とあるValveの電子眼鏡:新型VRヘッドセットVALVE INDEX追加試用レポート
なお,1回めの体験となるレポートは以下のリンクを参照のこと。
VALVE INDEXついに日本発売! デジカが11月22日より予約受付。その使い心地は?
追検証:装着感
装着感自体もちょっと重い。頭の周囲全体で固定する感じなので重みやバランスはさほど悪くないのだが,ややフロントヘビーなので前面のバイザー部は外しておくのがよさそうだ。
ヘッドフォンの音や耳に当たらないというのは悪くない感じだ。GoやQuestも耳に当たらない小さなスピーカーで頑張っていたが,音的にはさすがに一回り上だろう。
音関係で書いておくと,ベースステーション2.0は,振動があるのは1.0と同じだが,軽くヒューンという甲高い音がしている。INDEX装着時にはほとんど気にならないのだが,ホラー系とか静かなゲームをやっていると気になる人はいるかもしれない。
全体的な使用感としては,使っていると結構温度が上がるらしいことに驚いた。直接熱を感じるわけではないのだが,なにやら匂いが変わってくる。表現しにくいが基板が温まった匂いだ。スタンドアロン型でも,むしろ熱を感じることはあるが,匂いはしてこない。
追検証:ゲームの動作
さて,以前の紹介記事では視野角が変わってもスケールなどは変わらないはずだと書いたが,あれは嘘だ。
これはゲームにもよるかもしれない。
とりあえず立ち上げたのが「STAR WARS: Trials on Tatooine」だったのだが,なんか降りてきたミレニアムファルコンがデカい気がした。スイッチを押すのに思い切り手を伸ばす必要がある。やってきたR2D2もなんかデカい。Really?
普通,こういう当然想定されることはシステム側で吸収しているはずだよねというつもりで最初の記事は書いていたのだが,まさか,視野角の広さに合わせて絵が引き延ばされているとは思わなかった。Star VRでやるとどうなるんだろう?
そのほか細かいところで言えば,コントローラの左右が違う形状なので,左右を持ち替えることができない。装着方法からして,持ち替えるのは簡単ではない。ということで,ライトセイバーはずっと左手で操作する必要があった。
NVIDIAのFun Houseでも,手の左右が逆だった。ほとんどが掴む・投げるといった操作なので,たいていの部分で手の向きが違ってもそこまで影響はないのだが,弓を射るときはちょっと困った。
Viveのソフトは「ほとんど動く」とされていたのだが,これらはダメなほうに分類される奴かもしれない(一応,全部プレイはできるが)。
確実に対応している旧式ソフトということで,Valveの作ったThe LabでViveと見え方をきっちり検証してみたところ,スケール感は保たれていた。やはりちゃんと調整してあれば大丈夫なようだ。適切なアップデートが行われているゲームであれば問題ないということだろう。
追検証:コントローラは?
体験会では手汗問題で動作不良を起こしていたコントローラだが,こちらは初回時ほどエキサイトしていないので,現在のところとくに問題は出ていない。エキサイティングなゲームをやったときにどうなるかで多少の不安はあるが,個性を学習してくれるとのことなので自動調整に期待したい。
さて,センサーの動作自体はだいたい問題ないのだが,指の配置には多少の慣れが必要かもしれない。今回試したところでは,左手はわりとうまく動くのだが,なぜか右手の動きがあまりよくなかった。だいたい同じように装着しているはずなのだが。
具体的にセンサーの守備範囲を示しておこう。親指と人差し指はそれぞれ専用の部分(トップハットとトリガー)なので間違えることはない。問題は残りの指なのだが,中指,薬指,小指は握り手のところにある長さ8cmくらいの範囲のセンサーで感知される。
このうち中指の着地点が最大の問題となりそうだ。中指として反応する部分は,センサーの曲がっている部分あたりのかなり端のほうにしかなく,判定はシビアだ。中指を折ったつもりでいても画面だと薬指が折られていたりする。中指を立てたつもりでいたら薬指が立っていたというのではちょっと気まずくなっていまうかもしれない。
コントローラは,手のひらに対して縦方向に近くなる角度で握ると多少改善される。しかし,握り方としては,あまり自然ではない。
全体的に,つかむなどの大雑把な動作についてはまったく問題がないが,指の細かい動きに関してはあまり信頼できない感じではある。このあたりはキャリブレーションできないものなのだろうか?
そのほか,通常操作時の操作性は少し気になった。
Viveコントローラであれば,親指はスティックを握るようにしていることが多いのだが,INDEXコントローラではトップハット近くにあることが多い。そういう想定で作られているのは明らかだ。
しかし,コントローラからビームを出して操作する系統のUIでは,親指が中央のスライドパッドにあるとうまく動作しない。考えてみると当たり前ではあるのだが,普通に握ると親指はそこに当たるのだ。意識的に親指を離して持てばよいとはいえ,なんとかならないものだろうか。
さて,最初にSteam VRのホーム画面でちょっと困ったのは,ゲームを始める際にSteamのライブラリを出す方法がよく分からなかったことだ。コントローラの手首側にある小さな電源ボタンの部分を押すのが正解だが,これがコントローラを装着した状態ではかなり押しにくいのだ。手とコントローラが固定されているので,指を回しにくい。スクリーンショットでもこのボタンを使用するので,意外と利用頻度は高く,なにか改善が望まれるところだが……。
そのほか,ゲームによってはボタンの配置が分からない,扱いづらいということはある。INDEXが初めての人でもViveコントローラは用意しておいたほうがいいのではないかと感じた。
追検証:光学系はとてもいい
逆によかったのは,体験会ではあまり注目してなかったレンズ部分だ。フレネルレンズ感が非常に少ないのだ。以前から,反射防止コーティングすれば逆光時の輪っかもなくなるだろうにとは思っていたのだが,INDEXではちゃんと処理してあるようだ。素晴らしい。周辺部での色にじみの発生も非常に少ない。素晴らしい。
ごく自然に見えるので光学系の凄みが分かりにくかったのだが,ほかのVRデバイスと比べてみると歴然と違う。まず,逆光時の輪っかの出方でヘッドセットの位置調整をしようとしても輪っかがほとんど見えないのだ。
検証用の画像を作って確認すると,さすがに輪っかは出ているのだが,これまでの製品と比べると格段に細く,フレネルレンズ自体が細かな凹凸になっていることが分かる。あまり低反射コートをやっているようにも思えないが,逆光にはかなり強い感じだ。
視野角もやはりいい。文章で説明しづらくて非常に感覚的になってしまうのだが,前回の記事の図などを参照してもらえれば,だいたいの感じが分かるのではないだろうか。
「お,広い」と思いつつ,少し冷静に確認し直してみると,決して画面が視界全体を覆っているわけではない。だが,それは隅々まで意識して見ている状態では,であって,VR体験時にはほとんど気にならない。
まあこれは,視野角の狭いデバイスでも同様のことが言えるのだが,閉塞感や没入度という点で視野角が広いに越したことはないように思われる。まず,ふと枠が見えることで没入感が阻害される度合いの違いが一つ,広い視野の映像がもたらす臨場感がもう一つ。そもそものところで,視野角が広くなければVRの存在意義自体が怪しくなる。
INDEXの130°というのは,もの凄く広いというわけでもないのだろうが,これくらいあれば不満はないと思わせる広さだ。110°から130°への変化はデカい。将来的にも150°くらいあれば十分なのかもしれないと感じさせられる。
できるだけ正確な実測視野角をお伝えすると,
左右:123°
上下:98°
くらいだった。なんか理論値よりも広い気がするのだが,上下の見上げと見下ろしで多少頭が動いてしまったかもしれない。理論値は左右・上下それぞれで123.8°と92.3°だ。
これはIPD(左右幅)の設定やアイリリーフ(前後位置)をすべて視野角側に振った状態での計測値なので,実際に使用するときにはもう少し狭くなるだろう。
映像はまあまあ上質だ。
画面の周辺部では若干フォーカスが甘くなるが,画面はほぼ全域でクリアな感じだ。若干輝度が低めというか,色が落ち着いて感じられるのは液晶だからだろうか。
画面を見ると,有機ELパネルに見られるような粒子の粗さは目立たない。安心のRGB配列である。私は元々このあたりはあまり気にしないほうなのだが,文字の読みやすさなどが改善されているのが素直に嬉しい。はっきり言って,通常のゲームでは多少粗くてもさほど困らない。UIやテキスト部分となると差が出てくる。なんというか,エッジ部の凸凹感がなくなるだけでも大きな違いだ。
Viveなどの旧世代製品よりは高精細にはなっているものの,ドット感がないわけではない。最近の製品らしい解像度になっている。水平方向の角度あたりのサブピクセル数(RGB)は,
Cosmos 84.9
Go 83.3
WinMR 83.2
Rift S 80.1
PSVR 70.1
INDEX 69.8
Quest 62.4
Vive Pro 56.1
Rift/Vive 42.1
となっており,視野角に振ったINDEXは精細度の点からは突出しているわけではない。
画素が見えず,完全にソリッドに見えるようになるには,Varjo VR-1の内側部分のような密度(180相当)が必要になる。そこまでの製品に手が届くのはまだまだ先になるだろう。
ちなみに,角度あたりの単純ピクセル数で比較すると,
Quest 31.2
Cosmos 28.3
Vive Pro 28.1
Go 27.8
WinMR 27.7
Rift S 26.7
PSVR 23.4
INDEX 23.3
Rift/Vive 21.1
と,Rift/Viveよりややマシというところになってしまうのだが,実際の見え方でいうと,どちらの数字もしっくりこない。単純にペンタイルだと3分の2の解像度相当になるわけではない。画素の粗さが目立って精細感が下がるが,解像度自体は下がらないので,ジャギー感などはまったく違うからだ。
理論的には,RGBの画素数で静止画の画質はだいたい決まるはずなのだが,画面が揺れがちなVRでは,エッジの安定感などで解像度が高いほうがかなり有利である。結局,体感はこれらの中間くらいのところで落ち着くのだろうか。
リフレッシュレート144Hzは(Aerture Hand Labくらいでしか有効でないのかもしれないが),違いがほぼ体感できない。INDEXのスペックで最も突出した部分なのに,なかなか実感するのは難しい。動きの速いタイトルなどでは違ってくるのかもしれないが,「ここが違う」といった場面には出くわしていない。90Hzから144Hzではそれなりに違うはずなのだが,一定以上の滑らかさだと気づきにくい部分かもしれない。
よくできてはいるのだが
一方でINDEXコントローラはもう一歩詰め切れていないといった感が残る。接触センサーがどのように配置されているのかは不明なのだが,現在のセンシング位置が最適と思って配置されているなら理解に苦しむ。このままでは表現力は上がっても,的確に操作できるOculus Touchの完成度の高さに対して優位点は少ない。直感的な「握る」操作だけは評価しているのだが。
Steam VR全般の話になるだろうが,これらはゲーム用のデバイスである。純正の360°ビデオビューアなどがなくなっていたり,VR180映像やThetaの写真を見るのが意外と大変だったり,ゲームにはあまり向かないVRヘッドセットで普通にできることが実は苦手だったりもする。
さて,今回INDEXを一式セットアップし直して改めて感じたのが,その面倒さだ。まだまだケーブルは多い。電源コンセントは3つから5つ新たに確保する必要がある。
このところテザーレスなデバイスに慣れていたのもあって,久々にフルでセットアップすると「まだまだ一般向けじゃない」感を覚える。
ValveがすでにINDEXのケーブルレス版を開発しているという記事を見たときは,ある意味当然の方向だとは感じたのだが,実際問題としては急務だったのかもしれない。