「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い

 2019年4月3日から5日まで,東京ビッグサイトで「コンテンツ東京2019」が開催された。コンテンツ東京は,さまざまなコンテンツにかかわる7つのイベントをまとめたものとなっており,コンテンツの制作から配信まであらゆる分野を網羅した展示会が構成されている。
 今回は「先端デジタルテクノロジー展」「映像・CG制作展」などの展示を中心に目に付いたものを紹介してみたい。


大画面LEDディスプレイ登場


 中国AOTO ElectronicsによるマイクロLEDディスプレイがエヌジーシーブースに展示されていた。LEDディスプレイといえば,CESあたりでソニーが次世代のディスプレイとして参考出展していたのを覚えている人もいるだろう。LEDというのは,昨今はどこにでもある,あのLEDのことだ。LEDは有機ELと同様の自発光デバイスであり,ダイナミックレンジは非常に広い。有機ELで問題になる焼き付きや低寿命,低輝度といった問題もない理想的な映像素子となりうる。問題は素子の小型化が困難だということだが,ソニーのCrystal LEDではドットピッチ1.26mmを実現していた(関連URL)。

「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い

 今回展示されていたのは,そのソニー製品より高精細な0.9mmピッチのディスプレイだった。AOTOでは「Mini LED」と呼称しており「CLD27ES0.9」というのがパネルの型番だ。
 展示されていた製品は60Hzのようだったが,垂直同期周波数は144Hzまで対応が可能だそうで,ゲームでの用途も十分に対応できる。

「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い
 展示されていたディスプレイは,27インチサイズのパネルを3×3枚並べて実現したものだった。もちろん構成次第でさらなる大画面化も可能となっている。9枚構成のものは「Cloud 9」と呼ばれているようだ。
 9枚使用して1920×1080ドットのフルHD対応だそうだが,パネル1枚あたり(そのパネルも4つのモジュールの組み合わせでできているようだが)の解像度は640×360ドットという計算になる。AOTOによるコントローラは8K解像度まで対応可能とのことだった。仮に最大構成とされる8Kで組むと,横幅は7.2mの大画面だ。

 最大消費電力はパネル1枚あたりで150W,フルHD構成の場合はコントローラなどを含めると1500Wくらいになる。電源は100〜240Vに対応しているが,200Vを推奨とのことだった。HDR対応の高輝度大画面であればやむなしというところだろうか。

 肝心の画質だが,ぱっと見にはあまり綺麗ではない。ドット欠けや,0.9mというドットピッチなので近くで見ると粗く見えるというのは置いておいても,表示しているコンテンツ側に問題があるのではないかと思うくらい,明らかにマッハバンドが出ている。フルカラーではなく16bitカラーくらいではないかと思うような映像だ。公式サイトでは当然ながら24bitフルカラー対応が謡われており,デバイスの特性からしても普通はありえない画質だ。
 しかしスペックシートを見ると,リフレッシュレートに3840Hzという謎の数字がある。……もしかして階調表現を時分割でやっているのだろうか? であれば,3840÷60=64,つまり1フレーム当たり64階調で18bitカラー相当というのは頷けなくはない画面だ。こんな凄いデバイスを作っておいて,そんな馬鹿げた制御をするのは,常識では考えられないのでまさかとは思うのだが……。

 また,自発光のLEDなのに黒が締まらないのを会場の担当者も不思議がっていた。ソニーのCrystal LEDの場合,LED自体はおそらくAOTOのものよりかなり小さいのだが,画素以外の余白の黒い部分(余黒?)を大きくとって黒を出すように工夫されている。その違いだろうか? 表面にフィルタを張ればある程度解決するのだろうが,それは最大輝度が落ちてしまうという諸刃の剣でもある。ちなみに,最大輝度は800cd/m2なのでHDRコンテンツも十分いける仕様だ。別のモデルとして1.5mmピッチの製品もあり,そちらだと最大輝度1000cd/m2にも対応している。
 コントラスト比の5000:1は,液晶ディスプレイと比べると優秀だが,Crystal LEDの100万:1というスペックを見るともの足りない数字だ。ブラウン管時代のブラックマトリクスのような技術がまた出てくるのだろうか?

画素の拡大写真。1画素に対する発光部の占める面積は20%くらいだろうか
「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い

同じくエヌジーシーブースに展示されていたLG電子の透明有機ELディスプレイ。2D写真だと雰囲気が伝わらないので3D写真データへのリンクを用意した。VR180画像の再生環境で視聴してほしい
「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い
 気になるパネルの価格は110万円くらいとのことだったので,フルHD構成だと1000万くらいか。8Kだと1億6000万円。高いような気もすれば,安いような気もする。
 とにかくモノを作ってしまう中国のパワーはもの凄いと感じさせられる。半面,映像の扱いなどのノウハウは足りていないのだろうか。デバイスのポテンシャルをまったく引き出せていない。屋外で使う大型サイネージ用としてはあまりにオーバースペックだと思うのだが,どういう用途を想定しているのだろうか。はたしてこいつはちゃんと調整すればもっと凄い絵が出るのだろうか……。

エヌジーシー公式サイト


プログラムレスなVRシーン制作環境「VRer!」


 さまざまなアセットを配置して,VR空間を作れるというシステム「VRer!」(「ブイアラー」と読む)がパソナ・パナソニック ビジネスサービスブースに展示されていた。

 ブースに置かれたPC上で再生されていた動画では,ファンタジーゲーム風味のエルフの家を作る過程が示されていた。YouTubeにも同じ動画があったので貼っておこう。以下のデモ映像を見ればたいていの人は「おお凄い」と感じるのではないだろうか。


 VRer!は,共有型のVRコンテンツ作成システムである。作ったVRシーンは,スマホアプリのビューワを使ってVRゴーグルで再生することができる。また,使用するアセットも共有設定でアップロードすることで,多くの人が使えるようになる。個人での利用は無料だ。利用者が多くなれば,アセットも充実して制作環境も改善されていく……というのがベストなシナリオとなるだろう。
 サービスとしては,「Minecraft」的というか,ユーザーが作ったコンテンツを共有できるタイプだ。Webと連動しているあたりは「ViZiMO」のコミュニティを抜いて機能を下げて最終段をVR表示にした感じのものだ(ViZiMOのβテストが2月で終了していた……)。

 さて,シーン作成に使用するエディタはPC用とMac用が用意されている。制作に当たっては,あらかじめWeb上からアセットをダウンロード(というかインポートの指定)をしておく必要がある。たくさん用意されている素材から,作成するシーンに合ったものを選んでおくのだ。

公式サイトの素材共有ページ「VRer! Square」で素材を選ぶ
「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い

 エディタを起動すると,指定したファイルが一覧に表示されるので,それをシーン内に配置していくというのが作業のおおまかなところとなる。オブジェクトは,位置と角度を調整できる。
 別途,オブジェクトに対して動作を割り当てることもできるのだが,なぜかWeページでもユーザーガイドでもまったく解説されていない。まあ,少し触ればどういうものかは分かるのだが,指定できる動作には,表示,非表示,移動,回転,拡大/縮小,モーション,サウンド,コンテンツといったものが並んでいる。トリガーとしては,直前の動作と同時,直前の動作終了後が指定できる。同列でオブジェクト名が並んでいるのは,おそらくVR空間内で接触したらトリガーが発生するのだと思う(未確認)。1つの処理の完了を待って次の処理を始められるなど,シーケンサ的な機能は持っているが,基本的に1本道構造でループも組めない。ゲーム的なものを作るのはまったく無理というわけではないが,少し厳しい感じだ。

「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い
 ちょっと問題だと思うのは,動画で示されていたようなアセットはまったく提供されていないことだ。肩透かしである。アセットの一覧ページを開くと,いきなり医療系のマニアックなアセットがずらずら出てくるので,普通の人はちょっと引いてしまうのではないだろうか。

 さらに全体に気になるのは,管理機能がほとんどないことだ。Web上のアセットリストにしても,ツール内のオブジェクトリストにしても,イベント処理にしても,カテゴリ・グループ分けなどはまったく考慮されておらず,きわめて小規模なものしか制作しないことが前提となっているように思われる。一応聞いてみると,プロジェクトごとのアセットの区分けはできるようだった。しかし,プロジェクト管理ツールの起動リンクがアセットの素材情報画面にしかないというのは問題だろう。
 機能的には今後に期待したいところだが,ツールを作る側も何があれば何ができるのかが分かってないような雰囲気ではある。ちょっともったいない話だ。

VRer!公式サイト


Unreal Engineでのリアルタイムレイトレーシング


Trollのリアルタイムレンダリング。Unreal Editor上で動いていることが分かる
「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い
 Epic Games Japanブースでは,GDCで公開されたレイトレーシングムービー「Troll」のシーンがフルHD解像度でリアルタイムレンダリングされていた。利用ビデオカードはQuadro RTX 6000とのこと。これはGeForce RTX 2080 Tiをちょっと強力にしたくらいの演算能力を持ったカードだ。一応,このデモ自体はGeForce RTX 2080 Tiでも動くそうである。

 さて,ムービーのレンダリングは,映画を意識して24fpsで固定されていた。画面上のfps表示もごくたまに揺らぐくらいで,ほぼ24fpsに張り付きなので,まさにこのフレームレートをターゲットに作りこまれていることが分かる。
 シーンの全体がレイトレーシングというわけではないが,反射屈折などのほか,影やGIをレイトレーシングで行っているということなので,かなり広い面積にわたっているものと思われる。
 この画質でゲームを……という場合には,フレームレートはもう少し引き上げる必要があるだろう。必要とされるGPUパワーからして,あと2世代くらいあとなら型番「60」系列でもいけるようになるのだろうか?

実行時に表示されていた右上と左下のインジケータを並べてみた。24fpsでは41.67sがフレームタイムであり,各処理の占める時間が表示されている。残念ながら詳細は不明だった
「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い

 もう1つ展示されていたのはポルシェのリアルタイムレンダリングデモだ。こちらはシーンのすべてをレイトレーシングで処理しているという。機材はQuadro RTX 6000×2という構成だ。
 こちらもフルHD解像度だが,飛ばしているレイは1本だとのことだった。ときおりノイズが確認できるものの,逆にレイ1本でここまで表現できるのかというのはちょっとした驚きだった。AIデノイザの威力だろうか。
 当面はレイトレーシングを使うにしても,最低限の利用に留めるハイブリッドレンダリングでしか実用的なパフォーマンスが得られないだろうが,ゲームで実際にレイトレーシングが利用される時代になってきたというのは凄いことだ。さらにフルレイトレーシングによるレンダリングも,GPUを2基積めば夢ではなくなってきていることが示された。ゲームグラフィックはさらに大きな変革を迎えそうだ。

完全にレイトレーシングだけでリアルタイムレンダリングされたシーン。ハイエンドGPUを2つ使ってどうにか実現されている
「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い

Unreal Engine公式サイト


LEDの走査で空間に映像を描く「Phantom 3D Hologram Display」


 この手の展示会で見られる表示のギミックとして,LEDを高速回転させて空中に絵を描くタイプのデバイスがある。「扇風機の羽根にLEDをつけて,回転と同期して光らせる」といった雰囲気の製品だ。実際には扇風機ではないのだが(扇風機のものもあるが),以下では扇風機と呼んでおく。
 さて,この扇風機,実は意外と効果的で,空中映像の不思議さが非常に目を引く。紛れもなく立体座標でLEDを光らせているのだから空中映像は当然なのだが,ほかに例のない表示なのでサイネージとしては効果が高い。今回の会場内にも,展示内容にはあまり関係なく,ブースのサイネージとして使用しているところもあった。

「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い

 さて,空間に光の映像を表現できる「扇風機」をより大規模にするとどうなるだろうか? Life is Styleブースに展示されていた「Phantom 3D Hologram Display」は,思わず「無茶しやがって」と口にしてしまうような,複数の扇風機を組み合わせた大面積3D表示デバイスを構成していた。

非表示時はこんな感じ
 扇風機の表示範囲は当然ながら円形なわけだが,平面を埋めるにはブレードの範囲が重なるくらいに詰めて配置しなければならない。隣接する扇風機とはブレードの高さを変えてあるのでぶつかることはない。これで隙間なくLEDの回転で平面を走査するように扇風機を配置でき,結果として大面積の3Dディスプレイができあがる。
 もの凄い音がするのと「立ち入り禁止」と線が張られているのは当然だろう。
 会場に設置されていたディスプレイは,4×6で24基の扇風機を並べたものだった。ブレードには300個ほどのLEDがついているという。斜めからよく見ると,ブレードの高さが違う部分が分かってしまうのだが,正面位置からだとほぼ目立たない。さすがにちょっと大掛かりになるので「なにもない空間に映像が出る」感は薄れるものの,見た人を驚かせる表示デバイスであるのは確かだ。


Phantom 3D公式サイト


霧を噴射して映像を投影するミストディスプレイ


 会場内にはさまざまな表示デバイスがあふれかえっていたのだが,ひときわ目を引いていたのが,コーンズテクノロジーが展示していたミストディスプレイ(ミストスクリーン)ではないだろうか。
 「X-300」は天井に設置して下方向にミストを噴射するデバイスだ。別途プロジェクタによる映像を投影し,ミストをスクリーン代わりにすることができる。横幅は300mmもあり,下方向2500mm部分がスクリーンとなる。連結してさらに横長の表示に対応させることもできるという。

「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い

 さらにKinectを使ってインタラクティブなコンテンツを作れるようになっており,会場でもコンテンツに合わせて触ると映像とインタラクトできる様子が示されていた。ボールを手で払ったり,触れたところに炎が上がったりとさまざまな変化が起きる。
 見たところ半透明なカーテンに映像が映っている感じなのだが,自在に通り抜けできるというあたりのインパクトが強い。
 開発したのはポーランドのION Conceptだそうで,もっと小さいタイプも取り揃えてあるようだった。以前,煙を出してスクリーンにするタイプのデバイスも見たのだが,それと比べるとスクリーンの安定性が高い。水ならば出し惜しみなく使えるからだろうか。ちょっと変わった映像展示をしたいという用途にはぴったりのスクリーンだ。

コーンズテクノロジー内製品情報ページ


空中ハプティクス技術も実用段階か


 同じくコーンズテクノロジーの展示から,空中ハプティクス(触覚)デバイスを紹介しておこう。空気というか音を使って空中に触感を作り出す技術は以前からあり,超音波を出すトランスデューサ管をびっしり並べたタイプの機器(実は開発キット)は,この手の展示会ではたまに展示されることもあった。今回展示されていたのは,同じ技術の製品版ともいえるものだった。
 「Stratos Inspire」は,空中触覚デバイスと手指のモーションセンサーを一体化した製品だ。以前から手指の検知にはLeap Motionが使われていたのだが,今回は見た目的に一体化したデバイスとして作られている。

ちょっと分かりにくいが,手の影が落ちているのが新型デバイスだ
「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い

 その検証用に動いていたコンテンツはFallen Planet Studiosの「Affested: The Visit」というVRホラーゲームだった。同社の「Affected: The Manor」はVRホラーゲームの元祖ともいえる存在だが,それを空中ハプティクスを前提に作り直されたゲームが展示されていたのだ。
 空中ハプティクス技術も実験的な段階から実用段階に移行しつつあり,それがゲームコンテンツでデモされているのは感慨深いところだ。

Fallen Planet StudiosのAlex Moretti氏
「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い

コーンズテクノロジー内製品情報ページ


吐息も再現する囁きデバイス


胴体に取り付ける衝撃体験型のデバイスが最初だった
「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い
「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い
 MOAI設計が展示していたのは,片耳用のヘッドセットといった感じのちょっと変わったデバイスだった。
 元々はエアコンプレッサを使って身体に衝撃を与えるデバイスだったそうだが,実用化に向けてバンダイナムコと話をしているうちに,「囁き」に特化したデバイスに仕上がったのだという。

 さて,囁きだ。VR映像などでバイノーラル音声を体験したことがある人なら,その臨場感はなかなか素晴らしいものがあることをご存じだろう。とはいえ,耳元で囁くというのはヘッドフォンを使えば考えるまでもなく実現できる内容のように思える。しかし,ここでいう囁きとは,吐息までも再現したもののことだった。つまり,キャラクターの音声に合わせて耳に温風を吹きかけるデバイスが展示されていたのだ。
 デモはメイドバージョンと執事バージョンが用意されており,なかなかターゲットを分かっているセッティングが行われていた。

片耳用のイヤパッド内には空気送出用のノズルがある。ここでは見えないがデバイスはエアコンプレッサに接続されている
「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い 「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い

 吐息機能付きヘッドセットの登場にも期待はかかるのだが,エアコンプレッサが必須なので,個人用での展開は難しいだろう。アーケードゲームやテーマパークでの体感要素が1つ追加されることになるのだろうか。
 ちなみに身体に取り付けるタイプのデバイスは,背中側につけてマッサージ機器としての活用なども検討されているとのことだった。

MOAI設計公式サイト


意外とできていないリップシンク


 CRI・ミドルウェアが参考出品していたのはリップシンク用のソリューションだった。Sprite Studioを展開するウェブテクノロジが傘下に加わったこともあって,CRIの得意な音声とウェブテクノロジの画像表示が連動できる要素が模索されたらしい。
 特徴は機械学習を使っているので大きな辞書データがいらず,コンパクトにできるのがメリットとのことだ。言語や話者を特定せず,汎用で利用できるという。コンパクトさがウリということでモバイルがターゲットなのかなと聞いてみたが,現状ではPC用を想定しているようだ。

「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い

比較的よく動いていたキミノミヤさん。あいち観光のバーチャルサポーターだそうだ
「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い
 ちなみに,今回のコンテンツ東京ではVtuberの特集スペースのようなものも用意されていて,さまざまなVtuberが一堂に会していた。そこでのデモでリップシンクを確認して回ってみたのだが……,意外と口がちゃんと動いていないものが多かったという印象だ。キズナアイはまだマシなほうだろうか。よく動いているなと思って聞いてみると,後付けだったり,フェイシャルキャプチャで実演をやっているのに口がついていってなかったりと,単純ではないようだ。XRエンターテインメントが展示していたキミノミヤが一番よく動いているように感じた。一応確認してみたが,フェイシャルキャプチャではなく音声ベースのリップシンクとのことだった。

 今回の展示会でも「1社に1人」と売り込んでいるようなところもあるなど,日本ではなにかと流行のVtuberだが,萌えキャラが動くだけではキャラクターは生きてこない。ビリーバビリティは「リップシンクと目だ」とデジタルヒューマンのプロが語っていた記事を思い出した。今後はそういった細かい技術の違いが,山のようにいるVtuberを淘汰していくのかもしれない。

CRI・ミドルウェア公式サイト


128.2chのサラウンドサウンドシステム


 ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ ソニーPCLが出展していた「Sonic Surf VR」のデモでは,移動する音源の再現がアピールされていた。上下方向があるのかどうかはちょっと確認できなかったが,高精度のポジショナルオーディオというところだろうか。

「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い

拡大図。スピーカーが8個詰め込まれている
「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い
 写真をよく見てほしいのだが,ブースの壁にはちょっと飛び出した部分が横に伸びている。これをさらによく見ると,小さなスピーカーが8個セットで1本のバーになっていることが分かる。それが16個横に並んでいる。下には2個のウーハーが置いてある。つまりこれは,128.2chのサラウンドサウンドシステムなのだ。
 一応,後ろにも置いて256chにできないのかと聞いてみたのだが,ちゃんとそれもできるとのことだった。いっそのこと円形で配置すればよさそうな気がするのだが,現状では円状には配置できないようだ。なんでも処理に使っているPCの演算能力の問題で,音源位置を円形にするのは無理らしい。代わりに台形(正面+ハの字)配置などなら可能だという。

 とはいえ,これは物理的に音の発生位置を多くした多方向音源を目指しているものではない。詳しい理屈はよく分からないのだが,範囲内のすべての位置でちゃんとした立体定位を感じられるシステムなのだという。音に包まれる感覚,臨場感という意味ではかなり面白い体験ができる。

Sonic Surf VR製品情報ページ



飛行体感型デバイスが家庭用で発売中


「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い
 ICAROSブースでは,VR向けの飛行デバイス(というとやや誤解があるかもしれないが)「ICAROS Home」を展示していた。腹這いになって乗っかって,前後左右に揺れながら飛行状態を制御できるデバイスである。近年型VRが出た割と初期からいくつか「飛ぶ」ためのデバイスが登場して話題になっていたが,それらとだいたい同じ系統のものだ。
 これらは大規模アミューズメント施設というよりはフィットネス系の施設で使われることが多かった。結構動かすのはキツいのだ。そんな飛行体感型VRデバイスがフィットネス器具として,昨年11月から家庭用として販売されているという。価格は30万円だ。

ICAROS Home。ちなみにICAROSはドイツの会社だが,最終日には展示現品が特価販売されていた
「コンテンツ東京」開催,最先端ディスプレイデバイスなど関連技術が勢揃い

 デモで使われていたのは,フライバイで空中に設定されたコースを外れないように移動していくという,よくあるタイプのVRゲームだった。名前は「ICARACE」で一瞬パンフレットの誤植かと思ってしまった。「e-Sports」といった単語も見えるが,確かにこれはスポーツの類かもしれない。
 なお,こういった専用コンテンツ以外に,一般的なゲームの制御もICAROSでできるように作業しているとのことで,汎用のゲームコントローラ化する予定もあるようだ。設置場所が確保できるなら,運動不足な人にはおすすめ……なのだろうか。

ICAROS公式サイト