Brenda Romero女史が説くゲームデザイナーになる方法

GamesIndustry.bizキャリアフェアでWizardryの開発者であるRomero女史が語ったゲームデザイナーの重要な役割とは。

 ベテランデザイナーのBrenda Romero女史は,会場に集まったやる気あふれるゲーム制作者たちに向かって,彼女のようなキャリアを築こうとするのであれば,小さなプロジェクトを多く手掛けること,さらに重要なのは,それらのプロジェクトをちゃんと完成させていくことだと語りかけた。

※Brenda Romero氏:Wizardryシリーズなどを手がけたことで知られるゲームデザイナー。DoomやQuakeのゲームデザイナーとして知られるJohn Romero氏の妻でもある。

 4月頭にロンドンで開催されたEGX RezzedではGamesIndustry.bizキャリアフェアも共催された。その2日めの幕開けを飾ったRomero女史は,講演のタイトルでもある「ゲームデザイナーになりたいですか?」という,誰もが望むゲームデザイナーの地位にたどり着く方法の前に,まずゲームデザイナーとして生きていくために重要なアドバイスから話し始めた。

 「プログラマを大切にしましょう」と彼女は笑った。「大切に,親切に。その結果,プログラマはあなたがゲームに望む機能を実現してくれるからです。プログラマたちは,あなたがイライラしてカレンシーを積み上げたことなども覚えているものです。ですからプログラマには最大限の敬意を払って接してください」

「ゲームデザイナーは,最終的にはエクスペリエンスプランナーだと思うのです。私たちはこの世界でプレイヤーの時間をやりがいのある,面白くてクールなものにするための方法を見出そうとしています」

 「だからといって,アーティストや仲間のデザイナー,プロデューサーに意地悪になれということではありませんよ。でも結局のところ,ゲームが生きるか死ぬかはプログラマ次第なのです」

 続いて,自分がゲームデザイナーであることを明らかにすると必ず聞かれる三つの質問を紹介した。一つめ。「Fortniteを作ったんですか?」「いいえ,そうであれば今頃ランボルギーニの大部隊を外に停めておけるような身分になっていたでしょう」 二つめ。「1日中ゲームをやっているのですか?」「まあ,そうとも言えます」

 彼女によれば,たいていの場合,一番タイミングが悪いときに新しいゲームや機能のアイデアを思い付くのだそうだ。だがそのアイデアを深めるのはゲームプレイを通してだという。

 例えとして,彼女は「年」(1987),「舞台」(カリフォルニア),「仕事」(詐欺師)をキーワードとして挙げ,オーディエンスにゲームデザインを考えるように言った。重要なのは「動詞について考える」こと,つまりプレイヤーが何をするのかであると強調した。詐欺師なら,目標はお金を稼ぐことであり,銀行強盗などのアイデアへとつながる。

 さまざまなコンセプトや設定を組み合わせ,ゲームデザイナーは「遊べるバーチャルワールドを創造する」のだ。

 1987年の詐欺師の例で,実際のところRomero女史は一人でブレーンストーミングをしていたが,しばしばチームで集まって,与えられたセッティングの範囲でどんなアクションを期待するか尋ねたという。

 「このプロセスは無料です。まあ,そこにいる人たちにお金(=給料・報酬)を払っているので厳密にはただではありませんが,そのバーチャルワールドが存在すらする前に,人々がその世界とどのようにインタラクトしたいと思うかを知っておくには安い方法です」と彼女は言う。

もしBrenda Romero女史がFortniteのゲームデザイナーだったとしたら,今ごろランボルギーニの大部隊を所有していることだろう
Brenda Romero女史が説くゲームデザイナーになる方法

 彼女がよく聞かれる三つめの質問はこうだ。「ゲームデザイナーって何をするのですか?」家族から尋ねられたときは,自分自身を建築家と呼ぶようにしているという。コーダーには世界を造るためのプランを,アーティストにはその世界の中の装飾をするためのプランを,それぞれ伝えるのだと。

 しかし,これでもゲームデザイナーがやることのすべてではないという。彼女はスクリーン上に,ベージュの地味な印象のラウンジの写真を出し,ある建築家がそれを設計し,施工主がそれを建築し,インテリアデザイナーが装飾したと説明した。これでは「何も面白くありませんね」

 「信じられないほど退屈なラウンジでしょう」と彼女は続けた。「では,隣の部屋の床に100万ポンド(約1億3000万円)が転がっていて,そこに行って取って来なければならないと想像してみてください。しかし,そのお金を守っている番人がいて,お金をもらいにきました,はいどうぞ,というように簡単にはいかないことも分かっているとします」

「ゲームデザイナーは,誰もデザインドキュメントなど読みたがっていないということを認識しなければなりません。ゲームをプレイできるのであれば,デザインドキュメントはいりません」

 「ゲームデザイナーは,最終的にはエクスペリエンスプランナーだと思うのです。私たちはこの世界でプレイヤーの時間をやりがいのある,面白くてクールなものにするための方法を見出そうとしています。ちょっとMinecraftを思い浮かべてください。歩くと何が起きますか? 木にぶつかると何が起こりますか? 夜,何が起きますか? 要するに,ゲームデザイナーがゲームプレイのルールを書きます。先の例では,うまくお金を入手できれば200ドルもらえるというような具合です」

 そうは言っても,ゲームデザインは単にジャンプやほかのゲーム内の行動を実装する方法のルールブックを書くことではないと彼女は強調した。そうではなく,デザイナーは「プレイのプロセスを通してプレイのルールをプレイヤーに教えなければならない」という。

 さらにRomero女史はデザインドキュメントの例の紹介に移った。ゲームデザイナーとして応募する際に,こういったデザインドキュメントが選考でどれほど重要なのかを尋ねられることが多いそうだ。単にデザインドキュメントがよければ仕事を得ることができるのだろうか?

 「はい,できると思います」と彼女は言った。「D&Dに取り組んだ人は採用すると思います。D&Dは卓上で遊べるゲームのための巨大なデザインドキュメントのようなものです。しかし裏返せば,もしある人がゲームを持ってきて,別の人がデザインドキュメントを持ってきたらということです。もし良いゲームをプレイさせてくれる人がいたら,(例えば)180ページのデザインドキュメントを持ってくるような人ではなく,そちらを採用します」

 「つまるところ,ゲームデザイナーは,誰もデザインドキュメントなど読みたがっていないということを認識しなければなりません。ゲームをプレイできるのであれば,デザインドキュメントはいりません。もしデザインドキュメントが膨大なストーリーで始まろうと,それはどうでもいいことで,間違ったプロフェッショナリズムと言わざるを得ません。もしあなたがナラティブデザイナーになりたいというのなら,私はもちろんストーリーを重要視します。でもそうでないのなら,ゲームのメカニズムがどうなっているのかのほうを知らねばなりません。1秒ごとのゲームプレイがもっとも大事なことです。もし私を秒単位で引き付けておけないのであれば,私にとってあなたのゲームの分単位も,クライマックスの壮大なカットシーンもどうでもいいことです」

 彼女はゲームデザイナーの役割を「世界,ゴール,プレイヤーにとってのチャレンジ,そしてゲーム経験,それらを創り出す仕事」だと要約した。

 「ゾンビの黙示録を生き残る,城から王子を救出する,そんな特定のゲーム経験を伝えたいからこそ,ゲームを作り,プレイするのです」と彼女は付け加えた。

ゲームデザイナーは建築家で,さらにそれ以上のものだ。部屋の青写真をレイアウトするだけでなく,チャレンジとゲーム経験でその部屋を満たしていく
Brenda Romero女史が説くゲームデザイナーになる方法

 Romero女史は,異なる分野間の掘り下げによってデザイナーがジェネラリストにもスペシャリストにもなりえること説明した。とりわけ,リードゲームデザイナー,レベルデザイナー,コンテンツデザイナー,エコノミックゲームデザイナー(※ゲーム内経済を設計する人のことらしい),クリエイティブディレクター,そしてゲームデザイナーの一般的な立ち位置について詳しく紹介した。

 しかし,このフェアではエントリーレベルが優先されるべき状態であり,そして,キャリアフェアに参加する多くの学生や意欲的なデザイナーと話しをした結果,彼女はなるべく早くチャンスをモノにするにはどうすればいいかで話を締めくくった。

 「さっそくゲームを作り始めてください」と彼女は言った。「大学に入学するのを待っていてはいけません。ただもうゲームを作り始めてください。さて,私が形容詞を使わなかったことに気づきましたか? 「グッド(良い)」ゲームである必要はありません。ひどいゲーム,場合によっては大失敗でもかまいません」

 彼女は夫のJohnが手がけたの「Doom」というアイコニックなシューティングゲームは,実に80番めに開発されたゲームであり,また,リリースされなかった初期のゲームの数々はかつてプレイした中で最悪だったと彼が言っていたことを明かした。

 「しかし,やるなら今です。それに,小さいスケールで始めるべきです。古典的なアーケードゲームを改めて作ってみてください。大学に入った学生たちがよく『ようやく自分バージョンのWorld of Warcraftを作れるぞ!』と言いますね。はい,グッドラック。一人で,4年間で,そんなことできますか?」

 「小さいものからやってみてください。そういう小さいゲームが最終的にあなたのポートフォリオになっていきます。もし何か学ばねばならないのなら,もし何か特別なことを特別な方法でやるように指示を受けたのなら,それをゲームのコンテクストで遂行してみてください。それもポートフォリオを充実させていくのに役立ちます」

 応募者からの志願書類に目を通していると,結局いつも,ゲームのポートフォリオ VS 履歴書/職歴書ということになるという。最も秀でた候補者は,実際にその手で作ったゲームをデモンストレーションできる人物だそうだ。

 「日の目を見なかったゲームのアイデア,未完のものは山のようにあるものです。完成したゲーム,それにプロトタイプでもいいでしょう,それらが詰まったポートフォリオを見せてもらえるなら,私はその志願者が頭一つ抜け出ていると考えます。週末にゲームを作ってください。アナログゲームでもゲームジャムでもかまいません」

 「一番大事なのは,ゲームを完成させること,始めたものはきちんと完成させることです。たとえサッと作って『これはプロトタイプだから作るのはここまで,レベルは一つ』という場合でも,きちんと作り終わって,人に見せられる状態にしておくことです。それが雇用主側が見たいと思うものなわけですから」

ジョブ・ニュースや新規採用を世界に呼び掛けたい読者の皆さん,ご連絡はこちらまで:newhires@gamesindustry.biz

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら