恐れずにもっと機能を追加しましょう −従業員に過剰労働をさせない方法とは

英国で最も働きやすい職場のひとつであるEAのCriterionは,どのように超過労働を避けているのだろうか。

 先週,我々はUK Best Places To Work Awardsの受賞者たち(関連英文記事)にどのように超過労働を避けているのかについてのアドバイスを求めていた。

 彼らの示唆はこちらで読むことができる。

 今週,Criterion ―BurnoutやNeed for Speedで知られるEAの子会社(今回のAwardsで最高点を出した会社でもある)― のVP兼GMであるMatt Webster氏が我々に彼らのTipsを提供してくれた。我々はこれらのTipsを単独の記事にすることにした。詳しくは以下をご覧いただきたい。


※原文の「Crunch」という用語については,使う人によって重さが異なり,重く捉える人はほぼデスマーチと同義で使い,軽く使っている人は仕事が少しきつくなった程度の意味で使っているように思われる。前回は修羅場と翻訳したが,今回は少し軽めの「超過労働」と訳しておく。

ビデオゲーム開発の修羅場を回避する方法とは


「もし我々が時間や生活を尊重しつつ我々のチームが成長を持続することをコミットするなら,我々は超過労働を避けるだけでなく,その存在自体を完全に排除できます」

 デベロッパは仕上げが大好きです。この時期に我々は最も迅速に行動します。素早くビルドし,プレイし,素早く変更します。我々はコミュニケートし,意思決定をしていくのです。我々は一丸となり優先順位をつけていきます。こういった行動を取るのに,プロセスが終わるのを待つ必要などありません。タイムラインを早める方法を実現しましょう。

 多くの業界全体にわたった研究成果があり,超過労働はアウトプットを減らすということが示されています。ゲーム業界では我々は特別であり,この研究データは我々には適用できないと考えています。もちろん,実際には適用されます。追い込みの時期には超過労働に惹かれることもあります。しかしそれは危険です。もしチェックしなかったら,従業員に実害を与えることになるでしょう。やがてはビジネスにも影響が出ます。

 超過労働が成果につながらないことを示す優れた研究があります。たとえば,Game Outcomes Projectはこの問題を細部まで伝えており,「超過労働いかなる意味でもプロジェクトの成果を改善せず,トラブルに見舞われたゲームプロジェクトを解決する役に立つこともない」と結論付けています。

 もし我々が時間や生活を尊重しつつ我々のチームが成長を持続することをコミットするなら,我々は超過労働を避けるだけでなく,その存在自体を完全に排除できます。

 あなたが現在いる環境で,自分に許された時間で現実的に着手できることについて自身と他人に正直になりましょう。願望に基づく計画は機能しません。― 辻褄が合うことを望んでよい成果を期待してはいけません。

 実装できない機能に手をつけないことは「プレイヤー第一」な振る舞いです。なぜなら,あなたのフォーカスは残りの機能を高品質に仕上げることに向けられるからです。

 仲間を信じましょう。もし彼らが,なにかをするときに時間がかかると言ったなら,期間を半減するためにせきたててはいけません。

 もしあなたが長時間労働にフォーカスすることをやめたなら,あなたはより賢く働くことにフォーカスできます。

 十分な休息や幸せな人による生産性の増加を過小評価してはいけません。定期的にチームから率直なフィードバックを取って,彼らの健康状態を測定しましょう。彼らが言うことに耳を傾けて,行動してください。

 優先度の低い機能やコンテンツを削除することを恐れてはいけません。これは早めにすればするほどよいことです。

 我々は,気を散らすことを最小限にし,チームの一日をより効率的にするために短時間の「フォーカスモード」を作りました。

 みんなが遅くまでないし週末に働いていないか注意してください。状況について彼らに聞き,どのように助けられるかを彼らと話し合ってください。

 プレッシャーのもとでオープンかつポジティブ,クリエイティブさを維持しましょう。そうすれば,製造上の制約が降りかかったときでもチームは協力し創造的な解決策を見つけ出せるでしょう。

 物事が変わり続けるように計画と再計画をすること。私はディレクターがチームの負荷を軽めに計画するようなやり方が好きです。

 超過労働はあなたの居場所を否定する最大の例です。たとえ(実際のところとくに)あなたが望まない場所であったとしてもです。

 誰もがよりよい/違った方法で働きたいと願い,信じる必要があります(とくにリーダーは)。コアタイムであるとか,ランチタイム,ゲームタイム,フレックスなどについて,ルールに同意を得るために協力しましょう

 悪い行いに対してほめたり報酬を与えることはいかなる場合もやってはいけません。「彼女は熱心なだけなんだ」「深夜に一人でいる」―もしあなたが実際にこういった場面で埋め合わせをしなければならなくなったら,なにが彼らをそうさせたのか理解するのに時間を費やすでしょう。

 誰もが最高の日を過ごせるという自信を持っているか確認しましょう。あなたのチームは化粧をする時間がありますか? メンバーは決定に責任感を持っていますか? 彼らは優先順位と制限をはっきり理解していますか?

 リーダーとして,あなたはチームが難しい決断をすることに満足していますか? また彼らはそれを知っていますか? 彼らにスペースを与えていますか? プロセスを保護していますか? 誰もが信念と良いものがどういうものかはっきり理解していますか? あなたは目標に対して評価しますか? それともあらかじめ定義された解決法に対してですか?

 超過労働が必要だと感じることは,なにか別のものがうまくいっていないことの兆候です。代わりにその原因を探る時間をとりましょう。

 あなたが目にしたいように行動して生活しましょう。もしみんなが6時に帰るべきだと思っているなら,6時に帰宅しましょう

 あなたのチームのリーダーとマネージャーに注意してください。これらの人々はいつもより多く,少し余分に働いきがちです。これはときとして,下位のメンバーが見習うべき行動だと思ってしまうことがあります。

 あなたの信念とルールに沿ったプロセスと構造を構築しましょう。たとえば,あなたが複数の時間帯をサポートしたいのなら,インスタントメッセンジャーのような同期式のコミュニケーションを中心としたプロセスを構築すべきではありません。

CriterionはBurnout,Need for SpeedそしてStar Wars: Battlefrontなどを作ってきた
恐れずにもっと機能を追加しましょう −従業員に過剰労働をさせない方法とは

 同じ真実が可能であると信じる人を雇いましょう。―価値以上に才能に重きを置いてはいけません

 チームを信じ,耳を傾けましょう。なぜなら,そこには知恵があるからです。彼らはしばしばあなたよりものを知っています。命令や指示をやめ,チームに不可能な量の仕事をやらせないようにしましょう。

 「情熱はオフィスで過ごした時間に比例する」といった考えはどこか間違っています。あなたは会社にきて,「熱意に満ちた」な8時間ないし「熱意のない」12時間を過ごすことができます。時間は熱意と等価ではありません

 これは,長時間労働が生産性を上げるかという効率性に関する研究全般の原則に対しても言えることです。経済学の法則は,これが生産ラインに人員を追加することが労働の限界生産物(1単位の従業員を追加した結果としての生産物の変化)の形で適用できるかを強調しています。これは一定量の労働を超えると悪影響を与えます。

 疲れた人はミスを犯します。彼らが疲れていればより多くのバグを生み出すでしょう。

 製品に十分な品質があるかどうかは大きな不安をもたらしますが,往々にしてそれを正確に測定するためのツールは十分ではありません。これは単純にもっとたくさんの機能を製品に詰め込むということになりがちです。その不安を和らげようと,さらに多くの時間と人員を製品に注ぎ込むことになります。しかし,このような安易な逃げ道に頼らず,信頼を維持することが重要です。元々の構想を信じ,そのソフトウェアでの実装を信じましょう。

 ソフトウェアが真実です。最も基本的なレベルとして,あなたが作ったソフトの品質を計測するツールをなにも持っていなかったとしても,少なくともそのソフトウェアはあります。通常のケイデンス(※開発周期)でゲームプレイができるなら,そこでレビューしてソフトウェアの品質を図ることが可能です。これは不安を和らげるのに役立ちます。

 製品に強いビジョンを持ちましょう。そうすれば,そのビジョンや製品に対して価値を与えることを基本とした決定ができるに違いありません。


「あなたが許せば,チームは思いつく限りのアイデアや機能を追加してくるでしょう」

 意思決定は早めにしましょう。決定,決定,決定。間違った決定は,なにも決断しないよりずっとマシです。これは素早く前進して,それに由来するほかの判断に役立ちます。同時に,悪い判断をしたのかどうかをかなり早めに知ることができます。プロジェクトでは,あなたは判断をしなくてはならなくなります。もしこれらをすべて最後まで放っておいたら,それらの決定の結果に対する不明点に返信する時間がかなり少なくなってしまいます。もし決定がスコープに関連して機能削減をするものだった場合,チームの時間と労力を無駄にすることになるでしょう。その機能はもっと早い時期に削除できたはずのものですので。そうしておけば人員を別の部分のクオリティアップのために使うこともできたはずです。

 意思決定はときに難しいものとなります。ときに不評を買い,ときには支援に必要な情報がすべて揃わないこともあります。しかし,それでもあなたは判断を下さなくてはなりません。さもなくば,一歩も進めないのです。

 リーダーには製品とスタジオへの責任があり,最終的な製品が最高の品質であることを確認しなくてはなりません。量は必ずしも質と同じではありません。フィーチャーセットをいじること,製品履歴を見ることは,プレイヤーにたいした価値をもたらさないたくさんのものを削除することを可能にします。プレイヤーにとって最も重要なものにフォーカスしてください。プレイヤーが第一です。恐れずに,さらなる機能を追加し続けましょう。

 製品への責任と同様に,リーダーにはチームに対する大きな責任があります。チームは熱意にあふれています。あなたが許せば,チームは思いつく限りあらゆる単独のアイデアや機能を追加してくるでしょう。あなたが許せば,できるだけ高品質な機能を加えようと倒れるまで働くでしょう。責任を持って,彼らに何を作っているのかを理解させること,彼らにできる以上のことを抱えないように躾けるのはリーダーの仕事です。

 プレイヤーとゲームに最も価値を与えるものがなんなのかをチームが理解しているかを核にするのはリーダーの仕事です。チームにはすべてのものを作る必要はないと信用させなくてはなりません

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら