノミー:多くの選択肢にあふれた世の中では,より注目されることが価値を持つという考え方

 同社のシニアアナリストであり製品マネージャーのKarol Severin氏によるこの講演では,主にスマートフォンのせいで,企業が新しい視聴者にリーチして注目を集めるために使用できる自由時間がいかに減っているかだけでなく,消費者が選択するコンテンツがどれほど多すぎるのかについて議論された。

 これは,単一のサービス内でもありうる。過去には,たとえば,消費者がNetflixに取っておいた2時間で,2時間の映画全体を撮ることができた。しかし,デジタルライブラリを通じて多くの情報が利用できるようになったがゆえに,消費者は閲覧するものを選択するだけで10分間を失う可能性がある。このようにして,消費者は「払ったお金に対して受け取る娯楽価値が少なく」なっている。

「量ではなく品質を重視することが重要です。誰もがすでに量を得ています」

 これは「ネガティブな感情を生み出す」こともある。消費者があなたのサービスを閲覧しているからといって,それについて満足しているとは限らないのだから。
 「消費者心理を測定することは非常に重要です」とSeverin氏は警告した。「アテンションを獲得して測定するだけでは十分ではありません。セッション中に作成する感情を測定することがますます重要になっています」

 「サービス,製品の機能,またはメディア資産に対する消費者の感情をベンチマークをしなかったら,あなたの会社の行動が実際に顧客の忠誠心または不忠誠心に変換されたのかどうかは分かりません。そして時代はより厳しくなります」

 Severin氏は,このような不吉な警告を出す理由を2つ挙げた。まず,ゲーム市場には,Google Stadia,XboxのProject xCloud,最近公開されたApple Arcadeなど,新たなコンテンツサービスの波が押し寄せようとしている。
 さらに,Apple TV+,Disney+,HBO Maxのような新しいテレビサービスがある。―「そしてもちろん,あなたがすでに携わっているものすべてを忘れることはできません」。氏は,この洪水は,消費者が「情報過多の時代が進むにつれて反感を買う」ことを意味すると警告した。

 2番めの理由は,「不況が近づいて」いることだ。

 「消費者の可処分所得が減少するにつれて,我々が話しているすべての効果は,より早く選択を迫られるため促進されるでしょう」

 また,次の不況は,デジタルメディアとエンターテイメントの企業に「非常に強い」影響を与える可能性がある。理由の1つは,(Severin氏が「デジタルサービスの主要な視聴者」と呼んでいる)ミレニアル世代(1989〜1995年くらいに生まれた世代)が,人生,キャリア,財政状況のどこにいるのかによって,最も大きな打撃を受けるからだ。

「消費者の感情をベンチマークをしなかったら,あなたの会社の行動が実際に顧客の忠誠心または不忠誠心に変換されたのかどうかは分かりません。そして時代はより厳しくなります」

 「(とくに)デジタルサブスクリプションは,消費者を契約に結び付けていないため,非常に脆弱です」と氏は語る。「これらすべての予期せぬスパイクは,警告なしの解約につながる可能性があります。企業は,解約が突然発生した理由を解明しようとするでしょう。― それは,レーダーに隠れて築き上げられたある種の感情があったからです」

 追記として,氏は,サブスクリプションとバンドルのマルチフォーマットがその環境で有効だと示唆した。たとえば,Amazonはその方法でとくにうまくやっているという。

 Severin氏は,エンターテインメントを提供する経済そのものが根本的に変化続けていることによる悲観論から離れた。映画からテレビ,音楽まですべてのものが,所有権からアクセス権へと移行しており,Xbox Game Passのようなサービスは,ビデオゲームも追随する可能性が高いことを意味している。

 これにより,消費者が意味を理解できないほどの大量コンテンツによる「情報過多の時代」が生まれ,パブリッシャとプラットフォームホルダーは戦略を再考を求められる。

 「もしピーク前のアピールエコノミーが,多くのコンテンツを与えることで消費者の注目を集めることなのでであれば,ピーク後アテンションエコノミーはそれを獲得することです」とSeverin氏は語る。「しかし,そのためには,企業は競争方法を調整する必要があります。今のところ,彼らはまだより多くのコンテンツを投入しています。すでにポストアテンション時代にあるにもかかわらず,彼らはアテンションエコノミーのルールで戦っています」

 「企業がこのようなことを長く続け,実際のユーザー感情を無視すればするほど,エンゲージメントの指標が示すものと消費者が実際にどのように感じているのかとの間の断絶が大きくなります。エンゲージメントを見る新しい方法を見つける必要があります」

 最後に,Severin氏は,あらゆるエンターテイメントで消費者が利用できるコンテンツが大量にあることを鑑み,世界は「混乱の時代」に近づいていると予言した。

 「発見は最前線に戻るでしょう」と彼は言った。 「しかし,最も重要なのは,量よりも質が重視されるようになることです。私が量よりも質が好きなタイプだから言っているわけではありません。誰もがすでに十分な量を持っているからです」

 「アテンションピーク後の時代がやってきました。成長は他人を犠牲にして行われ,企業は反撃しているため,はるかに困難なものになります。以前は,より多くのコンテンツでアテンションを競っていましたが,消費者にポジティブな感情を持たせ続けたいのであれば,それはもはや最も効果的でエレガントな方法ではなくなっています。ポジティブな感情を構築,育成,測定することが,以前よりも重要になるのです」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら