[GTMF]スマホアプリがクラッシュすると,継続率は10%もダウンする。エラー検知・解析ツール「SmartBeat」の効果とは

 2019年7月12日に東京・秋葉原UDXで行われたゲーム開発者向けカンファレンス「GTMF 2019」では「30日後の継続率10%UP!長く愛されるアプリの作り方!」と題した講演が行われている。エラーが継続率に与える影響と,スマホアプリのクラッシュ解析ツールである「SmartBeat」の活用について,開発元であるFROSKの仲井裕紀氏が解説した。

 「アプリの品質によって,30日後の継続率に10%以上差が出る」とスマホアプリのクラッシュ解析ツール「SmartBeat」を開発するFROSKの仲井裕紀氏は語る。いうまでもなく,ここでいう品質の高さとはゲームの面白さではなく,プログラムの安定し,つまりクラッシュしないことだ。
 SmartBeatは2400以上のアプリでリアルタイムにクラッシュの件数や状況を記録しており,1日あたりのエラー検出数は3000万件以上にのぼるというから驚きだ。いかにアプリのクラッシュがユーザーにとって日常的に起きているのかが分かるだろう。

 いうまでもなく,アプリのクラッシュにはマイナスの効果しかない。アプリストアの評価が下がり,新規ユーザーの獲得に悪影響を与える。レビューに「落ちる」などの単語を含むアプリとそうでないアプリではダウンロードの効率に3倍以上の開きがあるうえ,レビューでの不具合報告が開発者のモチベーションを下げることもある。
 また,Google Playではクラッシュの回数が多いとランキングや検索の順位が下がるうえ,最悪だと警告の通知がくることもあるのだという。

 また,SmartBeat導入アプリにおいて,クラッシュを経験しているユーザーとそうでないユーザーを比較すると,後者のほうが継続率は10%高いのだという。また,売り上げランキングで150位以内(FROSKで調査できたアプリによる統計結果)にいるのは,クラッシュ率1%以下の高品質アプリであることが確認されているのだそうだ。

FROSK Product Managerの仲井裕紀氏
 このように,クラッシュはアプリにおいて大きな問題だ。それだけに,クラッシュ率をそのままKPI(Key Performance Indicator。重要業績評価指標)とし,継続して対策することにより,ユーザーの離脱を防ぐことができる……と仲井氏は指摘した。なお,ゲームアプリではクラッシュ率2〜3%,ゲーム以外のアプリの場合は0.5〜1%を目指すことで,
アプリレビューに「落ちる」と書かれにくくなるとのことで,まずはこちらのクラッシュ率を基準に品質を改善していくのが良さそうだ。

 クラッシュに対応するためには,正確な状況把握が不可欠だ。とはいえ,あらゆる端末とOSでチェックするような体制は現実的ではない。組み合わせの数は膨大なうえ,ユーザーはどんどん新しい端末やOSへ乗り換えるからだ。さらに,エラーレポートを取得していても,検知が足りていないケースが多い。多くのアプリでは,クラッシュ後の次回起動時にエラーレポートを送信するようになっているがクラッシュを経験してアプリを見捨てたユーザーは,気に入らないアプリをもう一度起動したりなどしないというのが,その理由の1つだ。
 しかし,SmartBeatであればリアルタイムにエラーの状況を送信するため,こうした心配はないという。Androidアプリでは管理用のツールであるGoogle Playデベロッパーコンソールを使えるが,SmartBeatと比較した場合,エラー検出数で約80倍もの差がでるケースもあるのだそうだ。

クラッシュ発生時にさまざまなデータを収集できる
[GTMF]スマホアプリがクラッシュすると,継続率は10%もダウンする。エラー検知・解析ツール「SmartBeat」の効果とは

 SmartBeatを導入すれば,エラーの件数や発生状況について,すべての部署が開発チームと同じ画面で情報を共有可能だ。とくに発生状況の把握は重要で,開発リソースが限られている中,影響の大きいエラーから手を付けられれば,それだけ大きな効果を望める。事実,とあるアプリではクラッシュ率が2%を越えていたが,SmartBeatを導入して対応の優先順位を合理的に判断できた結果,3か月でクラッシュ率を0.5%以下に抑えることができたという。

 また,「クラッシュ率が高いときにレビューの依頼を出さない」「不具合を自分からアナウンスすることにより,ストアのレビューをエラー報告に使われて評価が下がることを防ぐ」「サポートにおいて,ユーザーIDとクラッシュ状況を紐づけて状況把握した上で,対応を行う」といった工夫でもクラッシュの影響を最小限に留めることができるとのことだ。

 すでにメーカー側でのクラッシュ率を意識した取り組みも進んでおり,とある大手ポータルアプリの場合,バージョンアップ後にクラッシュ率が一定値を越えるとリリースを停止するのだという。また,有名なアプリでは週に1回はエラー情報の収集から改善といったサイクルを回しており,多いものでは3か月で12回も不具合修正を含むアップデートを行っているというのだから,いかに重要なテーマであるかが分かるだろう。

 世に無数のアプリが溢れている中,安定して動作するものが広く利用されるのは自然な流れだ。それだけに,クラッシュ率を下げることがいかに大事であるかを再認識させられた講演だった。

集計されたデータ。クラッシュ発生後の離脱率などに差が確認できる
[GTMF]スマホアプリがクラッシュすると,継続率は10%もダウンする。エラー検知・解析ツール「SmartBeat」の効果とは

SmartBeat公式サイト